ジャガイモの特徴と栄養成分・期待できる健康メリットとは

食べ物辞典:ジャガイモ

肉じゃが、カレー、ポテトサラダなど家庭料理にも欠かせないジャガイモ。葉野菜などと比べて炭水化物量やカロリーの多さを気にされることもありますが、難消化性でんぷん(レジスタントスターチ)を含むことが報じられ、肥満予防や血糖値対策に役立つ食材という評価もあります。そのほかビタミンCやポリフェノールなどの抗酸化物質補給源としてや、満腹感維持効果にも注目される、ジャガイモに含まれている成分や栄養効果について詳しくご紹介します。

ジャガイモのイメージ画像:食べ物辞典トップ用

和名:ジャガイモ/馬鈴薯(ばれいしょ)
英名:potato
学名:Solanum tuberosum

ジャガイモとは

ジャガイモのプロフイール

ポテトサラダから“肉じゃが”や煮物、スナック菓子まで、様々な料理に使われるジャガイモ。和食でも洋食でも使われる食材で、常備野菜の一つと言えるご家庭も多いのではないでしょうか。日本だけではなく、ジャガイモは世界中で食べられている食べ物。私達日本人にとっては野菜という位置付けですが、世界的に見るとジャガイモは米、小麦、トウモロコシと並ぶ“主食作物”の1つ。これら4つを「世界4大作物」と称すこともあるくらい、人間にとってなくてはならない作物の1つなのです。

ところで、ジャガイモ以外にも私達の周りには〇〇イモと呼ばれる根菜がいくつもあります。しかし、実はジャガイモ、里芋サツマイモはそれぞれ植物分類上かなり離れた存在。例えば、サツマイモの場合はヒルガオ科ですが、ジャガイモはナス科ナス属。同じ“芋類”のジャガイモとサツマイモよりも、ジャガイモとナストマトの方が植物としては近い存在です。

ジャガイモのイモは芋、どんなイモかを示す「ジャガ」の部分はインドネシアのジャカルタ島が語源ジャガイモは中南米から南米、アンデス山脈周辺が原産地ですが、日本にはジャカルタから伝わったことでジャカルタイモ→短縮・転訛してジャガイモになったと考えられています[1]。そのほかジャガイモには、“馬鈴薯(ばれいしょ)”という別名もあります。日常会話でジャガイモを馬鈴薯と呼ぶことはあまりありませんが、でんぷん粉ではトウモロコシを原料とするコーンスターチに対し、ジャガイモ原料とするものは“ばれいしょでん粉”と呼びますね。

ジャガイモは栄養価が高く、冷涼な気候や硬く痩せた土地に強いこと・約3ヶ月で収穫でき収量が種芋の約10倍になることなどから、アジアやアフリカなどの食料危機地域では栽培が奨励されています。ジャガイモの原産地であるアンデス山脈周辺地域も、自然が厳しいところ。何百年も前から現地の人々は、夜の間に凍ったジャガイモを昼間に足で踏み水分を抜く、という工程を繰り返して凍結乾燥させた「チューニョ(Chuño)」という保存食を生産してきました。

北海道がジャガイモの大産地となったのも、開拓時代、米栽培には向かない冷涼な気候でも育つという点が大きかったようです。また、現在のように保存技術が発達していなかった時代、ジャガイモは炭水化物源としてだけではなく、冬場のビタミン源としても優秀な存在だったと考えられます。ヨーロッパでも、日本でも、飢饉の時にジャガイモを食べて餓死者の数が減少した、というエピソードも結構ありますね。もちろん美味しさや、様々な料理に利用できる使い勝手の良さも評価され、現在のようにオーソドックスな食材になったのでしょう。

ジャガイモはグルテンを含まないことから、グルテン過敏症やグルテン不耐性の方の食事にも活用されています。また、“主食作物”ではありますが穀物ではないため、グレインフリー(穀物不使用)のペットフードなどにもよく使われています。ペットフードだけではなく家畜の飼料としてもジャガイモは使われていますし、お酒の原料、澱粉糊・接着剤、バイオマスプラスチックの原料など飲食物以外の分野でも活用されています。

ジャガイモの選び方・保存方法

ジャガイモを選ぶときは表面にハリがあり硬さを感じられるものを選びます。芽の成長と共に栄養が奪われてしまうので、しっかりと芽が出てしまっているものは避けましょう。新じゃがいもの場合であれば皮が薄く、皮が剥がれやすい・若干剥がれたような状態になっているものが良品。品種によって形には違いがありますが、ふっくらと丸みを帯びた印象のあるものを選ぶと確実。皮が緑色に変色していたり、萎びて表面にシワが寄っていたり・ふにゃっとしているようなものは避けます。

ジャガイモの保存は風通しがよく、光が当たらない場所で行います。明るい場所に置いておくと発芽が促されて芽が出やすくなったり、芽の周りが緑色に変化しやすくなってしまいます。冷蔵庫で保存する場合には、光と乾燥を避けるために新聞紙に包んでからポリ袋に入れたり、そこまでしなくても色付きの袋に入れるなどするのが無難。

冷凍もできますが、スカスカした食感になってしまうため料理法は限られます。加熱+マッシュした状態で冷凍し、マッシュポテトとして使用するのが最も無難なようです[2]。カレーなどもジャガイモを入れたまま冷凍してしまうと、解凍時にジャガイモの食感が悪くなったり、ベトベトに溶けてしまうため注意。

ジャガイモの栄養成分・効果について

栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

国によっては主食として、お米やパンなどのような位置付けで食されているジャガイモ。栄養価でみても、ジャガイモはでんぷんなどの炭水化物含有率がやや高めです。とは言え、ジャガイモの炭水化物量は生(皮むき状態)100gあたり17.3g。電子レンジ調理したものでも19.0gと、同グラムのごはん(炊飯済み白米)の約半分ほど。

カロリーもジャガイモ皮なし/電子レンジ料理済み100gあたり78kcalと、ごはんの半分以下です。おかずとして大量に食べ続ければカロリーや糖質量が気になるところですが、ジャガイモ単体としてみると野菜と穀類の中間的なポジションといったところ。また、ジャガイモには炭水化物しか含まれていないわけでもありません。ビタミンCなどのビタミン類、カリウムやマグネシウムなどのミネラル、食物繊維、ポリフェノールなど様々な成分を補給できます。

じゃがいも料理イメージ

ジャガイモの効果効能、その根拠・理由とは?

ビタミンC補給源として

ジャガイモは最も一般的な男爵やメインクーンなどであれば色味も薄く、野菜に多いビタミン類はあまり含まれていないイメージを持たれがちな食材。しかし、実はジャガイモ(皮なし/生状態)は100gあたり28mgとビタミンCが比較的多く含まれています。同グラムで比較するとサツマイモとほぼ同じ、里芋トウモロコシの約4倍のビタミンC含有量です。脚気対策に使われたエピソードがあるのも納得ですね。

ビタミンCは一度に多く摂取しても、体内に貯めておくことが出来ず、多すぎる分は排出されていまいます。この性質からビタミンCは一度に大量に摂取するよりも、こまめに補給した方が効果的。ジャガイモはよりもビタミンCを豊富に含む食材も沢山ありますが、ジャガイモは様々なお料理に使い勝手の良い食材。かつ調理時のビタミンC損失が少ないということから、ビタミンC補給源として優れた食材と言えます。

抗酸化物質の補給に

ジャガイモにはカロテノイド系色素や、クロロゲン酸やフラボノイドなどのポリフェノール類が含まれていることが分かっています。また、果肉が赤や紫色のジャガイモにはアントシアニンなども含まれており、抗酸化活性は“芽キャベツまたはほうれん草に匹敵する”という報告もあります[3]。

抗酸化とは活性酸素・フリーラジカルによる酸化ストレスを抑制もしくは軽減する働きのこと。酸化ストレスが高まると、細胞が傷つき、老化促進や体の機能低下の原因となる恐れがあります。このため、抗酸化物質の補給は健康や若々しさの維持に繋がると考えられています。ジャガイモの特徴成分と言えるビタミンCも抗酸化作用を持つビタミンですから、抗酸化物質の補給源として健康維持をサポートしてくれるでしょう。

メンタルサポートにも

抗酸化物質の補給による神経保護は、ストレス関連障害の予防や軽減との関わりも注目され、研究されています。また、ビタミンCは脳機能や神経伝達物質の働きとの関与も報告されている栄養素で、モルモットを使った実験では“ビタミンCが欠乏すると、コルチゾールの過剰分泌が見られた”ことも報告されています[4]。

コルチゾールは通称「ストレスホルモン」と呼ばれる、ストレスを受けると分泌される副腎皮質ホルモンの一種。一時的な分泌量増加はストレスから身を守るための反応なので問題ありませんが、慢性的にコルチゾールが多く分泌されると不眠症やうつ、生活習慣病などのストレス関連疾患のリスクが高まることが指摘されています。ビタミンC不足だけがコルチゾール過剰分泌の原因ではありませんが、原因ともなり得る不足を無くすことは重要です。

ジャガイモにはビタミンC以外にも、神経伝達物質の合成に関わるビタミンB6、ホルモン合成に関わるパントテン酸、神経の興奮を抑えることでリラックス効果をもたらすアミノ酸として注目されているGABA(ギャバ:γ-アミノ酪酸)なども含まれています。抗酸化物質の補給+栄養素の不足をなくすことで、ストレス抵抗力アップやメンタルサポートにも期待できるでしょう。

便秘予防・改善に

ジャガイモ生(皮なし)100gあたり食物繊維総量が8.9g、皮付きであれば9.8gと非常に食物繊維が豊富。日本食品標準成分表七訂までは難消化性でんぷんが含まれず、“100gあたりの食物繊維含有量1.3g”とかなり少なく掲載されていましたが、八訂では難消化性でんぷんも食物繊維総量に含まれたことで、サツマイモと同等の食物繊維補給源であることがわかります。

ジャガイモの食物繊維総量のうち多くを占める難消化性でんぷん(レジスタントスターチ)は、難消化性と付くように体内で消化されにくい性質があります。消化できない難消化性でんぷん(レジスタントスターチ)は、消化管の中で食物繊維と同じような働きを持つことが認められています。食物繊維は便の硬さを整えたり、腸の蠕動運動を促す働きがありますから、便秘予防や改善をサポートしてくれるでしょう。

ただし、過去「冷ご飯ダイエット」などが話題になったように、加熱したてのホカホカ状態ではでんぷんは難消化性でんぷん(レジスタントスターチ)になりきれていません。日本食品標準成分表八訂でも、ジャガイモ(皮なし/蒸し)100gあたりの食物繊維総量は3.5gと、生状態の半分以下になっています。難消化性デンプン含有量を増やして摂取したい場合は、一旦加熱料理した後、一晩程度冷蔵庫などに入れて冷やして食べるのが効果的[5]。冷やご飯よりもジャガイモのほうが、冷たくても美味しくいただけるレシピが多いのも嬉しいですね。

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血糖値対策・ダイエットサポートに

ジャガイモは炭水化物量が多いことから、ダイエット中の食事には適さない評されることもあります。しかし、食べ方によってはダイエット中のお食事にも役立つ食材です。というのも、ジャガイモは野菜として考えると糖質やカロリーが高いですが、主食として考えればジャガイモ(皮なし/電子レンジ料理済み)は100gあたり78kcalとお米やパンの半分以下。炭水化物量も約半分です。このため、ジャガイモをお米などの主食と置き換える・主食を減らした分のカサ増しに使うことで、摂取カロリーや糖質量をカットすることが出来ます。

また、じゃがいもに含まれている消化性でんぷん(レジスタントスターチ)には、食後の急激な血糖値上昇を抑える・インスリン抵抗性を低下させる可能性も報告されています。研究でも“酢を加えた冷製ジャガイモは、食後血糖値上昇指標(GI)とインスリン指数(II)を減少させた”という報告[5]があり、冷えた状態で接種することで血糖値が気になる方・糖尿病予防のサポートにも役立つのではないかと期待されています。急激な血糖値上昇を抑えることは、糖質を吸収して脂肪として蓄えにくくすることにも繋がります。

加えて、ジャガイモのタンパク質にはpotato proteinase inhibitor 2 (PI2/ジャガイモプロテアーゼ阻害剤2)と呼ばれる化合物が含まれており、満腹感に関与するホルモンコレシストキニン(CCK)の分泌を促すことで満腹感を感じさせやすくする可能性も示唆されています[6]。明確なメカニズムや有効性については分かっていませんが、満腹指数の調査でジャガイモは満腹指数最高スコアで“クロワッサンの満腹指数の7倍”という報告もあります[7]。空腹感を軽減することでダイエットをサポートしてくれる可能性もあるでしょう。

むくみ・高血圧予防に

ジャガイモは生(皮なし)100gあたり410mgと野菜類の中でもカリウムを豊富に含む食材。同グラムで比較するとカリウム含有量はサツマイモの方が上ですし、野菜全体でトップという訳ではありませんが、100gあたりのカリウム量としてはキュウリや冬瓜の2倍以上。十分にカリウム補給源として役立ってくれると考えられます。

カリウムはナトリウムと類になって働くミネラル。塩分のとりすぎなどでナトリウム濃度が上昇した際、カリウムが不足していると体は血中ナトリウム濃度を保つために血液の水分量を増やします。結果として血液量が増えることになるため血液を送り出す心臓の負荷が増えて血圧が高くなったり、血中の水分が細胞に滲み出てしまうことでむくみが起こる可能性があります。

カリウムはナトリウム濃度を調節し、余剰ナトリウムや水分の排出を促してくれるため、特に塩分過多な食事によるむくみの解消や高血圧予防に役立つミネラルと考えられます。ジャガイモにはカリウム以外にビタミンCやポリフェノールなどの抗酸化物質も含まれていますから、悪玉(LDL)コレステロールの酸化抑制などからも高血圧予防・血栓や動脈硬化の予防を手助けしてくれるでしょう。

免疫機能サポートにも期待

ジャガイモに多く含まれている消化性でんぷん(レジスタントスターチ)は、消化に耐性がありますが、腸内善玉菌の栄養として使われます。レジスタントスターチは領内フローラの良いバランスに整える働き[8]が期待できる成分でもあるのです。また、ビタミンCも乳酸菌などの善玉菌のエサとなることで腸内環境を整える手助けをしてくれます。

人の免疫機能の多くが腸に集中しており、腸内細菌も免疫機能に関与しています。このため腸内フローラのバランスを整えることは、免疫機能を整えることにも繋がると考えられます。活性酸素・フリーラジカルによる酸化も、免疫機能の低下を引き起こす原因となります。ジャガイモはビタミンCやポリフェノールなどの抗酸化物質も含んでいますので、合わせて免疫機能を整え、風邪やインフルエンザに罹りにくい体作りをサポートしてくれるでしょう。

アンチエイジング・美白サポートにも

ビタミンCや抗酸化物質を含むジャガイモは、や美肌作りにも一役買ってくれます。抗酸化物質の補給は、肌細胞が酸化ダメージを受けることで起こる、シワやたるみなどの肌老化を予防に繋がります。ビタミンCはコラーゲンの生成促進作用や、シミやソバカスの原因となるメラニン色素を作るチロシナーゼの働きを防ぐ働き(美白効果)も認められています。

これらの働きからビタミンCの補給源となり得るジャガイモも、内側からもアンチエイジング(老化予防)や美白をサポートしてくれる食材と考えられます。ビタミンEを豊富に含むアーモンドカボチャアボカドなどと組み合わせると抗酸化力アップも期待できますよ。

ちなみに、通常のジャガイモにはビタミンA(β-カロテン)やビタミンEなどはほとんど含まれていませんが、キタアカリやアンデスレッドなど果肉部分が黄色いジャガイモであればβ-カロテンが含まれています。また、シャドークイーンのように仲間で赤~紫色をしているものであればアントシアニンなどのポリフェノールの補給にも繋がります。

目的別、ジャガイモのおすすめ食べ合わせ

ジャガイモの注意点、その他

ジャガイモの注意点

ジャガイモの芽や緑色の革部分には、毒性成分ポテトグリコアルカロイド(ソラニンやチャコニン)が含まれています[2]。特に毒性が多い芽を取り除くのは勿論のことですが、未熟で小型のジャガイモ・光に当たって緑色に変色した部分にもこの毒性物質が多く含まれています。皮付近は栄養豊富な部分でもまりますので、厚く剥かずに使用したいものですが、皮の色が緑っぽいと感じるものであれば食中毒予防のために厚めに皮を剥いて利用するようにしましょう。

ソラニンなどの毒性物質は水に溶け出す性質があるので、変色や発芽が気になる場合は、剥いたジャガイモを水に晒す方法が推奨されています。…が、ジャガイモのビタミンCは強いとは言ってもしっかり水に晒せば流出してしまいますから、そうなる前に食べ切りたいものですね。

ジャガイモの種類と成分ついて

じゃがいもの種類は、煮崩れしやすいけれどホクホクとした食感がありコロッケやポテトサラダに多く使われる“男爵薯”と、縦長型で煮崩れしにくいことから煮物やカレー・シチューなどによく使われる“メークイン”の2つに分けられます。更に細かく種類で見ると、栗やサツマイモに近い濃厚な風味を持つインカのめざめ・インカのひとみでんぷん質が少ない“とうや”などお好みの食味を選べるタイプ、カロテンやビタミンCの含有量が多いキタアカリなど栄養面での優秀さを押し出したタイプもあります。

栄養成分という面ではノーザンレッドやシャドークイーンなど、皮も果肉も赤~紫色をしておりアントシアニンが含まれているジャガイモもよく紹介されていますね。ちなみにアンデスレッドやスタールビーなどは皮が赤く果肉部分はクリーム色。料理法や好みに合わせて様々なジャガイモが選べるようになっています。取り入れたい栄養成分や、使用したい料理に合わせてジャガイモを使い分けてみてはいかがでしょうか。

【参考元】