タマリンドとその栄養成分・効果効能
|栄養豊富! ダイエットのお供にも嬉しい

食べ物辞典:タマリンド

タマリンドは豆のような独特の見た目が特徴的な食材。また日本でポピュラーとは言い難い果物ですが、ウスターソース・チャツネなどにも使われています。エスニック料理ブームの関係や、海外セレブが注目しているスーパーフード・スーパーフルーツとして紹介されたこともあり、少しずつ日本でも見かける機会が増えている食材と言えるでしょう。ミネラルやビタミンB群などを含んでいることも注目され、栄養補給やダイエット中のおやつとしても取り入れられていますよ。そんなタマリンドの歴史や栄養効果について詳しくご紹介します。

タマリンドのイメージ画像:食べ物辞典トップ用

和名:朝鮮藻玉(チョウセンモダマ)
英語:tamarind

タマリンドのプロフイール

タマリンド(朝鮮藻玉)とは

遠目で見ると芋虫のような、近くで見ると豆のような、不思議な見た目がインパクトのある食材タマリンド。日本では馴染みのない食材の一つではありますが、タイやインドなどのエスニック料理の人気が高まっている関係もあり少しずつ流通が増えてきています。スーパーフード・スーパーフルーツとして紹介されることもありますね。と言っても日本で東南アジア旅行のお土産に頂くような姿まんまのドライタマリンドはほとんど流通していませんが、ペーストや果肉をブロック状に固めたものはエスニック食材店などで販売されています。

植物としてはマメ科ジャケツイバラ亜科タマリンド属に分類される常緑の高木。和名はチョウセンモダマ(朝鮮藻玉)ですが、朝鮮半島ではなくアフリカが原産と考えられています。ちなみにタマリンド属は1属1種で、比較的近いジャケツイバラ亜科の植物としては仏教三大聖樹の一つ“ムユウジュ”があります。タイなどでは街路樹のような感覚で至る所に生えており、身近な樹木なのだとか。食用としている豆のような部分(果実)だけですが、葉は一部地域でお茶として飲まれていますし、木部は材木としてと、余すところなく利用されています。

タマリンドの果肉は基本的に酸味が強く、中国では酸豆や酸梅と呼ばれているのも独特の酸味に由来すると言われています。そのため多くは酸味を付けるための調味料として使われることが多く、魚の臭みを取るのにもよく用いられるようです。感覚としてはレモン汁をかけるのに近いのだとか。対して殻を剥いてそのまま酸味のある干し柿のような味の果肉を食べるものは、スイートタマリンド(マカーム・ワーン)という種類。これは果物を樹上で水分が20%になるくらいまで熟成させてから採取したものなので、生食に含まれるとする見方もあるそうですがドライフルーツに近いでしょう。干し柿と梅干しを混ぜたような、焼きいのも食感+杏子の駄菓子の味などの称されます。スイートタマリンドはそのまま食べる他、砂糖煮・ジャム・ジュースなどにも加工されていますよ。

日本で果物としては馴染みのないタマリンドですが、実は果肉の中に入っている黒い種子は増粘安定剤“タマリンドガム”、赤褐色の着色料“タマリンド色素”など食品添加物の原料としても使われています。またメーカーやお店にもよりますが果肉もウスターソース・チャツネ・カレー・トムヤンクンなどに使われていることもあるそう。知らずのうちに口にしたことがある可能性もありそうですね。もう少し味が分かりつつ好き嫌いの少ないものとしてはタマリンドジャムをバナナチップに挟んだお菓子がありますし、タイフェスなどでは殻付きのタマリンドを入手できる機会もあります。

タマリンドの歴史

タマリンドの学名はTamarindus indica(タマリンド・インディカ)ですし、和名は朝鮮藻玉(チョウセンモダマ)といいますが、原産地は南アフリカという説が有力です。ちなみに亜熱帯から熱帯域に分布する植物なので朝鮮半島にはなく、朝鮮半島経由で伝わったためか、単に外国のものという意味で和名が付けられたそうです。学名・呼び名に使われている“Tamarindus”はアラビア語でインドの果物を意味する「thamar-i-hindi」が由来とされています。

タマリンドはかなり古い時代にアフリカからアジアへと生息域を広げた植物と考えられており、一説には先史時代には既に伝わっていたとも言われています。古代エジプトでは紀元前400年頃の書物にタマリンド栽培についての記載があるそうです。またインドでも紀元前の遺跡からタマリンドの種子や木が発掘されているます。原産地とされるアフリカではそのまま食べるだけではなく、樹皮を強壮薬に・根は咳止めに・葉を揉み込んだ汁は炎症止め・果肉は整腸作用や解熱作用がある薬としても利用していたとも言われていますよ。

16世紀にはメキシコほか熱帯アメリカへと持ち込まれ、次いでハワイにも導入されていきます。ちなみに世界最大のタマリンド生産国はインドですが、タイとメキシコもそれに次ぐ主要生産国。現在でもラテンアメリカの人々はタマリンドが大好きで、名物とも言われるジュース“Agua de Tamarindo(アグア・デ・タマリンド)”のほかタマリンドフレーバーのお菓子類も多いのだそう。メキシコ料理にも使われています。また暑い地域でタマリンドの大きな木は、木陰を作ってくれて一休みできることからも愛されているようです。

タマリンドの栄養成分・効果について

栄養成分含有量の参考元:USDA National Nutrient data base

タマリンドはスーパーフード(スーパーフルーツ)として紹介されることもある存在。これはカリウム・鉄分・マグネシウムなどのミネラル類をはじめ、ビタミンB群やエネルギー転換や疲労回復に嬉しい栄養成分が幅広く含まれているためです。そんなタマリンドですが、成分含有量につきましては日本食品標準成分表に記載がないため『USDA National Nutrient data base』の“Tamarinds, raw”の数値を参考に作成しています。USDAデータベースによるとタマリンド100gあたりのカロリーは239kcal、全体重量の約31%が水分・62%が炭水化物となっています。

タマリンドのイメージ02

タマリンドの効果効能、その根拠・理由とは?

栄養補給・貧血予防に

タマリンドは鉄分・カリウム・カルシウムなどミネラルを非常に多く含んでいる果物として注目されています。特に貧血予防に役立つ果物として紹介されることも多く、鉄分含有量はUSDAデータベースでは100gあたり2.8mgとされています。同グラムであればレーズン以上、果物類トップクラスと言える含有量ですね。酸味の元であるクエン酸にはキレート作用というミネラルの吸収を促進する働きもありますし、カルシウムも100gあたり74mgと果物類トップクラス。このためタマリンドはミネラル補給源、特に女性が不足しがちなミネラルの補給に役立つと考えられています。

加えてタマリンドは糖質含有量が高く、糖をエネルギーに変換する際に補酵素として働くビタミンB1(チアミン)の含有量も100gあたり0.428mgと植物性の食材の中では高いことが特徴と言えます。また葉酸こそ少ないものの、ビタミンB2(リボフラビン)やB6などビタミンB群が全体的に果物類の中では多い傾向にあります。このため栄養補給とそれを使える形にするための代謝、両方の面から健康サポートをしてくれると考えられています。

疲労時のケアに

梅干しのようなとも称されるタマリンドの酸味は、酒石酸とクエン酸によるものとされています。クエン酸はエネルギー代謝の一つにクエン酸回路(TCAサイクル)というものがあるほど代謝と密接な関わりがある成分で、このクエン酸回路の中で生成される酸のため必須栄養素ではありません。しかしクエン酸などの成分を外側から補うようにすると、クエン酸回路の活発化=代謝を良くすることが出来るという説もあります。タマリンドはこの二つの成分を含み、かつ糖質が主体ですから即効性のエネルギー補給にもなること・代謝に関わるビタミンB群の含有量も多いことから疲労回復に有効とされています。

ただしクエン酸の疲労回復効果については信頼できる十分なデータがないこと・摂取しても疲労回復効果はないという報告も多くあることから、クエン酸に疲労回復効果は無いという見解も少なくありません。タマリンドが疲労の軽減に役立つとされているのは、クエン酸などの有機酸類の補給という面よりも、ビタミンB群を始めとする栄養素の不足軽減によるところが大きいと考えられます。

消化機能サポートに

タマリンドはスパイスとしては消化促進剤のような形で用いられることもあり、胸焼けや消化不良に良いとも言われています。成分的にはクエン酸などの酸味による胃腸活発化・食物繊維が多く含まれているので噛む回数が増える=唾液分泌が増えることで消化機能の活発化を促す働きが期待できます。リモネンなどの香り成分も消化機能亢進に役立ってくれるでしょう。そのほか消化吸収に関わる酵素が含まれている・胆汁の活性を刺激する働きがあるという説もあります。

ただし胃食道逆流症(GERD)など消化器系のトラブルがある方の場合は症状を悪化させてしまう可能性があることも示唆されています。日本人の場合はほとんど心配はありませんが、毎日大量にタマリンドを食べている国では消化器系の不調や疾患の原因になっていることもあるそうなので食べ過ぎには注意しましょう。

便秘・むくみ対策として

タマリンドは100gあたり5.1gと食物繊維を多く含む果物でもあります。食物繊維によって便の容量を増やし、腸を刺激することで蠕動運動を促す働きがあるため、かつては天然の下剤として使っていた地域もあるのだとか。そのほか酒石酸などのAHA(アルファヒドロキシ酸)類にも整腸作用がある・腸内環境を整えるという説がありますが、こちらは俗説の域を出ないという見解が主流なのであまり期待しない方が良いでしょう。

食物繊維の他、タマリンドはカリウムが多い食材としてむくみ予防にも効果が期待されています。カリウムは体内の余剰なナトリウム排出を促すことで、血中ナトリウム濃度を適切に保つために取り込まれた水分を排出させる働きがあります。塩辛いものを食べた時などのむくみに効果的ですね。ちなみに100gあたりのカリウム量は628mgと干し柿にやや劣る程度ですが、カリウム以外にも血行を促すナイアシン・正常な体液循環をサポートするマグネシウムなども多く含まれています。これらの成分が複合することでむくみ対策としても役立ってくれるでしょう。

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高血圧・糖尿病予防にも

高血圧の方が塩分を控えるよう勧められるのは、ナトリウム摂取量が増えると血中ナトリウム濃度を保つため水分を取り込む性質があるためです。この結果、血液量が増え心臓に負担がかかることで血圧が高くなります。カリウムにはナトリウムとバランスを取り合い、ナトリウムが多いと排出を促してくれる性質があります。このためタマリンドなどカリウムを多く含む食材の摂取は高血圧予防に役立つと考えられています。

またタマリンドにはヒドロキシクエン酸(HCA)という成分が含まれています。このヒドロキシクエン酸(HCA)は、肝臓でブドウ糖がグリコーゲンに合成されるのを促す働きがあると考えられています。グリコーゲンは脂肪よりもエネルギー転換が早い性質があり、エネルギーの一時保管用として肝臓や筋肉に貯蔵される物質です。このためヒドロキシクエン酸の摂取は血中への糖の流出量が減り血糖値が上がりにくくなる・血糖値が下がった時には速やかにグリコーゲンを糖に分解し血液中に放出することで血糖値が急激に下がることを防ぐ働きが期待されています。これらのことからヒドロキシクエン酸を含むタマリンドは血糖値の急な変動・インスリンの過剰分泌を抑制することで糖尿病予防にも役立つのではないかと期待されています。

美肌保持・肌荒れ予防に

タマリンドはビタミンB群を多く含む果物のため、肌荒れ対策に役立つと考えられています。特にビタミンB2とB6は皮膚を健康に保つ働きがありますから、肌荒れの予防や改善を手助けしてくれるでしょう。不足すると脂性肌・ニキビ・口内炎・湿疹や皮膚炎症を起こしやすくなるとも言われていますから、普段から不足のないよう摂取したいところですね。またビタミンB群の中でもタマリンドに多く含まれているビタミンB1も肌の新陳代謝促進・乾燥肌予防に繋がると考えられています。そのほかタンニンなどの化合物が含まれているため、抗酸化作用や抗炎症作用がある、美白効果が期待できるとも言われています。

ちなみにタマリンドは「ビタミンCが豊富」と紹介されているものもありますが、USDAデータベースによると100gあたりのビタミンC含有量は3.5mgとなっています。同サイトによるとタマリンドジュースなどの場合は50mg以上含まれているものもありますが、添加物にアスコルビン酸(ビタミンC)の記載があります。産地で食べられているフレッシュな状態のものについては分かりませんが、日本で入手できるものであればタマリンドそのものには期待しない方が無難でしょう。

ダイエットサポート・食欲抑制にも期待…

タマリンドに含まれているヒドロキシクエン酸(HCA)はグリコーゲンの合成を促すことで血糖値の変動を抑える働きが期待されています。この働きは余剰な糖が脂肪へと蓄積されるのを防ぐことになりますので、脂肪蓄積抑制や肥満予防にも繋がると考えられています。加えて実験では蓄積した脂肪がエネルギーとして燃焼されるのを促す働きも報告されていることから、脂肪蓄積予防・脂肪燃焼の両方の働きを持つ成分としてダイエットサプリなどにも配合されています。

タマリンドにはヒドロキシクエン酸以外にもビタミンB群やクエン酸など代謝に関係する栄養素が多く含まれていますから、相乗して代謝向上効果が期待できるでしょう。加えてヒドロキシクエン酸によってグリコーゲン合成が促される血糖値が一定に保たれるようになることで、空腹感を感じにくくなり食欲抑制にも役立つという説・タマリンドはセロトニンを増やして満腹中枢を刺激する働きがあるという説もあります。

タマリンドは甘みがありますし成分的にも糖質が多いですが、ヒドロキシクエン酸の働きから適量であればダイエットに有利に働く可能性が高いと考えられています。また糖質を摂らないのではなくグリコーゲンの合成によって適切に保つものなので、炭水化物抜きダイエットで指摘されるイライラ・集中力の低下・抑鬱症状などの危険性が低いこともメリットと言われています。ダイエット中の甘いものに対する飢餓感がある時などにも役立ってくれそうですね。

タマリンドの食べ方・注意点

日本で入手しやすいタマリンドは大体ペーストやジャム状に加工されたものです。そのため上記にてご紹介した成分量等は当てはまらないものが多いと考えられます。また塩や砂糖をはじめ添加物が含まれているものもありますので、摂り過ぎに注意して下さい。

タマリンドの注意点

タマリンドは医薬品との飲み合わせによって、薬の作用を増幅させ出血などの健康被害を起こす危険性が指摘されています。服用中の薬のある方は医師・薬剤師に相談の上利用するようにしましょう。そのほか長期間・大量の摂取で低血糖を起こす可能性もあります。特に血糖値を下げる薬を処方されている糖尿病患者の方は注意が必要です。

タマリンドの外用について

タマリンドペーストをぬるま湯で溶いたもの、もしくはタマリンドペーストと小麦粉やヨーグルトを練り合わせたものをパックのように塗布すると、肌のエイジングケアやニキビ跡の治癒促進などに良いと言われています。そのほかタマリンドにはピーリング効果のあるAHA(アルファヒドロキシ酸=フルーツ酸)の一種とされる酒石酸・クエン酸が含まれていることから角質を柔らかくしたり古い角質を剥がすことで肌の新陳代謝を促す、頭皮マッサージに利用すると頭皮の脂っぽさ・抜け毛対策に良いという説もあります。

しかし市販のタマリンドペーストやジュースは調味料や添加物が含まれているものが多いため、使用はオススメしません。また日本でタマリンドをスキンケアに取り入れている方は少なくどのような影響があるか分かりませんので、試す場合は肌がかぶれるなどの悪影響がないかしっかりとパッチテストを行って下さい。