松の実とその栄養成分・効果効能
|女性サポートにも嬉しい食材? 摂取量・注意点とは

食べ物辞典:松の実

自己主張は少ないけれど、適度な油分と甘み・コリコリした食感を加えてくれる松の実。中華料理や薬膳料理という印象もありますが、ヨーロッパ・アメリカでも食されている食材の一つで、人間は旧石器時代から松の実を採集して食べていたとも言われていますよ。古代中国では不老長寿の妙薬と信じられていた食材の一つですし、近年は栄養補給だけではなく朝鮮五葉松などに含まれているピノレン酸(オクタデカトリエン酸)による食欲抑制作用からダイエット・美容サポートにも注目されています。そんな松の実の種類や歴史、栄養価や期待される健康メリットをご紹介します。

松の実のイメージ画像:食べ物辞典トップ用

和名:松の実
英語:pine nut

松の実のプロフイール

松の実とは

サムゲタンなど“おうちで出来る薬膳系レシピ”の材料として登場することも多い松の実。中国や韓国など東洋系の料理で使われるイメージがある方もいらっしゃるかもしれませんが、イタリア他ヨーロッパや中東・北米など世界中で料理に活用されている食材の一つ。例えばイタリアンではジェノベーゼソースの材料としてバジルニンニク・オリーブオイルの加えて松の実が使用されていますし、フランス南西部で食べられているスモーク鴨&フォアグラのサラダ・ランディーズ(salade landaise)でもトッピングとして定番。ヨーロッパまではクッキーやタルトなど焼き菓子類にも松の実が使われており、中東や南アジアでもサモサやデザート類まで広く使用されています。そのほかニューメキシコ州ではローストした松の実で風味を付けたパインナッツコーヒーもしくはピニョンコーヒーも名物。意外と松の実はワールドワイドなナッツと言えるかも知れませんね。

松の実は英語でもそのまま“Pine nut(パインナッツ)”もしくは“Pine seed(パインシード)”と呼ばれています。呼び名の通り正体は松の木にできる種子で、松に出来る球果(松ぼっくり/松笠)の鱗片の裏側に入っている種子を食用としています。と言っても松かさの中に含まれている種子には茶色い殻があるので、食べるのはその殻を取り除いた“胚乳”と呼ばれる部分。庭木や街路樹として私達が見慣れている松の木、クロマツやアカマツなどは松ぼっくりからも想像がつくように種子が小さすぎて食用には適していません。食用として使われている松の木は世界的に見て約20種類。日本で松の実として流通しているものは朝鮮半島と日本に分布している朝鮮五葉松(チョウセンゴヨウ)、もしくは中国の華山松であるようです。

そのほか食用種としては北米のピニョン松とアメリカ一葉松、ヨーロッパのイタリア笠松などが代表的。ヨーロッパの松の実はアジア品種よりも長いことが特徴で、ピニョン松は全体的に大きめなことが特徴。ちなみにイタリア語で松の実は“pinoli”と呼ばれており、アメリカでもpinoliもしくはpignoliと呼ばれる事もあるようです。松の実はユーラシア大陸と北米を中心に食されていますが、実は人工的に受粉させて栽培することが難しいこと、木が種子を付けるようになるまでに最低15年・種子の再収穫までに18ヶ月~長いものであれば3年もかかるような種類もあることからお値段は比較的高めとなっています。このため松の実がない場合はアーモンドなど他のナッツを砕いて使うようアドバイスされているレシピも多いですよね。

松の実は単体で食べるにはあまり味がせず、ナッツ特有の食感・脂質感がある程度なので、日本ではナッツブームの最中でも大流行と言えるほど松の実は脚光は浴びなかったように感じられます。しかし松の実に含まれているピノレン酸という脂肪酸に食欲抑制作用が報告されていると紹介されたこと、地中海式ダイエットブーム・有名モデルが取り入れていることが報じられた事でダイエットサポートに役立つ可能性がある食材として期待されています。また、栄養補給源として優れていること、アンチエイジングや美肌サポートに嬉しい成分が含まれていることが評価されていますよ。かつて中国ではクコの実と同じように「松の実を1日に3回、毎日食べ続けると仙人になれる」と信じられていた関係から、現在でも滋養強壮に欠かせない食材として松の実は漢方や薬膳に使用されているそうです。

松の実の歴史

松の木は世界中、特に北半球の広い範囲に分布しています。食用に適しているとされるものもヨーロッパや中国を含むユーラシア大陸や北米など各地にあるため、旧石器時代には様々な地域で松の実を採取し食べていたと考えられています。日本以上に普段の食事の中で松の実を使用しているヨーロッパでも、古代ギリシア・ローマ時代には松の実が食されていたことが分かっていますし、ポンペイの遺跡からも松の実が発掘されています。彼らは松の実を蜂蜜に漬け込んで保存していたと伝えられていますし、それを媚薬もしくは精力増強剤のような感覚で使用していたという説もあります。また、旧約聖書『ホセア書』に書かれている“私は緑の糸杉のようだ。あなたはわたしから実を得る”という言葉の糸杉はサイプレスではなく、スイートパインを指しているという見解もありますよ。

中国でもおそらく文献としての記録がない時代から松の実は食されていたと考えられています。記録としては2000年近く前、後漢期に記されたとされる『列仙伝』という説話集には“松の実を食べ続けたことで不老長寿の肉体を手に入れて仙人になることが出来た”というエピソードが掲載されているそう。おそらくその少し後に書かれたとみられる、漢の武帝の生涯を著した『漢武内伝』の中でも、漢の時代という時代設定の中で松の実を食べている描写があるようです。後に記された『開宝本草』や『本草綱目』などの薬学書にも薬効がある食材として記載が残っています。

中国では松の実を「長寿果」と呼ぶそうですし、こうした伝説や薬用としての記述から、古くから仙人の霊薬・不老長寿の薬と考えられていたことがうかがえます。薬膳料理や宮廷料理などに使われることが多いのも納得と言えますね。ちなみに現在でも松の実は“海松子(カイショウシ)”もしくは“松子仁(ショウシジン)”などの呼び名で、補気養血・潤肺潤腸・潤沢皮膚などの効能を持つ生薬として紹介されることもあります。しかし、漢方製剤へ配合される事はほぼなく、薬膳もしくは栄養補給に取り入れるのが主のようです。

日本では何時頃から松の実を食べていたのかは断定されていません。江戸時代に記された『本朝食鑑』には“松子”として食味の評価に加えて、最近朝鮮半島から移植しているが実は出来ていないという記載があります。そのほか『大和本草』には日本の松の実より朝鮮から輸入されたものの方が美味しいことが書かれているそう。こうした記述から薬効食材として松の実を取り入れるという感覚は江戸時代にあった・江戸時代に広まったと考えられています。生薬として奈良や平安時代に伝わっていた可能性も否定できませんが、日本に自生する松から採れる松の実は極小で美味しくなかったので広まらなかったという部分もあるかもしれません。現代に至るまで日本では中国・朝鮮半島ほど松の実を重視した文化や民間療法も存在していませんしね。

松の実の栄養成分・効果について

栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

松の実は全体重量の7割以上と、脂質を非常に多く含む食材です。100gあたりのカロリーも690kcalとナッツ類でも高めですが、鉄分や亜鉛・マグネシウムなどのミネラルが豊富で、ビタミンEやビタミンB群も多く含んでいますので栄養補給源として役立ってくれるでしょう。

また、脂質が多いと言うとマイナスイメージを持たれがちですが、オレイン酸やリノール酸、様々な効果が期待されている松の実特有のピノレン酸(P-リノレン酸)などの不飽和脂肪酸の含有が多いため適量であれば肥満や生活習慣病の原因となる可能性は低いとされています。

サラダと松の実イメージ

松の実の効果効能、その根拠・理由とは?

疲労回復・栄養補給に

松の実はビタミンやミネラルを豊富に含むナッツ類ですが、ビタミン類としてはビタミンEとビタミンB群が豊富に含まれています。ビタミンB群の中でも100gあたり0.61mgとビタミンB1を多く含むこと・良質な脂質やタンパク質の補給源となることから疲労回復や栄養補給源としても適していると考えられます。またビタミンEの抗酸化作用も疲労感の軽減や、酸化による免疫力低下予防に繋がるでしょう。

松の実が滋養強壮に良いというのもこうした栄養価の補給に役立つという面も関係しているでしょう。ただしビタミンCを含むという文献もありますが『日本食品標準成分表』によるとビタミンCは生であればTr/炒り松の実であれば0となっていますから、ビタミンC補給源としては期待しないほうが確実です。

便秘予防・改善に

松の実は東洋医学の考え方では「腸を潤し便通をよくする」食材とされており、便通を良くする働きを持つ食材ツィても用いられています。成分的に見ても食物繊維が100gあたり6.9g含まれていますから、10g程度の摂取でグレープフルーツ100gと同程度の食物繊維を補給できると考えられます。大量に摂取するものではありませんから主な食物繊維補給源とは言い難いですが、通常の食生活で不足しがちな食物繊維をカバーするという点では十分に役立ってくれるでしょう。

また松の実に含まれている脂質のうち、オレイン酸などの不飽和脂肪酸は腸内で潤滑油のような働きをして便の移動・排泄をスムーズに行うのを助ける働きを持つという説もあります。このことからも「腸を潤し便通を良くする」と言われるに近い働きが期待できます。ゴマと似た感覚の食材と言えますね。ただし松の実だけを大量に食べても食物繊維の種類不足・バランス不足によって便秘が悪化する可能性も考えられます。水分や野菜・果物などと組み合わせてバランスよく食べるようにして下さい。

貧血・冷え性対策に

松の実は鉄分が100gあたり6.2mgと豊富で、亜鉛も100gあたり6mgと多いことから「陸の牡蠣」とも呼ばれています。鉄分は赤血球を作っているヘモグロビンの成分として利用され、不足することで起こる鉄欠乏性貧血がよく知られています。亜鉛は赤血球膜に必要な成分で不足すると赤血球が脆くすぐ壊れてしまう=活動性血球が減少し亜鉛欠乏性貧血と呼ばれる貧血を起こす可能性があります。このため亜鉛と鉄分の両方が摂取できる松の実は貧血の予防・改善にも役立つ食材と言えます。

造血に関わる栄養素は亜鉛と鉄分だけではありませんが、松の実は鉄分の優秀や利用をサポートしてくれる銅・赤血球合成に関わる葉酸などの補給としても役立ってくれるでしょう。加えて血行をサポートしてくれるビタミンEやナイアシンなどのビタミン類、赤血球を柔らかくすることで血液循環をサポートする働きが期待されている不飽和脂肪酸の一種ピノレン酸なども含まれていますから、血行不良性による貧血改善にも効果が期待されています。代謝を促進するビタミンB群も含まれていますから、貧血改善・血行促進と合わせて冷え性の軽減にも効果が期待できるでしょう。漢方や薬膳でも松の実は温性=体を温める食べ物に分類されており、体を温める働きがある食材とされていますよ。

アレルギー・かゆみ緩和にも期待

五葉松の実の特異成分とされるピノレン酸はリノレン酸(オクタデカトリエン酸)の一種とされる不飽和脂肪酸です。不飽和脂肪酸のうち大まかにオメガ6(n-6)系は炎症促進・オメガ3(n-3)系は炎症抑制方向に働き、対になる作用を持つことで免疫力能のバランスを取り合っているという見解もあります。オメガ3系:オメガ6系=1:4の比率で摂取するのが理想的とされています。しかし近年の食生活ではリノール酸などのオメガ6系の不飽和脂肪酸摂取が過剰で、脂質摂取のバランスが崩れていることからアトピーなどのアレルギーが起こりやすくなっているのではないかという事も指摘されています。

ピノレン酸はγ-リノレン酸の異性体でありオメガ6(n-6)系脂肪酸に分類されている成分ですが、リノール酸を痒みなどの炎症の原因物質に変化させる酵素の活性を抑制し、炎症物質の生成や分泌を防ぐ働きがあるのではないかと考えられています。このためピノレン酸はアレルギー・炎症・発熱などの炎症を抑制する=抗炎症・抗アレルギー作用を持つ成分として期待され、ピノレン酸を含む松の実や松の実油はアレルギー軽減に役立つのではないかと注目されています。また松の実はピノレン酸を含む脂肪酸全体のバランスも良いので、脂肪酸のバランスを整えるという面でも役立つのではないかという説もあります。

ダイエットサポートに

松の実に含まれているピノレン酸(オクタデカトリエン酸)は、食欲を抑制するホルモンであるCCK(コレシストキニン)の分泌促進作用があることが報告されています。このため松の実は食欲抑制・ダイエットをサポートしてくれるのではないかと期待され、体脂肪対策やダイエッター向けサプリメントなどにも配合されています。加えて、ピノレン酸やビタミンEなど血流をサポートしてくれる成分、代謝を促すビタミンB群なども含まれていますから食欲の抑制以外に代謝アップにも効果が期待出来ます。高脂肪食摂取マウスに松の実抽出物を摂取させた実験では体重増加・脂肪蓄積の緩和が見られたことが、閉経後肥満女性を対象に松の実を1日3g摂取してもらった実験では食欲減少がみられたことが報告されています。

食欲を抑えつつ代謝が向上すれば体脂肪・体重減少に繋がりますから、ダイエット中のおやつ代わりなどに取り入れてみても良いでしょう。便通が良くなることからもダイエットのサポートに繋がりますし、ダイエット中に起こりやすい貧血や冷え性の予防にも役立ってくれそうですね。ただし松の実は100gあたり690kcalと高カロリーなため、食べ過ぎには注意が必要。一日の摂取量の目安は10~20粒程度とされており、この位の量であればカロリーも30kcal~40kcal程度なので気にならないでしょう。

Sponsored Link

動脈硬化・高血圧予防に

松の実は100gあたりのビタミンE含有量が12.3mgと非常に多くアーモンドには劣るもののナッツ類の中でもトップクラスに入る存在。ビタミンEは「若返りのビタミン」とも呼ばれるように抗酸化作用を持つ脂溶性のビタミンのため、血中脂質が酸化して過酸化脂質となり血管を狭めてしまうことで起こる動脈硬化や血栓などの予防に役立つと考えられます。

ビタミンE以外にも松の実には悪玉コレステロール低減効果が期待できるピノレン酸などの不飽和脂肪酸が豊富に含まれています。ピノレン酸には血流をサポートする働きも期待されていますから、抗酸化作用と合わせて血流関係のトラブルを予防してくれると考えられます。また血液が無理なくスムーズに循環することをサポートしてくれるため、高血圧予防にも有効とされています。

美肌・美髪保持

ビタミンE含有が多い松の実は肌を酸化ダメージから守ることで、シワやタルミなどの肌老化予防としても役立つと考えられます。また松の実に含まれているピノレン酸はアレルギーや炎症を鎮める働き期待されていますし、ビタミンB群には肌トラブルを防ぎ健康な状態に肌を保つ働きがありますから、肌荒れの予防に効果が期待できるでしょう。そのほか間接的な働きとして鉄分や亜鉛による貧血の改善、ビタミンEやピノレン酸による血行促進から、血行不良によるクマ・くすみの改善、肌の新陳代謝を高めターンオーバーの正常化なども期待出来ます。

肌だけではなく、松の実は髪の健康維持にも有効と考えられています。これは鉄分などの造血に関わる成分・血行をサポートしてくれる成分が豊富なこと、良質な植物性脂質・タンパク質が含まれているため。髪や頭皮の原料と、それを行き渡らせるための成分を補給できることから美しい髪を維持するにも役立ってくれるでしょう。亜鉛には薄毛の原因となる男性ホルモン(ジヒドロテストステロン)の働きを抑制する働きもあるので美髪保持だけではなく抜け毛予防も期待できそうです。

目的別、松の実のおすすめ食べ合わせ

松の実の食べ方・注意点

松の実は脂質が多く、かつ小さいため酸化しやすいと言われています。購入時は鮮度が高いものを販売している信頼できる店舗を選び、密閉容器に入れて冷蔵庫で保存するようにしましょう。使い切れない場合は冷凍すれば3ヶ月以上持つとは言われていますが、使う分ずつ購入したほうが確実でしょう。異臭がするもの、買った時よりも苦味が強くなっていると感じたものは消費期限切れの可能性が大です。

松の実に含まれているピノレン酸は朝鮮五葉の松の実にしか含まれていないと紹介されることもありますが、wikipedia(ピノレン酸のページ)によるとシベリアマツほかマツ属の種子に含まれる成分とされています。

松の実の注意点

松の実、特に十分に加熱されていない松の実を食べることで金属的な味を感じることが報告されています。この摂食後数日から数週間続く味覚障害についてFDA(アメリカ食品医薬品局)では「明らかに有害な臨床的副作用はない」としており、時間が経てば治療せずとも自然と回復するものとしています。もしも味覚に違和感が出てしまって不安な方は医療機関を受信する際に、松の実を食べた事を伝えると良いでしょう。アレルギーなども全く無いわけではありませんので、極端な不調が出た・不安がある場合は専門家に判断してもらいましょう。

松の実は高カロリーかつ高脂質の食材です。炭水化物量が低い・不飽和脂肪酸が多く健康メリットがあるとは言われていても、過剰摂取はアレルギーの悪化や血栓など様々な病気の発症率を高める可能性も指摘されていますから、摂取量には注意しましょう。目安は一日15~20粒(4g)程度、多くても1日10g以内の摂取に留めると良いと言われています。

参考元:Eat Pine Nuts For These 3 Healthy Benefits松の種子技術開発研究会日本の民間薬 -その63-海松子(カイショウシ)