スイカの種とは
子供の頃などに「スイカの種を食べると盲腸・虫垂炎になるから、食べてはいけない」と言われたことがある方もいらっしゃるかと思います。お腹から芽が出るというのは大人になれば否定できますが、年齢を問わず食べるのは良くないと思われがちな存在でした。近年では生のまま食べると消化には悪いものの、そのまま排泄されるということが認知されるようになっています。
食用とするのは種子の黒い外殻を剥いた中にある白い部分のみと小さいですが、あっさりとしたアーモンドのような風味でヤミツキになる方もいらっしゃるよう。輸入されたスイカの種を買ってスナック代わりに食べる方・果物として食べた後のスイカの種を取っておいて炒めて食べる方も増えていますし、シード類の中でも脂質が低くタンパク質が多いのでダイエットのお供としても取り入れられ始めています。
ちなみにスイカの種は中国や台湾では以前から“西瓜子”もしくは“黒瓜子”と呼ばれ、お酒のおつまみやお茶うけ・お菓子などとして食べられてきた食材。松の実などと共に月餅の餡の材料としても利用されていますので、もしかすると知らずのうちに口にしていたことがある方もいらっしゃるかもしれません。また「西瓜子仁」となると生薬名で薬用としても利用されていますし、中国圏だけではなくタイなどアジア地域でもおやつとして食されています。
スイカの種の歴史
スイカの原産はアフリカ中部と推測されています。5000年前のリビアの集落遺跡からは種子が発見されていますし、4000年以上前の古代エジプトの壁画においてもスイカが描かれているものが発掘されています。しかし当時の果肉はまだ苦味が強く、主に種を食していたのではないかと考えられています。カボチャなどと同様に種子のほうが食用の歴史が長いということもあり得るでしょう。
古代エジプトではスイカの栽培・苦味を和らげる改良が行われるようになり、水分補給源としてスイカが重宝されるようになります。3000年前頃にはギリシアに、2000年前頃にはローマ帝国に伝わり、地中海沿岸地域で栽培が行われ次第に甘い現在のスイカのような味に改良されていきます。
11~12世紀頃になると中国にスイカが伝わり、「水瓜(水分の多い瓜)」「夏瓜(夏に出回る瓜)」「西瓜(西域から伝わった瓜)」という現在私達が使っている名前が付けられます。日本に西瓜が伝わった時期については諸説ありますが『鳥獣戯画』などにもスイカと思われる絵があることから、古ければ中国伝来とほぼ同時期である12世紀頃までに伝わっていたのではないかと考えられています。江戸時代中期までは赤い果肉が不吉とされあまり食用はされなかったそう。
スイカの種はこんな方にオススメ
- 手軽な栄養補給源として
- ミネラル不足が気になる方
- 疲労回復・体力アップに
- 代謝アップに
- 老化・生活習慣病予防
- 貧血の予防・改善
- 妊娠中・授乳中の栄養補給
- ストレスが多いと感じる
- イライラや落ち込みなどに
- むくみ・便秘対策に
- ダイエットサポート
- 冷え性・血行不良の緩和
- 美肌維持・アンチエイジングに
- ストレス性の肌荒れ・ニキビに
スイカの種の主な栄養・期待される効果:前半
※栄養成分の含有量は日本食品標準成分表“種実類/すいか/いり、味付け ”の数値を記載させていただいております。加工法や調味料の有無などで差異が生じると考えられます。
疲労回復・体力増強
スイカの種にはカリウム・マグネシウム・鉄・亜鉛などのミネラルが豊富に含まれています。体内でのミネラルの用途としては、骨を丈夫にするカルシウム・血液を作る鉄分などがよく知られていますが、その他に酵素の働きを助ける「補酵素」として消化・吸収・老廃物排出・エネルギー産生、タンパク質や神経伝達物質の合成、免疫活動などのあらゆる生命活動に関係しています。
そのためミネラルを不足なく摂取することで栄養吸収から代謝までを円滑に行えるようになり、疲労の回復を助けたり、基礎体力を増やす働きがあると考えられています。脂質が多いためエネルギー源としても役立ちますし筋肉の元となるタンパク質も豊富に含まれていますから、運動時のサポートとして役立ってくれるでしょう。生薬(西瓜子仁)としても滋養強壮に用いられています。
貧血予防・妊娠中の栄養補給
スイカの種は100gあたり5.3mgと鉄分を豊富に含んでいます。大さじ一杯(6g)の摂取でも約0.35mg=プルーン(生)やライチなどの果物100g摂取以上の鉄分が摂取できる計算になりますから、手軽な鉄分補給源として役立ってくれるでしょう。赤血球膜の生成に必要な亜鉛も100gあたり3.9mg含んでおり、一日推奨量が男性9mg・女性7mgであることを考えると十分補給源として役立つ含有量があります。
鉄分・亜鉛の含有量で言えばカボチャの種(パンプキンシード)のほうが豊富ですが、造血に関わるビタミンの1つである葉酸含有量は120ugとスイカの種が上回ります。またフィトエストロゲンを含むカボチャの種に対してヒマワリの種はホルモン様物質を含んでいないため、妊娠中や授乳中などデリケートな状態時においてより安全性が高いと考えられます。
精神安定・ストレス対策
スイカの種はセロトニン・ドーパミン・ノルアドレナリンなどの神経伝達物質の原料となるアミノ酸「トリプトファン」を豊富に含んでいます。100gあたりのトリプトファン含有量は410mgとされており、カボチャの種(510mg)とヒマワリの種(310mg)の中間に位置しています。神経伝達物質の合成を助けるマグネシウム・亜鉛・ビタミンB6などの栄養成分についても群を抜いて多いということはありませんが、全体的にバランス良く含まれているのがスイカの種の特徴と言えそうです。
これらの成分を不足ない状態にすることで脳を活性化させる・リラックス状態を作りやすくなると考えられることから、スイカの種はストレスケアや精神安定にも役立つと考えられます。睡眠ホルモンとして知られるメラトニンはセロトニンと密接な関わりがありますから、不眠(特にストレス性の不眠)対策としても役立ってくれるかもしれません。
生薬「西瓜子仁」も鎮静作用を持つとされ、イライラなどの緩和に利用されているようです。中国で食前に食べられているもの気持ちを落ち着け、ゆったり食事を行うためだと言われています(※消化促進の働きがあるためという説もあります)。
生活習慣病の予防
簡易版の栄養成分表で見るとスイカの種はビタミンE含有量が少ないと思われがちですが、一般的にビタミンEとして表示されるα-トコフェロールの含有量は低いものの、クルミなどと同様に「γ-トコフェロール」と呼ばれるビタミンEが100gあたり19.5mgと多く含まれています。α―トコフェロールよりも劣るものの抗酸化作用は期待できますし、ナトリウムバランス調整機能がありカリウムなどと相乗することで高血圧予防に役立つと考えられています。
また脂質もリノール酸やオレイン酸など血中コレステロール値低下に役立つ不飽和脂肪酸が主体ですから、血液を綺麗にする・血管をしなやかに保つ働きが期待できるでしょう。抗酸化ミネラルと呼ばれる亜鉛・マンガン・セレンなども豊富に含んでいますし、マグネシウムやカリウムなど高血圧予防に役立つミネラルも摂取することが出来ます。不飽和脂肪酸やビタミン・ミネラル・食物繊維類の働きが複合することで、糖尿病・高脂血症・動脈硬化(心筋梗塞、脳梗塞)などの生活習慣予防にも有効と考えられています。