ヤーコンとその栄養成分・効果効能
|「オリゴ糖の王様」として注目される食材

食べ物辞典:ヤーコン

ヤーコンは辛味のない大根・甘みの少ない梨のような、シャキシャキとした食感が特徴の根菜。フラクトオリゴ糖が豊富に含まれていることから「オリゴ糖の王様」とも称され、腸を整えてくれる健康食材として注目されています。サツマイモやジャガイモなどの芋類の主成分がテンプンなのに対して、ヤーコンの場合はフラクトオリゴ糖が主成分。デンプンが少ないため生100gあたりのカロリーが54kcalと低く、ダイエットや糖尿病対策にも取り入れられていますよ。そんなヤーコンの種類や歴史、栄養効果について詳しくご紹介します。

ヤーコンのイメージ画像:食べ物辞典トップ用

和名:ヤーコン
英語:Yacon

ヤーコンのプロフイール

ヤーコンとは

さつまいもに似た外見を持つ根菜類のヤーコンですが、外見に反して芋っぽさはほとんどない食材です。“大地の梨”とも言われるように、食感や味は梨もしくは大根に似た瑞々しさとほのかな甘さがあります。生で食べられることもヤーコンの大きな特徴ですし、味にクセがないので好き嫌いのあるお子さんでも受け入れやすいでしょう。千切りにしてサラダ感覚で食べることが多いですが、そのほかキンピラなどの炒め物・煮物・揚げ物・焼き菓子類・ピクルスなどの漬物と幅広く活用できます。

植物としてみるとヤーコンはキク科スマランサス属(Smallanthus属)に分類されており、原産は中南米アンデス山脈周辺。野菜として食べるのは塊根(貯蔵根)ですが、サツマイモジャガイモのように発芽することはありません。日本で栽培されている品種としてはペルーから導入されたペルーAとペルーBの2種類と、日本で新たに開発されたサラダオカメ・サラダオトメ・アンデスの雪・アンデスの乙女などがあります。ヤーコンの果肉はクリーム色と言われていますが、サラダオカメはオレンジ色・アンデスの雪は白色と、実は品種によって様々。

ヤーコンが収穫されるのは秋から冬にかけてで、地上部が枯れるほど収穫を遅らせて成熟させたヤーコンほどフラクトオリゴ糖が多いと言われていますよ。一般的には収穫後1ヶ月くらい貯蔵(熟成)させ甘味が増したものを食べることが多いため、旬の時期は11月~2月くらいと言われています。余談ですが食感や甘さから、ヤーコンは中国では主に果実店で売られているそうです。Yacon(ヤーコン)という呼称も果物に由来すると言われています。日本でもヨーグルトに入れたりフルーツポンチにするなど果物感覚で使われる方もいらっしゃいますね。

ヤーコンはフラクトオリゴ糖が豊富な「天然オリゴ糖の塊のような野菜(芋)」として注目されています。近年は腸内フローラが持つ様々な健康への影響力が話題となったこともあり、オリゴ糖含有率が高いヤーコンはプレバイオティクスとしての働きが期待できる食材として「イヌリンの宝庫」と呼ばれる菊芋と共に機能性食品の原料としても脚光を集めています。食感の良さやスタイルを気にかける女性からの支持によって少しずつ流通が増えているもの、野菜として見るとの全国的にはまた一般的とは言い難い存在ではあります。

ヤーコンの歴史

原産とされるアンデス山脈周辺地域では、古くから先住民族達がヤーコンを食用としていたと考えられています。インカ帝国以前(紀元前後~700年頃)に繁栄したモチェ文化の遺跡からもヤーコン型をした器具が発見されていますから、栽培がいつから行われていたかは諸説ありますが、食用の歴史が古いことは間違いないでしょう。芋部分を食べるだけではなく葉も薬草・薬草茶として利用していたようです。またヤーコンはイモ類として見ると炭水化物量が少ないことから、古代のスイカのように水分保有源として用いられていたのではないかという説もあります。

16世紀以降になるとヨーロッパ人によるアメリカ入植・植民地化などの関係から、ヤーコンはあまり食べられなくなったと言われています。20世紀までに多くの品種が失われたという見解もあるそう。20世紀に入ると中南米以外でヤーコンを栽培しようという試みもあったそうですが、二度の世界大戦によって中止され本格的な復興・伝播は世界大戦後となります。1960年代後半~1980年代にはニュージーランド・チェコ・イタリアなどアンデス地域の外での栽培が行われるようになります。

日本に初めて伝わったのヤーコンは1970年台後半、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)を経由したものだったと言われています。ただしこの時にはヤーコンは普及せず、1984年にニュージーランドからペルーA系統が導入されたのが本格的なヤーコン栽培の始まりであるとされています。当初は水っぽく美味しくない芋であると考えられていたそうですが、1991年にヤーコンの根茎に大量のフラクトオリゴ糖が含まれていることが茨城大学農学部と新潟大学農学部の共同研究によって発見され、健康食品として注目されるようになりました。1990年代のうちにヤーコン茶などの健康食品化や、各地での栽培や栽培に適した品種の導入などが進められたのだとか。

2000年前後になると健康やダイエットなどに対する意識の高まりなどの後押しもあり、ヤーコンは“あらゆる野菜の中でフラクトオリゴ糖含有量が最も多い食材”として注目を集める存在となっていきます。21世紀に入って急激に広まった食材の一つにも数えられているのだとか。茨城県阿見町の『ヤーコン味工房』によるヤーコンマドレーヌや、北海道置戸町のヤーコンサイダー・ヤーコンドラフトなど各地でヤーコンを使った特産品なども作られています。

ヤーコンの栄養成分・効果について

栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

ヤーコンは全体の85~90%近くが水分・10%前後を炭水化物が占めており、タンパク質と脂質はほとんど含まれていません。だたしサツマイモやジャガイモなどの芋類の主成分がテンプンであるのに対し、ヤーコンの場合はフラクトオリゴ糖が主成分でありデンプンはほとんど含まれていません。このため生100gあたりのカロリーも54kcal、サツマイモの半分以下と低くなっています。

下記は『日本食品標準成分表(七訂)』に“ヤーコン/塊根、生”として記載されている栄養成分含有量を元に作成していますが、品種により成分量には差があると考えられます。またヤーコンに限らず貯蔵方法や気候・土壌等によっても成分が変化すると言われていますから、参考程度にお考え下さい。

ヤーコンのイメージ画像

ヤーコンの効果効能、その根拠・理由とは?

腸内環境を整える

ヤーコンの代表成分として紹介されることの多いフラクトオリゴ糖は、ショ糖に果糖が1~3個結合して出来たオリゴ糖の一種です。人間の消化器官(消化酵素)では分解・吸収されにくい性質があり、そのまま大腸に到達することで腸内細菌に利用されと考えられている成分でもあります。このためフラクトオリゴ糖は腸内善玉菌(ビフィズス菌や乳酸菌)を増殖する働きが高いと考えられており、整腸作用を持つ成分として特定保健用食品の認可を受けているものもあります。

ヤーコン生100gあたりのフラクトオリゴ糖の含有量は8.0g~9.0g程度と考えられています。オリゴ糖含有率が高いとされる野菜にはゴボウタマネギがありますが、ゴボウは100gあたり3.6g、タマネギは2.8gと言われています。ヤーコンのオリゴ糖含有量はゴボウの約2.5倍・タマネギの約3倍と推測されていますから「オリゴ糖の王様」と呼ばれるのも納得ですね。

便秘予防・改善に

フラクトオリゴ糖は善玉菌の増殖・活発化に効果が期待できる成分であり、腸内環境を整えるサポートとして注目されています。また腸内フローラの状態が良くなると善玉菌が作り出す有機酸が増加し、腸のphを下げることで悪玉菌の抑制・腸の蠕動運動活発化=便通改善などにも繋がるでしょう。プロバイオティクスやプレバイオティクスが便秘改善に良いと言われるのも、同じことが理由です。

ちなみにヤーコンは食物繊維が豊富だとも言われていますが、食品成分表に記載されている食物繊維総量は1.1gとジャガイモよりも少ない数値となっています。このため食物繊維補給源というよりは、オリゴ糖による整腸作用が期待できる食材と考えて摂取したほうが確実でしょう。食物繊維が豊富な食材・ヨーグルトなどの乳酸菌を含む食材と食べ合わせることで、便通改善や腸内フローラを整えるのにより高い効果が期待できるでしょう。

ダイエットサポート・糖尿病予防に

ヤーコンは人間の消化器官・消化酵素では分解や吸収されにくい性質を持つフラクトオリゴ糖を主成分としているため、生100gあたり54kcalとイモ類としてみると低カロリーな食材です。フラクトオリゴ糖は砂糖の半分くらいのカロリーしかないこと・消化がされにくく血糖値の急激な上昇を起こしにくいことから、ダイエットや糖尿病の方の食事療法などにも取り入れられていますね。

このためフラクトオリゴ糖を豊富に含むヤーコンは肥満や糖尿病予防にも役立つ食材と考えられています。腸内環境の改善からも、代謝向上や余分な栄養素の吸収抑制などの働きが期待できます。便通が良くなることからも、早い段階でポッコリお腹の改善など目に見える効果も期待できるでしょう。そのほかヤーコンはアルカリ性食品でありphバランスを整えることでインスリンの働きを良くする、含まれているポリフェノールが血行促進・脂肪燃焼をサポートしてくれるという説もあります。

高血圧・動脈硬化の予防にも

ヤーコン(芋部分)はビタミンやミネラルなどの必須栄養素をあまり多くは含んでいませんが、ミネラルの中ではカリウムが100gあたり240mgと比較的多く含まれていると言えます。カリウムが不足している時にナトリウムが過剰になると、体は水分を取り込むことで血中ナトリウム濃度を一定に保とうとします。塩辛いものを食べるとのどが渇いたり、むくむのもこのため。カリウムにはナトリウムや水分の排出を促す働きがありますから、血液を送り出すポンプである心臓の負担を軽減し高血圧予防・軽減をサポートしてくれます。

またヤーコンには抗酸化作用を持つポリフェノールが含まれていることも報告されていますから、活性酸素抑制により血中コレステロールの酸化を抑え、血管の状態を正常に保つことで高血圧や動脈硬化の予防にも役立つと考えられています。フラクトオリゴ糖にもコレステロールを正常化する作用が報告されています。カリウムの血圧降下作用と合わせて生活習慣病予防に役立ってくれるでしょう。

ただしヤーコン100gあたりのポリフェノール量は203mgと記載されているものから、0.1g(100mg)と記載されているのなどがあり含有量についてはハッキリしません。赤ワインと同等以上など紹介されることもありますが、ポリフェノールが非常に多いと過信しない方が良いでしょう。種類にもよりますが芋部分のビタミンCやβ-カロテン含有量もさほど多くはありません。

肌荒れ予防・美肌サポート

フラクトオリゴ糖を豊富に含むヤーコンは、腸内環境を整える働きが期待されています。腸内の善玉菌はビタミンB2・B6・B12、パントテン酸、ビオチン、ビタミンKなどのビタミン類を合成してくれる存在でもあります。善玉菌代謝物は肌の健康維持に関わる成分も多いですし、腸内環境が整うことは必要な栄養成分をしっかりと吸収できる基盤作りでもありますから、相乗して肌に必要な栄養をしっかりと補給することに繋がるでしょう。そのほかヤーコンにはポリフェノールが含まれているため、肌の抗酸化=アンチエイジングにも効果が期待されています。

加えて腸内フローラのバランスが良くなること・便通が整うことからも、老廃物や有害物質が血液に流れ込むことで起こるニキビや肌荒れなどの予防改善にも繋がると考えられます。腸内細菌は正常な免疫力の保持とも関係していますから、アトピー性皮膚炎などのアレルギー・皮膚炎症の軽減にも効果が期待されています。悪玉菌が生成する有害物質の減少や免疫力アップは、ターンオーバーの正常化や乾燥肌予防にも繋がるでしょう。

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ヤーコンの選び方・食べ方・注意点

新鮮なヤーコンは皮にハリがあり硬いもの、持った時にずっしりとした重みを感じるものと言われています。切り口がしっかりとしており、瑞々しさが残っていることもポイントだそう。形状としては丸すぎず、縦長の形かつふっくらとした丸みがあるものが良いと言われています。保存は新聞紙に包んで冷暗所でも可能ですが、一度切り口を入れたものは日持ちがしなくなるので切り口をピッタリとラップで包み冷蔵庫に入れて下さい。

ヤーコンは一般的に収穫後に貯蔵することで甘味を増やしてから食べられています。買ってきてからも保存がききますし、渋いと感じる場合は冷暗所に置いておくと良いとも言われています。ただし地上部と繋がった状態で置いておくと糖をフラクトオリゴ糖として蓄積するためヤーコンですが、この工程で甘みが増すのはフラクトオリゴ糖が酵素によってショ糖などに分解されるためと言われています。このため収穫後のヤーコンに関しては、甘味が強くなるほどフラクトオリゴ糖が少なくなっていると考えられています。

ヤーコンの注意点

2012年の日本調理科学会誌では“収穫直後からフラクトオリゴ糖が原著に減少する”ことが書かれていますから、フラクトオリゴ糖をしっかりと補給したい場合は新鮮なものを選んだほうが良いと考えられます。またヤーコンに含まれているフラクトオリゴ糖は熱に弱く加熱すると減少してしまうため、効率よくフラクトオリゴ糖を補給したい場合はサラダなど生食の方が良いようです。

ヤーコンに含まれているフラクトオリゴ糖は便通改善やダイットなど様々な効果が期待されていますが、食べる過ぎるとお腹がゆるくなる・お腹が張るなどの副作用(デメリット)があることも指摘されています。一度に大量に食べず、特に初めて摂取する方であれば一日100g以内程度に留めるようにしましょう。果糖やショ糖が含まれていないわけでもありませんので、食べ過ぎには注意が必要です。

ヤーコンの雑学色々

ヤーコンの葉について

ヤーコンの葉には芋部にほとんど含まれていない鉄分や亜鉛・マグネシウムなどのミネラル類が非常に多く含まれていますし、β-カロテンほかビタミン類の含有量も多いと考えられています。タンニンも多いので渋味(苦味)がありますが、漬け物にする・スムージーに加えるなどして食べてみても良いでしょう。またヤーコンの葉を乾燥させ煎じたヤーコン茶はマウスを使った実験で中性脂肪・コレステロールの減少が見られたという報告もなされているそうです。

ヤーコンと菊芋の違いとは

ヤーコンと同じキク科植物で、似たような働きを期待されている食材として“菊芋”があります。菊芋の代表成分とされる多糖類のイヌリンは体内でフラクトオリゴ糖に分解されるため腸内フローラ改善をはじめ期待される働きが似通っていますが、全く同じ成分ではありません。

イヌリンは水溶性食物繊維として働き、水を含んでゲル化することで摂取した食物の消化管移動をゆっくりにする=血糖値上昇を穏やかにする働きが期待されています。つまりイヌリンは同時期に食べた食材全体の吸収を緩やかにする働きも期待できる成分となります。ヤーコンにも水溶性食物繊維・イヌリンは若干含まれているものの菊芋ほどの含有量はありません。同じ血糖値の急激上昇を起こしにくい成分であっても、ヤーコンの主成分であるフラクトオリゴ糖の場合は“血糖値を上げにくい”というのは自身が消化吸収されにくいことに起因しています。

このため血糖値対策・糖尿病予防やダイエットサポートとして摂取する場合、ヤーコンよりも菊芋の方がより適した食材であると考えられています。その反面、体内で分解されることでフラクトオリゴ糖となるイヌリンを含む菊芋よりも、フラクトオリゴ糖そのものを含有しているヤーコンは善玉菌増加・腸内フローラの改善に強いと言われています。