イワシ(鰯/いわし)とその栄養成分・効果効能
様々なレシピに使える、栄養豊富な青魚

食べ物辞典:鰯

鰯(イワシ)は安価で美味しい大衆魚として、日本の家庭で親しまれてきた魚の一つ。昭和には貧乏食というイメージを持たれた時期もあったようですが、近年はオイルサーディンやアンチョビなど洋風レシピに使えること、不飽和脂肪酸や良質なたんぱく質が豊富で不足しがちなビタミン・ミネラルも摂取できる食材として再評価されています。安い・美味しい・体にも嬉しいと、三拍子揃った食材と称されることもありますよ。そんなイワシ名前の由来・節分の魔除けに使われている理由や栄養効果、イワシの種類などについて詳しくご紹介します。

鰯(いわし)のイメージ画像:食べ物辞典トップ用

和名:鰯(いわし)
英語:sardine

鰯(イワシ)のプロフイール

イワシとは

安くて美味い庶民の魚、イワシ。かつて安い魚の代表とも言える存在だったため「他の魚を買えるのにわざわざ食べない」という方もいらっしゃったようですが、近年では漁獲量の変化から価格が上がって大衆魚から高級魚になるのではという報道がなされたこともあります。高級魚と言うほどの値ではありませんが、昭和頃のような手軽感は薄れつつありますね。

イワシというのはニシン目ニシン亜科に属す、複数の小魚の総称です。ニシンと近い生物ですが日本ではニシンとイワシは区別され、主にニシン科のマイワシウルメイワシ、カタクチイワシ科のカタクチイワシの計3つの魚を“イワシ”と呼んでいます。イワシの種類によって使い方に大きく差があるわけではありませんが、ウルメイワシは干物に、カタクチイワシはアンチョビや魚醤などの発酵食品に利用しやすいと言われているようです。マイワシは刺し身・焼き魚・干物・つみれなどの練り物・オイルサーディンなどの缶詰とオールマイティーに使われていますよ。

ちなみにイワシの英名は“sardine(サーディン)”と習った方もいらっしゃるかと思いますが、sardineは日本のイワシの中ではマイワシのみを指す言葉。ママカリ(サッパ)もsardineに含まれるようですが、ウルメイワシは“round herring(ラウンドヘディング)”と呼び、カタクチイワシ科の魚であれば“anchovy(アンチョビ)”に含むことが一般的なようです。日本ではイワシと総称されていますが、

また、イワシ類の稚魚はシラス(白子)と呼ばれています。マイワシは成長するに従いシラス→カエリ→小羽→中羽→大羽と名前が変わるので「出世魚」の一つでもありますね。イワシは水揚げ後すぐに死んで鮮度が下がる=“弱し”が語源とも言われるほど痛みやすい魚。そのため種類を問わず煮干し(炒り子)・じゃこ・目刺しなど加工品として利用されることが多くなっています。シラスは乾燥すると“ちりめんじゃこ(縮緬雑魚)”に、イワシ類を塩漬けにした後に乾燥したものは“目刺し(メザシ)”と、加工法によっても呼び方が変わりますね。

かつてよりも値上がりしたことや、食生活の変化から消費が減っていることが指摘されています。しかしイワシは栄養豊富な青魚であり、いわしハンバーグやピカタなどお子さんでも食べやすいレシピも多く考案されています。アンチョビなどはパーティー料理にも活用できますので、ご家族の健康維持に摂り入れてみては如何でしょうか?

イワシの歴史

イワシも日本近海で獲れる多くの魚介類と同様に、多くの貝塚から骨が発掘されているため縄文自体には食用として利用されていたと考えられています。奈良時代にはタイやカツオとともにイワシの干物も長屋王に貢納されていたそうです。貴族が食べることはあまりなかったそうですが、下級役人の食卓で利用されており、藤原・平城京周辺の庶民の口にはそうそう入らなかったと推測されています。

後の平安時代の『延喜式』にもイワシの乾物が貢物とされていた記述があるものの、呼び名や臭いから身分の高い人は口にするものではないという認識も高まっていたようです。イワシの名前の由来としても身分の低い人が食べる下賤な魚であること・独特の生臭さが“卑し”に通じ、それがイワシに転じたという説もあります。余談ですが節分に柊鰯(柊に鰯の頭を刺したもの)を戸口に飾るのも、臭いものは魔除けの効果があると考えられていたためなのだとか。

平安貴族に嫌われていたイワシですが『源氏物語』で知られる紫式部が、夫の留守中にこっそりとイワシを焼いて食べたという逸話あります。帰宅した夫は臭いで気付いて紫式部を叱りつけますが、彼女は「日の本にはやらせ給ふ石清水 参らぬ人もあらじとぞ思う(日本で今流行っている石清水に参らない人がいないように、鰯を食べない人もいないでしょうよ)」と言い返したのだとか。紫式部は鰯の方がより美味いという意の歌も残しているそうですし、宮中では女房言葉でイワシを“御紫(おむら)”もしくは“紫(むらさき)”と呼んでいたと言われていますから、貴族全てが口にしなかったというわけでも無いようです。

イワシは大量に獲れたことや、貴族が口にしない=値段が釣り上がらないということもあり、平安期の一般庶民にとっては買いやすく美味しい魚として親しまれました。イワシ=庶民もしくは貧しい者の魚という印象は概ね平安期に確定したと考えられます。平安時代以後は武家が台頭しますが、下賤な魚とされていたこと・弱しに通じるイワシという名前は縁起も良くないとされたことから、カツオなどのように食材としての地位が引き上げられることはありませんでした。ただし江戸時代初期に至るまでにイワシ漁業自体の規模や漁法・精度は向上しており、食用・行灯用の鰯油(魚油)としても利用されるようになっていきます。

江戸時代中期には干鰯を「金肥(きんぴ)」と呼び畑の肥料としての利用も多くなっていきますから、イワシ=畑の肥やし=それを食べるのは貧乏人という認識が強くなったと考えられます。ただし江戸時代後期の節約料理本『日用倹約料理仕方角力番附』では魚類方の大関に「めざしいわし」が挙がっていますから、長屋に住み、その日暮らしであった一般庶民の人々にとっては無くてはならない食材でもあったと言えるでしょう。

鰯(イワシ)の栄養成分・効果について

栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

イワシは三大栄養素で見るとタンパク質と脂質の含有量が高く、炭水化物はほとんど含まれていません。ビタミン類ではビタミンB群やビタミンDの含有量がやや高く、ミネラルではセレンや鉄分をやや多く含みます。オメガ3脂肪酸(DHAやEPA)を豊富に含むこと・不足しがちなミネラルの補給に役立つことから健康食材としても注目されています。マイワシ生100gあたりのカロリーは169kcalで、魚類の中では中くらい~やや低めくらいのポジション。

※下記は日本食品標準成分表に記載されているマイワシの数値を元に作成しています。ウルメイワシ・カタクチイワシ・しらす干しについては後記のイワシの種類と特徴を御覧ください。

鰯(いわし)のイメージ

イワシの効果効能、その根拠・理由とは?

血液サラサラ・生活習慣病予防

あまり意識されないものの、イワシも青魚の一つで、オメガ3(n-3)系と呼ばれる不飽和脂肪酸が含まれています。オメガ3系脂肪酸の中でも血液サラサラ成分としてサプリメント等にも活用されているのが、EPA(エイコサペンタエン酸)、国際的にはIPA(イコサペンタエン酸)と呼ばれている成分。EPAは血小板の凝集を抑制する働きや悪玉コレステロール・中性脂肪の低下、血圧降下作用などが報告され健康効果が注目されています。

オメガ3含有量が多い存在としてマグロの脂身(トロ)がよく知られていますが、日常的に取り入れやすい食用魚の中でイワシは100gあたりのEPA含有量が780mgとトップクラスに入る存在です。イワシの「イワシペプチド(サーディンペプチド)」と呼ばれる成分にも血圧降下作用が報告されていますし、EPAは上記の働きから高血圧や動脈硬化予防効果が期待されている成分。このためイワシは血圧や血管の状態を正常に保ち、結果として脳梗塞や心筋梗塞の予防にも役立つと考えられます。イワシはGI値も40と低い食材ですし、オメガ3脂肪酸にも血糖値の急上昇を抑制するという報告がなされているため糖尿病予防としても注目されています。

貧血予防・冷え性対策にも

イワシは100gあたり2.1mgと魚類の中では鉄分が豊富な存在。鉄分の質という点でも吸収・利用率が高いヘム鉄(動物性鉄分)のため、鉄分補給源として鉄欠乏性貧血の予防や改善に役立つと考えられます。鉄を体内で利用するために必要な銅・丈夫な赤血球膜の生成に必要で不足すると鉄分同様貧血を起こす亜鉛などのミネラル類もバランス良く含まれていますし、造血に関わるビタミンB12も多く含んでいますよ。造血成分という点では葉酸が100gあたり11μgとやや少ないですが、野菜などと食べ合わせると貧血の予防や改善に高い効果があると考えられています。

加えてEPAなどの血液サラサラ効果から血液循環を良くする働きが期待できますし、ナイアシンやアルギニンなど血液循環をサポートする栄養素もイワシには含まれています。体液循環全体を正常に保つ働きのあるマグネシウムや代謝をサポートするビタミンB群やアミノ酸も含まれていますので、相乗して血行不良・冷え性の改善にも役立ってくれるでしょう。血液不足・血行不良に起因するめまい・頭痛・肩こりなどの不調軽減にも効果が期待できます。

疲労回復・体力アップに

イワシは糖代謝サポートしてくれるアスパラギン酸をはじめ、筋肉増強・回復促進に有効とされているBCAA(バリン、ロイシン、イソロイシン)などのアミノ酸が豊富に含まれています。アミノ酸スコアが100の食材であり、良質なタンパク質の補給源でもありますから疲労回復や体作りのサポートにも適しています。ビタミンB1こそ100gあたり0.03mgと少ないですが、脂質代謝を促すビタミンB2・タンパク質代謝に必要なビタミンB6を豊富に含んでいますよ。

またアスパラギン酸はアンモニアの無害化・排出をサポートする働きもあります。アンモニアは健康な方であれば肝臓で尿素へと代謝され尿として排泄されますが、疲労により肝臓機能が低下するとアンモニアが蓄積してしまうこともあります。この蓄積されたアンモニアは血液とともに全身へと循環し、神経伝達物質の働きを阻害する・代謝を低下させる・免疫力低下など様々な悪影響を及ぼす危険性があります。アスパラギン酸がアンモニア排出を助けることで疲労や不調を緩和し、肝臓への負担も軽減してくれると考えられています。俗に“疲労臭”と呼ばれるアンモニアによるツンとした体臭の予防や改善にも効果が期待できるでしょう。

骨・歯を丈夫に保つ

イワシは100gあたり74mgとカルシウムが比較的多く、骨や歯へのカルシウム沈着を助ける働きのあるビタミンD、カルシウムをバランスを取り合うマグネシウムも含まれています。カルシウムやビタミンD含有量は骨なども丸ごと食べられるシラスの方が圧倒的に高いので現時点で骨量などが気になる方はシラスの方が適していると考えられますが、骨粗鬆症の予防・不足しがちなカルシウム補給源としてはイワシも十分に役立ってくれるでしょう。カルシウム不足が気になる方は煮込む・揚げるなどして料理して骨ごと食べるようにすると効果的です。

ストレス対策として

イワシにはストレス緩和・精神安定などに関わる神経伝達物質で、“ハッピーホルモン”とも呼ばれるセロトニンの合成物質であるビタミンB6・マグネシウム・トリプトファンが含まれています。またイワシに含まれているビタミンBの一種ナイアシンも、セロトニンと同じ成分から体内で合成されています。ちなみにナイアシンは“快眠のビタミン”とも呼ばれていますが、これも睡眠・体内時計を司るホルモン「メラトニン」の原料なるセロトニンを確保することで、自律神経や睡眠リズムを整えることに繋がるためです。

こうした成分の補給から、鰯はセロトニン合成低下の予防し、神経伝達や精神面を正常に保つことにも繋がると考えられます。加えアミノ酸の一種であるアルギニンの血行促進作用は、肉体疲労だけではなく脳・精神疲労緩和に、アルギニンによって分泌が促される“成長ホルモン”も集中力ややる気向上・うつ病予防などに役立つと考えられています。アスパラギン酸も興奮性アミノ酸として作用してストレス耐性アップなどに役立つと言われていますから、相乗してストレス・神経疲労緩和効果が期待できるでしょう。

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記憶力向上・認知症予防

オメガ3系脂肪酸にもいくつか種類がありますが、全身の細胞に取り入れられるEPAに対して、DHA(ドコサヘキサエン酸)は脳や網膜など一部の細胞に選択的に取り入れられる性質があります。DHAは血液脳関門を通過できる数少ない栄養素の一つであり、脳内に取り込まれることで細胞膜を柔らかくする・シナプスを活性化することで脳の伝達性を高める働きがあると考えられています。また記憶を司るとされている「海馬」にはDHAが脳の他部位に比べ2倍近く含まれていることが認められており、ラットによる実験では記憶力向上効果が認められています。

DHAの脳細胞の活性化や記憶力・学習能力向上効果は特に妊娠中~小さいお子さんに対して有効とされています。しかし脳細胞の減少が始まってしまった大人であっても、記憶力・学習能力向上に繋がる可能性があるという見解もありますよ。また血管障害などによって脳の一部機能が低下した場合でも、DHAは残っている脳細胞を活性化することで認知症や記憶障害の改善にも効果が期待されています。EPA・DHAによる血液サラサラ効果は血流障害による脳血管型認知症予防にも繋がるでしょう。

マイワシのDHA含有量は100gあたり870mgと魚類の中では中~やや多いくらいのポジションです。しかしDHAやEPAは脂質であり、マグロ赤身のDHA含有量が120mgであることを考えると馬鹿にできない量。近年はイワシなどの魚に含まれているDMAE(ジメチルアミノメタノール)という、神経伝達物質アセチルコリンの原料成分も認識力・記憶力の向上やアルツハイマー型認知症予防に役立つと考えられていますから、相乗効果も期待できるでしょう。そのほかビタミンB12・B6・葉酸など不足すると集中力低下や認知症リスクが高まることが報告されているビタミンB群も含んでいます。イワシは安く手軽に食事に取り入れやすい食材でもありますから、脳の健康維持という点でも役立ってくれそうですね。

免疫力向上・アレルギー軽減にも期待

イワシなど青魚に多く含まれているオメガ3(n-3)系脂肪酸は“多価不飽和脂肪酸”に分類されますが、オメガ3以外にオメガ6(n-6)系脂肪酸というものもあります。どちらも身体を維持するのに必要な必須脂肪酸ですが、大まかにn-6系は炎症促進・n-3系は炎症抑制方向に働き、対になってバランスを保っていると考えられています。

しかし現代の日本ではリノール酸などn-6系脂肪酸の摂取に偏っているため、体内の免疫バランスが崩れてアトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギー症状を発症しやすくなっている可能性が指摘されています。イワシなどの魚からオメガ3系脂肪酸(EPA・DHA)を取り入れ脂質のアンバランスさを改善することで、リノール酸過剰によって生じるアレルギー原因物質を抑制する働きが期待されています。

そのほかイワシには免疫系の正常な機能をサポートするビタミンとして注目されるビタミンDも含まれています。ビタミンDは免疫力を調整することで花粉症や喘息などのアレルギー症状効果が期待されていますし、摂取城が多いほどインフルエンザ発症率が低いという報告もなされています。オメガ3脂肪酸とビタミンDを同時に摂ると相乗効果が得られるという説もありますので、両方を摂取できるイワシなどの青魚類は免疫力を整えるという点からも効果が期待されています。

女性の体のサポートにも

リノール酸(オメガ6系脂肪酸)摂取過剰によって生じるアラキドン酸由来の生理活性物質には、女性の生理痛の原因物質と考えられているプロスタグランジン(E2)も含まれています。γ-リノレン酸や魚油に含まれているEPA・DHAは炎症を抑える働きのあるプロスタグランジンE1、E3の生成を促すことも報告されていますので、生理痛や炎症の緩和にも役立つのではないかと考えられています。血液サラサラ効果や血管拡張効果から血行不良改善にも繋がりますので、冷えから起こる生理痛の緩和にも効果が期待できるでしょう。

加えてイワシにはエストロゲン代謝に必要なビタミンB6、正常な女性ホルモンの分泌を整える亜鉛、女性ホルモンの補助的な役割があると考えられているビタミンDやマグネシウムなども含まれています。これらの栄養素は不足によって月経不順やPMS(月経前症候群)の原因となる可能性もありますので、月のリズム・生理前後の不快感や不調が気になる方も意識的に摂取してみると良いかもしれません。精神的な不調軽減緩和に役立つ栄養素も含まれています。

むくみ・肥満予防に

イワシにはナトリウム排出を促すカリウム、カリウムの運搬をサポートしたり正常な体液循環をサポートするマグネシウムが含まれています。加えてオメガ3(EPA)による血液サラサラ効果や、ナイアシンの血行促進作用も期待できるため、総合的に体の“巡り”を整えてむくみ予防を助けてくれるでしょう。またイワシにはアンモニアの無害化・排出をサポートするアスパラギン酸・有害な重金属の排泄を促す亜鉛も含まれていますからデトックスと言う点でも効果が期待できるでしょう。

デトックスやむくみ改善もスタイルキープに繋がるほか、イワシには脂肪の代謝を促すビタミンB2やタンパク質の代謝を高めるビタミンB6、ナイアシンやビオチンなど代謝をサポートするビタミン類が豊富に含まれています。体内で結合することで高い脂肪燃焼効果が期待される「L-カルニチン」に変化するリジンとメチオニン、筋肉形成に関わるBCAAなども含まれていますから、適切な摂取と運動を組み合わせることで痩せやすい体質作り・ダイエット効果を出やすくするなども働きも期待できます。

老化予防や美肌・美髪サポートに

イワシには抗酸化酵素の原料となるセレンが豊富に含まれており、量は多くないものの抗酸化ビタミンであるビタミンEも含まれています。オメガ3脂肪酸(DHAやEPA)やナイアシンが血液循環を促すことでクマやくすみの改善・肌の新陳代謝向上効果が期待できますし、アルギニンによって分泌が促進される成長ホルモンも肌ダメージを修復する役割があります。細胞分裂を活性化させ皮膚の再生を促進する亜鉛も豊富なので、相乗して体内外の酸化ダメージ抑制や肌のアンチエイジングに役立ってくれるでしょう。

そのほかイワシは健康な皮膚や髪の毛を保持する役割があり、不足すると口内炎・脂漏性皮膚炎・ニキビ・湿疹などの原因となるビタミンB6やビタミンB2などのビタミンB群も豊富です。加えてタンパク質の中には天然保湿成分(NMF)やコラーゲンの元になるグリシン、アラニン、プロリンなどのアミノ酸も含まれています。アスパラギン酸も水分を保持して肌の潤いを保つ効果がありますから、乾燥肌や肌荒れ・角質化・ハリの低下などが気になる場合にもイワシは役立つと考えられます。血行を促すことで頭皮の状態を整え、抜け毛予防や髪のコシ・ツヤ向上にも効果が期待できます。

目的別、イワシのおすすめ食べ合わせ

鰯(イワシ)の選び方・食べ方・注意点

イワシの選び方としては目に透明感があるもの・エラのところが綺麗な赤色をしているもの・お腹にハリがあり太っているものを選ぶと鮮度が高いと言われています。売られているものに鱗はほとんど残っていませんが、しっかりと鱗が残っているかも鮮度を見分けるポイントになります。

痛みやすいので生で購入した場合はすぐにワタを取り除くなどの下処理を行い、冷蔵もしくは冷凍するようにしましょう。EPAやDHAは酸化しやすい脂質ですからなるべく早めに食べる・抗酸化物質を多く含む緑黄色野菜などと組み合わせて酸化を抑えながら摂取すると良いと言われています。

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>鰯(いわし)の雑学色々

鰯(いわし)の種類と特徴

マイワシ

地域にもよりますが、日本人には最も馴染み深いイワシとも言われているマイワシ。鮮魚としての販売が最も多い種類と言われています。特徴としては体の側面に7~8個の黒っぽい斑点があることが挙げられており、地域によってはナナツボシ(七ツ星)と呼ぶところもあるそう。

上記でご紹介した栄養成分含有量などはこのマイワシの数値を元にしていますが、ウルメ・カタクチイワシとの比較として大きいのがビタミンD含有量で、100gあたりの含有量がウルメイワシ9.0μg・カタクチイワシ4.0μgに対しマイワシは32.0μgと桁違いに多くなっています。そのほかビタミンE(α-トコフェロール)も他2つよりは多い傾向にありますが、それ以外のビタミン・ミネラル・脂質・タンパク質量は三種のイワシの中では中間くらい。

ウルメイワシ

ウルメイワシは目が大きく潤んで見えることが名前の由来とされており、マルイワシ・カタクチイワシなど日本で食用とされるイワシ類の中では最も大きくなります。ただし三種の中で最も漁獲量が少ないこと・脂が少なく淡白であることからメザシなど干魚としての利用が主となっており、鮮魚として流通することはあまりありません。

栄養価的にも脂質量が少ないためオメガ3(EPA・DHA)の含有量が低いですが、カロリーも100gあたり136ckalと三種の中で最も低くなっています。逆に全体に占めるタンパク質の割合は三種の中で最も高く、それに伴い必須アミノ酸含有量も多くなっています。低脂質・高タンパクなのでトレーニング中やダイエット中の方に適していると言えるでしょう。

ビタミンやミネラルは概ねマイワシを上回りますが、ハッキリと差が付くものはカリウムがマイワシ270mgに対してウルメイワシ440mg、レチノールがマイワシ8μgに対してウルメイワシ130μg(※100gあたり)くらいで、他はさほど大きな差はありません。ビタミンD、ビタミンE含有量はマイワシより劣ります。

カタクチイワシ

カタクチイワシは三種のイワシのうち、唯一ニシン科ではなくカタクチイワシ科に分類される存在サイズはマイワシよりも細身で小さく、地域によっては「セグロイワシ」とも呼ばれています。かつて国内ではイリコなどの加工品用、海外ではアンチョビの原料としても知られていましたが、近年は漁獲量の落ちたマイワシよりもカタクチイワシのほうが“イワシ”の主流となっているとも言われています。痛みやすいので注意が必要ですが、刺し身などの生食をはじめマイワシと同じように様々な料理法で利用できます。

栄養価的には三種のイワシの中で最も脂質量が高く、カロリーも100gあたり192kcalと高くなっています。脂質が多いですがオメガ3(EPA・DHA)の含有量も高くなっており、特にEPAは100gあたり1100mgとマイワシの約1.5倍になっています。オメガ3脂肪酸を摂取したい方や、血液サラサラ効果を期待する場合には適していると言えます。

逆にタンパク質・アミノ酸含有量は三種の中で最も低く、ビタミン・ミネラル含有量は概ねマイワシと同等となっています。ただし鉄分含有量が100gあたり0.9mgとマイワシ・ウルメイワシよりも大きく劣りますので鉄分補給源として取り入れたい場合は別のイワシを選んだほうが良いでしょう。

シラス(半乾燥)

シラスは100gあたりのカロリーが206kcal、イワシ類(生魚)と比較した場合はタンパク質量が非常に多くなり、脂質量は少なくなります。三大栄養素の割合としてはウルメイワシに近いですが更に高タンパク・低脂質となり、アミノ酸量はマイワシ・カタクチイワシの約2倍近い量になります。ビタミン類ではビタミンB1と葉酸・ビタミンA(レチノール活性当量)が高くなり、ビタミンB2,6,12は生魚よりも低くなります。

ミネラルでは100gあたりのカルシウム含有量が520mgと圧倒的に多く、カリウム・マグネシウムなども多くなっています。ただし鉄分含有量はカタクチイワシよりも低い100gあたり0.8mgとなっていますので、ミネラル全てが多いというわけではありません。また100gあたりのナトリウム含有量が2600mgとかなり多いので、むくみやすい方や高血圧気味の方は食べ過ぎに注意したほうが良いでしょう。

※食品成分表(七訂)の「しらす干し/半乾燥品」の数値を元にしておりますが、シラスは3種のイワシ以外にもアユやニシンなどの稚魚も含まれています。このため原料・製造メーカー等によって違いはあるかと思います。