もずくとその栄養成分・効果効能
|フコイダンはお酒のお供や腸内環境にも♪

食べ物辞典:もずく

麺に似た細長い形状と、ぬるっとした粘り気のある触感が特徴的なもずく。もずく酢でさっぱりと頂くと食欲が無い時にも食べやすいですし、お酒を飲む時のサポーターとして取り入れている方もいらっしゃるのではないでしょうか。沖縄ブームの影響もあって広まったモズク。近年は腸を整えるメリットが紹介されたこともあり、再びフコイダンなどの水溶性食物繊維類を豊富に含む健康食材として注目されています。そんなモズクの歴史や種類、栄養効果について詳しくご紹介します。

もずくのイメージ画像:食べ物辞典トップ用

和名:モズク(海蘊/藻付/水雲)
英語:mozuku seaweed

もずくのプロフイール

モズクとは

モズクと言えば酢の物として食べるのが代表的で、全国的にスーパーなどでも食べきりサイズの「もずく酢」が販売されていますね。そのほかお吸い物・スープ類や、天ぷら(かき揚げ)などにも使われています。酸味が苦手な方・お子さんがいる場合にはスープの具として利用すると取り入れやすいですよ。また近年台湾などでは“髪菜”と呼ばれる乾燥地に群生する藍藻の代用品「海髪菜」としてもモズクが利用されており、牡蠣などの貝類とともに煮物にも使われているそうです。

モズク=沖縄というイメージがありますが、主に食用とされているモズク類は6種類あり、ほぼ日本全国に分布しています。ただし殖されているのはモズク類の中でもオキナワモズクとイトモズクの2種類で、産業規模になるほど養殖に成功しているのは沖縄県のみなのだとか。また沖縄県では古くからモズクを食用として利用してきたことがあり、沖縄ブームの際に「沖縄の健康食材」の一つとして紹介され、知名度が高まったためでもあります。若い方にとっては古くから食用とされていた“海藻の酢の物”という印象があるかもしれませんが、モズクが全国的にここまで浸透したのは2000年以降と比較的最近。

ちなみにモズクという呼び名は狭義では西日本沿岸に生息する、イトモズク(学名:Nemacystus decipiens)を指します。しかし一般にはモズク科やナガマツモ科に属する海藻の総称として使われています。モズクという呼び名はホンダワラなど他の褐藻類に絡みついて生息する糸状の海藻であることから、藻に付くという意味で「モヅク(藻付く)」と命名されたことが語源とされていますが、時代とともに“糸状の細長い海藻”を指す言葉として使われるようになったためだとか。

沖縄県の特産品として知られているオキナワモズク(フトモズク)などはナガマツモ科に分類されています。沖縄のモズクは栄養が良いところで育った・細いものよりも成長していると思っている方もいらっしゃいますが、科から異なるので分類上は全くの別種といえる存在です。ただし栄養価的に大きな違いは無いとされていますし、塩蔵や味付けにした場合も生よりも著しく栄養価が劣ることも無いと言われています。

モズクの歴史

モズクの利用や食用の歴史については文献がなく、いつごろからどのような形で利用していたのかは定かではありません。ただし日本は島国で古くから海の幸を獲って利用していましたから、モズクも他の海藻と同様に縄文時代から、主に日本海側で採取・食用とされてきたのではないかと推測されています。現在モズクが有名な沖縄県付近でもフトモズクが西表島から鹿児島県の奄美大島辺りまでと広い範囲に自生しており、古くからそれを採って食用としてきたと伝えられています。三杯酢に付けて食べる方法も古くから行われており、沖縄ではモズクを「スヌイ(=酢海苔)」と呼ぶそうです。

沖縄県では本州で言うワカメのよな感覚で食されてきたモズクですが、水質汚染などにより1960年代頃から沖縄周辺海域のモズクが著しく減少してしまいます。モズク減少を憂慮した沖縄県は1975年(昭和50年)からモズク養殖の実証試験を開始し、2年後の1977年(昭和52年)に恩納村漁業研究グループと水産業改良普及所の共同研究によって養殖モズクが初めて生産されます。

その後も養殖技術の改良が重ねられ生産量が増えるとともに、沖縄県ほか一部地域でしかほとんど食べられていなかったモズクの全国的なPRも行われるようになります。2003年には4月20日・第3日曜日を「モズクの日」と定め、以後4月の第3日曜日はモズクの日としてイベントなども行われています。全国的なモズクの消費量も増加しましたし、沖縄県のモズク生産量も30年ほどで20倍内以上にも増え、全国流通量の90%以上が沖縄県産うち9割以上が養殖モズクとなっています。

沖縄県がモズク養殖に力を入れ始めた少し後には健康志向が高まり、また海藻に含まれている多糖類で水溶性食物繊維の一種「フコダイン」の健康効果が注目されたなどの側面もあります。沖縄ブームの際には沖縄県の人々が長寿でお元気であるという事も報じられましたからモズク・沖縄・健康食材という印象が強いと考えられています。近年はヘルシー志向と和食ブームの影響もあり、アメリカなどでもモズクが受け入れられ始めているそう。かつて海苔などの海藻類は欧米ではseaweed(海の雑草)と呼ばれ忌み嫌われていましたが、徐々にsea vegetable(海の野菜)という認識がなされているようですよ。

もずくの栄養成分・効果について

栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

モズクは全体の95%以上が水分で、100gあたりのカロリーが沖縄モズク6kcal・イトモズクであれば4kcalと非常に低くなっています。ビタミン・ミネラル類の含有量はさほと多くありませんが、ぬめり成分で水溶性食物繊維に分類されるフコイダンやアルギン酸を豊富に含むことから様々な健康効果が期待されています。

モズクと呼ばれる海藻はいくつか種類があるものの、さほど栄養価において違いはないと言われています。下記では一般的に流通量の多い「フトモズク(オキナワモズク)」に含まれている栄養成分含有量を元に期待される働きを紹介していますが、モズク(イトモズク)も同様の働きが期待できます。

もずくのイメージ

モズクの効果効能、その根拠・理由とは?

胃腸の健康維持に

モズクのヌルヌル成分であるフコイダンは水溶性食物繊維の一種に分類されています。水溶性食物繊維は体内で水分を含んでゲル化し、便の硬さを調節する作用があると考えられています。そのため便が固くなりがちな方の場合は排便に適した柔らかさを保つ、下痢症状を繰り返す方の場合は便の硬化・排便回数の抑制作用が期待されており、便秘・下痢を問わずにお腹の調子を整えてくれる成分とされています。

またフコイダンは胃の硫酸基に付着することで胃壁を傷付け、胃潰瘍や十二指腸潰瘍のリスクを高めるピロリ菌から胃を守る働きも認められています。これはフコイダンは厳密には硫酸多糖の一種であるため、胃の硫酸基の代わりとなりピロリ菌を吸着して体外へと排出させる働きがあるため。胃潰瘍や胃炎だけではななく、出来てしまった胃潰瘍の修復する作用もあるとされていますから、モズクは胃腸の調子が気になる方に適した食材と言われています。

悪酔い・二日酔い予防に

お酒の席での“お通し”として使われることも多いモズク。実はお通しとして食べやすいというわけではなく、アセトアルデヒドの分解を助けることで二日酔い予防にも繋がると考えられています。お酒を摂取すると肝臓でアルコール(エタノール)を分解する際、その過程で中間代謝物質のアセトアルデヒドが発生します。二日酔いが起こる理由としては様々な要因がありますが、アセトアルデヒドが分解されずに残っているというのもその一つ。

モズクに含まれているフコイダンを飲酒前に摂取した実験では、飲酒後の呼気・血清中アセトアルデヒドに有意な低下が見られたこと、エタノール濃度の低下も見られたことが報告されています。この結果からフコダインはアルコール分解を助ける働きがあり、お酒を飲む前にモズクなどを食べると悪酔い・二日酔い予防に役立つのではないかと考えられています。

腸内フローラ改善・免疫サポートにも

モズクや昆布などぬめりのある海藻類にはフコダインやアルギン酸など、水溶性食物繊維に分類される多糖類が豊富に含まれています。これらは便秘や下痢の改善に役立つだけではなく、腸内の粘膜層を保護する働き・善玉菌のエサとなり増殖を促す働きなどがあると考えられており、腸内フローラを整える働きが期待されています。アルギン酸には腸内の老廃物有害物質の排出を促すデトックス効果も期待されていますから、モズクは腸内環境改善に役立つ食材と言えるでしょう。

人の体内で免疫細胞が最も多く集まっているのが腸管免疫系であることから、腸内フローラを整えることが免疫力向上にも繋がると考えられています。また水溶性食物繊維の一つであるフコダインは直接的にNK細胞(ナチュラルキラー細胞)やマクロファージなどの免疫細胞活性化作用、免疫抗体グロブリンE(IgE)の産生を抑制する働きなども報告されています。腸内フローラの正常化と合わせて、免疫力低下による風邪・インフルエンザなどの予防、花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー症状軽減、両方の働きが期待されています。

生活習慣病予防にも期待

アルギン酸やフコイダンなどの水溶性食物繊維はコレステロールの吸収を抑制する・コレステロールから精製される胆汁酸の排出を促進する働きなどもあります。コレステロールが過剰になると血液循環が滞り、動脈硬化、悪化すると心筋梗塞や脳梗塞などの原因となります。このため水溶性食物繊維を多く含むモズクは、血中コレステロールを低下させることで動脈硬化予防をサポートしてくれる可能性があると考えられています。胆のう中のコレステロールが結晶化することで出来る胆石予防などにも繋がるでしょう。

もずく酢にして食べることで酢酸による血液サラサラ効果と相乗し、より高い効果が期待できると言われていますよ。また、アルギン酸はナトリウムと結合することでアルギン酸ナトリウムとなり体外へ排出される性質があります。ナトリウムの排出を助けることで、高血圧の予防や改善効果が期待できます。

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糖尿病予防・ダイエットに

モズクは低GI食品と言われる海藻類の中でも、GI値が12と極めて低い存在です。また水溶性食物繊維のアルギン酸やフコイダンは水分を含んでゲル化し、糖質の消化・吸収スピートをゆっくりにすることで食後血糖値の急激な上昇を抑える働きがありますから、食前や食事と共にモズクを摂取することで血糖値上昇を抑制して糖尿病の予防に役立つ可能性もあります。糖質吸収を穏やかにする働きから、食前にモズクを食べることで余分な糖を脂肪に溜め込むのを防いで肥満予防にも役立つと考えられます。

加えてアルギン酸には腸内の老廃物有害物質の排出を促すデトックス効果があると考えられていますし、水溶性食物繊維類は腸内フローラを整えることで代謝を高めるなどの働きも期待できますね。モズクは低GIなことに加え、100gでも一桁台と非常に低カロリーな食材。お食事に一品加えると食事のカサ増し・食べ過ぎ防止にも繋がりますよ。

美肌・美髪サポート

モズクに含まれている水溶性食物繊維のフコダインやアルギン酸は、水分保持力が高いことなどから肌の潤いを保持する働きがあると考えられています。またフコダインは抗酸化物質として働き、ストレスや紫外線などから生じる活性酸素によって起こる肌細胞の酸化=老化を防ぐアンチエイジング効果も期待されています。

オキナワモズクの場合はヨウ素を含むため、甲状腺ホルモンの分泌を正常にすることで体内のタンパク質合成や新陳代謝を促す働きも期待できます。甲状腺ホルモンは不足すると毛髪の傷み・抜け毛・爪が割れるなどの症状が表れますから、適切に補充することで肌だけではなく髪の毛や爪などの状態維持にも役立ってくれるでしょう。

痛風予防・関節痛軽減にも期待

尿酸値(血液中の尿酸濃度)が高いほど体内で尿酸ナトリウムの結晶が生成されやすく、この結晶が関節液の中にはがれ落ちることで痛風発作と呼ばれる激しい痛みを引き起こします。尿酸は正常な状態であれば尿に溶けることで体外へ排出されていますが、尿のphが酸性に偏る“酸性尿”で、尿酸が溶け出せず体内に蓄積され高尿酸血症・痛風の原因となります。

フコイダンには尿のpHをアルカリ性に近づけ、尿酸値を下げる働きがあることが報告されています。このためフコイダンを豊富に含むモズクやメカブなどの海藻類を摂取することで、痛風の予防につながると考えられています。そのほかフコイダンの摂取で軟骨などの破損部位の修復が見られたという報告もなされており、関節痛の緩和に有効とする説もあります。

イトモズクとフトモズクの違いについて

イトモズクとオキナワモズクはビタミン・ミネラル類の含有に多少の差はありますが、元々の含有量自体がさほと多くありませんし差も微量なのであまり気にする必要は無いでしょう。ある程度大きく差があるのは食物繊維総量とビタミンB2含有量で、どちらもフトモズクの方が多くなっています。また『日本食品標準成分表(七訂)』ではモズク(イトモズク)にヨウ素の記載はありませんが、フトモズク(オキナワモズク)の場合は100gあたり140μgを含んでいます。

ちなみにモズクにカリウムが豊富に含まれているとする説もありますが、日本食品標準成分表(七訂)での100gあたりのカリウム含有量はオキナワモズク7mg/イトモズク2mgとなっています。アルギン酸によるナトリウム排出促進作用から、カリウムと同様に高血圧緩和・むくみ改善などの効果は期待できますが、カリウム補給源とは考えないほうが無難でしょう。同様にカルシウムも両方共100gあたり22mgとさほど多くはありません。

目的別、モズクのおすすめ食べ合わせ

  • もずく+エノキオクラ・納豆・酢
    ⇒糖尿病・肥満予防に
  • もずく+ゴボウ・コンニャク・キムチ
    ⇒便秘改善、肥満予防に

モズクの選び方・食べ方・注意点

モズクと酢の組み合わせは生活習慣病予防や疲労回復など様々なことに相乗効果があると考えられていますが、市販されているものは塩分やお砂糖などが利用されています。もずく酢は酢にも栄養成分が溶け出しているので“酢”も飲むと良いと言われていますが、調味料が多く使われているものは逆に高血圧や糖尿病リスクを高める可能性もあります。買ってきたものであれば、原材料を確認した上で食べ方を決めるようにしてください。

塩蔵モズクは塩抜きをする必要がありますが、生もずくを利用する場合はそのまま利用することが出来ます。何もせずそのまま食べる方もいらっしゃるようですが、さっと表面の汚れを洗い流して使うようにすると良いでしょう。ぬめりは健康成分でもあり、美味しさのもとでもありますから落としすぎないようにしましょう。磯の香りが苦手な方は70℃くらいのお湯を掛けてすぐ流水で冷やすようにすると、臭みを弱めることが出来ます。
生もずくは日持ちがしないので早めに使い切るか、しっかりと水を切って冷凍してください。

参考元:もずくの歴史期待される効能・効果-NPOフコイダン研究所