鮎(アユ)とその栄養成分や効果効能
|夏の風物詩! 由来や歴史、わたの栄養・注意点なども紹介

食べ物辞典:鮎(あゆ)

別名“香魚”と呼ばれる独特の芳香と、繊細な旨味が味わえる鮎。姿の美しさやキレイな水を好むことと合わせて「清流の女王」とも称される、日本人が愛してやまない魚の一つです。環境問題の影響から激減し、天然鮎は高級食材でもあります。贅沢品というイメージもあり定期的に食す魚ではありませんが、栄養面でも鮎は優秀な食材。ワタ(内蔵)にもレチノールや鉄分などが豊富に含まれていますから、心と体へのご褒美にもなるのではないでしょうか。そんな鮎の歴史や栄養効果について詳しくご紹介します。

鮎/アユのイメージ画像:食べ物辞典トップ用

和名:鮎(アユ)
英語:ayu/sweetfish

鮎(アユ/アイ)のプロフイール

鮎とは

姿の美しさと、繊細な味わい・独特の香りから日本人に愛され続けている鮎(あゆ)。最も美味しいとされる旬の時期であり、鮎解禁の時期とも重なる“夏”の味覚の一つでもありますね。見た目・風味ともに良い魚であると考えられてきたことが分かる「清流の女王」や「夏魚の王様」などの別名も知られていますし、美食家としても知られる北大路魯山人も鮎を好んで食べていたそう。エッセイ集『魯山人の食卓』には鮎の食い方という項があり、その締めとして魯山人は“やはり、鮎は、ふつうの塩焼きにして、うっかり食うと火傷するような熱い奴を、ガブッとやるのが香ばしくて最上である。”と記していますよ。

鮎の特徴としてはスイカに例えられる独特の香りが挙げられます。生物としてはキュウリウオ科アユ属、分類法によってはキュウリウオ亜目アユ科アユ属に属しています。キュウリウオという所からも香りが想像できますし、鮎には“香魚”という別名もあり中国語ではこちらの呼び方の方が標準名なのだそう。そのほか鮎の別名には、一年で死んでしまうことから“年魚”というものもあります。ただし全ての鮎が一年で死んでしまうわけではなく、生殖行為(産卵)を一度しかしないというのが本当の所。成熟に時間がかかった個体であれば一年以上生きるものもいると言われていますし、オスには産卵期間を終えた後も生きる個体がいることが確認されています。

こうした様々な別名があるように、日本人にとって馴染み深い魚である鮎。英語でも日本語そのままの“Ayu”もしくは“Ayu Fish”と呼ばれることが多いため日本固有の魚のように感じがちですが、北海道・朝鮮半島からベトナム北部辺りまでと東アジアに広く分布しています。淡水魚であると思われがちですが、基本的に鮎は両側回遊と呼ばれるタイプ。河川で産卵され孵化した後、仔稚魚期には河口から遠くない範囲の海で生活し、成魚になると再び川に戻ってくる魚です。

しかし、高度成長期頃からは水質汚染が激化して鮎が住める環境が壊されてしまったこと、河口堰やダムなどが各地に作られたことで鮎が遡上出来なくなっていることが問題視されています。稚魚の放流を行ったり、禁漁期間を定めたりと対策も行われているものの、現在でも天然物は希少。清流の女王は美しい環境の証であるだけではなく、お値段も女王クラスの高級魚となりました。そのため食用目的での鮎の養殖も行なわれています。養殖が始まった当初は香りや旨味が弱いと敬遠されがちでしたが、現在は安定供給され価格も安めであることから受け入れられています。風味は劣ると称されがちな養殖鮎ですが、脂っ気が多くウリっぽい香りが少ないことから、食べやすいという方もいらっしゃいます。

鮎の歴史

現在では数が減少している鮎ですが、古くは各地の河川で普通に獲ることが出来る魚だったと考えられています。縄文時代の遺跡からも鮎の骨が発見されています。文献でも奈良時代頃から“鮎”という記述が見られますが、当時は鮎=ナマズを指す言葉として使われていたと推測されています。余談ですが、中国で“鮎”という文字はナマズを指し、アユの標準名は香魚。漢字自体が中国から導入されたものですから、当時は中国語に準じた使い方をしていたという事でしょう。後の平安時代に記された『延喜式』にはアユ加工品が煮塩年魚・塩漬年魚・酢年魚など記載されていることから、おそらく中世に入るまでは“年魚”がアユの呼び名であり、鮎はナマズに対して使っていたと考えられます。『万葉集』や『常陸風土記』にも年魚が登場していますよ。

ところで鮎という漢字は“魚”と“占う”という文字で構成されていますよね。諸説ありますが、鮎という文字がアユを表すようになった理由としても“占い”に関わる伝承がいくつか伝わっています。有名な話としては神武天皇が大和国を治められるかを占うために瓶を川に沈めると鮎が入っていた・神功皇后が朝鮮出兵の際に勝ちを祈りながら川に糸を垂れると鮎が釣れたという二つの伝説。そのほか平安時代に豊作か否かをアユの漁獲量で占っていた、占いとは関係なく縄張りを独占する様子から“占”が使われたという説もあります。

アユという呼び名の由来も実は諸説あり分かっていません。有力視されている説としては、秋の産卵期に川を下ることから「落(あゆ)ちる」魚という説・美しいことや愛らしいを意味する「あや」説・神様への供物として使われていたことから「饗(あえ)」である説などがあります。ともあれ、鎌倉時代末期に記されたとされる『徒然草』には四条大納言隆親卿が“鮎のしらぼしは参らぬかは”と言う場面があります。日本ではナマズを食用とする習慣はほとんどどありませんし、天皇の食事に関わるシーンでの台詞なので、この時代には鮎=アユとなっていたと考えられますね。

江戸時代を代表的するな料理書『料理物語』にも膾(なます)、刺身、寿司、焼手、蒲鉾、白干しなどなど様々な鮎の料理法が記載されています。江戸前寿司が登場するまでは、鮎の熟れ寿司もポピュラーだったそうですよ。江戸時代後期に日本を訪れた医師・博物学者のシーボルトによって鮎はヨーロッパへと紹介されたため、世界中で和名である“ayu”の呼び名と共に知られるようになりました。現在日本に観光に訪れる外国人の方も、日本文化に詳しい人であればトラディショナルな鮎の塩焼きを食べたてみたいという方が少なくないそうですよ。

鮎(アユ)の栄養成分・効果について

栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

鮎は他の魚類と同じく鮎も炭水化物(糖質)をほとんど含まず、タンパク質を豊富に含む食材。アミノ酸スコアとしても“100”が付けられていますから、タンパク質の補給源として優れた存在であると言えます。ビタミンやミネラルの含有量も多めであることから、美味しいだけではなく、栄養価の面から見ても優秀な魚だと評されることも少なくありません。生100gあたりのカロリーは養殖物で152kcal、脂質の少ない天然物であれば100kcalとされています。

鮎の塩焼きのイメージ

鮎の効果効能、その根拠・理由とは?

悪酔い・二日酔い予防

タンパク質・アミノ酸をしっかりと含む鮎は、お酒のアテとして食べることで悪酔いや二日酔いを予防してくれると考えられます。これはアミノ酸類に肝機能を向上させる働きをもつ成分が多くあるため。お酒を飲む前や、二日酔いの時に高たんぱく食材を摂りましょうと言われるのもこのためです。アミノ酸の一種であるアスパラギン酸はアンモニア排出を助けることで、アンモニアの無毒化を行う肝臓への負担も軽減してくれると考えられています。

タンパク質(アミノ酸)以外にも、鮎にはアルコール代謝に必要とされるビタミンB1やナイアシンなどアルコール分解を助けてくれるビタミン類が広く含まれています。ナイアシンはビタミンB3とも呼ばれるビタミンB複合体の一つで、アルコール脱水素酵素やアセトアルデヒド脱水素酵素の働きを助ける働きがあります。アルコールを摂取するほど消費量が増えることも分かっており、ナイアシンが不足することアルコールの分解途中で生じるアセトアルデヒドの分解が滞って二日酔いの不快症状を引き起こしやすくなると考えられています。こうした栄養素を補給できる鮎は、味としてだけではなく身体のサポートとしてもお酒のお供に良いというわけですね。

丈夫な骨・歯のサポート

鮎はカルシウムを多く含んでいる魚。生100gあたりのカルシウム含有量は養殖物で250mg、天然物で270mgとなっていますから、どちらでも十分なカルシウム補給源として役立ってくれるでしょう。カルシウムは骨や歯を形成・維持するために重要な役割を担っているミネラル。成人女性であれば一日の推奨摂取量は650mgとされており、不足すると歯が脆くなったり骨密度低下による骨粗鬆症リスクが高まることが指摘されてます。極端な栄養失調などは少ない日本においてもカルシウム摂取量は不足しているという統計もありますから、お子さんの成長のサポート・加齢による骨粗鬆症予防のために意識的に摂取したい栄養素の一つに数えられています。

加えて鮎にはカルシウムと共に骨の構成に必要なマグネシウムやリン、小腸や腎臓でカルシウムとリンの吸収を促すことでカルシウムが骨や歯に沈着するのを助けてくれるビタミンDもと含まれています。こうしたカルシウムの吸収や利用を促してくれる栄養素を同時に摂取できることからも、カルシウム補給源として骨粗鬆症予防に役立つ可能性が高いでしょう。骨量が気になっている方であれば、カルシウムが骨に沈着するために働くタンパク質を活性化してくれるビタミンKを多く含む緑黄色野菜などと組み合わせて食べるとより効果的です。

老化予防(抗酸化)

鮎、特に養殖物の鮎は魚類でもトップクラスと言えるビタミンE(α-トコフェロール)を多く含んでいることも注目されています。ビタミンEは抗酸化作用を持つ脂溶性ビタミンで、活性酸素を除去・抑制する働きから健康維持をサポートしてくれると考えられています。活性酸素によって起こる細胞の酸化は正常な機能を失わせ、免疫力低下や病気の発症リスクを高めることが指摘されていますし、細胞の老化の原因ともなります。このため抗酸化物質であるビタミンEを多く含む鮎は、酸化を抑えて若々しさや健康をサポートしてくれる可能性があると言えます。

ちなみに養殖の鮎(生状態)100gあたりのビタミンE含有量は5.0mg、成人一日の摂取目安量の約80%程度となります。サイズにもよりますが、1尾食べれば一日の目安量を賄えてしまうビタミンE量ですね。天然鮎も養殖ほど多くはありませんがビタミンEが含まれています。実際に摂取する量に違いがあるのであくまでも数値上の話とはなりますが、内臓は身よりも多くのビタミンEを含んでいることも認められています。このため鮎はビタミンEの補給源としても非常に優秀だと考えられています。

血流サポート・生活習慣病予防

鮎に豊富に含まれているビタミンEは抗酸化作用を持つ以外に、末梢血管を拡張することで体の隅々にまで血液を行き渡らせる手助けをしてくれる栄養素でもあります。この働きから血行不良に起因する肩こり・手足の冷えの軽減や、顔色の悪さやクマが消えにくい方などのサポートとして役立つ栄養素として紹介されることもありますね。抗酸化作用は中性脂肪・悪玉(LDL)コレステロールの酸化を抑えてることで血流の滞り・動脈硬化の予防にも繋がると考えられていますから、血行促進(末梢血管拡張)作用と合わせて正常な血液循環の保持としても役立ってくれるでしょう。

加えて鮎にもDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸・IPA/イコサペンタエン酸とも)などの、オメガ3(n-3)系と呼ばれる不飽和脂肪酸が含まれています。脂が多いと敬遠されることもある養殖鮎ですが、不飽和脂肪酸は養殖鮎の方が豊富。かつて脂質は一緒くたに悪者のような扱いを受けていましたが、近年こうした不飽和脂肪酸は血中の中性脂肪・コレステロール低下作用や血小板凝縮抑制作用を持つ“血液サラサラ成分”として注目されている成分でもあります。もちろん摂取には限度がありますが、適量の摂取ならば、生活習慣病の予防に対してはメリットのほうが強いと考えられています。鮎にはカリウムも比較的多く含まれているので高血圧対策に良いという説もありますが、塩焼きでガッツリお塩を付けるなど調味料を使いすぎると逆効果になる可能性もありますので注意。

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貧血予防・改善

鮎はビタミンE、ビタミンDのほか、ビタミンB12を多く含む魚として紹介されることもあります。『日本食品標準成分表』に記載されている含有量として見ると天然物と養殖物で大きく含有量に違いがあるものの、00gあたりのビタミンB12含有量は養殖鮎でも生12.6μgと一日の推奨量以上、天然鮎であれば10.3μgとさらに多くなっています。ビタミンB12は食事から過剰に摂取しても吸収されませんし、アユを毎日欠かさず食べるということもありませんから心配はいりません。

ビタミンB12は葉酸と共に赤血球の形成に関わる“造血のビタミン”であり、タンパク質や核酸(DNAやRNA)の合成・神経細胞の代謝などにも関与しているビタミンです。不足すると巨赤芽球性貧血(悪性貧血)の原因となりますが、日本人の貧血の多くは鉄分が不足する“鉄欠乏性貧血”もしくは亜鉛欠乏によるものであることが指摘されています。鮎は全体としてみると鉄分も豊富な食材と言えますが、身の部分に含まれている鉄分量は生100gあたり1mg以下。鉄分も合わせてしっかりと補給したい場合であれば、ワタ(内蔵)部分も頂くことをおすすめします。

ストレス対策・イライラ予防

カルシウムは骨や歯を丈夫に保つ働き以外に、マグネシウムとバランスを取り合いながら神経伝達を正常に保つ・神経の緊張や興奮を鎮めるなどの働きも担っています。この働きから抗ストレス・精神安定に役立つミネラルとしても注目されており、カルシウムとマグネシウムの適切な摂取(不足の改善)は精神安定剤のような役割を果たすという説もあります。鮎はカルシウムが豊富な魚であり、マグネシウム含有量も魚類としては多め。このため骨の健康維持だけではなく、イライラなどの軽減やストレス耐性を高め手助けをしてくれるのではないかという見解もあります。

またビタミンB12にも神経機能を正常に保つ役割があり、不足なく補うことでイライラ・気分の落ち込みなどの気分トラブル、集中力の低下を予防することに繋がると考えられています。オメガ3系不飽和脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)にも脳機能をサポートする働きを持つ可能性が報告されていますから、こうした栄養成分を合わせて補給できることからも精神面の健康維持に役立ってくれる可能性がありますね。鮎は栄養不足によって起こる不調改善をサポートしてくれるもの。極端な改善効果などはありませんが、健康維持や栄養補給として安全に取り入れることが出来ますよ。

健康的なダイエットにも

鮎はアミノ酸スコアが高く、糖質をほとんど含まないことからダイエット中の体作りにも適した食材であると考えられます。鮎には糖質のエネルギー代謝をサポートしてくれるビタミンB1、脂肪の代謝を促すビタミンB2、タンパク質の代謝を高めるビタミンB6など代謝に関わるビタミンB群がしっかりと含まれています。同じくビタミンB群であり三大栄養素の代謝に不可欠とされるナイアシンも多く含まれていますから、運動と組み合わせることで健康的なダイエットをサポートしてくれると考えられます。

養殖物は脂肪が多いと言われていますが、毎日食卓に登場する類の魚ではありませんし、ビタミン・ミネラルなどの補給源として適していることを考えると“ダイエットの敵”という訳ではありません。ただし食べるだけで代謝が上がる・痩せるという類の食材ではありません。カルシウムも単に摂取するだけではなく運動と組み合わせた方が骨の強度アップに繋がると言われていますから、ダイエットにしろ健康維持にしろ適切な運動を組み合わせるようにしましょう。鮎を取り入れるだけではなく、全体的な栄養バランスを考えることも大切です。

肌荒れ予防・美肌保持

鮎は魚類でトップクラスと言われるほどビタミンEを多く含む魚。ビタミンEは抗酸化作用を持つビタミンでもありますから、肌細胞の酸化を抑えることで、酸化によって引き起こされるシワやくすみ・たるみなど肌の老化現象を予防する手助けをしてくれるでしょう。血行を促す働きもありますので、血行が悪く顔色が悪い方・クマができやすい方にも適していると考えられます。加えて細胞の新陳代謝を促すビタミンB2やB6、皮膚炎を起こす原因になるヒスタミン抑制・新陳代謝を高めることで皮膚や面膜を健康に保つ働きが期待されるビオチンなども含まれていますから、ビタミンB群の補給と合わせて肌荒れや口内炎対策にも繋がる可能性があります。

また鮎の内蔵部分にはレチノールと呼ばれる、動物性食品に見られるビタミンAが非常に多く含まれていますビタミンAは目や喉鼻・臓器などにある粘膜、皮膚を健常な状態に保つ役割があるビタミン。不足症状としては皮膚の乾燥や上皮細胞の角質化・新陳代謝の低下・ターンオーバの乱れなどが挙げられており、美容系サプリメントなどにも配合されていることがありますね。皮膚細胞の抗生物質でもあるアミノ酸の補給・ビタミンEによる血行促進効果と合わせて、肌の新陳代謝を高める働きも期待できます。ビタミンCやポリフェノールが豊富な緑黄色野菜などを食べ合わせると、より効果が期待できそうですね。

天然鮎と養殖鮎、内臓の栄養価について

天然鮎と養殖鮎について

人によっては養殖=劣るというイメージがある方もいらっしゃるでしょうが、栄養価としては養殖物の方が総合的に見ると上という見解もあります。天然物のほうが優れている栄養素もありますが、かなり大きく差があると推測されているのはビタミンB12とビオチン・リン程度。かつては脂が多いとして養殖物が避けられる傾向にありましたが、近年はオメガ3(不飽和脂肪酸)の補給になること・ビタミンDやビタミンEなどの脂溶性ビタミンが多く含まれていることから養殖鮎も評価されています。脂質量の多さも毎日食べるものではないので心配するほどのものでは無いという見解が主流。

もちろん養殖物は鮎の持つスイカのような香りがしない、脂っぽいのが嫌だという方もいらっしゃるでしょう。しかし養殖が行われた当初よりも味の質も上がっていますし、魚としては普通に美味しく頂ける存在でもあります。こだわりのある方でなければ養殖の鮎も食わず嫌いせず、ぜひ食卓に取り入れてみて下さい。

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鮎の内蔵(ワタ)の栄養価

独特の風味・苦味があるため好き嫌いが分かれる鮎の内臓ですが、ビタミンやミネラルが多く含まれている部位でもあります。もちろん身(魚肉)部分に対して内臓の比率は少なめですから生100gあたりの栄養価として比較した場合と、実際に摂取する量についての差異がありますが、それでもレチノール(ビタミンA)と鉄分については内蔵ごと食べるか否かで大きく差が生じます。

鮎として掲載されている100gあたりのレチノール含有量は天然鮎で35μg、養殖鮎で55μg。対して鮎(内臓)として記載されているレチノール含有量は天然鮎で1700μg、養殖鮎で4400μgと桁違いの数字になっています。鮎は鰻に次いでビタミンAが豊富な魚であると紹介されるのは、この内臓部分の数値を参考にしているか、内蔵を含めてアユを丸ごと食べた場合を指していると考えられます。嫌いなものを無理をして食べる必要はありませんが、身の部分だけを食べてもレチノール補給には繋がらないことは念頭に置いておいたほうが確実ですね。皮膚や粘膜を健康に保つ・ドライアイや目の疲れ対策などに良いと言われているのも、レチノール(ビタミンA)の持つ働きによるところが大きいと考えられます。

次に鉄分量。こちらも養殖鮎であれば生100gあたり0.8mgとされているのに対し、内蔵であれば8.0gと鉄分含有性は10倍になります。生息域や食べているものなどにもよるでしょうが『日本食品標準成分表』記載数値としては天然鮎の内臓であれば100gあたりの鉄分は24.0mg。かなりの差があることが分かりますね。それ以外にもビタミンB12や亜鉛など内蔵のほうが豊富である栄養素はいくつもあります。

またカルシウムを補給したい場合は骨ごと食べるのが効果的でもあります。栄養補給という部分に重点を置くのであれば“丸ごと”食べるのがベストと言えますね。頂いた命に対しての感謝にもなるように思います。鮎はじっくりと塩焼きしても骨まで頂ける魚ですが、それだと食べにくい場合は、骨まで柔なくなるように煮付けにしたり、天ぷらやフライなどにするのもオススメですよ。甘露煮や煮浸しにすると内蔵も食べやすくなります。

鮎(アユ)の選び方・食べ方・注意点

鮎の天然物は初夏~秋・養殖ものであれば晩春からが旬。また秋に出る「落ち鮎」と呼ばれる子持ちの鮎は、食味がやや劣ると言われていますが、卵の特有の食感からファンも少なくはありません。鮎を選ぶときは、表面に光沢があり尾までピンと張りのあるものを選ぶようにします。他の魚類もそうですが、お腹が張っていてしっかりと固いこと、目が澄んでいる・エラが鮮紅色をしていることも鮮度を見分けるポイントです。

大きさや体表の色については鮎がとられた時期(鮎の成長度合い)によって異なります。シーズン初めに出回る稚鮎もしくは氷魚と呼ばれる成魚になる前の鮎であれば、体長は4~10cm程度。斑点などはまだありませんので体表の銀色が綺麗なものを選ぶと良いでしょう。このサイズであれば骨がまだ柔らかいので、難なく骨ごと食べられます。甘露煮や天ぷらなどの揚げ物に使われることが多いです。

夏っぽさを感じられる時期になると出回り始めるのが鮎の成魚。一般的に“鮎”と呼ばれ、塩焼きなどに使われるタイプですね。こちらは黄色がかっており、体色がはっきりとした色合いのものが良いと言われています。また大きいほど良いというわけでもなく、体長15cm前後で頭が小さいものがベストという声が多いようです。身体が大きく食べごたえもありますが、骨が硬いので骨まで食べたい場合は塩焼きであれば遠火でじっくりと焼きましょう。

鮎の食べ方として最もポピュラーかつ美味しいと言われている方法は“塩焼き”ですが、塩焼きと並んで有名なのが「背ごし」と呼ばれる食べ方。「背ごし」は鱗やワタを取って骨や皮ごと薄く輪切りにしたものですが、それ以外も刺し身として使われることがありますね。骨ごと使う「背ごし」にしたい場合は骨の柔らかい、夏の初めまでの鮎を使うのが好ましいとされています。ただし鮎には寄生虫(横川吸虫)が付いている場合があるため、食品安全委員会は生食を勧めない食材としてリストアップしています。自宅で行う場合は自己責任で…という事になるため注意。

内蔵(ワタ)の摂取とレチノールについて

鮎の内臓は上記でご紹介したレチノールと鉄分だけではなく、葉酸とビタミンB12の含有量も非常に多くなっています。ここだけを見ると栄養補給源としても役立ってくれそうに感じますが、レチノールが多いため摂取には逆に注意が必要です。というのもレチノール(ビタミンA)は目や皮膚の健康維持・免疫力を高めて風邪予防などの健康メリットも様々にありますが、大量に取り続けると肝臓に貯蔵されることで肝障害を起こす危険性があります。肝障害までは至らなくとも頭痛や吐き気・発疹・脱毛などの症状が起こることもありますし、妊娠中・授乳中の女性であれば奇形児のリスクが高くなることも指摘されています。

このため一日のレチノール摂取上限量としては2700μgと定められています。食品から摂取する場合は上限量を超えてしまうことがあっても、その日限りであれば心配はないとされています。しかし妊娠中や授乳中などのデリケートな状態であればリスクを避けるため、なるべく摂りすぎないようにしたい栄養素。ビタミンAはレチノールとして摂取しなくとも緑黄色野菜などに含まれているβ-カロテンを摂取すれば体内で合成されますから、妊娠中や授乳中はβ-カロテンの補給が推奨されています。毎日鮎を丸々食べるということはありませんので偶になら影響はないと言われていますが、摂取量には注意が必要です。

参考元:アユ (アイ) | 市場魚貝類図鑑日本の旬・魚のお話