チアシードの栄養成分と働き
|食物繊維やオメガ3・抗酸化物質が豊富なスーパーフード

食べ物辞典:チアシード

日本でもお馴染みのチアシード。中南米原産のシソ科植物“チア”の種子で、メキシコや南米では紀元前から食されてきた歴史があります。現在も栄養補給に優れたスーパーフードとして健康や美容に高いメリットが期待されています。特徴は食物繊維が豊富なことと、オメガ3脂肪酸のα-リノレン酸を含んでいること。満腹感を維持し肥満予防のサポートとしてから、血糖値対策・生活習慣病予防などに役立つ可能性も研究されています。抗酸化物質や鉄分・タンパク質補給にも役立つチアシードについて、歴史や期待される健康メリットを紹介します。

チアシードのイメージ画像:食べ物辞典トップ用

和名:チアシード
英名:chia seeds
学名:Salvia hispanica

チアシードのプロフイール

チアシードとは

日本でも健康補助食品食材として定着しているチアシード。セレブが愛用する食材・アメリカでスーパーフードとして流行したことやがメディアで紹介され話題となり、今ではスーバーやドラッグストアでも気軽に購入できる食材となっています。スーパーフードと呼ばれる栄養価の高さも勿論ですが、水に浸すことで10~12倍に膨らみ満腹感に繋がること・ダイエットサポートにも嬉しい成分が含まれていることも人気となった理由でしょう。水に浸すとただ膨らむだけではなくジェル系のトロリとした食感になることも特徴で、飲み物に加えるとそれだけでも満足感がありますよね。ダイエット系スムージー商品などにも配合されています。

チアシードとして販売されているものは胡麻よりもさらに小さい、白もしくは胡麻状の粒。チアシード(chia seeds)という言葉のうち、シードは種子を指しますから、植物の名前としてはチア(chia)。語源はアルテカ時代に使われていたナワトル語で「油性(油っぽい)」ことを意味する“chian”とされていますよ。植物としてはシソ科に分類されるため「ミントの仲間の種子」と称されることもありますが、チアはシソ科の中でもアサギリ属(サルビア属)に分類される植物。ミントファミリーではありますが、ミントよりもセージに近い植物で、お花もセージに似ています。

チアシードと呼ばれ食材・疑似穀物として利用されているのは、学名Salvia hispanicaSalvia columbariaeという二種類。商品として流通しているのは大半がSalvia hispanicaのようです。チアシードは種子の色によって“ブラックチアシード(黒チアシード)”と“ホワイトチアシード(白チアシード)”の二つに分けられますが、どちらも同じhispanica種ではあるんですね。ちなみに、日本の健康サイト・健康食品会社などではホワイトチアシードの方が栄養価が高いと紹介していることもあります。しかしチアシードの製造販売を行っているThe Chia Co Asiaによれば、白でも黒でもほとんど差はないと紹介されています。若干の差異はあるそうですが摂取量を考えると誤差の範囲内・栽培場所などによる差のほうが大きいくらいだとか。ホワイトチアシードの方がドリンク類などに加えた時に見栄えが良いくらいに考えても問題なさそうです。

チアシードの利用としては、日本では水に浸してジェル状にしてから、飲み物に入れる・ヨーグルトに混ぜるなどして食べるのがポピュラー。それ以外にも砕いた種子をゲル化することで、ケーキやマフィンなどの焼き菓子を作る時の“卵”の代替としても使用できます。レシピの卵をすべて置き換えるのはちょっと難しいですが、1/4くらいまでなら失敗しにくいですよ。粉砕種子をゲル化させることで出来るゼラチン状の食感は、アイスキャンディーやジャム作りにも活用できますよ。ヴィーガンの方は卵やゼラチンの代用品として使うことも多いそうで、グルテンフリーレシピでもチアシードを入れることでふんわり・ふっくら感を加えるものがあります。意外と活用幅の広い食材でもあるんですね。

チアシードの歴史

チアの原産は北アメリカから中央アメリカ(メキシコ中西部からグアテマラ北部)にかけての地域。原産域付近では古くから食物として利用され、アンデス文明の中でも大切にされてきたと考えられています。はっきりとした年代については断定されていませんが、紀元前3500年頃にはアステカで収穫・食用としていたことが分かっています。紀元前2600年から2000年の間にはトルテック・テオティワカンなどの古代文明でも食物として取り入れていたそう。この頃から栽培が行われていたという説もあります。紀元前1500年から900年の間頃になるとメキシコ周辺でチアシードの栽培も行われ、交易品もしくは貨幣のような感覚でも使われていたと考えられています。

アステカ文化でチアシードはトウモロコシ・豆に次いで重要な作物と見做され、支配者層や聖職者に対する税・供物としても使われていたと伝えられています。ここまでチアシードが重視されたのは穀類と同じように長期保存が可能で、脂質やタンパク質を含む高栄養食品だったため。食べるとエネルギーが湧き出してくることから超自然的な力を持つと信じられ、星運びしやすいことと合わせてアステカの戦士たちの携帯食に活用されていました。長距離走の能力が高いと注目されているメキシコのタラフマラ族も、水にチアシードとレモンを混ぜたドリンクを飲んでから走る習慣があるのだそうです。現在「優れたランナーフード」「チアシードと水があれば生きられる」と謳われているのも、こうした歴史からなんですね。

中央~南アフリカでは古くから愛されてきたチアシードですが、16世紀にスペインによってインカ帝国が征服されるとキヌアアマランサス同様に暗黒時代に突入します。現地宗教や伝統との関係が深い食べ物であるとして、征服者によって強制的に禁止され、チアシードは排除されてしまいます。ちなみに、チアシードの学名はSalvia hispanica種小名がhispanica=スペインとなっています。これはスウェーデンの植物学者が“スペインで栽培された植物”と記録したことに由来すると言われていますから、アメリカ大陸では禁じていても母国に持ち帰っていたのかもしれません。

ともあれスペイン人によって排除されたチアは姿を消し、メキシコの一部地域で細々と生き延びた程度。約500年後には失われた伝統と植物についての感心が高まり、1990年代初頭になってアメリカと南米の科学者・栄養学者・農業専門家らのチームの調査によって再発見されました。調査の結果オメガ3系脂肪酸や抗酸化物質の量が多いことが分かり、アルゼンチンなどでチアの商業栽培がスタート。栄養や機能性についての研究も行われるようになります。現在チアシードはアメリカのFDA(アメリカ食品医薬品局)では栄養補助食品として、欧州連合でも健康や環境に対し危険性がない新規食品「NOVEL FOOD」として承認されています。

チアシードの栄養成分・効果について

栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

チアシードは「スーパーフード」の1つにも数えられる、栄養価が高い食材。オメガ3(n-3)に分類される多価不飽和脂肪酸を含むこと・抗酸化物質が豊富なことが取り上げられることが多いですが、カルシウムを筆頭にマグネシウム・鉄分・亜鉛などのミネラル類や、ビタミンB2や葉酸、必須アミノ酸を含むタンパク質などの補給源としても役立ってくれるでしょう。全体重量の3割以上が食物繊維と食物繊維含有率が高いことから、ダイエットのサポートにも活用されていますよ。

チアシードのイメージ画像

チアシードの効果効能、その根拠・理由とは?

栄養補給・筋肉作りに

チアシードが「スーパーフード」として人気になったのは、オメガ3脂肪酸と食物繊維を含むことだけではなく、アミノ酸やビタミン・ミネラルなどの必須栄養素を広く含んでいるという点もあります。チアシードは「植物性タンパク源としては奇跡的」という評価もあるほど、含有するアミノ酸の種類が多いことも特徴。人間が体内で合成することのできない必須アミノ酸8種類、須アミノ酸以外も入れると18種類ものアミノ酸がチアシードには含有されていることから、手軽なタンパク源、ベジタリアンの方の栄養補給源としても役立つと考えられています。

アミノ酸は筋肉や神経伝達物質の原料として、それ以外にも私たちの体を健康な状態に保つために様々な役割を持っています。筋肉増強・回復促進に有効とされているBCAA(バリン、ロイシン、イソロイシン)をはじめ、糖代謝サポートしてくれるアスパラギン酸・セロトニンの原料となるトリプトファンなどがありますね。こうしたアミノ酸類の補給に役立つことからチアシードは筋肉量の増加・強度の向上に役立つと考えられています。筋肉組織の修復を助けることにも繋がるため、回復期間を短縮して効率的なトレーニングをサポートしてくれる食べ物としてアスリートにも取り入れられているようです。

成長サポート・骨粗鬆症予防に

チアシードはミネラル類の中で、100gあたり570mgとカルシウムを多く含んでいます。カルシウムは私達の骨や歯を維持するために必要なミネラルで、不足すると歯が脆くなったり骨密度低下による骨粗鬆症リスクが高まることが指摘されています。このためカルシウムは丈夫な骨や歯の形成・維持する栄養素として意識的に摂取したいミネラルと言えますし、チアシードには骨代謝に関与するマンガンも含まれています。お子さんの成長のサポート・加齢による骨粗鬆症予防のサポートとしても役立ってくれるでしょう。フラックスシードには劣りますが、鉄分も含まれていますよ。

便秘予防・腸内環境サポートに

チアシードは「最も食物繊維率の高い食材の1つ」と紹介されることもあるように、食物繊維を豊富に含んでいる食材。製品メーカーなどの記載によって差もありますが『日本食品標準成分表』ではチアシード100gあたりの食物繊維総量は36.9gとなっています。同グラムで比較すると食物繊維量はゴマの約3.5倍・フラックスシードの約1.5倍にもなり、さらっと大さじ一杯(7g)程度食べるだけでもバナナ2本分くらいの食物繊維を補給できる計算になります。飲み物などに加えてサプリ感覚でこれだけの食物繊維を補給出来るのは便利ですよね。ちなみに、チアシード7gのカロリーは約35kcal。

水に浸しておくとゲル状になることもあってチアシードは水溶性食物繊維が多いように感じられますが、実は100gあたり36.9gの食物繊維のうち不溶性食物繊維が31.7g、水溶性食物繊維が5.7gと、約85%が不溶性食物繊維となっています。不溶性食物繊維は便のかさを増やすことで腸を刺激し蠕動運動を促す働きがあり、腸内の老廃物を絡め取るようにして排出を助けてくれます。また、比率としてみると少なく感じますが、チアシードは水溶性食物繊維の補給源としても役立ちます。水溶性食物繊維による腸内善玉菌の活性化・腸内環境改善にも期待できるでしょう。

血糖値対策・ダイエットに

食物繊維が豊富で、タンパク質やオメガ3脂肪酸のα-リノレン酸を含むチアシードは肥満予防にも効果が期待されています。大量に含まれている不溶性食物繊維は水を吸って膨らむ性質があるため満腹感を与えて食べ過ぎ予防に、水に浸けておくことで外側に出てくる“グルコマンナン”の粘り気・ぷるっとした食感も「食べた」という感覚によって満腹感を与えてくれるでしょう。精製グルコマンナンを使った実験では、プラセボと比較して食後満腹感の上昇や体重増加が見られたという報告もいくつかありますよ。

また、十分なタンパク質の補給によっても食欲と食物摂取量を抑える可能性があると考えられていますし、イソロイシンやロイシンなどの必須アミノ酸類は代謝促進にに働きかけることが期待できます。2017年『Nutrition Research and Practice』に発表されたトルコの研究では、朝食にチアシードを摂取したグループは短期間で満腹感が増し食事量が減少したことが報告されています。同じく2017年には2型糖尿病の過体重および肥満患者を対象とした実験で、チアシード摂取群はプラセポよりも大幅に体重が減少したということも『Nutrition, Metabolism & Cardiovascular Diseases』に発表されています。しかし、2009年に発表された1日当たり50gのチアシードを12週間摂取するという実験では、チアシード摂取群に有意な体重減少は見られなかったことも報告されています。

このためチアシードを食事に加えるだけで痩せる、という可能性は低いと見たほうが良いでしょう。粉砕チアシードを混ぜたパンは食後血糖の上昇が緩和されたという報告もありますが、肥満予防・血糖コントロールについて断定できるほどのデータはありません。とは言えチアシードは含まれている炭水化物の大半が食物繊維で、消化可能な炭水化物である“糖質”量は極めて低い食材。良質なタンパク質・脂質の補給源でもありますから、食事改善の一環として取り入れるのであれば血糖値対策やダイエットをサポートしてくれる可能性は十分にあります。

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老化・生活習慣病予防にも

フラックスシードよりはやや劣りますが、チアシードもオメガ3脂肪酸の1つであるα-リノレン酸(ALA)を豊富に含む食材の一つです。α-リノレン酸に悪玉(LDL)コレステロールや中性脂肪の低減効果が報告されており、冠状動脈性心臓病や高血圧のリスクを軽減・血小板機能を改善する働きが期待されています。2011年『PLOS ONE』に掲載されたオランダの調査では、α-リノレン酸の摂取量が多い人のほうが冠動脈性心疾患および脳卒中のリスクが低いことが報告されています。心臓発作や心血管疾患・脳卒中リスクとα-リノレン酸の関連性についての報告はそれ以外にも多くなされており、α-リノレン酸は血流関係の疾患予防をサポートしてくれる可能性の高い脂質として注目されています。

加えてチアシードはクロロゲン酸・コーヒー酸・ミリセチン・ケルセチンなど様々な抗酸化物質を含んでいることも認められています。過剰な活性酸素は体内の脂質・タンパク質・DNAなどに悪影響を及ぼし、体の持つ様々な機能を低下させたり、老化を促進するリスクファクターとなることが指摘されています。悪玉(LDL)コレステロールが酸化して出来た“酸化LDL”が蓄積し、血管を狭めたり柔軟性を損なわせることで起こる動脈硬化などもありますね。チアシードはα-リノレン酸と抗酸化物質を含んでいるため、適切に補給することで動脈硬化や心筋梗塞、生活習慣病予防予防に役立つのではないかと考えられています。

免疫サポート・アレルギー軽減に

食品に含まれている多価不飽和脂肪酸は、その構造からオメガ3(n-3)脂肪酸・オメガ6(n-6)脂肪酸という2系統に分類されています。オメガ3系脂肪酸としては魚油に多く含まれているEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)が代表的で、オメガ6系脂肪酸には大豆油などの植物性油脂に多く含まれているリノール酸が代表的。チアシードに含まれているα-リノレン酸はオメガ3系脂肪酸で、体内に入るとEPAやDHAへ代謝されます。直接的にDHAなどを摂取したほうが効率が良いという指摘もありますが、α-リノレン酸を補給すれば体内でEPAやDHAが生産されるというわけです。魚を食べないヴィーガンの方などには重要な栄養素と言えますね。

オメガ3(n-3)脂肪酸もオメガ6(n-6)脂肪酸も私たちが生るために必要な脂質=必須脂肪酸ですが、摂取する脂肪酸のバランスの乱れが不調を起こす可能性となることが近年指摘されています。これは大まかに言うとオメガ6系脂肪酸は炎症反応を起こす物質に、オメガ3系脂肪酸は炎症抑制物質に変換されるという性質があるため。対になって機能することで免疫反応などを正常に機能させるはずが、近年はオメガ6系の脂肪酸摂取量ばかりが多くなっていると考えられます。その結果、体内の免疫バランスが崩れてアレルギー症状などの炎症が起こりやすくなっているという説があり、オメガ3を豊富に含む魚やフラックスシードなどの摂取がアトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギー軽減に繋がるのではないかと注目されています。

脳機能向上・うつ予防にも

オメガ3(n-3)脂肪酸の中でも、DHA(ドコサヘキサエン酸)には脳内に取り込まれることで細胞膜を柔らかくする・シナプスを活性化することで脳の伝達性を高める可能性があることが報告されています。また、血管障害などによって脳の一部機能が低下していてもDHAは残っている脳細胞を活性化して認知症や記憶障害の改善する働きが期待されており、子供から高齢者まで様々な方の“脳・神経機能”をサポートする可能性がある成分として研究が行われています。認知症予防や記憶力向上だけではなくメンタルヘルス、特にうつ病との関係性についても研究が行われており、1998年『The Lancet』に発表されたHibbeln氏らによる9カ国のうつ病の発症率調査ではオメガ3系脂肪酸を豊富に含む魚を多く食べる国ほどうつ病の発症率が低いことが報告されています。

α-リノレン酸は体内でEPAやDHAに代謝されるため、α-リノレン酸を含むチアシードも認知症予防やうつ病・気分障害などの精神疾患リスク低減に繋がる可能性があります。ただし、オメガ3脂肪酸の働きについてはまだ研究数も少なく、有効性についても断定できる状態ではありません。加えてチアシードに含まれているα-リノレン酸からDHAへの代謝効率はそう高くないことも指摘されていますから、あくまでも可能性があるという段階薬と違って副作用のリスクは低いですし、チアシードに含まれる必須アミノ酸のトリプトファンやフェニルアラニンも脳内の神経伝達物質の材料となる成分ではありますから、日々の健康維持サポートとして取り入れてみても良さそうですね。

美肌保持・アンチエイジングに

チアシードに含まれているα-リノレン酸などのオメガ3系脂肪酸は、細胞を包む細胞膜や細胞間脂質の原料として使われる成分でもあります。必須脂肪酸が不足すると体全体の機能低下、肌に関してであれば水分保持力や新陳代謝低下の原因となる可能性があります。このため適切なオメガ3脂肪酸の摂取は肌の水分保持力の向上や乾燥肌の予防に、血液循環サポートとも合わせてシワ・たるみ・くすみなどの予防改善に役立つと考えられます。オメガ3系脂肪酸はアレルギーや炎症を抑制する働きも期待できるため、肌トラブル予防・丈夫な肌作りに一役買ってくれる可能性もるでしょう。

また、チアシードに多く含まれている必須アミノ酸は表皮の角質層にある潤い成分“NMF”やコラーゲンの原料としても使われます。クロロゲン酸やケルセチンなどの抗酸化物質も豊富に含まれていますから、肌細胞の酸化を抑制するという面からもアンチエイジングサポートが期待できますね。肌細胞の原料の補給・新陳代謝向上・抗酸化と様々な方向から若々しく美しい肌の維持を手助けしてくれそうです。食物繊維による便通・腸内フローラの改善も、体内の老廃物や有毒物質を減少させることで肌の透明感アップや肌荒れ予防に繋がります。

チア・バジル・フラックスシードの栄養比較

フラックスシード、チアシード、バジルシードはどれも健康メリットやダイエットサポーターとしての役割が期待され、揃って「スーパーシード(スーパーフード)」と呼ばれることのある食材。外見は似ている3つのシード類にはそれぞれ異なった特徴があります。特に植物として見てもチアシードはシソ科アサギリ属(サルビア属)・バジルシードはシソ科オシウム属(メボウキ属)と近いですが、フラックスシードはアマ科と別物で粒も大きめ。食品としてもフラックスシードは前記2つとは違いが明確ですよ。

チアシードのポイント

チアシードはフラックスシードよりも脂質量が少なく、食物繊維量が多いことが特徴。『日本食品標準成分表2015年版』に記載されている100gあたりのカロリーは494kcal、食物繊維総量は36.9gとなっています。ただし食物繊維総量は多いものの、不溶性食物繊維が多く、水溶性食物繊維量についてはフラックスシードの方が上。

オメガ3系必須脂肪酸(α-リノレン酸)量も100gあたり19.43gと、23.50gあるフラックスシードよりはやや少なめですが豊富と言っても差し支えのない量ではあります。そのほか必須アミノ酸をバランスよく含み、カルシウムも豊富。健康維持のために栄養バランスを整えたい、健康的なダイエットを心がけている方のサポーターとして役立ってくれそう。水分を含む膨張し、腹持ちも良いので間食を控えたい方・食べ過ぎを予防したい方にも適していると考えられます。

バジルシードのポイント

バジルシードは外見も水に浸すとゼリー状になる点もチアシードに似ていますが、チアシードは水につけておくとドロリとした柔らかく透明のジェル状に、バジルシードは半透明でチアシードよりも弾力性が高めの膜が形成されます。チアシードもバジルシードも乾燥時は同じ様なサイズですが、水に浸した後はバジルシードの方が一粒一粒のサイズが大きく見えます。

『日本食品標準成分表2015年版』にはバジルシードの項目がないため公平性は劣りますが、三種類のシード類の中ではカロリーも最も低いのではないかと推測されています。カロリーが低いこと考えるとオメガ3系脂肪酸やアミノ酸などの栄養補給目的ではフラックスシードやチアシードに劣る可能性が高いので、摂取カロリーが気になる方や食べ過ぎ防止、便秘の解消をメインに摂取したい場合に適した食材と言えそうですね。

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フラックスシードのポイント

フラックスシードはオメガ3系必須脂肪酸(α-リノレン酸)の含有量が高いこと、亜麻仁リグナンと呼ばれるフィトエストロゲンを含むことが特徴。特に亜麻リグナンもしくはフィトエストロゲンとなるリグナン類についてはチアシードとバジルシードには含まれていませんから、更年期障害が気になる方・ホルモンバランスが気になる方であればフラックスシードを取り入れてみても良いかもしれません。

『日本食品標準成分表2015年版』に記載されている100gあたりのカロリーは562kcal。3種のシード類の中ではオメガ3系必須脂肪酸(α-リノレン酸)の含有率も最も高いですが、カロリーも最も高いです。チアシードやバジルシードのように水につけてもゲル状に膨らみません。水につけてもゲル化しないので食事のカサ増しとしては微妙ですが、粉末化したものは小麦粉の代用品として活用できる・和え物などにも使えると調理幅が広いことがメリット。

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チアシードの食べ方・注意点

販売されているチアシードは黒もしくは濃褐色系のものと、白っぽい色の2種類。ホワイトチアシードの方が若干α-リノレン酸(ALA)含有量が高い傾向にあるそうですが、違いはごくわずかで、栽培地や個体差とそう変わらない程度。使い分けるとすれば見た目の印象に合わせて、ホワイトチアシードは小麦粉に練り込んだりドリンクを作る時に、ブラックチアシードはトッピングやアクセントにという程度です。

チアシードを選ぶ時に注意したいのはホワイトチアかブラックチアかではなく、黄褐色系の微妙な色の種子が入っていないかどうか。茶色系のチアシードはまだ未熟な種子で、きちんと完熟しているホワイトチアシードやブラックチアシードよりも栄養面で明らかに劣っていることが指摘されています。毒性があるわけではありませんが、考えているほど栄養補給に役立たない可能性はあるそう。選ぶ際には茶色っぽいチアシードの混合率が低そうなものをチョイスしてみると良さそうです。

チアシードの注意点

チアシードは「アブシジン酸」という発芽毒を含んでいる場合があります。製品の場合はそのままサラダなどに振りかけて食べることを推奨しているメーカーもありますから対策がとられているのかもしれませんが、不安な方はしっかりと水に浸したものを食べるようにしましょう。12時間以上水に浸しておくと無毒化されます。メーカーにより使用法・水につける時間などを表記しているところもあるので、パッケージの注意事項を確認して利用しましょう。

チアシードは食物繊維を豊富に含む食材であることが評価されていますが、食物繊維は摂取しすぎるとミネラルなどの栄養素の吸収阻害や消化器官へのダメージを与える危険性もあります。体質によっては腹部膨満感・腹痛・下痢・悪心などを起こす場合もありますので、体調を確認しながら少量ずつ取り入れるようにしましょう。お腹の調子が悪くなったと感じた場合は食べ続けずに量を減らすか一旦使用を中止しましょう。

嚥下障害のある方・医薬品を服用中の方はチアシードの摂取を控えるか、医師に相談の上で取り入れるようにしましょう。妊娠中の摂取による安全性についても十分なデータがないため、不安な方はかかりつけの産婦人科で相談することをお勧めします。

チアシードの利用法について

チアシードはケーキやクッキーなど焼き菓子を作る際に卵の代用品として利用出来ます。独特の見た目が苦手な方も取り入れやすいでしょう。卵の代わりに使用する場合は大さじ1杯のチアシードをすり潰し、大さじ3の水を入れて膨らませたものが卵1つ分の代わりになると言われています。

チアシードをジュースに浸してゲル化させ、砂糖もしくは蜂蜜などで味を整えるとジャムの代替え品としても利用できます。長期保存には適しませんが、数日中に食べるなら問題なし。砂糖未使用、もしくは使用する場合でも本物のジャムよりは少なくて済みますよ。そのほか肉団子作やスープの増粘剤などお食事系レシピにも活用できます。

【参考元】