大豆と黒豆の違いとは?
-植物・食材としての特徴、栄養価を比較

大豆と黒豆の違い比較の記事トップ

概要加工品も含めると様々な形で日本の食生活に定着している大豆は、近年欧米でも栄養価の高さが評価されている食材です。対して黒豆はおせち料理の定番で、日本国内ではアンチエイジング効果が期待できる食材として注目されている存在。そんな色こそ違うものの似た形・味をしている大豆と黒豆ですが、この2つは同じ豆なのか、栄養価に違いはあるのかなどをご紹介します。

大豆(黄大豆)とは

大豆の植物分類と歴史

豆そのものだけではなく、豆乳・豆腐・納豆などの加工品や味噌・醤油といった調味料の原料としても日本人の食生活の中に欠かせない大豆。中国や日本では主要穀類が“五穀”として挙げられていますが、その中で米・麦・粟・稗の穀類もしくは雑穀類の並びに大豆が入っているのも有用性が高かったからかもしれませんね。世界的には近年まで飼料用もしくは採油用としての用途が主であったそうですが、近年は良質なタンパク質・アミノ酸を含むことや和食ブームの影響もあり注目されています。大豆原料とした“ソイミート”も欧米で人気なのだとか。

植物としての大豆はマメ科ダイズ属の一年草に分類され、学名はGlycine max
同じくダイズ属に分類されるツルマメ(Glycine soja)という植物が原種とされ、ツルマメが自生していた東アジア各地で栽培・品種改良によって作物化されて大豆になったと考えられています。このため大豆の原産地というか起源地は複数あり、日本も起源地の一つに数えられています。日本では紀元前4000年代後半、縄文時代の中期頃から栽培されていたそという見解が多いようです。日本と同じく大豆起源地の一つとされる中国でも古くから栽培が行われていたと言われており、紀元前5世紀に記されたとされる『詩経』にも大豆が登場します。

中国では紀元前1世紀になると農学書『氾勝之書』に大豆の出芽時の様子や、飢饉に備えた備蓄食料としての有用性が説かれているそうです。また6世紀頃の中国の農書『斎民要術』には発酵を含めた大豆の加工法が記されており、日本にも飛鳥・奈良時代に仏教徒共に“発酵させる”という大豆の加工法が伝えられたと考えられます。これにより国内でも味噌や現在の醤油の原形とされる穀醤・豆腐などが作られるようになります。

また、『正倉院文書』には漢方薬の一種としても記載されていることから大豆は単なる食料以上に価値があるものとして認識されるようになったと考えられます。平安時代の『延喜式』からは税として朝廷に納められていたことが分かっていますし、仏教の影響で肉を食べなかった貴族や僧にとってもタンパク源として貴重だったと考えられます。

こうした理由から奈良時代から平安時代において大豆は特別な食材とされ、一般の人々には普及していなかったという見解が主流になっています。大豆が一般庶民にも広がったのは鎌倉~室町時代頃との説が有力。日本を代表する(?)発酵食品の「納豆」が出来たのもこの時期だとか。室町時代には農民による自家製味噌の製造も行われるようになっていたそうですし、江戸時代になると各自で大豆加工品の味の向上も盛んに試みられていたようです。

大豆という名前の由来

大豆は大きな豆と書いてダイズと読みますが、豆類としては特別大きいものではありせん。ではなぜ大豆と記されているのかというと、大豆の“大”というのは大きではなく「一番である」ことや「重要である」ことを示していると考えられています。このため名前の由来は「一番優れている(大切な)豆」という説が多いそう。平安時代頃には税として徴収されていた豆でもありますから、重要視されていたと言われると納得ですね。

ちなみに英語で大豆はsoy beanもしくはsoya beanと呼ばれていますが、こちらの由来は日本語の“醤油”と考えられています。医師・博物学者のエンゲルベルト・ケンペル氏が『日本誌』の中で「醤油(soyu)」を紹介したことでヨーロッパでは大豆よりも先に醤油が知られることとなり、醤油の原料の豆=soy beanと呼ばれるようになったのだとか。20世紀に東アジア圏以外でも大豆の栽培が始まったことで、広い範囲でこの呼称が定着してしまったと言われています。直訳すると大豆は醤油豆・豆乳は醤油乳になると思うと…日本人としては複雑なところ。

栄養・食材としての大豆の特徴

栄養価について

大豆は非常に栄養価が高い食材で、動物性食品に匹敵するタンパク質の多さ・アミノ酸バランの良さが注目されています。大豆のアミノ酸は通称「大豆ペプチド」と呼ばれるアミノ酸連鎖体の形で含まれており、肉体(筋肉)疲労と脳疲労の両方の回復に役立つと考えられているそう。糖代謝に関わるビタミンB1を筆頭にビタミンB6・B12も含まれているため、エネルギー源として優れた食材と考えられています。

また大豆と言えばエストロゲンのサポート効果が期待される大豆イソフラボンも、メディアでよく取り上げられていたこともあり耳にしたことのある方が多いのではないでしょうか。と言っても大豆イソフラボンという成分があるわけではなく、ゲニステイン・ダイゼインなどのイソフラボン類の総称。近年はダイゼインが腸内細菌の働きによって変換されることで作られ、高い女性ホルモン様作用があるとされる“エクオール”も注目されていますね。

このエクオールは腸内細菌によって作れない人が居ることも報告されており、イソフラボンのエストロゲン様作用については否定的な見解もあるため巷で言われるような「女性領域での不調」に対しての効果があるかは疑問視されていますが、イソフラボン類は抗酸化作用を持つポリフェノールの一種でもあるため適量の摂取は健康サポートにも役立ってくれるでしょう。

抗酸化作用を持つイソフラボンに加え、大豆には脂質の代謝を活発にさせ血中脂質(コレステロールや中性脂肪)を減少させる働きが報告されているレシチン・過酸化脂質の生成を抑制するサポニンなども含まれています。このため生活習慣病予防にも効果が期待されていますし、アミノ酸(大豆ペプチド)やビタミンB群の補給と合わせて肥満予防にも取り入れられています。食物繊維やビタミン・ミネラルを広く摂取できるので栄養バランスが気になる時や、美肌作りのサポートとしても役立ってくれるでしょう。健康食材として世界的に注目されているのも頷けますね。

↓大豆の詳細はこちら

黒豆(黒大豆)とは

黒豆(黒大豆)イメージ

黒豆の植物分類と歴史

おせち料理に入っている煮豆でもお馴染みの黒豆。近年はポリフェノールが多く含まれていることが注目され、黒豆茶・黒豆ココア・お菓子類などにも幅広く使われています。おめでたい席のお赤飯に対して、北海道ではお葬式などの際に黒豆を入れて炊いた“黒飯”を食べる風習もあるそうですよ。

そんな私達日本人にとってはポピュラーな豆の一つである黒豆。定着しすぎていて黒豆という種類の豆があるようにも思いがちですが、黒豆は大豆の品種群の一つとされ黒豆もしくはブドウ豆以外に“黒大豆”とも呼ばれています。普段私達が大豆と呼んでいるのは一般的に表面が薄黄土色をしている黄大豆系統の品種。しかし表面が黒い黒大豆はをはじめ白大豆・赤大豆・茶大豆・青大豆と、大豆はカラーバリエーションの豊富な豆。緑色と黒のツートンになっている鞍掛豆(パンダ豆)も大豆の一種です。未成熟大豆である枝豆も黒豆・茶豆系の品種が使われているものがありますね。

大豆から黒豆(黒大豆)が枝分かれした時期などについては分かっていませんが、中国では4000年ほど前から黒豆の栽培が行われていたと伝えられています。それよりもかなり後になりますが、今から約2000年前に記されたとされる薬物書『神農本草経』にも黒豆が記載されていることから、紀元前のうちには大豆と区分して扱われていたと考えられます。同様に日本でもいつ頃から黒豆があったのかは分かっていませんが、書物としての記録は935年に記された『倭名類聚抄』に“烏豆(クロマメ)”として記載されているものが初。

この記録から平安時代には大豆とは別に黒豆の栽培・利用が行われていたと考えられています。平安時代には大豆も庶民はほとんど口にすることが出来なかったと言われていますが、黒豆はそれよりも更に食材としては知られていなかったと考えられています。当時黒豆は食材ではなく“薬”とされており、煮出す・煎じるなどして使うのが主流だったのだそう。

Sponsored Link

大豆と同じく鎌倉時代以降は食用としての利用が広がっていきますが、16世紀に中国で成立した『本草網目』にも“大豆は五色あるが薬用利用されるのは黒大豆のみ”という旨が書かれているそうですし、日本でも江戸後期の『本草綱目啓蒙』で“薬方の大豆は皆黒大豆、黒豆の事”と書かれていいます。食材として定着した後も、生薬として利用され続けていたことがうかがえますね。現在でも漢方では乾燥した黒豆(黒大豆)をはじめ、皮のみを黒豆衣(コクズイ)として養血・滋陰剤として、蒸した黒大豆を醗酵させた後に乾燥させたものは“豆豉(トウチ/ズシ)”として発汗・健胃作用がある生薬として利用されているそうです。

黒豆雑学

お正月料理(おせち料理)に欠かせない黒豆の煮豆。煮豆が御節料理の一つとして用いられるようになったのは室町時代と考えられていますが、黒豆が使われるようになったのは江戸時代からと言われています。煮た黒豆がおせちの定番となった理由は諸説ありますが、江戸の高級料亭だった八百善が正月向けに甘く煮た豆を提供したという説が知られています。

大豆ではなく黒大豆がお祝いの席で使われるようになったのは、古来“黒”という色には邪気を払う力があると考えられていたことと、「(黒く)日焼けするくらいマメ(勤勉)に働けますように」という願いが込められていると言われています。全国的に見るとツヤツヤと見えるようにふっくらした形に仕上げることが多いですが、更に「皺のよるまで長生き出来ますように」の願いを込めてあえてシワシワに煮る地域もありますよ。

栄養・食材としての黒豆の特徴

栄養価について

黒豆(黒大豆)は大豆の品種の一つであり、栄養価としても大豆とほぼ同じとされています。ただ一点、大きく大豆と異なるのは黒豆の“黒”色の元ともなっている色素成分アントシアニンを含むことが挙げられます。アントシアニンはブルーベリーや茄子などにも含まれているフラボノイド系ポリフェノールの一種で、非常に高い抗酸化力を持つと考えられています。また目の網膜に存在するロドプシンというタンパク質の再合成を促す働きがあることから、視機能の保持・改善効果が期待できる成分としても注目されています。

アントシアニンを含むことから黒豆は大豆(黄大豆)よりも高い抗酸化作用を持ち、疲れ目の軽減などにも役立つと考えられています。大豆も肥満予防やダイエットサポート効果が期待されていますが、黒豆に含まれているアントシアニンにも脂肪合成・内蔵脂肪の低下が報告されているため、ダイエットにもより効果的なのではないかと考えられています。ダイエットやアンチエイジングなど美容面のサポートに繋がる健康茶として、黒豆茶がブームになった時期もありましたね。

また黒豆には大豆と同じく大豆ペプチドや大豆イソフラボンなども含まれています。このため栄養補給源としても非常に優れた食材であり、上記で紹介したような大豆に期待されている健康メリットは概ねカバーしていると言えるでしょう。栄養としてだけで見ると黒豆の方が大豆よりも優れているという見解が多いようです。

↓黒豆の詳細はこちら

大豆と黒豆の違いまとめ

大豆には様々な種類があり、一般的に単に「大豆」といった場合は表面に黄色がかった“黄大豆”のことを指しています。黒豆は厳密に言えば“黒大豆”であり、大豆の品種の一つ植物としては大豆(黄大豆)と黒豆(黒大豆)は品種が違うだけという扱いになり、味にも大きな差はありませんが黒豆の方が甘さ・香ばしいようなナッツ様の風味を感じると表現される方もいらっしゃいます。

栄養価としても大きな違いはありませんが、大きな違いとして黒豆にはアントシアニンが含まれていることが挙げられます。このため大豆よりも黒豆は高い抗酸化作用を持つと考えられ、アンチエイジングに適した食材とされています。またアントシアニンは目に存在するロドプシンの再合成を促す働きが報告されている成分のため、目の疲れやかすみなどが気になる方には大豆よりも適していると言われています。目の不調の原因全てがロドプシンの再合成低下によるものではありませんので効果については意見が分かれますが、目の健康維持をサポートしてくれる食材であると言えるでしょう。そのほかアントシアニンには抗アレルギー作用や肥満予防効果なども期待されています。

アントシアニンを含むことから、健康・美容をサポートするための食材としては黒豆のほうが優れているという説が多くなっています。だたし黒豆は一般的な大豆と比べると収穫量が少なく高価な傾向。大豆(黄大豆)であれば納豆や豆乳・豆腐などの加工品も合わせると様々な料理に活用できますが、黒豆の場合は毎日食卓に登場するかというと微妙な所。レトルトパウチに入った蒸黒豆なども販売されていますが、活用幅の広さという点では黄大豆の方に軍配が上がるかもしれません。

黒豆・大豆摂取の注意点

大豆も黒豆もエストロゲンと似た構造を持つ「大豆イソフラボン」が含まれています。大豆イソフラボンにどの程度エストロゲンとしての作用があるかはさておき、大豆イソフラボンの過剰摂取は月経不順や乳ガン・子宮ガン・子宮筋腫などのエストロゲン依存性疾患の発症リスクが高まる可能性があることが指摘されています。

通常の食生活の中で大豆や黒豆を食べる程度であれば問題はないとされていますが、サプリメント類と併用する場合には注意したほうが良いでしょう。食品安全委員会による1日あたりの摂取目安量の上限値は70~75mg、サプリメントなどの健康食品による上限値は30mgとされています。また婦人科系の疾患がある方・ホルモン関係の治療を受けている場合などは医師に摂取上限量を確認するようにして下さい。

Shareこの記事をシェアしよう!

Matched Contentこちらの記事もオススメ