ハマグリ(文蛤/浜栗)とその栄養成分・効果効能
|良縁&円満の縁起物! 女性に嬉しい栄養も…♪

食べ物辞典:蛤(はまぐり)

雛祭りや婚礼などの縁起物としても親しまれているハマグリ。サイズが大きくジューシーで、貝の旨味を存分に味わえるのも魅力です。はまぐりは“良縁・夫婦円満”を意味する縁起物として女性のお祝いごとに使われますが、実はカルシウムや鉄分など女性に嬉しい栄養も豊富な食材。現在は環境の変化などで数が減少し高級食材に含められる存在となっていますが、栄養補給も兼ねて特別な日に取り入れてみては如何でしょうか。はまぐりの歴史や栄養効果について詳しくご紹介します。

ハマグリのイメージ画像:食べ物辞典トップ用

和名:蛤(文蛤/浜栗)
英語:clam(hard clam/Common orient clam)

ハマグリ(蛤/浜栗)のプロフイール

蛤(はまぐり)とは

はまぐりは見栄えの良い大振りなサイズと食感を生かして、焼き蛤・酒蒸し・土瓶蒸しなどシンプルな料理に使われることが多い食材。高級食材に分類される価格帯なので主役として使われる機会が多いですが、佃煮などの加工品・クラムチャウダーやパエリヤなどの洋食まで様々なレシピに活用できる食材でもあります。と言っても、はまぐりと聞くと雛祭り(上巳の節句)・結婚式などを連想される方も多いのではないでしょうか。元はハマグリの貝殻は元々ペアであったもの以外とは合わないことから夫婦和合・女性の貞節の象徴とされていた名残と言われています。転じて“夫婦仲良く、一生同じ人と添い遂げられる”縁起物として慶事に使われるようになったと考えられています。

ハマグリはアサリと同じマルスダレガイ科に分類される二枚貝で、生物学的にはハマグリ(学名Meretrix lusoria)一種のみを指しますが、広義ではハマグリ(Meretrix)属の貝類の総称としても利用されています。また別属・別科の二枚貝にもベニハマグリなど“ハマグリ”と付くものが幾つかありますが、これは古い時代に蛤=二枚貝の総称として利用されていた名残でもあると言われています。昔はどこでもザクザクと獲ることが出来るくらいありふれた貝で、貝といえばハマグリくらいの感覚だったのだそう。雛祭りの行事食として使われる理由としても、ハマグリの旬が2~4月頃で、ひな祭り(旧暦3月3日)の時期に食べ納め時期であったという説もあります。

現在、内湾性のハマグリ(Meretrix lusoria)は、ひな祭りなどに熊本県産などが若干流通しますが、昭和後期以降から水質汚染・コンクリートによる護岸工事などの影響を受け激減し、絶滅危惧II類に指定されるほどの状態です。おなじく九十九里浜や鹿島灘などで獲れるチョウセンハマグリも漁獲量も減少傾向にあります。ちなみにチョウセンハマグリという名称は朝鮮半島産というわけではなく、外洋=異国に生息しているという意味合いで命名された日本在来種で漢字では“汀線”と書きます。が、誤解を受けやすいので地蛤や鹿島灘はまぐりと呼ぶのが一般的。

内湾・外洋どちらにせよ国産ハマグリは数が少なく、高価な存在となっています。スーパーなどで主に流通しているハマグリは中国産のシナハマグリが大半を占めており、国内で自分で獲ったとしても潮干狩り用に放流されたシナハマグリなのだそうです。そのほか缶詰用などにはベトナムなどで獲れるハンボリハマグリも使われています。産地についての規制は強いものの、呼び名についてはさほど厳しくないので紛らわしいですが、日本で流通しているハマグリのほとんどが輸入品というのが現状です。

また“白蛤”もしくは“大蛤”と呼ばれて流通していていたものは、北米大陸東海岸に生息するホンビノスガイという貝。同科ですがメルケナリア属に分類されるため厳密にはハマグリではありません。近年はきちんとホンビノスガイと表記して販売される傾向にありますし、アメリカでは食用貝として需要が高い存在。良くないイメージを持たれている方も少なくありませんが、味は悪くありませんのでハマグリの代用品感覚で使って見ても良いと思います。

蛤(はまぐり)の歴史

ハマグリもアサリシジミなどと同様に日本人が食用とした歴史は古いと考えられています。食用開始時期はハッキリと分かっていませんが、縄文時代の貝塚からの出土などから遅くとも紀元前4000年頃には食用とされていたことが分かっています。ハマグリの語源には浜で採れる栗の実形の貝“浜栗”説のほか、砂浜の小石(ぐり)のように沢山取れる貝で“浜小石”という説もあります。貝塚からの出土は貝類の中でも圧倒的にハマグリが多いと言われていますし、お腹を満たすということ・獲れやすいこと両方から海岸付近の縄文人には欠かせない食材だったようです。

文書としては日本最古の歴史書とされる『日本書紀』にはハマグリの膾を天皇に献上した話が記載されているようですし、同じく奈良時代に記された『常陸国風土記』にも巨人(ダイダラボッチ)が蜃(大蛤)を丘の上から手でさらったという話が載っています。奈良時代後期頃~平安時代には貴族の間で「貝覆い」もしくは「貝合せ」と呼ばれるハマグリの貝殻を使った遊びも行われる様になります。神経衰弱のようにピッタリと合うハマグリを探すだけではなく、貝を題材にした歌を詠む・殻の内面に絵や金箔を張り美しさを競うことも行われていたようです。ハマグリの学名に使われている“lusoria”も遊びを意味するラテン語で、この貝合せ(貝覆い)に使われていたことが由来。

室町時代にはハマグリの貝殻にちなんで食い違っている・あてが外れた時に「ぐりはま」という俗語も使われていたそう。おそらく平安~室町時代うちに別のハマグリの貝殻と決して合わない=女子の貞操・夫婦和合の象徴という形も出来ていたのではないかと考えられます。ちなみに江戸時代には「その手は桑名の焼き蛤」というお江戸ギャグ(?)や、ぐりはまの変化形である「ぐれる」という表現も流行したと伝えられています。言葉遊びでも利用されるように、桑名産の蛤が最上品として広く知られ『東海道中膝栗毛』にも名物として登場します。江戸近郊でもハマグリは沢山獲れていましたが、お伊勢参りに行く江戸っ子は桑名の焼きハマグリを食べるのを楽しみにしていたのかもしれませんね。

また開始時期は定かではありませんが、明治維新前まで上流階級の女性の嫁入り雑具として貝合わせの道具を入れた“貝桶”は欠かせない存在だったとも伝えられています。江戸時代の婚礼は貝桶を引き渡すところからスタートしたと言われていますし、8代将軍徳川吉宗は結婚式にハマグリのお吸い物を用いるように定めました。結婚式の蛤汁については貞操を守ること・夫婦和合を願うだけではなく「高価な食材を控えて倹約せよ」という意味合いもあったようですが、現在のように雛祭りや結婚式には蛤が欠かせない縁起物であるという認識が定着していたと考えられます。

ハマグリ(蛤/浜栗)の栄養成分・効果について

栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

ハマグリはたんぱく質含有量がやや高く、糖質・脂質が少ない食材です。カロリーも100gあたり39kcalと低めですので、トレーニング中やダイエット中の方も取り入れやすい食材と言えるでしょう。ビタミン類ではビタミンB12が多く含まれており、ミネラル類ではシジミと並んでカルシウム量が貝類トップクラスとなっています。水溶性の栄養やうま味成分をしっかり味わうのに汁物がおすすめです。

ハマグリ(文蛤/浜栗)イメージ

蛤(はまぐり)の効果効能、その根拠・理由とは?

肝臓サポート・二日酔い予防に

ハマグリにはグルタミン酸、タウリン、ベタインという肝臓機能サポートに役立つアミノ酸が含まれています。特にタウリン含有量は100gあたり550mg程度と貝類の中でも豊富だと推測されているため、アルコールの無毒化(分解)過程で発生する“アセトアルデヒド”の分解を高める働きが高いと考えられています。またうま味成分として知られているグルタミン酸もアルコール代謝を促進す働きが報告されていますし、ビタミンB群の一つであるナイアシンもアルコール・アセトアルデヒドの分解をサポートしてくれますから、二日酔い予防や回復促進に効果が期待できるでしょう。

タウリンやグルタミン酸の働きに加え、ベタインは胆汁産生促進・脂肪沈着防止・脂肪排出などの働きがあると考えられています。このためハマグリは肝機能全体のサポートや脂肪肝予防にも効果が期待されています。加えてベタインは抗酸化作用を持つグルタチオンの産生を維持する働きも期待されていますから、酸化ストレスによって発症リスクが高まる肝硬変・肝炎・肝ガンなどの予防にも役立つのではないかと考えられています。

疲労回復・筋力アップの促進に

タウリンは栄養ドリンクなどにも配合されているように、疲労回復にも役立つと考えられています。これは肝機能向上から期待されている働きで、ハマグリには同じく肝臓の健康サポート効果が期待できるベタインなども含まれていますから相乗効果が期待できるでしょう。またグルタミン酸は肝臓以外の部分でアンモニアと結合して無毒化する性質があり、ぼんやり感や集中力低下など脳に起因する疲労感の改善にも役立つと言われています。

ハマグリにはその他にも筋肉増強・回復促進に有効とされているBCAA(バリン、ロイシン、イソロイシン)や、クエン酸回路を活発化するサポートしてくれるアスパラギン酸など、疲労回復や筋力アップに繋がるアミノ酸が幅広く含まれています。加えて代謝を促すビタミンB群や補酵素として働くマグネシウム、細胞分裂や新陳代謝に関わり間接的にですがの筋肉増強効果があるとされる亜鉛なども含まれています。運動を良くするアスリートタイプの方の筋力アップサポートや筋肉痛軽減などにも効果が期待できるでしょう。

精神安定・不眠予防としても

ハマグリに含まれているビタミンB12は造血に関わるだけではなく、正常な神経伝達を保つ・睡眠を司るホルモン“メラトニン”の分泌をコントロールするなどの役割もあります。代表的な不足症状として手足のしびれ・集中力低下・不眠などの症状が挙げられており、不足するとセロトニンやアドレナリンなどの生成・分泌が正常に行われずイライラや抑鬱などの原因になるとも考えられています。このためビタミンB12を適切に補充することで、情緒不安定さや寝付きの悪さの改善効果が期待されています。

ハマグリは同じく不足することでセロトニン生成低下を引き起こす可能性があるナイアシンや、セトロニンの合成に関わるビタミンB6、マグネシウム、トリプトファンも少しずつ含んでいます。加えてアミノ酸のグリシンにはセロトニンを増加させ抗うつ作用をもたらすことが報告されていますし、寝付きを良くする・睡眠の質を高める働きも期待されています。タウリンもGABAやグリシン受容体を活性化する働きがあるという説がありますから、相乗してストレス抵抗力アップや精神安定・不眠緩和効果が期待できるでしょう。自律神経失調症の予防や改善にも役立つ可能性があります。

むくみ予防・デトックスサポート

肝臓はアルコール以外にも血液中に含まれる様々な有害物質を濾過する役割を持つ、いわばデトックス器官になります。アルコール・カフェイン・糖質・脂質などの摂取量が多い状態が続くと肝臓が疲労し、その濾過・解毒機能も低下してしまうと考えられています。肝臓の働きをサポートするタウリンなどのアミノ酸類やビタミン類を補うことで肝機能が向上し、体本来のデトックス能力の向上が期待できるでしょう。

またグルタミン酸には利尿作用があると考えられていますし、タウリンも筋肉収縮を高めることで便秘・むくみを改善する働きが期待されています。マグネシウムや亜鉛など体液循環をサポートするミネラルも含まれていますから、これら働きが相乗することで老廃物・毒素の排出までをサポートしてくれると考えられます。多いわけではありませんが、ナトリウム排出を促すことでむくみ改善効果が期待されるカリウムも含まれていますから、むくみが気になる方にも適しています。

貧血・冷え性対策に

ハマグリには抗悪性貧血因子と呼ばれ、葉酸とともに赤血球の生成をサポートする働きのあるビタミンB12が100gあたり28.4μgと多く含まれています。貧血の原因として最も多いのはビタミンB12よりも鉄分が不足する鉄欠乏性貧血ですが、ハマグリには100gあたり2.1mgの鉄分も含まれています。加えて赤血球膜を丈夫に保つことで貧血予防効果があるとされる亜鉛や鉄の吸収を助ける銅などのミネラルも含まれていますので、食事に取り入れることで貧血予防に役立つと考えられています。

またハマグリには末梢血管を拡張するビタミンEやナイアシン、体液循環を正常にサポートするマグネシウムなど“巡り”に関わるビタミン・ミネラルも含まれています。アミノ酸類の働きによって肝機能が整うことで代謝向上・体温維持機能の正常化にも繋がりますから、血液不足改善・熱生成アップ・熱を運ぶ血液循環のサポートとと総合的に冷え性の改善にも効果が期待できます。

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生活習慣病・肥満予防に

ハマグリは糖質・脂質の含有量が低くヘルシーな食材であることや、代謝をサポートするビタミンB群やアスパラギン酸などのアミノ酸が幅広く含まれていることから肥満予防や生活習慣病予防にも役立つ食材と考えられています。また亜鉛は総コレステロールや悪玉(LDL)コレステロールの上昇抑制効果・血圧降下作用などが報告されています。また亜鉛はインスリンに働きかけることで糖尿病予防にも役立つと考えられていますし、タウリンにも血糖値降下・インスリン分泌促進作用や血圧・悪玉コレステロールの低下作用があるとする説もあります。

ハマグリの亜鉛含有量は100gあたり1.7mgと際立って多いわけではありませんが、健康維持にプラスすることで十分に不足を補ってくれると考えられます。100gあたり39kcal・一粒(15~20g)であれば10kcal未満と低カロリーかつ食べごたえもありますし、筋肉量アップに役立つアミノ酸も多く含まれていますのでダイエット中の食事にも適しています。不足しがちなミネラル補給源としても役立ってくれるでしょう。

肌荒れ予防・美肌サポート

ハマグリは美肌作りに役立つ何かの成分が特出して多いという訳ではありませんが、幅広い栄養素を含んでいます。特に天然保湿因子(NMF)やコラーゲンの原料となるグリシンや、同じくNMFの原料となるほかメラニンの形成を抑制するシステインの元ともなるセリンなどのアミノ酸類、皮膚の健康維持や再生に関わるビタミンB群や細胞分裂を活発化させることで皮膚再生を促す亜鉛などが代表的です。

このため肌の新陳代謝促進やターンオーバーの正常化効果、乾燥肌を予防してハリと潤いのある肌の保持効果が期待されています。亜鉛やビタミンB2はニキビ予防としても役立つと考えられていますし、ナイアシンやビタミンEなどの血行促進効果からくすみ予防・美白(※透明感アップ)効果なども期待出来ます。

視機能の保護・回復にも期待

ハマグリに多く含まれているタウリンは網膜の光受容体(光を完治して脳に伝える細胞)に存在し、網膜を刺激から守っている存在です。そのため目の負担軽減・疲労回復などに役立つと考えられていますし、目の新陳代謝を活発にする・角膜の修復を助けるという報告もあります。加えて目の疲れを和らげて視力低下や眼精疲労を予防してくれる働きがあるビタミンB群も比較的多く含まれていますから、相乗して眼精疲労予防に良いとされています。

チョウセンハマグリ(汀線はまぐり)について

国産ハマグリの半数以上を占めていると言われるチョウセンハマグリは、ハマグリ(Meretrix lusoria)と栄養成分含有量に違いがあります。日本食品標準成分表(七訂)によると必須栄養素の中で差が大きいが鉄分で、100g当たりの含有量は5.1mgとハマグリの約2.5倍となっています。

100gあたりのカロリーは42kcal、タンパク質と炭水化物量もハマグリより多くなっています。アミノ酸含有量は全体的にチョウセンハマグリのほうが高いですが、カロリーもしくはたんぱく質含有量に準じて上がっているという程度です。ミネラルではカリウム・カルシウムはチョウセンハマグリの方が多く、逆にマグネシウム・亜鉛は少なくなっています。ビタミン類ではビタミンB1とパントテン酸が多いものの、B2,B6,B12は少なくなっていますが、どれも鉄分ほど差の大きいものはありません。

目的別、蛤(はまぐり)のおすすめ食べ合わせ

ハマグリ(蛤/浜栗)の選び方・食べ方・注意点

アサリやシジミ同様に、ハマグリも食べる前に“砂抜き”が必要となります。吐いた砂をまた吸わないようにザルなどで床上げをして、窒息しないよう頭が少し出るくらいの所まで塩水(塩分濃度2~3%)に浸してください。冷暗所で出来れば一晩・短くても2~3時間程度追いて砂を吐かせ、真水で貝同士をこすり合わせるようにして汚れをきれいに落として利用します。塩分が気になる場合には真水に一時間ほど漬けて塩抜きをしてから利用します。

また、急ぐ場合は50℃のお湯で軽くこりす洗いした後、15分程度つけておくことでも塩抜きが出来ます。通常の塩抜きより旨味成分が増えると言われていますが、お湯の温度が43℃以下になると雑菌が繁殖しやすくなるので温度管理には注意が必要。ハマグリは貝毒やノロウイルスなどのほか、ビタミンB1を破壊する「チアミナーゼ」という酵素も含んでいます。チアミナーゼも加熱により不活性化しますので、生食は避けてしっかりと加熱して食べるようにしましょう。