ハスカップとその栄養成分や効果効能
|アントシアニンが豊富なスーパーフード候補生

食べ物辞典:ハスカップ

北海道のお土産物や、ネットのお取り寄せ商品として人気のハスカップ。ブルーベリーに似た印象のある果物ですが、ブルーベリーよりは大きめなこと・酸味が強いことが特徵です。栄養面ではアントシアニン類を筆頭にポリフェノールやビタミンなど抗酸化物質が豊富なことが注目され、ブルーベリーよりもアントシアニンが豊富な果物として目の疲れ・視力低下が気になる方向けの健康食品にも使われています。名前は聞くけれど馴染みはない、ハスカップという植物やその歴史、栄養価や期待される健康メリットについて詳しくご紹介します。

ハスカップのイメージ画像:食べ物辞典トップ用

和名:クロミノウグイスカグラ(黒実鶯神楽)
英語:haskap berry/Blue honeysuckle

ハスカップのプロフイール

ハスカップとは

全国的に知名度が高まっているハスカップ。ハスカップジャムをはじめ「よいとまけ」や「ハスカップジュエリー」などの北海道地方銘菓に使われている事が多く、赤紫色というイメージを持たれている方もいらっしゃるのではないでしょうか。果実としての姿を留めたものは、お取り寄せなどで冷凍ものが若干で回る程度。生産者さん周辺の方々はさておき、産地とされる北海道でも生状態のハスカップが出回ることはほとんどありません。見た目としてはブルーベリーに似た暗い青色の果皮を持つ果実で、ブルーベリーよりもやや大きめなのが特徴です。

北海道特産品のイメージの強いハスカップですが、植物としては東アジア北部に自生しているスイカズラ科スイカズラ属の落葉低木であり、原産はシベリア周辺とされています。食品用として加工されているハスカップは国産であれば大半が北海道産ですが、北海道だけではなく本州の高山地帯にも自生していますよ。ハスカップという呼び名は古くからこの果物を食べてきた北海道アイヌの人々の呼び名をそのまま使用したもので、正式な和名は黒実鶯神楽(クロミノウグイスカグラ)とされています。ちなみにハスカップの語源はアイヌ語の「ハシカプ(has-ka-o-p)」で、意味は“枝の上に沢山なるもの”なのだとか。そのほかに地方によって「ユノミ」「ケヨノミ」などという呼び方もあるようです。

ハスカップは日本固有種という訳ではなく、現在は北米やヨーロッパなどでも栽培されています。英語でもハスカップは“honeyberry(ハニーベリー)”もしくは“blue honeysuckle(ブルーハニーサックル)”などスイカズラを意味するハニーサックルを付けた呼び名で呼ばれることもありますよ。同じ英語でも住んでいる地域によって呼び名が変わるのだとか。北米では“honeyberry”と呼ぶのが一般的とされていますが、アイヌ語の音を使ったHaskapやHascupという呼び名でも親しまれています。これはハスカップが学名Lonicera caerulea var. emphyllocalyxと、ケヨノミと呼ばれる植物の1変種であるため。ケヨノミの変種は9つあり“ハニーサックル”などはその品種の総称としても使われるので、私達が特定の品種のみを指す言葉としてハスカップが採用されたわけです。

ハスカップはあまり植物の育たない火山灰地でも生育し実を実らせることから、北海道の先住民であるアイヌの人々は神がこの地上に遣わした生命の雫であると考えてきた果物。その神秘性もあってか「不老長寿の秘薬」とも称され、大切にされてきた歴史があります。現代で不老長寿というと大げさに感じるかもしれませんが、ハスカップにはビタミン類やアントシアニン類が豊富に含まれていることも認められています。日本でも機能性食品としてメディアに取り上げられるなど注目度が高まっていますし、北米では“might be the next new superfood(次のスーハーフードになるかもしれない)”という評もあるほど。くっきりとした酸味と甘さも新鮮な果物ですから、見かけたらぜひご賞味ください。

ハスカップの歴史

ハスカップの原産地はシベリアのバイカル湖の周辺と考えられており、サハリンやシベリアなどの寒い地域に自生しています。日本でも標高の高く冷涼な地域には自生していますが、北海道の場合は平地でも育成するということが特徵。このため本州以西の人々にとっては馴染みのない果物、アイヌの人々にとっては親しみのある果物と認識が分かれたと考えられます。野生のハスカップは現在私達が口にしているものよりも酸味が強く糖度は低いため、現代人が口にして美味しいと言えるものかは疑問が残ります。しかしアイヌの人々にとっては自然の恵みの一つであり、貴重な果物の一つとして大切にされてきました。

北海道の中でも石狩低地帯南東部、苫小牧市の東方に広がる勇払平野(ゆうふつへいや)にはハスカップが沢山分布していたようです。明治になると各地から開拓のために北海道へと人々が移住してきましたが、自生していたハスカップは注目されなかったそう。アイヌの人々にとっては「不老長寿の秘薬」であったと伝えられていますが、酸味が強く水分が多いハスカップは青果としても加工用としても扱いが難しかったようです。余談ですが、現在でもハスカップは収穫できる時期が短い、表皮が薄く破れやすいと扱いが難しい、生のままの保存が難しい(果肉や皮などが液状化してしまう)などの理由から「幻の実」とも呼ばれることがありますよ。近年は冷凍のハスカップが販売されていますが、明治頃は本当に数日しか食べられないようなものだったのでしょう。

そんなハスカップが製菓原料として使われるようになったのは昭和に入ってから。昭和8年には苫小牧の商店が地域復興のために「ハスカップ羊羹」を販売し、戦後の昭和28年になると株式会社三星さんがハスカップジャムを使用したお菓子「よいとまけ」を発売します。当時の人々にとっては甘いカステラと酸味の強いハスカップジャムという組み合わせは新鮮で人気になり、今でも「よいとまけ」は地方銘菓として親しまれています。発売当時はまだ勇払平野に行けば野生のハスカップが沢山実っていたので、それを採集して使用していたのだとか。しかし昭和40年代頃にはハスカップの群生地であった勇払平野の開発が進み、原材料確保のために株式会社三星さんは美唄市でハスカップの栽培を行う必要にかられたそうです。

野生のハスカップは作物化され、品種改良によって「ゆうしげ」「あつまみらい」などより甘味の強いもの・多く実のなる品種も作り出されるようになりました。昭和の終わりことからはハスカップを使用したお菓子、ハスカップという果物への知名度が高まったこともあって、ハスカップを栽培するところも増えたそう。日本だけではなく1950年代頃からはロシアで、1990年前後には北米でもハスカップの栽培が行われるようになっています。北半球ではジュース・ジャム・調味料などに利用されているほか、石鹸やボディスクラブ、リップグロスなど化粧品類にも活用されています。

ハスカップの栄養成分・効果について

栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

ハスカップは青紫色の元でもある、アントシアニン系色素成分を豊富に含むことが注目されている果物。ポリフェノールだけではなくビタミンCとビタミンEも豊富な部類であり、果物としては鉄分などのミネラルを多く含んでいることも評価されています。生100gあたり38mgと他の果物に比べカルシウムが豊富なことも特徴的です。

ハスカップイメージ

ハスカップの効果効能、その根拠・理由とは?

抗酸化のサポートに

ハスカップが注目されている理由として、健康食品原料としても活用されているアントシアニン類を筆頭に抗酸化物質を多く含んでいることが大きく関係しています。フラボノイドの一種であり色素成分であるアントシアニンには幾つかの種類がありますが、ハスカップにはアントシアニン類の中でも高い抗酸化力を持つシアニジン(Cyanidin)が多く含まれていると考えられています。シアニジンはビタミンEよりも高い抗酸化作用を持つと称されている成分ですし、ハスカップのシアニジン含有量はブルーベリーの3倍以上と言われていますよ。

活性酸素は酸素を使う代謝の中でも普通に発生する物質で、私達の体を守るための機能も持ち合わせています。しかし過剰に増えてしまうと細胞を酸化・変性させてしまい、体の持つ様々な機能を低下させたり、老化を促進するリスクファクターとなることも指摘されている物質。抗酸化物質は体内の活性酸素を除去・抑制する働きを持っていることから、フリーラジカル/酸化ストレスを軽減して体を若々しく健康な状態に保つ働きが期待されています。ハスカップはシアニジンだけではなく、抗酸化作用を持つビタミンCとビタミンEも豊富な果物。このため高い抗酸化作用を持つ果物=アンチエイジングフルーツとしても優れていると考えられています。

疲れ目対策・視機能保持に

アントシアニンは抗酸化作用によってフリーラジカル/酸化ストレスを軽減してくれるだけではなく、目の健康をサポートしてくれる成分としても注目されているポリフェノールです。ブルーベリーやハスカップが視機能回復や眼精疲労回復など“目のお悩み”ケアに取り入れられているのも、アントシアニンを豊富に含んでいることが主たる理由であると言えるでしょう。これはアントシアニンに目の網膜に存在するロドプシンの再合成を促す働きがあることが報告されているためです。

私達が目に写ったものを映像として認識するためには、目の網膜にある「ロドプシン」というタンパク質が分解される際に生じる電気信号が脳へ伝わるというステップがあります。ロドプシンは分解された後に再合成され、再び分解を繰り返していますが、加齢などによってロドプシン分解・再合成の流れが滞ると目の疲れやかすみ・ぼやける・視力低下など原因となります。また近年では加齢以外にPCやスマホなどの使用による長時間の目の酷使もロドプシン再合成を低下させる原因となるのではないかと考えられます。このためアントシアニンを摂取することでロドプシン再生サイクルを高め、脳や目の組織への負担が減ることで眼精疲労などの軽減につながります。

アントシアニンを摂取できる身近な果物としてはブルーベリーが代表的ですが、実はハスカップのアントシアニン(シアニジン)含有量は100gあたり220mg程度、ブルーベリーの3~10倍もの量になるという見解もあります。このためハスカップならばブルーベリーの1/3の量で同様の視機能保持・視力回復効果が期待できると考えられています。ただし目の酷使などによる疲れ目の原因はアントシアニン不足・ロドプシン再合成低下によるものだけではありません。アントシアニン系色素の働きについても可能性段階のものと扱われていますから、視機能低下・眼精疲労予防に繋がる可能性がある程度であるという事は念頭に置いておいた方が良いでしょう。

と言っても、目は紫外線やパソコン・スマホから生じるブルーライトなどに晒され、活性酸素が多く発生する部位であるということも指摘されています。アントシアニン(シアニジン)は優れた抗酸化作用によって活性酸素による眼精疲労、酸化ダメージによって発症リスクが高まる白内障・緑内障の予防に役立つ可能性があることも報告されていますから、目の健康維持・セルフケアとして取り入たい食材と言っても過言ではないでしょう。

生活習慣病予防に

活性酸素は老化を促進するだけではなく、病気のリスクを高めるという指摘もあります。生活習慣病についても血中脂質の増加や、活性酸素が悪玉(LDL)コレステロールを酸化させることで出来る“酸化LDL”の増加が原因となる可能性が高いと考えられています。酸化した血中脂質が血管内に蓄積し、血管を狭めたり柔軟性を損なわせることで起こる動脈硬化などが代表的ですね。抗酸化物質の補給は血中脂質の酸化抑制にも繋がることから、生活習慣病予防、得に血管関係の健康維持に役立つ可能性があると注目されています。

また、抗酸化以外にアントシアニンには血小板凝固抑制作用や毛細血管保護作用が見られたという報告もあり、ヨーロッパではアントシアニンは血管障害の治療薬原料として承認されることもあるほど。ハスカップにもアントシアニン類が多く含まれていることから、高血圧や動脈硬化・血栓予防をサポートしてくれるかも知れないと考えられています。アントシアニンには内臓脂肪減少・インスリンの働きを正常化する善玉ホルモン「アディポネクチン」の分泌を活発化させる働きを持つ可能性も報告されていますから、血流トラブル以外の病気予防にも役立つかも知れないという見解もありますよ。お砂糖をたっぷり使ったジャムなどの摂取だと話は変わってきますが、ハスカップベリーそのものとしては生活習慣病予防をサポートしてくれる可能性もありそうですね。

記憶力保持・認知症予防にも

アントシアニンなどの抗酸化物質の補給は、脳や神経機能を保護・回復させる可能性があることも報告されています。2003年に『Archives of Pharmacal Research』に掲載された韓国の実験では、紫芋から抽出したアントシアニンを投与したマウスが記憶増強効果を示したという報告もなされています。脳細胞の酸化を抑えることは認知症やアルツハイマー病の予防につながる可能性があるという説もあります、ハスカップもジャムやシロップなど加熱加工したものでも抗酸化作用が認められているということもあり、アルツハイマー予防に役立つのではないかと研究が行われているようです。

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便秘予防に

ハスカップは生100gあたりの食物繊維料が2.1gと、果物の中では食物繊維が豊富な部類。また食物繊維の割合としても、100gあたり水溶性食物繊維が0.6g・不溶性食物繊維が1.5gと水溶性食物繊維の比率が高くなっています。不溶性食物繊維は腸の蠕動運動を促す、水溶性食物繊維は便の硬さを適度に保つ・腸内善玉菌のエサとなって腸内環境を整えるなど、同じ食物繊維でも水溶性と不要性はそれぞれ別の働きを持っています。両方の食物繊維を補給出来ることから、ハスカップは便秘予防にも役立ってくれるでしょう。お腹の調子を整えたい時には味としても、成分的な面からも、ヨーグルトとの組み合わせがお勧めです。

鉄分補給・貧血予防に

ハスカップはアントシアニンとビタミン類が取り上げられることの多い果物ですが、実は生100gあたりの鉄分量が0.6mgと果物類ではトップグループに入る食材でもあります。貧血には様々な種類がありますが、先天的なトラブルのない日本人であれば、鉄分が不足することで赤血球中のヘモグロビンの量が減少する“鉄欠乏性貧血”の方が大半であることが統計によって分かっています。果物類は全体的に鉄分が多い食材とは言い難いですが、不足分を補うサポートとしては役立ってくれるでしょう。

ハスカップには植物性鉄分の吸収率を高めてくれるビタミンCも豊富ですし、同じく鉄分の吸収利用に関わる銅、造血に関わる葉酸や亜鉛なども含まれています。加えて末梢血管の血流を促進するビタミンE、抗酸化作用や毛細血管保護作用を持つアントシアニンなどと複合して血液循環をスムーズに保つ働きも期待できますから、血行不良によって起こる貧血様の症状・冷え性・倦怠感などの軽減につながる可能性もあるでしょう。

肌老化予防・美肌保持に

ハスカップに含まれているアントシアニンやビタミンCなどの抗酸化物質は、体の内側だけではなく肌の老化予防も手助けしてくれると考えられています。活性酸素によって肌細胞が酸化ダメージを受けると、シワやたるみ・くすみなどの肌老化が促進されることが指摘されています。このため抗酸化作用が強いシアニジンやプロトカテク酸などのポリフェノール+ビタミン類が含まれているハスカップは肌のアンチエイジングをサポートしてくれる果物としても注目されていますよ。

ポリフェノールと並んで抗酸化・美肌づくりに役立つビタミン類もハスカップは豊富に含んでいます。特にビタミンEには抗酸化作用以外に、末梢血管拡張による血行促進作用が期待されています。またハスカップには血液自体の生成に必要な鉄分も含まれています。このため肌のすみずみまで血液(栄養)を送ることで、肌の新陳代謝を高めたり、肌のカサつきやくすみの改善にも繋がるでしょう。血行不良によるクマ・くすみの解消にも効果が期待できます。

加工品の場合であればどの程度補給できるかは定かでないものの、ハスカップは生100gあたり44mgとビタミンCを多く含む果物でもあります。よくハスカップと比較されるブルーベリーは100mgあたり9mgですので、5倍近いビタミンCを含んでいることになります。ビタミンCには抗酸化作用以外に、シミやソバカスの原因となるメラニン色素を作るチロシナーゼの働きを防ぐ美白効果や、コラーゲン生成を助ける働きもあります。こちらからも肌のハリや透明感の維持を手助けしてくれそうですね。

ハスカップの食べ方・注意点

生食用のハスカップが手に入る場合は、そのまま食べとビタミンCなどの損傷が少なく本来の栄養素をしっかりと摂取することが出来ます。酸っぱさが気になる場合はヨーグルトに入れて食べるか、フレッシュジュースやスムージーの材料として利用すると良いです。加熱したくない、酸っぱいのも苦手…という場合はハチミツと混ぜ合わせて数日置いておくとハスカップの実が柔らかく溶けてジャムのような食感になりますよ。

ハスカップは酸味が強いので青果としてパクパクと食べるのは少し辛いという場合もあります。砂糖などの甘味料をたっぷり使って食べる以外に、酸味を活かした食べ方というものもありますよ。それはハスカップの実の実に塩をまぶし、時々かき混ぜながら1週間程度置いて果汁を絞ると梅干のようにするという方法。梅干しよりは甘みがあるので酸味が強い梅干が苦手な方にオススメですし、料理の隠し味やソースとしても使えます。絞り汁に色が出てしまう=アントシアニンが流出してしまうのがもったいない気もしますが、食べ方に困った時には試してみてもよいのではないでしょうか。

ハスカップ保存方法

ハスカップは基本的に生の状態では日持ちしません。果物そのままの姿のものを購入しようとしても、基本的には輸送の問題もあり“お取り寄せ”出来るのは冷凍状態となっているはずです。冷凍状態のものを購入した場合でも、数日で使える分ずつ回答して食べると良いでしょう。生状態のものが手に入ったとしても、すぐに食べきらない場合は冷凍するか、ジャムやシロップ漬け・果実酒などに加工する必要があります。

参考元:ハスカップについてHaskap berries: the superfruit you don’t know aboutAnthocyanin Benefits the Brain, Eyes & Immune System