ハトムギ(鳩麦/はとむぎ)
-栄養価と効果効能・食の歴史-

鳩麦(ハトムギ)イメージ

鳩麦(はとむぎ)とは

日本でハトムギは穀物としてよりも“はと麦茶”や健康茶ブレンドの飲料類、またはハトムギローションなどの化粧品類として目にする機会が多い存在。しかしタイなど東南アジアの国々ではハトムギの殻を手で割って中身を食べるなど、気軽に食べられる「おやつ」としても親しまれている存在であり、最近は日本でも手軽な栄養補給としてや内側からの美容食として注目されています。お米と混ぜて炊く・スープや煮込みに加える・お菓子の材料として取り入れる方も増え、シリアルなどの商品も販売されていますね。

またハトムギは「薏苡仁(ヨクイニン)」という名前で生薬として利用されていることが知られています。イボ取りのあれですね。はと麦茶を作る場合は殻付きのまま、生薬として利用する場合は脱穀したもの、つまり外側の殻を取り除いた白く丸い部分のみを利用します。お米と一緒に炊いたり、サラダに入れるなどできる市販のハトムギ(精白ハトムギ)は薏苡仁そのものなのです。難しく考えなくても、手軽に毎日取り入れられる薬膳食材とも言えるでしょう。

植物としてみるとハトムギはイネ科ジュズダマ属に属する穀物。麦と言うとパンや麺の原料として主に利用される小麦の仲間のように感じますが、実は小麦はコムギ属(Triticum)と別属。“麦ご飯”などに使われており、食物繊維の多さが注目されている押し麦の原料である大麦はオオムギ属 (Hordeum)、ドイツパン・黒パンの原料として知られるライ麦はライムギ属(Secale)、オートムギやオーツ麦と呼ばれオートミールやシリアルの原料などに使われる燕麦はカラスムギ属(Avena)と全て同科異属となっています。余談ですが、植物部類として見るとハトムギは大麦や小麦などのムギ類よりも“トウモロコシ”に近い種類であると言われています。

ちなみにハトムギの同属には“ジュズダマ(学名Coix lacryma-jobi)”という植物がありますが、ハトムギはこれを栽培化したものと考えられています。お米にうるち米ともち米と同じように、ジュズダマは粳性・ハトムギは糯性でもあります。このためハトムギはモチモチとした食感と噛みごたえがあり、茹でたハトムギはサラダなど冷たい料理と組み合わせてもパサつかず食べられるという特徴もあります。冷製スープやぜんざいなど夏メニューに使われることが多いのも、体の熱をとる作用があると考えられているだけではなく“冷やしても美味しい”という点もあるでしょう。

鳩麦(はとむぎ)に含まれる栄養や成分に期待できる働き・巷で言われる効果効能の理由とは?

ハトムギは100gあたり13.3gと、スーパー穀物とも言われるキヌアと比べるとやや劣るものの、穀物の中ではタンパク質の含有が高い食材です。また食物繊維量が精白米の約2倍、そのほかにビタミンB1、鉄、マグネシウムなどのミネラルも若干含まれています。

ハトムギはこんな方にオススメ

  • むくみ・水分代謝が悪い方
  • 便秘気味・消化が悪い方
  • デトックスのサポートに
  • 疲労・疲労感が抜けない
  • 手軽に栄養を取りたい
  • 代謝を高めたい方
  • ダイエットのサポートに
  • 肌荒れが気になる方
  • ニキビ・乾燥肌対策に
  • 肌に透明感が欲しい方
  • 肌のポツポツ・イボ予防に
  • ターンオーバーの乱れに

下記ではこうしたお悩みがある方にハトムギが良いとされる理由や、むくみの特効薬・ダイエットのサポーターとして取り入れられている理由などを詳しくご紹介します。

便秘・むくみ対策

ハトムギに尿の排出を促進する働きがあるとされ、古くから民間療法などでも利尿薬のような感覚で使われてきました。栄養成分としてみるとカリウムなどの含有量はさほど多くはありませんが、東洋医学的な見方では血液やリンパ液の循環を促す=体に溜まった余分な水分が排出されると考えられているそう。そのためむくみの解消だけではなく、水分貯留が原因とされる雨の日に痛む頭痛・体のだるさ・重さの改善にも有効であるとされています。

また老廃物を排出し、血液などの循環が高まることからハトムギには高いデトックス効果が期待されています。まれに“ハトムギは食物繊維が豊富”と紹介されることもありますが、食物繊維量は100gあたり0.6gと白米よりは多いものの大麦・もち麦などと比べると劣ります。このため便秘解消に良いというのは白米よりは食物繊維が摂れるという点と、血流やリンパ液の流れが良くなることで老廃物の排泄促進や胃腸機能の向上(回復)が期待できるということが大きいと考えられます。

疲労回復・滋養強壮

ハトムギは穀類としてはタンパク質が多く、同グラムの精白米と比べると2倍以上のタンパク質を含んでいます。タンパク質含有が多い分アミノ酸の含有量も多くなっており、アミノ酸バランスも良い食材であると言われています。また白米よりも脂質代謝に関わるビタミンB2・タンパク質代謝に必要なビタミンB6が多く含まれていることから、ご飯に混ぜて炊くなど食事に取り入れる事で代謝を高めることに繋がると考えられています。

ハトムギは良質のタンパク質・アミノ酸が補給できる存在ですし、代謝を促すことで乳酸などの疲労物質の蓄積予防や分解(代謝)促進にも繋がると考えられます。加えて余分な水分の排出を促す働きが強いことから、水分によって胃液が薄まってしまっている状態を改善し消化を助ける働きがあるとも言われています。栄養補給による代謝促進と消化を促す働きが期待できることから、ハトムギは疲労回復・滋養強壮に役立つ食材とされています。

肥満・糖尿病予防

むくみ改善・デトックス効果が期待できることから、ハトムギはスリムな身体をキープしたい女性にも取り入れられています。100gあたりのカロリーとしては360kcalと白米とさほど変わりませんが、炭水化物量が若干少ないことやビタミンB群が多いことなどもダイエット向きと言えるかもしれません。近年はハトムギに含まれている「9-ヒドロキシ-オクタデカン酸」という成分が脂肪代謝促進することで、肥満予防に役立つ可能性があることも報告されています。

また細胞にグルコースが取り込まれるのを促す作用も報告されている事から、血糖値の急激な上昇を抑制するのではないかという説もあります。血糖値の変動が穏やかになればインスリンにって余った糖が脂肪に蓄えられるのを抑制することで肥満予防にも繋がりますし、糖尿病予防という面からも注目されているようです。

肌荒れ・ニキビ予防

ハトムギは“食べる美容液”と称されることもあり、美肌維持・イボや肌荒れ改善に役立つ穀物であると考えられています。古くはハトムギは溜まってしまった水分や老廃物の排泄を促し、代謝を高めることで肌を整えると言われてきました。現代でもハトムギに含まれるグルタミン酸、ロイシン、チロシン、バリンなどのアミノ酸は血流やリンパ液の流れをサポートする働きがあると考えられています。また不飽和脂肪酸の「コイクセノライド(コイクセノリド)」や「有機ゲルマニウム」など新陳代謝を促す成分が含まれていることも分かっています。

ストレスや加齢によってターンオーバーが乱れてしまうと角質層が厚くなり、肌のザラつきや保湿機能の低下による乾燥、毛穴詰まりによるニキビ発生などの原因となります。このため新陳代謝を高め、肌のターンオーバーを正常化させることで肌荒れを防ぎ若々しく美しい肌を維持することに繋がると考えられます。

ハトムギに含まれるコイクセノライドは特に角質細胞の代謝を活発化させると言われていますし、有機ゲルマニウムは酸素を細胞に運ぶサポートをすることで全体的な新陳代謝向上が期待できます。そのほかにもハトムギは代謝に関わる栄養素や肌細胞の元となる栄養素を含んでいますから、ニキビや乾燥などの肌荒れ予防・改善に役立つと考えられています。

美白・イボ対策

ハトムギに直接的にメラニン色素生成阻害などの働きはありませんが、肌コンディションを整えること、ターンオーバーを促すことなどから美白にも役立つ食材としても親しまれています。ターンオーバーが促進されることで出来てしまったシミを早く薄くすることにも役立ちますし、肌の凹凸や乾燥がキレイになることから肌のキメの細かくなり光を均一に反射する=透明感のある肌作りにも効果が期待できるでしょう。

そのほかハトムギ特有の成分と言われるコイクセラノイドには腫瘍抑制作用が確認されており、肌荒れだけではなく、ポツポツ・イボなどの予防改善に効果的と考えられています。また有機ゲルマニウムには免疫力アップや水素イオンを除去することで酸性からアルカリ性への体質改善効果があると言われています。これらの働きから炎症を起こしにくい肌の基盤を作ること、炎症の緩和、両方に役立つと考えられています。近年はアトピー性皮膚炎の改善役立つ可能性があるという研究報告もなされ、注目を集めています。

Sponsored Link

鳩麦(はとむぎ)の食べ方・注意点

ハトムギ(ヨクイニン)は中医学的には身体を冷やす食材と考えられており、冷え性の方・妊娠中の方の場合は摂取を控えたほうが良いとされています。金沢大学の研究によると殻付きハトムギ温水抽出エキスは冷え性の改善に対して有効性があるという報告もありますが、食材として一般的に用いられるものは外殻が外されていますから微妙なところでしょう。

ハトムギの効能や期待できる効果として“月経困難症の緩和”というものがありますが、こちらもハトムギの外殻に子宮収縮を抑制する可能性があることが報告されているものの、有効性があると考えられるのは外殻。そのため食材として脱穀・精白されたものを摂取する場合の効果としては期待しない方が良いでしょう。

ハトムギは鉄分が豊富で貧血予防に良いとする説もありますが、『日本食品標準成分表』に掲載されている数値としてはハトムギ100gあたりの鉄分含有量は0.4mg。白米の場合は100gあたり0.8gとなっていますから鉄分補給のために白米とハトムギを混ぜて炊く方法はお勧めできません。鉄分補給を第一に考える場合はアマランサスなどを取り入れたほうが確実でしょう。

効果アップが期待出来るハトムギの食べ合わせ

鳩麦(はとむぎ)の雑学

ハトムギ使用・食用の歴史

ハトムギ栽培の歴史は古く、インドのアッサム地方からミャンマーにかけての地域で始まったと考えられています。紀元前12世紀頃に現在の形に編纂されたと考えられている古代インドの聖典の1つ『リグ・ヴェーダ』にハトムギについての記載が見られることから、紀元前1500年頃には既にインドで栽培が広まっていたと考えられています。そこから推定すると、栽培開始や食用を始めたのは更に古い時代と言えるでしょう。

文献としても紀元前91年頃に記されたとされる司馬遷の『史記』にもヨクイニン(ハトムギ)の記述があります。また後漢時代初期の名将である馬援が持ち帰ったという伝承も残っているそうですから、紀元前1世紀~1世紀頃には中国へも伝わっていたと考えられます。後の後漢~三国時代頃に成立したと言われる中国最古の薬物書『神農本草経』ではハトムギは“上品”に格付けされています。副作用がなく長く服用することで体を健やかに保ち、不老長寿に良い食材として高く評価されていたことがうかがえますね。薬効高い食材として宮廷料理にも使われていたそうですし、美容に良いと考えられ“世界三大美女”の1人に数えられる楊貴妃が愛用していたとも伝えられています。

ハトムギの日本伝来時期については奈良時代~江戸時代まで諸説ありハッキリとは断定されていません。伝来してからしばらくは薬用植物として栽培・利用され、薬や薬膳料理の材料として富裕層が利用していたと考えらています。
ちなみにハトムギは明治時代以前までは四石麦(シコクムギ)や朝鮮麦(チョウセンムギ)などと呼ばれていました。ハトムギと呼ばれるようになったのは明治時代以降で、名前の由来としては鳩が好んで食た・鳩に似ていた・多く収穫できることから「八斗麦」だったものが変化したなどの説があります。

ハトムギについて分かる文献としては江戸時代(1708年)に刊行されたとされる『大和本草』がよく紹介されます。江戸時代にはイボ取り薬としても人気を集めていたそうですが、ハトムギ(ヨクイニン)がイボ取りに良いというのは漢方の効能ではなく、この本の中で貝原益軒が紹介した民間療法が始まりなのだそう。著者であり医師・本草学者の貝原益軒は、病後や産後の体力回復にハトムギを処方していたとも伝えられています。

ハトムギ活用法・民間療法

ハトムギの粉を水に1:2の割合で混ぜ、酢を少し加えたものを肌に塗るとイボ取り効果・美肌効果(肌がツルツルになる)があると言われています。またハトムギ茶を入浴剤として使用するとアトピーや肌荒れの改善、関節痛や神経痛緩和に良いとされています。

最近はお菓子作りなどに利用しやすい「ハトムギ粉」や、お砂糖(上白糖)よりも栄養価の高い「ハトムギ糖」という甘味料など、様々なハトムギ商品が販売されています。お米と合わせて炊くのが最も手軽な方法ですが、炒ったハトムギをおやつ代わりに食べる・はと麦茶を飲むなど利用しやすい形で取り入れてみください。

生薬としてのハトムギ:薏苡仁(ヨクイニン)の効能

薏苡仁は利水滲湿薬として利用され、水分代謝を整えることから主に利尿薬のような形で利用されます。そのほか効能として睡眠延長作用・免疫力向上・排卵誘起・抗炎症・抗腫瘍作用なども挙げられており、外用としてイボ取り・皮膚荒れや炎症の緩和にも用いられています。

性質は微寒性とされており、体を冷やすことで消炎・鎮静作用をもたらすと考えられています。体温を下げるための解熱薬としても利用されています。通常の利用では体をひやすい心配はほとんどないと言われていますが、冷え性の方は過剰に食べ過ぎないように注意しましょう。

薏苡仁(ヨクイニン)=ハトムギは滋養強壮に良いとされており、体力が低下している時にお米の代わりにハトムギを使った重湯・お粥を食べると体力回復に役立つとされています。薬物学者の貝原益軒と同じ使い方ですね。お粥をつくる場合にははどハトムギの量の7倍程度の水で3~4時間煮ると良いと言われています。体力の消耗が激しい時はもちろんですが、プチ断食のあとの回復食などにも適しているかもしれません。ただし胃腸が著しく弱っている場合は米10:ハトムギ1~2で作る「はと麦粥」の方が良いとする説もあります。こちらは疲れた胃腸を回復させるほか、便秘やむくみ解消効果もあると言われています。