ピーナッツ(落花生)の特徴と栄養成分・期待できる健康メリットとは

食べ物辞典:ピーナッツ

ピーナツは不飽和脂肪酸を中心とした脂質・たんぱく質が豊富な食材。高脂質なことからかつては「体に悪い」「太る」などのネガティブイメージを持たれがちでしたが、近年は糖質量が少ない低GI食材としてダイエットにも取り入れられています。抗酸化作用を持つビタミンEやレスベラトロールを含むことから様々なメリットが期待されているピーナッツについて、栄養価や期待されている効果とエビデンス、注意点などについて詳しくご紹介します。

落花生/ピーナッツのイメージ画像:食べ物辞典トップ用(slowbeauty)

和名:ラッカセイ(落花生)/ナンキンマメ(南京豆)
英名:peanut/groundnut
学名:Arachis hypogaea

ピーナッツ/落花生とは

おやつとしてもおつまみとしても美味しいバタピーを筆頭に、チョコレート菓子やピーナッツバターとしてもお馴染みのピーナッツ。そのまま食べるローストピーナッツ、豆菓子・チョコレートや焼き菓子類など、主食というよりはスナックやスイーツに使われることが多い食材ではありますが、食事系メニューにも使用できる存在です。静岡県などで食べられていた茹で落花生は全国的に普及していますし、沖縄の“ジーマーミ豆腐(ピーナッツ豆腐)”や千葉県の“味噌ピー(ピーナッツの味噌炒め)”などの郷土料理もありますね。

ピーナッツは和名で落花生(ラッカセイ)とも呼ばれます。基本的にはどちらもマメ科ラッカセイ属に分類される学名Arachis hypogaeaという植物もしくはその種子を指す言葉ですが、日本独自の呼び分けとして殻付きのものは落花生・殻をむいたものもしくは炒ったものをピーナッツと呼び分けることもあります。和菓子もしくは中華料理の原料としては殻がなくても落花生と呼ばれますから、用途やニュアンスにもよりますが。

そのほか沖縄県での呼び方「ジーマーミ」も全国的に知られていますし、地域や年代によっては唐人豆や異人豆と呼ぶ方もいらっしゃいます。英語でもピーナッツ(peanut)だけではなく、和名の落花生と同じような意味合いで“groundnut”もしくは“ground peas”と呼ばれたり、アメリカではコンゴ語から変化した“goober”という呼び方をする方もいらっしゃいます。

ちなみに、ピーナッツという言葉の語源はPea(えんどう豆)+nut(木の実/種実類)。ナッツと付くためアーモンドなどと同じく木の実であるようにも感じますが、ピーナッツはえんどう豆大豆と同じくマメ科の一年草。食べているのはその種子部分なので、厳密には豆類と言ったほうが的確な存在です。しかし、食味や栄養価の関係からナッツの仲間として扱われることが多くなっています。

英語でグラウンドナッツ(groundnut)・和名で落花生とも呼ばれるように、ピーナッツの特徴は地中に実をつけること。と言っても塊茎野菜のように初めから地中に実るわけではなく、落花生の花が受粉・受精したのち子房柄とよばれる蔦が下に伸びて土に刺さる→土の中に入り込んでから膨らんで殻付きの実が作られる“地下結実性”と呼ばれるタイプ。花が落ちるようにして地中に実を生む=落花生という和名は言い得て妙なのではないでしょうか。

ちなみに、ピーナッツはアメリカ大陸が原産の植物。起源は南アメリカとされていますが、紀元前のうちにはメキシコにも伝わりスペイン人が到着以前からメソアメリカで栽培も行われていました。生育に必要な水の量が少ないことから現在はアフリカや南アジアでもピーナッツが多く栽培されていますし、日本も含め世界各地で栽培されている作物となっており、栽培品種を含めると1600種以上が存在しているとも言われています。

ピーナッツの大まかな品種群としてはバージニアタイプ・スパニッシュタイプ・バレンシアタイプの3つ、もしくはランナーグループとテネシーグループを加えた5系統にわけられることが多いそう。このうち日本で殻付き落花生やバターピーナッツ用として栽培されているのは主にバージニアタイプ[1]。それぞれ品種によって更に特徴は異なりますが、パージニアタイプ全体としては粒が大きめであることが特徴とされています。国内ピーナッツの生産量は1位が千葉県、2位が茨城県。この関東2件が国内生産量の大半を占めています。

ピーナッツは世界的に見てもそのまま食べる・スナック系への使用が多い食材。ですが、東南アジアでは煮込みやカレー・ディップソースに活用されています。そのほか東アフリカやラテンアメリカでも食事メニューにもピーナッツを使うそうですよ。手軽なピーナッツ活用法としては、サラダにトッピングする・フライの衣に混ぜるのレシピも多くありますね。アメリカではスムージーにピーナッツバターを入れる方も多いようです。そのまま食べるだけではなく、お料理やドリンク作りにも活用してみてください。

ピーナッツの栄養成分・効果について

栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

植物的に見るとピーナッツは“ナッツ(木の実)”ではなく“豆”ですが、食材としてしての食味や栄養価ではナッツに分類されることが多い存在です。多く食べられている乾燥状態のピーナッツの場合、100gあたりの560kcal。数値で見ると非常に高カロリーに感じますが、1日のピーナッツ摂取上限量は30粒程度。おおよそ25~30g程度ですからカロリーも150kcal前後と言ったところ。なお、ピーナッツの栄養成分含有量は『日本食品標準成分表』のうち“らっかせい/乾、大粒種”を参考にさせて頂いています。

ピーナッツは脂質が多いことから健康的ではないイメージを持たれていた時期もありましたが、近年は不飽和脂肪酸の比率が高く、糖質が少ないことから健康維持にも役立つ食材として評価されています。たんぱく質や食物繊維・ビタミンEなどの補給にも役立ってくれますよ。また、有効性は断定されていないものの様々な健康メリットを持つ可能性が示唆されているポリフェノール“レスベラトロール”を含んでいることも注目されています。

ピーナッツイメージ画像

ピーナッツ(落花生)の効果効能、その根拠・理由とは?

抗酸化物質の補給に

必須栄養素でみるピーナッツの特徴としては、ビタミンEを豊富に含んでいることが挙げられます。ピーナッツのビタミンE(α-トコフェロール)含有量は100gあたり11.4mgとアーモンド(31mg)には敵わないものの、クルミピスタチオなどと同グラムで比較すると10倍近い量が含まれています。20粒を18.5gとして計算すると20粒食べるだけでも2.1mgのビタミンEが補給できることになります。20粒でアボカドを半分食べるよりも多くのビタミンEが摂取できることを考えると、手軽ビタミンE補給源と言えますね。

ビタミンEは抗酸化作用を持つことが認められており、メディアでは「若返りのビタミン」などと称されることもある栄養素。ピーナッツはビタミンE以外に、レスベラトロールも含まれていることが報告されています。レスベラトロールは赤ワインなどにも含まれているポリフェノールの一種で、抗酸化力を持つことが示されている成分です[2]。ビタミンEとレスベラトロールが補給できることから、ピーナッツは過剰な活性酸素の発生を抑制し、若々しやさ健康を維持する手助けをしてくれるのではないかと考えられています。

生活習慣病予防にも期待

ピーナッツは三大栄養素の中で、脂質を非常に多く含んでいます。このためネガティブなイメージを持たれがちでしたが、近年は含まれている脂質の大半が不飽和脂肪酸であることから再評価されています。研究ではピーナッツやアーモンドなどのナッツ類の摂取量が多いほど、冠状動脈性心臓病のリスクが低くなることも報告されています。2009年『Journal of Nutrition』に発表された論文では“ナッツ消費量の増加がLDLコレステロール、非HDLコレステロール、総コレステロールの低下など血中脂質プロファイルデータの改善と優位に関連する”ことが紹介されています[3]。

ピーナッツが中性脂肪やコレステロールなどを改善する可能性があるのは、脂質だけではなく、ビタミンEやレスベラトロールなどの抗酸化物質・ビタミンやミネラルなどの栄養素補給という総合的な部分もあるのでしょう。レスベラトロール単体にも心血管保護作用、抗血小板作用、血糖降下作用を持つ可能性が報告されています[2]ので、合わせて高血圧や動脈硬化などの心疾患予防の予防をサポートしてくれると考えられますね。

そのほかピーナッツはコレステロールを低下させる働きがあることから、胆石の予防に役立つのではないかという説もあります。こうした作用については研究数が不十分であることから有用性が認められているわけではありません。が、ピーナッツは糖質含有量が低く血糖値の上昇が急激ではありませんし、現在はナッツの摂取量が多くても体重増加が大きくなることはないとの考え方が有力視されています[4]。適量の摂取であれば、生活習慣病の予防に取り入れてもデメリットはないでしょう。

お酒のお供に

ピーナッツにはアセトアルデヒド分解に関わるナイアシン(ビタミンB3)が多く含まれています。100gあたりのナイアシン含有量は19.5g、20粒(18.5g)食べるだけでも3.6mgと厚生労働省が発表している『日本人の食事摂取基準』記載の成人女性1日あたりのナイアシン推奨量の1/3が補給できるほど。

可能性段階ではありますが、レスベラトロールにも肝臓の脂肪分解促進作用が報告されています。ピーナッツにはたんぱく質なども含まれていますから、ナイアシンの補給と合わせてお酒のお供として食べることで二日酔い予防や肝臓の負担軽減にも繋がる可能性があります。ピーナッツはお酒のお供としても定番。塩を効かせ過ぎたものは要注意ですが、組み合わせとしては理にかなっているのですね。

血糖値対策・肥満予防

ピーナッツはかつて脂質が多いことから肥満の原因になりやすいと考えられ、ダイエット中には避けられやすい食品の一つでもありました。しかし近年は脂質ではなく糖質の摂取過多が肥満の原因とする説が主流となっており、糖質含有量が低く低グリセミック指数(GI)食材であるピーナッツはダイエットサポートに適した食材として再評価されています。資質以外にタンパク質や食物繊維もしっかりと含まれていることから、血糖値が気になる方の食事にも適しているでしょう。

加えてレスベラトロールにも血糖降下作用[2]を持つ可能性も示唆されていますし、11人の健康な肥満男性を対象とした研究では“レスベラトロール補給は、カロリー制限の効果を模倣して、肥満のヒトに代謝変化を誘発する”ことが示されています[5]。こうした発表からレスベラトロールは代謝向上・脂肪蓄積予防効果が期待できる成分として、ダイエット系サプリメントなどにも配合されていますね。

レスベラトロールの作用についてはエビデンスが少なく有効性が断定されたものではありませんが、低GIであることと合わせて血糖値ケアや肥満予防・ダイエットサポートに役立つ可能性はあります。とは言え高カロリー・高脂質食品ですから過剰摂取には注意が必要。1日のピーナッツ摂取量は30粒程度にし、よく噛んで食べるようにしましょう。

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記憶力・メンタルサポートにも

ピーナッツはアセチルコリンという神経伝達物質の材料になる、コリンやレシチンなどの成分を含んでいます。アセチルコリンは記憶力や認知力の保持・向上と関係すると考えられている物質のため、アセチルコリンの生成を活性化することで記憶力アップや認知症予防にも効果が期待されています。健康な高齢者を対象としたレスベラトロールの研究でも、レスベラトロールの摂取による記憶能力の改善が見られたことが報告されています[6]。こうした成分を含むことから、ピーナッツは記憶力保持・向上をサポートする可能性がある食材としても注目されています。

また、またレシチンにはビタミンB1の吸収を助けることで脳への影響を確保し、ストレスやイライラを軽減する働きも期待されています。ピーナッツには糖代謝に関わるビタミンB1や抗ストレスホルモン(副腎皮質ホルモン)や神経伝達物質の合成に関わるパントテン酸、アンモニア分解を促すことで脳疲労の回復促進作用が期待されるグルタミン酸なども含まれています。こうした成分の補給から、ストレス耐性を高めたり疲労感を軽減し、心の健康維持にも期待できるでしょう。

女性特有の不調軽減にも期待

ピーナッツに含まれているポリフェノールのレスベラトールは抗酸化作用があるだけではなく、大豆イソフラボンなどと同じく女性ホルモン(エストロゲン)と似た構造を持つことが分かっています。エストロゲン受容体アゴニスト作用を示す植物性エストロゲンであることが示した研究もある[7]ことから、エストロゲンの分泌低下によって引き起こされる女性の更年期障害軽減に役立つのではないかという期待も寄せられています。

また、植物性エストロゲンには、エストロゲンが過剰に分泌されている時には幾つかのエストロゲン受容体を埋め、全体的なエストロゲン作用を弱める(抗エストロゲン作用)によってエストロゲンとプロゲステロンのバランスを保つ働きも期待されています。このため若い女性の月経不順・少量月経・生理痛・月経前症候群(PMS)など、ホルモンバランスの乱れによって起こる月経トラブルの軽減をサポートする可能性があるという説もあります。

ただし、レスベラトロールはエストロゲン作用をはじめとした様々な機能についてまだ研究段階の成分。有効性を評価するには研究・エビデンスが不十分な状態ですし、有効性を示したという研究発表だけではなく否定的な見解もあります。フィトエストロゲンのの過剰摂取は乳がんなどのエストロゲン依存性疾患の発症リスクを高める危険性も指摘されていますから、期待しすぎ健康維持の一環として適量を取り入れてみる程度にしましょう。

美肌・美髪保持に

ビーナッツはビタミンEが豊富で、抗酸化作用を持つポリフェノールのレスベラトロールも含まれています。こうした抗酸化物質の補給によって、活性酸素の増加による酸化ダメージを軽減し皮膚や髪など外見を若々しく健康に保つ働きが期待できます。また、ビタミン類では100gあたり92.3μgとビオチンも豊富に含まれています。ビオチンは皮膚・粘膜の新陳代謝に関与するビタミンB群の一種で、不足すると肌荒れやニキビ・皮膚炎症を起こしやすくなります。ビオチンの補給からも肌荒れを予防して、美肌保持のサポートに繋がりますね。

目的別、ピーナッツのおすすめ食べ合わせ

ピーナッツの選び方・食べ方・注意点

ピーナッツに含まれているレスベラトロールは、剥いて捨てられてしまうことも多い渋皮部分に含まれていると考えられています。ビタミンEも渋皮部分が豊富ですので、抗酸化作用を期待する場合は渋皮付きで食べたほうが良いでしょう。

ピーナッツの注意点

落花生(ピーナッツ)はアレルゲンの一つであり、重篤な食物アレルギー症状(アナフィラキシー)を引き起こす可能性が高いことが知られています。特にお子さんに発生しやすいとも言われていますから、食べさせる際には注意して見守るようにして下さい。ピーナッツアレルギーでの死亡事例もあるそうですので、食後に違和感を感じた場合は摂取を止め、医者の診断を受けるようにしましょう。

「ピーナッツを食べるとニキビが出る」と思われがちですが、アレルギーがない限り適正量の摂取はニキビに直結しないというのが現在は定説となっています。もちろん食べ過ぎた(脂質摂取過剰)場合には皮脂分泌が増えてニキビになる可能性も否定できませんし、胃腸に負担もかかるので肌荒れの原因となることもあります。おつまみコーナーで売られている味付きのもの・バターピーナッツなど油や調味料が加えられたものは控え、食べ過ぎに注意するようにしましょう。

レスベラトロールはエストロゲン作用を持つ可能性があることから過剰摂取は避けましょう。サプリメントなどと併用せずピーナッツなどの食品を通常量摂取するには問題がないと言われていますが、乳ガンなどのエストロゲン依存性疾患がある方や妊娠中・授乳中の方は注意が必要です。また腎障害を悪化させる可能性も指摘されていますので、不安がある方は医師に相談のうえ利用して下さい。

殻の再利用も…

ビーナッツ(落花生)の殻はシックハウス症候群の原因になる「ホルムアルデヒド」を吸着する可能性があることが報じられています。吸着性が高いので脱臭剤・消臭剤としても利用することが出来ます。向いて捨てるだけだと勿体なく感じる……という場合は殻を細く砕き、薄い紙に包んで置いておいてみて下さい。

【参考元】