【胡桃】クルミの栄養・効果

クルミ(胡桃)イメージ

クルミ(胡桃)とは

クルミはヨーロッパ南西部~アジア西部が原産と推測されるクルミ科クルミ属の落葉高木の総称で、鬼胡桃や姫胡桃などさらに細かい種に分かれおり、食用くるみとして利用しない種類もあります。北半球の温帯地域に広く分布し、日本にも古くから自生していたものや明治以降に品種改良された栽培種があります。

現在クルミは世界中60カ国以上で栽培が行われておいます。食用だけではなく、木部は高級家具材や燻製用のスモークチップ、殻はスタッドレスタイヤ、油は油絵具や木工品仕上げ剤など様々なことに利用されています。アメリカ合衆国大統領の指揮台もクルミ(ウォールナット)材なのだとか。

食用ナッツとして日本ではおつまみ用・製菓原料の印象が強かったくるみですが、近年のナッツブームの影響もあり海外のようにサラダやメインディッシュなど利用の幅も広がっています。またくるみの栄養価からの健康効果は勿論のこと、殻付きクルミを握ることでも老化防止効果があることや、くるみ割り器(クラッカー)で殻が綺麗に割れた時の快感を味わう、など「殻」の利用込みで親しまれているようです。

クルミの歴史

クルミは紀元前7000年頃から人類が食用としていたと考えられており、人類が食用していた最古の木の実とも言われるほど長い歴史を持ちます。古代ギリシア人により栽培だけではなく品種改良も行われるようになり、ローマ人はヨーロッパから一部北アフリカまで栽培圏を広げます。

日本でも縄文時代の遺跡からクルミが発見されており、DNA鑑定では野生種ではなく栽培種であったことが判明しています。書面としては平安時代に編纂された『延喜式』に貢納物として、984年に編纂された医学書『医心方』には効能ある食材として記述が見られます。ちなみに胡桃は「胡桃仁(コトウニン)」という生薬名で漢方にも用いられています。

1700年代後半にはフランシスコ会の神父によってアメリカ・カリフォルニア州にくるみが持ち込まれます。1867年には「くるみ産業の父」とも呼ばれるジョセフ・セクストンが商業としてカリフォルニア南部のサンタバーバラでクルミの栽培を開始します。その後より栽培に適した州北部へと栽培地は移動し、栽培技術の確立とともに生産性を高め、現在カリフォルニアは食用くるみの主産地となっています。

クルミはこんな方にオススメ

  • 血糖値が気になる方
  • 生活習慣病が気になる方
  • 老化が気になる方
  • 認知症の予防
  • 記憶力や集中力を高めたい
  • 不眠・精神的に不安定な方
  • 疲労時・病後の栄養源として
  • 便秘の予防・改善に
  • ダイエットのサポートに
  • 肌のハリ・潤いの維持
  • 肌荒れ・乾燥肌の改善
  • 抜け毛や白髪の予防・改善

クルミ(胡桃)の主な栄養・期待される効果

クルミは60~70%が脂質で、そのほかにビタミンやミネラル、食物繊維などを含みます。近年はオメガ3系脂肪酸(α-リノレン酸)の含有量がナッツ類の中で高いことから老化防止(アンチエイジング)やダイエットに役立つとして注目を集めています。

滋養強壮・疲労回復

高エネルギー食であり、脂肪やタンパク質が消化吸収されやすいという特徴のあるクルミは、古くから滋養強壮薬として利用されてきた歴史があります。消化吸収が良いため高齢者・小児・病中もしくは病後の回復食にも適している考えられています。また糖代謝を促進するビタミンB1やタンパク質の代謝を促進するビタミンB6などもクルミには含まれています。エネルギー転換を早め、疲労回復に有効であると言われています。

精神安定・安眠サポート

クルミは睡眠ホルモンとも呼ばれるメラトニンの原料物質「トリプトファン」というアミノ酸を多く含有しています。クルミを食べるとメラトニンの血中濃度が3倍に上昇するとの報告もなされていますし、民間療法としても「眠れない時にクルミを食べる」ということが古くから実践されてきたので不眠の改善に効果が期待出来ます。

また、オメガ3脂肪酸(α-リノレン酸)には抗うつ作用が期待されていますし、トリプトファンも精神安定に役立つセトロニンの原料になります。その他にも疲労回復効果があるビタミンB1、精神安定に有効とされるカルシウムやマグネシウムなども含まれていることから、様々な成分の複合効果によってクルミはイライラ・気分の落ち込み・神経疲労などの精神状態を回復させ精神を安定させる働きもあると考えられています。

ただしクルミはカルシウムが多いと言われていますが成分分析表上のカルシウム含有量は100gあたり85mg。実際に食べる量(クルミ4個前後≒20g)の場合は17mgとなりますから、カルシウム補給に重点を置く場合は別の食材を選んだほうが良いでしょう。

抗酸化・老化予防

クルミはポリフェノール含有量が多く、約30gのクルミでりんごジュースや赤ワイン一杯以上のポリフェノールを上回ると言われています。特にくるみの薄皮(種皮)部分にはクルミポリフェノールが豊富であること、ローストすることで倍近くポリフェノール量が増加することも報告されています(※米スクラントン大学のジョー・ヴィンソン博士の研究報告)。

クルミにはポリフェノール以外にもオメガ3脂肪酸やビタミンEなど老化防止に役立つ栄養成分が含まれています。成分分析表の簡易版ではビタミンE=α-トコフェロール型の数値となっているため100gあたり1.2mgとさほど多くないように見えますが、クルミに多いのは「γ-トコフェロール型ビタミンE」と呼ばれるタイプ(23.6mg/100g)でこちらにも抗酸化作用が認められているほか、ナトリウムバランスの調整機能(むくみ改善機能)や美白効果、α-トコフェロール細胞吸収を促進させる働きなども報告されています。

生活習慣病予防

α-リノレイン酸は体内でEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)に変換され、悪玉コレステロールや中性脂肪値の低下、動脈硬化予防、血管の弾力性向上などに有効と考えられています。クルミはα-リノレン酸を豊富に含むほか、抗酸化物質、コレステロール低下などに有効とされてるリノール酸(オメガ6系脂肪酸)なども含まれており、心臓病・脳溢血・脳卒中・糖尿病・高血圧・肥満などの生活習慣病に有効と考えられています。

※クルミの脂質で最も多いのはオメガ6系脂肪酸のリノール酸。少量であれば悪玉コレステロールの低下や血栓予防に有効とされていますが、摂りすぎは逆効果になることが指摘されている成分ですから食べ過ぎには注意しましょう。

血流改善・冷え性軽減

クルミに含まれているオメガ3系脂肪酸(α-リノレン酸)は悪玉コレステロールを減少させることで血液サラサラ効果がありますし、血管の弾力性を高める働きもあると考えられています。そのため血流の改善に繋がることで血行不良による冷えの緩和・改善にも有効とされています。

ちなみに漢方でもクルミ(胡桃仁)は「助陽薬」に分類される食べ物で、体を温め、腎を強くし気を補う食材とされています。オメガ3系脂肪酸の働きが注目されるようになったのは長い歴史から見れば最近のことですが、経験医学である漢方でも認められていた存在と言えるでしょう。

記憶力向上・認知症予防

DHA(ドコサヘキサエン酸)は脳を構成する神経細胞膜の中に存在し、脳の神経伝達物質の生成に関係していると考えられています。脳神経伝達物質が増加することで脳内の情報伝達が活性化され、記憶力や集中力の向上に繋がると考えられています。加えてオメガ3系脂肪酸には血管の弾力性を高める・赤血球の柔軟性を向上させる働きもあり、小さな脳血管障害(脳梗塞など)を起こすことで悪化する脳血管性認知症の予防にも効果が期待されています。

クルミは体内でDHAに変換されるα-リノレン酸を含んでいます。またビタミンEやミリセチン(フラボノイド)などの抗酸化物質や、神経伝達物質「アセチルコリン」の原料となるコリン、同様に神経伝達物質の生成に必要なトリプトファンなどを含んでいることことも合わせ、クルミは脳機能の向上・認知症予防や症状緩和に効果が期待されています。

肥満・糖尿病予防

クルミは良質な脂質とタンパク質を含み、食物繊維含有も多いため、代謝を向上する働きや満腹感の維持に役立つと考えられています。世界各国で行われた実験でも定期的にクルミを摂取した被験者には体重増加は見られなかった事が報告されており、低脂肪食よりも適度な脂質を摂取した方が減量効果が出やすい・減量効果の持続期間が長くなるなどの結果が出ています。

またクルミは糖質含有量が100g中4gと非常に低いため、糖尿病予防や治療における糖質制限時の栄養補給源としても役立ちます。近年はダイエットにおいても脂質よりも糖質の摂取を控える方が効果的であるとする考え方が主流であり、糖質が低いクルミは適量(20g前後)の摂取であれば血糖値低下やダイエットに有効であると考えられています。

2型糖尿病(肥満や生活習慣・ストレスなどから発症する糖尿病)患者の場合、動脈硬化などの合併症を引き起こす可能性も高いと言われていますが、オメガ3系脂肪酸や抗酸化物質を豊富に含むクルミには合併症リスクを低下させる働きも認められています。インスリン治療を受けていない過体重の成人糖尿病患者に1日30mgのクルミを摂取してもらったところ、空腹時の血糖値が優位に低下したとの報告もなされています。

便秘予防・改善

クルミは100gあたり7.5gの食物繊維を含み、その大半が不溶性食物繊維です。また豊富に含まれている脂質(油分)は腸内での便の移動や排泄をスムーズに行う効果が期待出来ます。不溶性食物繊維も脂質も、腸の蠕動運動を助け便の排泄をスムーズにしてくれますから、日本人に最も多いとされる弛緩性便秘の改善に高い効果が期待出来ます。便秘の改善に利用する場合は、タンニンを多く含む種皮を除いて食べたほうが良いでしょう。
クルミは漢方や薬膳でも「腸を潤し便通を促す」食品として利用されています。

美肌・美髪保持

クルミはアンチエイジング、美肌・美髪作りなど美容食としても人気ですが、実は古くから肌に潤いを与え、髪を黒くするなどの美容効果があることが知られていた食材でもあります。中国清朝の西太后もまたクルミをすり潰した「クルミ汁粉(胡桃酪)」を愛飲することで老後も美肌を保っていたと言われています。

成分的に見てもクルミにはポリフェノールやビタミンEなどの抗酸化物質が含まれていますし、オメガ3脂肪酸(α-リノレン酸)と合わせて血液をキレイにする働きや血行改善効果が期待出来ます。そのため肌の老化防止や、栄養不足による肌のゴワつきや乾燥の改善に役立ってくれるでしょう。

その他にもクルミは代謝を促進させるビタミンやミネラルを含みますし、精神面でのストレス緩和や不眠症改善などにも効果が期待出来ます。これらの働きと血行改善効果が相乗することで肌荒れの改善・ターンオーバー正常化・シワやたるみの予防・白髪や抜け毛予防・肌と髪に栄養を行き渡らせハリや潤いを保つなど、様々な美容効果が期待出来ると考えられます。

クルミ(胡桃)の選び方・食べ方・注意点

商品として販売されているくるみの中には風味を良くするなどの目的から、塩分添加やオイルコーティングされたものが多くあります。健康維持を目的として摂取する場合には逆効果となってしまう危険性がありますので、コーティングなし無塩のものを選ぶようにしましょう。ローストした方が抗酸化力がアップすると言われていtますので、トースターなどで軽く焼いて食べると良いでしょう。

脂質が多く酸化しやすい傾向にありますので、開封後は密閉容器に入れて冷蔵庫で保存するようにしましょう。臭いが移りやすいので、臭いの強い食品と一緒に入れないようにすると風味を損ないません。

クルミのオススメ食べ合わせ

  • クルミ+牛乳・鶏卵・昆布・トウモロコシ
    ⇒アンチエイジングに
  • クルミ+ハチミツ・セロリ・ゴマ
    ⇒血行促進・便秘改善に
  • クルミ+玉ねぎ・納豆・アスパラガス
    ⇒生活習慣病予防に
  • クルミ+シナモン
    ⇒老化予防・体を温める

クルミ(胡桃)の民間療法

同グラムの胡桃と胡麻を磨り潰したものに熱湯を注いで飲むと便秘解消に役立つと言われています。

胡桃と生姜を細かく刻むんだもの食べる・もしくはすりつぶして熱湯で溶いて飲むと咳止めに良いそうです。