キクラゲ(木耳)とその栄養成分・効果効能
|食物繊維とビタミンDが豊富! ダイエットにも♪

食べ物辞典:キクラゲ

コリコリした食感と少し透明感のある見た目が特徴的なキクラゲ。味や香りが薄く、見た目から呼び名の通りにクラゲの仲間のようにも感じられますが、れっきとしたキノコの一種です。栄養面では他のキノコ類と同じく低カロリーで、キノコ類の中でも食物繊維とビタミンDを豊富に含むことが特徴。便秘や肥満予防に役立つほか、ビタミンDやβ-グルカンの補給源として免疫機能をサポートしてくれる食材としても注目されていますよ。そんなキクラゲについて、種類や歴史、栄養価や期待されている効果などを詳しくご紹介します。

キクラゲ/木耳のイメージ画像:食べ物辞典トップ用

和名:きくらげ(木耳)
英語:Jew’s ear mushroom/jew’s ear fungus

きくらげのプロフイール

キクラゲとは

コリコリとした独特の触感があり、中華料理の炒めものにもよく使われているキクラゲ。一昔前までは乾燥させたものがほとんどでしたが、近年は生キクラゲも多く流通しています。プリプリとコリコリの中間のような食感から好き嫌いが分かれる食材ではあるものの、キノコ独特の香気が少なく味も弱いので「キクラゲなら食べやすい」という方もいらっしゃいますよ。

見た目も呼び名もキノコなのかクラゲなのかと迷うキクラゲですが、朽木に寄生するキノコの一種。キクラゲはシイタケなどのように軸とカサで形成される、一般的なキノコのビジュアルとは異なる外見ですよね。キノコの絵を書いてください、と言われた場合に多くの人が描く“キノコ”とはかなり違っていますよね。キクラゲという呼び名はクラゲのような食感を持つことが由来、漢字で“木耳”と描くのは木から耳が生えているような見た目が由来となっています。

キクラゲの英名はJew’s ear mushroomもしくはJew’s Ear FungusこのJew’s Earは“ユダヤ人の耳”と訳せますが、実はユダヤとは何の関係もなく、キリストの十二使徒の一人であるイスカリオテのユダが語源。ユダはイエス・キリストを裏切った後に木で首を吊って自殺したと伝えられています。キクラゲの姿をユダに例えて命名したものが、英語に変換する際に誤訳されたという説が有力視されています。近年は社会的な理由から“jelly ear”や“Wood Ear mushroom”など差し障りのない呼び方をする方も増えているようです。

ちなみにキクラゲを食用とするのは中国や韓国・日本など東アジアが中心。しかしキクラゲ自体は広い範囲に分布しており、ポーランドやアフリカの一部地域でも食べられています。また食用きのことしては評価されていない場合でも、古くは民間医薬として利用していた地域もあります。意外と世界的にポピュラーなキノコと言えるかもしれませんね。

キクラゲの種類について

キクラゲと呼ばれるキノコは、大きく白と黒の二種類に分かれています。単にキクラゲと言った場合には、このうち炒め物やスープ・酢の物など様々な形で使用されている黒褐色をしたキクラゲを指すのが一般的。白キクラゲは身が薄く透き通るような色と形をしており、中華料理ではスープやデザートなどに使用されているものです。この2タイプのキノコ、実は分類上は黒キクラゲはキクラゲ科キクラゲ属白キクラゲはシロキクラゲ科シロキクラゲ属と離れた位置付けでもあります。

見た目が明らかに異なる白キクラゲはさておき、黒っぽい色をしていてもキクラゲ(黒きくらげ)とアラゲキクラゲ(裏白きくらげ)と呼ばれる二つの種類があります。アラゲキクラゲは別名“裏白”とも呼ばれるように傘の裏側に白っぽい細かい毛がみっしりと生えていることが特徴で、肉厚でコリコリと弾力が強いことからラーメンのトッピングなどに使われています。キクラゲは薄めでアラゲキクラゲに比べるとプリプリとでも言うような少し柔らかめの食感。この二種は販売時には区別されずどちらも「キクラゲ」とだけ書かれている場合が多いようです。

キクラゲの歴史

キクラゲ類は広範囲に分布していますが、キノコとして食用するのは一部地域のみ。キクラゲを古くから食用としてきたのは中国で、紀元前からキクラゲを食していたとも伝えられています。6世紀頃に記された現存する中国最古の農業技術書『斉民要術』にはキクラゲについての記述がありますし、唐代時代にはキクラゲ・アラゲキクラゲの栽培が行われており、中国で最初に栽培に成功したキノコであるという説もあるそう。少なくとも1000年以上前からキクラゲは中国で食されていたことが窺えますし、東アジアでキクラゲが食用キノコとして愛されているのも中国の影響があるのかもしれません。

また、古く中国ではキクラゲに食材としてだけではなく、薬効があると考え生薬としても利用していました。栄養面ではさほど違いは見られないものの、現在でも薬膳などでは黒キクラゲは出血を抑える作用があるとともに血液に栄養を与える働きがある“貧血・婦人科系疾患”に良い食材白キクラゲは潤いを与えるものとして“肺・美肌”に良い食材と区分されることもあります。ちなみに当時、白キクラゲは栽培ができなかった関係もあって高級食材の一つに数えられ、不老長寿の薬として重宝された事もあったようです。

日本でいつからキクラゲが食用とされていたのかは分かっていません。古くから食されてきたという説もありますし、中国から料理法や薬効と共に伝えられたという説もあります。平安時代に編纂された『和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』という百科事典のような書物には“きのみみ”という記述があるようですが、書物に本格的に登場するようになるのは17世紀後半以降『本朝食鑑』や『和漢三才図会』などには食材としての記述が見られることから、日本ではキクラゲを生薬感覚で使うのではなく、普通にキノコの一つとして食されていたと考えられています。

きくらげの栄養成分・効果について

栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

キクラゲは他のキノコ類と比較しても食物繊維が多く、カロリーが低いことと合わせてダイエットのサポートに適したキノコだと考えられています。近年はキノコに含まれるβ-グルカンに様々な健康メリットを持つ可能性が報告されていることや、ビタミンDが豊富に含まれていることから免疫機能のサポートや骨粗鬆症予防としても注目されています。ビタミンやミネラルでは鉄分含有量が多いことが特徴で、それ以外にも幅広くは含まれているものの実際の摂取量を考えると補給源とは言い難い程度。

きくらげの入ったラーメンイメージ

キクラゲの効果効能、その根拠・理由とは?

便秘予防・改善に

キクラゲも他キノコ類と同じく、低カロリーな食物繊維補給源と言える食材。日本食品標準成分表(七訂)に記載されている100gあたりの食物繊維総量はキクラゲ(ゆで)で5.2g、生アラゲキクラゲで5.6gとキノコ類の中でも食物繊維量がトップクラスに多いことがわかります。同グラムあたりの食物繊維量を比較した場合にはゴーヤーの約2倍・レタス大根の約3倍にもなりますよ。

食物繊維の内訳として見ると、キクラゲに含まれている食物繊維の大半は不溶性食物繊維。不溶性食物繊維は腸を刺激することで蠕動運動を促す働きや、腸内の有害物質を吸着して腸をお掃除してくれる働きがあります。加えてキクラゲには不溶性食物繊維と水溶性食物繊維両方の働きを持つとされる多糖類、β-グルカンも含まれています。β-グルカンには腸内の善玉菌を増やす働きも報告されていますから、合わせて便秘を予防したり、お腹の調子を整える手助けをしてくれる食材と考えられます。

骨や歯を丈夫に保つ

キクラゲは食物繊維だけではなく、ビタミンD含有量もキノコ類の中でトップクラスビタミンDは脂溶性ビタミンの一つで、主な働きとしては小腸や腎臓でカルシウムとリンの吸収促進・血中カルシウム濃度を保つなど骨や歯を丈夫に保つことが挙げられます。カルシウムの吸収を助けてくれるという性質から、高齢化に伴って増加している骨粗鬆症予防としても意識的に摂りたいビタミンでもありますね。

ビタミンDは日光を浴びるとヒトの体内でも合成されるため、極端に不足することは少ないと考えられてきた栄養素。しかし近年は日光を浴びる機会が少ない方・紫外線を極度に避ける方が増えたことでビタミンD合成が不十分であることが指摘されています。このためお子さんの成長サポートや骨粗鬆症予防などには、ビタミンDを食品から摂取して補う必要があると考えられています。

気になるキクラゲのビタミンD含有量は、日本食品標準成分表によると茹でた状態100gあたりアラゲキクラゲが25.3μg、茹でキクラゲであれば8.8μg時々128.5μgの方で紹介されていますが、こちらは乾燥100gでの数字なので現実的ではありません。厚生労働省による『日本人の食事摂取基準(2015年版)』によると一日のビタミンD食事摂取目安量は18歳以上であれば5.5μgとされていますから、キクラゲを食事に取り入れることで自然にビタミンDを補えると言えます。

ただし生アラゲキクラゲの場合は100gあたり0.1μgと含有量が非常に少ないことから、キクラゲのビタミンDは元々含まれているものではなく、エルゴステロール(エルゴステリン)と呼ばれるステロールが紫外線を浴びて変化したものと考えられます。ビタミンD補給源としてキクラゲを食べる場合には、生キクラゲを日光浴させてから食べるか、乾燥されたものを戻して使うようにすると良いでしょう。

免疫力サポート・風邪予防に

キクラゲにもキノコ類の特徴成分の一つとされる高分子多糖体のβ-グルカンが含まれています。β-グルカンには更にいくつもの種類に細分化されていますが、その中には免疫系に関わる細胞・因子を活性化させることで免疫力向上効果を持つことが報告されているものも多くあります。キクラゲにはトレハロースなど抗ウィルス作用が期待できる成分も含まれていることから、免疫力向上や風邪やインフルエンザの予防をサポートしてくれる可能性があると考えられています。

加えてビタミンDも骨や歯の健康維持だけではなく、免疫バランスを調節する役割を持つ可能性が報告されている栄養素。東京慈恵会医科大ら国際共同研究チームからはビタミンD欠乏を改善することでインフルエンザ発症率が減少することが報告されており、世界的にもインフルエンザやアレルギー疾患発症とビタミンDの関係が研究されいます。β-グルカンもビタミンDも現在進行系で研究が進められている成分のため確証には至っていませんが、食材から自然な形でこうした成分を補給できるキノコ類は免疫サポーターとして注目されていますよ。

鉄分補給・貧血予防について

キクラゲは鉄分やカリウムなどのミネラルが豊富なキノコとして紹介されることもあります。しかし、実際に100gあたりのカリウム含有量を見てみると生アラゲキクラゲで59mg程度、乾燥状態で販売されているものを戻した場合でも100mg以下と豊富とは言い難い部類。カルシウムやマグネシウムなども含まれてはいますが、補給源として優秀な食材であるとは言えません。

ミネラル類の中で比較的豊富であると言えるのは鉄分。と言っても日本食品標準成分表(七訂)記載の100gあたりの鉄分量は生アラゲキクラゲ0.1mg、乾燥アラゲキクラゲを茹でたもの1.7mg、乾燥キクラゲを茹でたもの0.7mg。産地や加工法によっては成分表との間に差が生じることもありますが、キクラゲの種類や状態によって鉄分含有量には差があることがわかります。鉄分補給源として貧血・鉄欠乏性貧血の予防に役立つ可能性はありますが、キクラゲで日頃不足している鉄分を補えるとは考えないほうが確実でしょう。

肥満予防・ダイエットに

キクラゲは低カロリーで食物繊維が豊富、コリコリした歯ごたえのある食感と合わせてダイエット中のお食事にも嬉しい食材。カロリーについては種類によっても異なりますが、生状態のアラゲキクラゲであれば100gあたり13kcal同グラムで比較すればキャベツ大根よりもローカロリーな食材です。ちなみに一旦乾燥されたキクラゲの場合はゆで状態100gあたりキクラゲ(本キクラゲ)が13kcal、アラゲキクラゲが35kcal。並べると乾燥→茹でたアカゲキクラゲのカロリーが高いようにも感じますが、どちいらにせよ気にする必要は無い程度です。

キクラゲはカロリーが低いだけではなく、不溶性食物繊維を多く含んでいます。不溶性食物繊維は便通を促してくれるだけではなく、水を吸って膨らむ性質がありますから、低カロリーながら満腹感が続くという利点もあります。便秘改善からぽっこりお腹の解消・代謝向上などに繋がる可能性もありますし、鉄分やビタミンB群の補給に役立つのもダイエット中の方には嬉しいですね。ただしコレステロール排出促進や血糖値上昇を抑える働きがあるという説もありますが、こうした働きを持つのは水溶性食物繊維なので過度な期待は避けたほうが良いでしょう。

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肌荒れ予防にも…?

キクラゲはビタミンDを多く含んでいる以外、ビタミンやミネラルは少量しか含まれていません。野菜や果物のように優れた抗酸化作用を持つポリフェノールなどが含まれていることも無いので、美肌食材として紹介されることはあまり無い食材ですね。強いて言うならば、食物繊維が多く便通を整える働きが期待できることから肌荒れや吹き出物予防に、鉄分補給源として貧血予防に役立つことからターンオーバーの正常化に期待できるということくらいでしょうか。

キクラゲの持つ独特のプルプル・コリコリ感のゼラチン質(膠/ニカワ質)に肌に水分を与える働きがある、お肌の保湿効果が期待されているトレハロースが含まれていることから乾燥肌対策に良いという説もありますが、有効性や効果の程については定かではありません。

白キクラゲについて

日本では中華料理や薬膳がお好きな方以外はあまり目にすることのない白キクラゲ。主にデザートに利用されているほか、スープやサラダなどに利用されることもあります。食感はコリコリ系ですが、個人的には黒キクラゲよりは少し柔らかくクラゲと言うよりも海藻のような印象があります。

必須栄養素としてはキクラゲとほとんど変わらず、強いて言うならばビタミンDと鉄分が少なく、水溶性食物繊維がやや多い程度。白キクラゲには「白キクラゲ多糖体」と呼ばれる独自の成分が含まれていることが報告されています。白キクラゲ多糖体はヒアルロン酸を超える高い保水力があるため、肌の潤い・ハリの維持に優れていることが分かっています。化粧品に配合されることも多いですが、継続して食べることでも乾燥肌やじわ・たるみ・シミの予防改善に繋がるのではないかと考えられていますよ。

漢方の考え方でも白キクラゲは“体に水分を補い、肺を潤す働きがある”食材とされています。肺を潤すと言われてもピンときませんが、漢方の考え方では肺というのは呼吸器系だけではなく「皮膚」も司っており、肺を潤すというのは咳や喉の痛みだけではなく「美肌」効果もあるということになるのだとか。中国で白キクラゲは美肌食材として親しまれてきたそうですから、経験則というのも馬鹿には出来ませんよね。

目的別、キクラゲのおすすめ食べ合わせ

きくらげの選び方・食べ方・注意点

キクラゲは生では食べられませんので、刺し身や酢の物・和え物などに使用する場合でもさっと下茹でしてから使用しましょう。乾燥キクラゲは水か温めのお湯に30分程度浸して戻し、細かいゴミなどが入っている場合があるので弾力を取り戻したらすすぎ洗をしてから使用します。長時間浸していると食感が悪くなるので注意。シイタケのように旨味成分が溶け出たりはしないので、基本的に戻し汁は利用しません。

キクラゲの選び方・保存方法

生のキクラゲを選ぶ場合には、色が濃くしっとりと艶を帯びているもの・肉厚なものを選びます。表面がしっとりではなくベタッとしているもの、ハリがなくなっているものは避けたほうが無難。形状による味や食感の差はありませんし、表面が白っぽいものは胞子が付着しているだけなので食べても問題ありません。気になる方は水洗いして利用して下さい。乾燥状態のキクラゲを購入する場合には色が黒いもの・形が大きいものを選ぶと良いと言われています。

キクラゲは水気に弱いので、生のまま保存する場合は水に触れないように注意します。未開封ならパックのまま冷蔵庫(野菜室)に。パックの内側に水滴がついているような場合には水気を拭いてキッチンペーパーで包んでから、ラップや保存袋に入れて冷蔵庫に入れます。一週間くらいは保存できますが、あまり置いておくよりは冷凍保存がお勧めです。解凍せずにそのまま料理に使うと、食感もあまり落ちません。

参考元:Jew’s Ear Mushroomきくらげ 木耳ビタミンDで丈夫な体づくり-かぜ・インフルエンザの発症予防にも-