とうもろこしの特徴と栄養成分・期待できる健康メリットとは

食べ物辞典:とうもろこし

優しい甘みとみずみずしさが美味しいトウモロコシ。夏の風物詩でもありますが、現在は冷凍コーンなどもあり通年口にすることが多い存在ですね。日本では主に野菜として食べられていますが、完熟した種子は穀物(主食)としても食されています。精白小麦粉よりもビタミン・ミネラル・たんぱく質が多くグルテンを含まないことから、日本でもコーンミールを使ったパンなども販売されていますね。そんなトウモロコシの栄養素や期待される健康メリット、注意点について詳しくご紹介します。

とうもろこしのイメージ画像:食べ物辞典トップ用

和名:トウモロコシ(玉蜀黍)
英名:(米)corn/(英)maize
学名:Zea mays

とうもろこしとは

トウモロコシのプロフィール

ほんのりとした甘みと、鮮やかな黄色が目を引くトウモロコシ。日本では枝豆などと同じく夏野菜という印象の強い食材ですが、植物としてはイネ科に分類され、トウモロコシも“穀物”として扱われています。粒のまま加熱して食べるだけでなく、南米ではトウモロコシをすり潰して作るパンの一種トルティーヤが伝統的に食べられていますし、小麦粉のように粉末化したコーンミールも世界中で販売されています。南米やアフリカなどでは主食(炭水化物源)として重要な地域もあり、トウモロコシは米・小麦と共に「世界三大穀物の一つ」とも称される存在です。日本ではお米の代わりにトウモロコシを食べることは少ないですが、加工品のコーンフレークはやはり主食として朝ごはんに親しまれているのではないでしょうか。

そのほかにトウモロコシは動物の飼料としての消費される比率も非常に多く、近年はバイオプラスチックや接着剤などの化学製品の原料にも使用されています。人間の口に入るものとしてもサラダオイルに使われるコーン油・料理に使うコーンスターチの製造にも欠かせないものですし、バーボン・ウイスキーを筆頭としたお酒・健康茶・漢方薬などの原料としても使われています。

そんなトウモロコシはイネ科トウモロコシ属のうち学名Zea maysという種。トウモロコシ属のいくつかの植物の中で食品用や工業用として使い分けられているのではなく、同じ種(Zea mays)の中では様々な用途に適するように栽培品種が多く作られています。数多くあるトウモロコシの品種は澱粉の量によって亜種もしくは変種として分類されることもあり、この中で私達が野菜として食べているトウモロコシは“甘味種/スイートコーン”と呼ばれる品種系統(Zea mays var. saccharata もしくは Zea mays var. rugosa)です。

スイートコーンは更に果肉の色によって甘味黄色粒種(ゴールデンコーン)・甘味白色粒種(シルバーコーン)・甘味バイカラー粒種と3タイプに分けられることもあります。日本で最もオーソドックスと言えるのが甘味黄色粒種系で、品種としては味来や生食も可能な可能ゴールドラッシュ・サニーショコラなどがあります[1]。ちなみに、サラダ野菜として使われるヤングコーンも小さい品種ではなく、甘味種の2番目雌穂を小さいうちに収穫したものです。

近年は糖度が高く生食も可能なピュアホワイトやホワイトショコラなどの甘味白色粒種、黄粒と白粒の混じり合ったカクテルコーンや甘々娘などもスーパでも見かけるようになりましたね。野菜としてスーパーなど販売されてはいませんが、家庭菜園用としては一粒一粒が別の色に色付くレインボーコーン(グラスジェムコーン/ジュエリーコーン)も人気。数珠繋ぎのビーズのようにも見える半透明でカラフルな実はずっと飾っていたいほど綺麗ですよ。

日本で標準的に使われているトウモロコシという呼び名は、唐(この場合は中国ではなく外国を意味する)から伝わった“もろこし”によく似た植物であることが由来とされています。ちなみに、もろこしはお菓子の方ではなくイネ科モロコシ属の植物でタカキビ(高黍)とも呼ばれているもの。アフリカやインドなど暖かい地域では穀類として重要な作物の一つで、国内でも沖縄県では伝統料理などに使用されています。

筆者の故郷北海道ではトウモロコシを「とうきび」と呼びますし、地域によって「南蛮黍(なんばんきび)」などの呼び名もありますが、こちらも“外国からきた黍(キビ)の仲間”が呼び名の由来。また、コーンフレーク・コーンポタージュ・ポップコーン・コーンブレッドなどの言葉があることから英語でトウモロコシは「コーン(corn)」と言うように思いがちですが、イギリス英語ではトウモロコシを「メイズ(maize)」と呼びます。コーンという言葉は元々“穀物”を指す言葉だったため、イギリス英語だとコーンは穀物の意味になってしまうのだとか。対してアメリカやオーストラリアでは日本と同じくコーン=トウモロコシを指す言葉として使われています。

トウモロコシの選び方・保存方法

とうもろこしは手に持った時にずっしりと重いもの・切り口が乾燥していないものを選びます。鞘のような外側の皮が外された状態で売っている・皮の隙間から実(粒)が見える場合であれば、粒の大きさが均一で色がきれいなもの・粒一つ一つにパンとハリのあるものが新鮮です。ただし、生のトウモロコシは乾燥しやすく鮮度も落ちやすい食材。外皮を取ってしまうと更に鮮度の落ちるスピードが上がってしまため注意が必要です。

皮付きで販売されている場合であれば、まず外皮の緑色が鮮やかなで瑞々しいか・虫食いの穴が無いかを確認しましょう。外皮越しでも手で触るとなんとなく粒の大きさとハリは分かりますので、柔らかく撫でるようにして確認してみてください。また、頭の部分から出ている「とうもろこしのヒゲ(コーンシルク)」と呼ばれるタッセルのような部分もトウモロコシを選ぶ際のチェックポイント。ヒゲがフサフサで明るい茶色または金色・少し湿り気があり甘い香りがするトウモロコシは新鮮です。また、トウモロコシのヒゲは雌しべであり、ヒゲの本数は実(粒)の数と同じである=ヒゲが沢山あったほうが実が多いとも。

トウモロコシは鮮度が落ちやすく、外皮を剥いでしまうとすぐに乾燥し味も抜けてしまいます。皮付きの状態であっても美味しい状態をキープするためには収穫後24時間以内には加熱するのが理想的との声もあります。ぐちゃぐちゃに腐ってしまうわけではないので数日間置きっぱなしにしている方もいらっしゃいますが、味のためにはすぐに茹でる・蒸すなどの下ごしらえをすることをお勧めします。筆者の地元のおばあちゃん達は収穫後24時間というよりも、家にトウモロコシが入った瞬間から下茹での準備を始めるくらいの勢いです。

とうもろこしの栄養成分・効果について

栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

トウモロコシは国によっては主食として食べられているように、主要な栄養成分は炭水化物(糖質)です。ただし精白米や小麦などと比較するとビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンEなどのビタミン群、カリウム、マグネシウムなどのミネラルが多く含まれています。野菜、特に緑黄色野菜と比較してしまうとビタミン類の含有が低いように感じてしまいますが、穀物として見ると様々な栄養素を含んだ優秀な食材と言えます。エネルギー源としてもすぐれていますし、食物繊維含有量が多いことから糖尿病予防やダイエットの観点からも注目されています。

とうもろこし/コーンスープイメージ

とうもろこしの効果効能、その根拠・理由とは?

栄養補給・疲労予防に

トウモロコシはビタミン類、特に代謝に関わるビタミンB群が豊富な穀物。特にビタミンB1は生100gあたり1.5mgと、野菜類の中ではトップクラスの含有量玄米ごはんと大差ない含有量です。ビタミンB1は炭水化物をエネルギーへと変換する際に必要な補酵素(チアミンピロリン酸)の役割を担っていますから、糖質のエネルギー代謝を助けることで体にエネルギーを行き渡らせたり疲労回復の手助けをしてくれるでしょう。鉄分やマグネシウムなどのミネラル補給にも繋がるので、栄養バランスを整えることで疲れやすいさの予防に繋がる可能性もあります。

貧血予防・妊娠中の栄養補給にも

トウモロコシは生100gあたり0.8gと鉄分含有量が多い部類の食材でもあります。鉄分補給に取り入れられることもある玄米でも100gあたり0.6g、私たちが普段口にしている白米のごはんと同グラムで比較すると約8倍の鉄分を含んでいます。とうもろこしをお米に混ぜ“とうもろこしご飯”などにして食べることで、自然に不足しがちな鉄分を補給することが出来ますね。加えて、トウモロコシには造血に必要とされる亜鉛や銅などのミネラルも少しずつ含まれています。バランスよくこうしたミネラルの補給が出来るので、ごはんやサラダなどに加えることで貧血予防に役立ってくれるでしょう。

また、トウモロコシは葉酸も100gあたり95μgと比較的多く含まれています。葉酸は神経細胞の代謝・成長の補助・赤血球を作るのを助ける作用があり、妊娠中のママさんにとっては胎児の正常な発育に不可欠な栄養素。このため厚生労働省が発表している『日本人の食事摂取基準』記載の葉酸推奨量も、妊娠中や授乳中の場合は付加量が設定されています。レシピに加えると葉酸の補給にもなり、そのほかのビタミンやミネラルも摂取できることからトウモロコシは妊娠中の栄養バランスサポートにも役立ちます。

便秘予防に

トウモロコシは生100gあたり3.0gと食物繊維を多く含む食材でもあります。野菜として見ると群を抜いて多いという程でもありませんが、穀物であれば炊いた白米が100gあたり0.3g、玄米でも1.4gですから多い部類と言えるでしょう。特に一つ一つの実を包んでいる“薄皮”は不溶性食物繊維の一種であるセルロースが多く含まれており、食物繊維の宝庫とと称されることもあります。セルロースは大腸で水分を吸収し数倍から十数倍に膨らむ性質があり、便のかさを増やすことで腸を刺激し、蠕動活動を促してくれるでしょう。このためトウモロコシは便秘予防に役立つと考えられます。

肥満予防に

茹でたトウモロコシ100gあたりのカロリーは99kcalで、平均的なサイズであれば丸々1本食べて150kcal~170kcal程度です。精白米のご飯は100g(子ども用茶碗に約1杯)約160kcal、大人用の茶碗1杯の場合は250~280kcalくらいと言われていますから食べごたえの割にはさほど高カロリーではありません。精白米のGI値(血糖上昇率)81に対し、とうもろこしは70。野菜と考えると微妙なところですが、主食として置き換え・ご飯のカサ増しに利用すればダイエットにも利用できるでしょう。

トウモロコシはビタミンやミネラルも幅広く含んでいますので、ダイエット中の栄養の偏りを予防することにも役立ってくれるでしょう。特に代謝に関係するビタミンB群が多く含まれていますから、食事と運動による健康的なダイエットのサポートにも適しているでしょう。セルロースなどの不溶性食物繊維は水を吸って膨らみ、消化されにくいことから満腹感を維持して食べ過ぎ予防・体重管理サポートするのに役立つ可能性もあります[2]。

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夏バテ・むくみ予防にも

トウモロコシは生/ゆで共に100gあたり290mgと比較的カリウムを多く含んでいます。野菜として見れば中堅くらいのポジションではありますが、同グラムで比較するとキュウリトマトよりもカリウム含有量は豊富。カリウムは汗と共に排出されることから、夏場に失われやすいミネラルの一つに数えられます。とうもろこしを茹でる時には若干お塩も入れますから、夏バテや脱水の予防にも役立ってくれるでしょう。夏バテ時に不足しやすいビタミンB1やビタミンB6などのビタミンB群も補うことが出来るので、旬でもある夏場に嬉しい食材と言えますね。

また、カリウムは電解質として機能し、ナトリウムとバランスを取り合うことで体液バランスを正常に保つ働きがあります。カリウムはナトリウムを体外に排出しやすくする働きもあるため、適切に摂取することでナトリウム過多によるむくみを改善する可能性もあります[3]。夏場に起こるカリウム不足によるむくみ、塩辛い食事を食べた後などのむくみ予防にも効果が期待できるでしょう。

美肌・美髪維持にも

トウモロコシはビタミンやミネラル・ポリフェノールなどを特別多く含んでいる食材ではありません。しかし、幅広い栄養素を含んでいること、皮膚の健康維持に関わるビタミンB群の含有量が野菜/穀類類の中でも豊富な部類のため、皮膚を健やかに保つ手助けが期待できるでしょう。ビタミンB6はたんぱく質の代謝に不可欠で、不足すると皮膚炎を起こしやすくなることが指摘されていますし、葉酸の不足症状にも肌荒れが挙げられています。とうもろこしだけで必要量を全て摂取できるわけでありませんが、不足を緩和することで肌荒れ予防に繋がります。

ちなみに、トウモロコシはビタミンEやゼアキサンチン・ルテインなどのカロテノイドなどが豊富で、抗酸化物質の補給に優れているという説もあります。しかし私たちが野菜として普段食べているスイートコーン(未熟種子)の場合、日本食品標準成分表に記載されている生100gあたりのビタミンE(α-トコフェロール)含有量は0.3mgと多くありません。ルテインなどの項目はありませんが、β-カロテンも緑黄色野菜と比較するとかなり控えめ。海外のサイトや論文では穀物としてのトウモロコシ(完熟種子)もしくはそれを乾燥・粉末化したコーンミール[5]が対象として使われています。野菜感覚で食べているスイートコーンについては、あまり期待しない方が良いでしょう。

目的別、とうもろこしのおすすめ食べ合わせ

とうもろこしの食べ方・注意点

トウモロコシの注意点

トウモロコシにはグルテンが含まれていないことから、グルテンフリー食材としても使われています。しかし“コーングルテン”とも呼ばれるグルテンに関連するゼインというたんぱく質が含まれており、セリアック病の方を対象とした研究では稀にコーングルテンでも炎症反応の兆候を示したことが報告されています[4]。完全に安全性が認められているわけではないので注意しましょう。また、トウモロコシはイネ科植物のため小麦アレルギーなどイネ科植物にアレルギーがあると、アレルギー反応を起こす可能性もあります。

そのほか、粒皮(一粒一粒を覆っている薄皮)部分は不要性食物繊維が多い=消化が悪いというデメリットもあります。過敏性腸症候群(IBS)やFODMAP不耐性など胃腸トラブルのある方は摂取量に注意してください。健康な方でもよく噛まずに大量に食べたり、冷たい飲み物と一緒に摂取するとお腹を壊す可能性があります。

トウモロコシ茶について

トウモロコシは健康茶の原料としても使用されています。とうもろこしのお茶原料部位別に実の部分を使った通称「コーン茶」と、ヒゲを使った通称「ヒゲ茶」の2つがあります。このうちヒゲ部分は西洋ではコーンシルク、漢方では南蛮毛(ナンバンゲ)もしくは玉米髭(ギョクベイシュ)と呼ばれ、民間療法の中で生薬としても利用されている存在。近年は利尿作用や血圧降下作用を持つ可能性が報じられたことでデトックスティー/ダイエットティーとしても飲まれています。

しかし、トウモロコシの「ヒゲ」部分は血中のカリウムの量を減らす働きがある[1]ため、特に妊娠中・授乳中の方は摂取しない方が良いことも指摘されています。もちろんそれ以外の方でも過剰摂取は避けましょう。また、ハーブや生薬として使われていた存在で、何らかの薬理作用を持つ可能性もあります。医薬品の作用を妨げたり、過小に働かせてしまう危険性もありますから、薬を飲まれている方はまず医師・薬剤師に相談しましょう。

【参考元】