里芋(サトイモ)の栄養成分と働き
|日本で最も古い芋類は水溶性食物繊維が豊富

食べ物辞典:里芋

しっとりとした歯ごたえと、ほんの少しある独特の粘り気が特徴的な里芋。古き良き日本の家庭料理を思い出させる、どこかほっこりした印象のある食材です。世界中で食べられているタロイモの一種であり、日本では稲作以前から栽培されていたと考えられているほど長く親しまれてきました。栄養面でもぬめりに含まれているガラクタンなどの水溶性食物繊維の働きが注目され、腸内環境の改善やダイエットに役立つのではないかと期待されていますよ。そんな里芋の歴史や栄養効果について詳しくご紹介します。

里芋のイメージ画像:食べ物辞典トップ用(slowbeauty)

和名:里芋(サトイモ)
英語:Japanese Taro/satoimo
学名:Colocasia esculenta

里芋(さといも)のプロフイール

里芋とは

おふくろの味・煮物の材料としてもポピュラーな里芋。醤油とお出汁で似た“里芋の煮付け”はどこかほっこりする、郷愁を感じる味わい。柔らかく粘り気のあるねっとりした食感は好き嫌いが別れる部分もありますが、秋~冬になると里芋が食べたくなると言う方も多いのではないでしょうか。東北を中心に秋には芋煮会と呼ばれる里芋を使った料理を屋外で食べる季節行事が行われていますし、関西などでは十五夜に“きぬかつぎ(衣被)”を食べる風習のある地域もありますよね。今でこそジャガイモやサツマイモに取って代わられている部分もありますが、日本で古くから食されてきた食材だけに行事食としても目にする機会の多い食材と言えます。

里芋は華々しさはないものの、和食・日本の家庭料理に欠かせない食材。「里芋」という名前の由来についても山に自生している芋=山芋に対して、里で作る芋だからと言われています。同じ意味合いから田芋・畑芋・家芋などとも呼ばれており、これらの呼び名からも日本の食生活に根付いた存在であることがうかがえますね。私達が普段“イモ(里芋)”と呼んで使用している部分は塊茎と呼ばれる茎の地下部分ですが、地域や年代によっては葉柄部分である芋がら(芋茎/ずいき)を食べたことのある方もいらっしゃるはず。芋茎は煮物、和え物、酢の物などに利用され、乾燥したものは保存食としても活用されていました。

ところで、里芋は“イモ”という言葉で呼ばれていますが、ジャガイモサツマイモなどと近い植物ではありません。学名はColocasia esculentaで、植物分類ではサトイモ科サトイモ属とされています。近縁種にはハスイモ(学名Colocasia gigantea)や、京野菜の一つとされるエビイモ(海老芋)を含むヤマサトイモ(学名Colocasia antiquorum)類などがあります。こうした根菜類も“里芋”の一種として扱われることもありますから、広い意味では決まった品種だけを指す言葉ではなくサトイモ属の食用品種くらいの感覚で使われていると言えそうですね。ちなみに英語では「Taro」という言葉が同じ様なニュアンスで使われています。熱帯地域の方の食材として「タロイモ」が紹介されますが、タロイモ(Taro)というのもサトイモ科食用栽培種の総称なんです。

日本で食べられている里芋と、バナナの皮などで包んで焼かれているタロイモは別の食べ物というイメージがありますが、里芋類もサトイモ科植物。海外ではタロイモの一種として認識されており、英語では日本語そのままの“satoimo”もしくは“Japanese Taro”と表現されています。里芋はタロイモ類の中では里芋が最も北方で栽培されている品種であり、東南アジアやハワイなどで食べられるタロイモは“親芋”を食用とするのに対し、里芋は基本“小芋”もしくは孫芋を食用とする子芋用品種が大半であることが特徴。とは言っても、狭義での里芋(Colocasia esculenta)の品種の中にも親芋用品種であるタケノコイモ(京芋)・親子兼用品種八ツ頭などもありますし、ハスイモ系品種には芋茎(ズイキ)と呼ばれる葉柄部分のみを食用する葉柄用品種もあります。

里芋の歴史

里芋はアジアで最も古くから栽培されている作物の一つにも数えられており、原産地は南アジアから東南アジアにかけての地域と考えられています。野生か栽培化されたものかは分かっていませんが、マレー諸島のボルネオ島(ニア洞窟)からは約4万年前とみられるタロイモも出土していますし、原産地にほど近いインドでは紀元前3000年頃から里芋類の栽培が行われていたと推測されています。紀元前1300年頃には太平洋諸島などへも伝わり、ポリネシアやミクロネシアでは主食として大切にされたようです。1世紀頃にはヨーロッパやアフリカにもタロイモ類は伝わっており、ローマの料理書『Apicius』には里芋の調理法が複数掲載されています。アフリカでも西アフリカ、ナイジェリアやカメルーンなどは現在もタロイモ生産量が世界的に多い国です。

日本に里芋もしくはその祖先となるタロイモが伝った時期や経路は断定されていませんが、おそらく縄文中期ころには里芋が栽培されていたとの見解が有力視されています。日本に里芋が伝わったのは稲作よりも古い時代であることから、里芋は縄文時代の中心作物で主食であったとする説もありますよ。食材辞典さんでは 連作ができないサトイモに対し、後に伝わった稲作のほうが連作が出来たことで普及したという考察が紹介されています。日本で里芋についての最古の記述は『万葉集』であるとされ、平安時代中期に編纂された『延喜式』には里芋の栽培方法も記載されているそう。奈良~平安時代頃は稲作が盛なっていた時期ですが、食用作物がさほど多くなかったため里芋も貴重な主食・炭水化物源であったと考えられます。稲作に適さない地域においても主食、炭水化物源として重要な作物だったのでしょう。

また、団子型の形状が神が手にする“宝珠”に似ていることから、特別な力を持つ食材として神事・仏事にも里芋は使われてきました。山間部でも農耕儀礼の際などに使用され、十五夜に里芋をお供えするのもその名残だと考えられます。小芋が沢山付き、孫芋へと繋がっていく様子から子孫繁栄の縁起物としても珍重され、お正月に食べる“おせち料理”にも取り入れられていますね。特に縁起が良いと“八頭(ヤツガシラ)”が使われているのは、子孫繁栄だけではなく、末広がりで演技が良い「八」の字が使われていること・親芋を食べることや名前に「頭」が着くことから人の頭になれる=出世するという縁起も担いでいることが理由なのだとか。

現在家庭で使う“イモ類”としては、下処理の大変さなどもあってか、里芋はジャガイモサツマイモほどデイリーに食されている野菜とは言い難い存在。しかしサツマイモやジャガイモは日本に導入された時期が遅い作物であり、江戸時代後期までは単に「芋」と言えば里芋のことを表す言葉として通じました。山芋も存在はしていましたが、広く栽培はされていませんでしたからね。戦後になると家庭で食べる食事も洋食が進んだこともあり、昔から比べると里芋の影は少し薄くなっていると言えるかもしれません。しかし、里芋の持つぬめり成分(食物繊維)に腸内環境を整えるなどの働きが期待できると報じられたことや、皮を向いた状態で冷凍されたものが流通するようになったこともあって使う方も増えているのではないかなと思います。

里芋の栄養成分・効果について

栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

里芋は炭水化物が主体ですが、水分量が多いため100gあたり58kcalとイモ類の中ではカロリーが低い存在と言えます。食物繊維とカリウムを比較的多く含むほか、ビタミン類・ミネラル類を幅広く含有しています。ガラクタン・グルコマンナン・ムチン(ムチン型糖タンパク質)など高い健康効果が期待されれている「粘り成分」も含んでいます。栄養価的にはジャガイモ・サツマイモよりは長芋や山芋に近い存在と言えるかもしれません。

里芋の煮物イメージ

里芋の効果効能、その根拠・理由とは?

疲労回復・胃腸サポート

里芋は他のイモ類と同じく炭水化物が多く含まれており、糖代謝に関わるビタミンB1やナイアシンなどのビタミンB群も含まれています。精白された米や小麦と比べるとビタミンやミネラルが全体的に多く含まれていることから、優れたエネルギー源であると言えるでしょう。三大栄養素の代謝に関わる栄養素を含んでいますので、代謝を促すことから疲労回復を助けてくれる可能性もあります。

また、里芋の特徴的な粘り気はガラクタンやマンナン・粘液糖タンパク質などによって構成されています。この粘液糖タンパク質はムチンと表現されることがありますが、基本的にムチンは動物性粘性タンパク質のみを指す言葉。里芋などに含まれている糖タンパク質と私たち人間の胃腸や呼吸器などの粘膜・粘液に含まれているムチンは別物です。が、ムチン型糖タンパク質やムチン様粘液多糖体と表現されるように似た結合様式持っていることから、ムチンと似た働きを持つ・ムチンをサポートする形で働くのではないかという見解もあります。

このため里芋は栄養補給源としてだけではなく、粘液成分によって胃腸の粘膜を保護修復を助け、ストレス・暴飲暴食・刺激物の摂取などによって働きが低下した胃腸機能を回復する手助けをしてくれるのではないかと期待されています。加えてこの糖タンパク質にはタンパク質分解酵素が含まれていると考えられることから、タンパク質を効率よく消化吸収する手助けをしてくれるという説もありますよ。里芋自体が柔らかい食感で食べやすい食材でもありますので、胃腸が弱い方・お子様やお年寄りの栄養補給にも役立ってくれるでしょう。

お腹の調子を整える

里芋の食物繊維量は生100gあたり2.3g。食物繊維が豊富なイメージのあるサツマイモも皮むき状態であれば生100gあたりの食物繊維量は2.2gですから、イモ類の中では食物繊維が豊富な部類と言えるでしょう。100gあたりの食物繊維量を野菜全体で見た場合は際立って多いと言い難い存在ではありますが、里芋は不溶性食物繊維1.5gに対して水溶性食物繊維0.8gと、理想的な食物繊維バランスとされる不溶性2:水溶性1に近い比率で食物繊維が含まれていることも特徴です。里芋の独特のぬるぬる感を構成しているガラクタン・糖タンパク質類は水溶性食物繊維に分類される成分ですから、水溶性食物繊維が多めというのも納得ですね。

同じ食物繊維には含まれていますが、不溶性食物繊維は便の量を増やして腸を刺激し蠕動運動促進に、水溶性食物繊維は便に水を含まれることで排便に適した硬さをキープするなど、それぞれ異なった形で働きます。このため両方の食物繊維が補給できる里芋は便秘解消や下痢の軽減などお腹の調子を整える働きが期待されています。加えて水溶性食物繊維は腸内で善玉菌のエサとなり、善玉菌を活発化させることで腸内環境を改善する働きを持つことも認められています。腸内フローラの状態が良くなることで便秘体質・下痢体質の改善に繋がる可能性もありますね。動物実験では難消化性でんぷん(食物繊維)を豊富に含む食事は、短鎖脂肪酸の産生を促すことで炎症性腸疾患の予防に役立つ可能性も示唆されています。

免疫力アップ・風邪予防にも期待

腸は栄養吸収や排泄を行っているだけではなく、免疫機能とも関わりを持つことが分かっている臓器です。腸に存在する腸管免疫系には人間の約6~7割の免疫細胞していることが発表されていますし、腸内環境・腸内細菌のバランスによって免疫機能に差が生じるという見解が現在の主流となっています。里芋には腸内環境を整える働きが期待できるガラクタンやグルコマンナンなどの多糖類(水溶性食物繊維)を含んでいることから、腸内環境の改善を介して免疫機能の正常化にも役立つのではないかと考えられます。

むくみ対策・デトックスサポートに

里芋はミネラルの中でカリウムを生100gあたり640mg、茹で100gであれば560mgと豊富に含んでいます。同グラムで比較した場合にはジャガイモやサツマイモの約1.5倍のカリウム量になりますから、日本の主要イモ類の中ではカリウムが最も多い食材と言っても過言ではないでしょう。カリウムはナトリウムと競合して細胞内外の浸透圧を調整するミネラルで、ナトリウム量が多い場合はそれを排出させる働きがあります。ナトリウムも必須ミネラルの一つ、体に必要な栄養素ではありますが、過剰に摂取するなどして血中ナトリウム濃度が上昇すると人体に様々な悪影響を及ぼします。

カリウムが少ない状態でナトリウム濃度が高まると、私達の体は水分を取り込むことでナトリウム濃度を一定に保つ仕組みが組み込まれています。水で希釈するような感覚ですね。このメカニズムによって体は正常な機能を維持していますが、水分を取り込むことでむくみが発生したり、血液量が増えることになるので心臓に負担がかかり血圧が上がりやすくなるというデメリットもあります。ナトリウムの排出を促すカリウムを補給してあげることで、ナトリウムとナトリウム濃度を保つために蓄えられていた水分の排出が促されます。このためカリウムはむくみ・高血圧の予防に意識的に摂取したいミネラルに数えられています。

カリウムを豊富に含む里芋も体内の水分バランスを整える働きが期待されていますし、里芋のヌメリの元で水溶性食物繊維の一種に分類される糖タンパク質にも肝臓や腎臓の働きを助ける働きが期待されています。カリウムと相乗することで毒素の排泄を促す働きが期待できますし、便通改善にも役立ちますので、体内の老廃物や毒素排出を促=デトックスのサポートに繋がる可能性もあるでしょう。

生活習慣病予防に

里芋は100gあたりビタミンCが6mgと少なく、カロテン類やビタミンEの含有量も微量です。しかし、ガラクタンやグルコマンナンなど悪玉(LDL)コレステロールを減少させる可能性が報告されている成分が含まれています。このことから里芋には血液を綺麗な状態に保ち、酸化LDLの蓄積を防ぐことに役立つと考えられ、動脈硬化・脳梗塞・心筋梗塞などの予防に役立つのではないかと期待されています。加えてガラクタンは血圧降下作用を持つのではないかという説もありますし、里芋はカリウムが豊富な食材でもあります。ガラクタンは生理活性について研究途中の成分ではありますが、カリウム補給源としても高血圧予防をサポートしてくれると考えられます。

また、抗酸化作用を持つビタミン量こそ少ないものの、里芋はフラボノイドなどのポリフェノールを含んでいると考えられます。2017年『Nutrients』に掲載されたブラジルのレビューでは里芋(Colocasia esculenta)にケルセチンを筆頭としたフラボノイドが含まれていることも報告されています。ブラジルのレビューですから日本で食べられている品種とは違う可能性もありますが、フラボノイドを含んでいる可能性は高いと考えられます。フラボノイドは抗酸化作用によって血中脂質や細胞の酸化を抑制する働きがありますし、ケルセチンは抗炎症作用やLDL コレステロール低減作用を持つことを示唆した報告が多くある成分。こちらからも生活習慣病予防をサポートしてくれる可能性はありそうです。

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糖尿病予防・ダイエットサポートに

里芋や山芋などネバネバした粘液質を含む食材は血糖値対策や肥満予防にも役立つのではないかと注目されています。これは粘り気の中にガラクタンやマンナン・粘液糖タンパク質などの水溶性食物繊維(多糖類)が含まれているため。水溶性食物繊維は水を含むとゲル状の成分になり、食物を包み込んでゆっくりと消化管を移動させる性質があります。この働きによって消化スピードを低下させて糖の吸収を緩やかにする=血糖値の急激な上昇・食後インスリンの分泌を抑えることに繋がります。加えて里芋の炭水化物の中には血糖値を上昇させない難消化性でんぷんが含まれていること、糖代謝に関わるビタミンB1やナイアシンなどを補給せきることから、血糖値が気になる方のサポートにも適した食材と考えられています。

また血糖値が上がると分泌されるインスリンは、過剰な糖を脂肪として貯蓄することで血糖値を一定に保つ機能を担っています。このため血糖値の上昇を抑えることは肥満予防にも繋がりますし、里芋に含まれている不溶性食物繊維類が消化器官の中で水を吸って膨らむことで満腹感を維持することにも繋がります。水溶性食物繊維は腸内の余剰コレステロールを排出させる働きを持つという報告もありますから、ダイエットのサポーターとしても役立ってくれそうですね。里芋は100gあたり58kcalとイモ類の中ではカロリーも低めですから、少しずつレシピに取り入れたり、ご飯の摂取量を減らす代替品として活用してみては如何でしょう。

美肌保持のサポートにも

里芋のビタミンC含有量は多くありませんが、他のイモ類と同じくデンプンに守られているため熱などによる損失が少ないというメリットが有りますケルセチンなどのフラボノイド・ポリフエノール類を含んでいる可能性も示唆されていますから、抗酸化物質の補給源としても役立つ可能性があるでしょう。抗酸化作用によって皮膚の老化スピードを遅らせてシワやたるみを防ぐ働きができるほか、里芋は皮膚の新陳代謝に関係するビタミンB6・血行促進作用や皮脂バランスを整える働きが期待されているナイアシンなどのビタミンB群も含んでいます。

そのほか多糖類(ムチン型糖タンパク質)も粘膜だけではなくお肌を潤す働きが期待されており、ビタミンB群の補給と合わせて乾燥機や肌荒れ予防にも里芋は役立つのではないかと考えられています。間接的な効果とはなりますが、不溶性・水溶性両方の食物繊維の補給によって便通や腸内環境が整うことからも、腸内老廃物から発生する有毒物質(毒素)の減少・腸内善玉菌によるビタミン合成促進などが期待できます。栄養素の補給と老廃物の排出促進、二つの方向から肌を整える手助けをしてくれそうですね。

里芋と女性ホルモンについて

里芋は女性ホルモンを高める・ホルモンバランスを整えるをいう説もあります。これは里芋に含まれているリグナンという成分にホルモン様作用を持つ可能性があることが報じられているため。更年期障害や抗酸化作用・美肌・美白(メラニン色素生成抑制)・抜け毛予防・バストアップなど様々な働きが期待されてはいますが、実際の所リグナンを含むフィトエストロゲンの作用については未解明な部分が多く、エストロゲン様作用を発揮するかについても意見が別れている状態です。里芋に含まれているリグナンは大半が皮に含まれているそうですから、皮を向いて通常量摂取する場合は何らかの形で女性ホルモンに影響する可能性は低いと考えられます。

目的別、里芋のおすすめ食べ合わせ

里芋の選び方・食べ方・注意点

里芋を剥くときに手が痒くなるのは皮に近い部分に含まれるシュウ酸カルシウムという針状結晶が肌に刺さることが原因です。対処法としては手を酢水に付ける・塩や重曹をつけてから皮を剥くなどの方法があります。痒くなってしまった時も酢水に手を浸すと早くおさまります。山芋と同じ対処法ですね。里芋をラップで包んで電子レンジで加熱してから皮を剥く・縦横十文字になるように切れ目を入れてから茹でると皮が剥けやすくなりますので、組み合わせて下処理をしてみてください。

里芋を煮物にする場合はヌメリが多いと見た目・味の染みが悪くなることから、湯で汁に塩を入れる・一度茹でこぼして水から茹でるなどヌメリを抑える方法が使われます。しかし里芋の粘り気の中にはガラクタンなどが含まれていますので、ヌメリを落としすぎたり・強火で加熱した場合は摂取出来る量が減少してしまいます。表面の茶色い部分だけを剥ぎ取るような感覚で、たわしや包丁の背でこそげ落とすようにするとヌメヌメは出てきにくいです。もしくは表面を洗ってから乾燥時間を置いて向くだけでも、粘り気が落ち着いて剥きやすくなりますよ。

美味しい里芋の選び方・保存方法

里芋を選ぶ際には全体的にふっくらと丸みを帯びたようなシルエットのもの、皮がカラカラに乾燥しておらず湿り気のあるものを選びます。皮にひび割れ・大きな傷・変色があるものは避けるようにしましょう。また、きれいに洗ってあるものは表面が乾燥し劣化してしまう可能性があるので、泥付きのものを選んだほうが確実です。

里芋は保存に適した環境であれば一ヶ月程度日持ちのする野菜です。寒さと乾燥に弱いという性質があり冷蔵庫に入れると逆に痛みが早くなってしまうため、保存は常温よりも少し涼しい10℃~20℃程度で直射日光の入らない場所がベスト。乾燥を避けるために土を落とさなまま一つずつ新聞紙に包み、ダンボール箱などに入れておきましょう。冷蔵庫に入れる場合は乾燥しないように湿らせた新聞紙などで包むと良いようですが、早めに使い切った方が無難。室温が高い・長期間保存したい場合であれば皮を剥いて固めに茹で、水気を切ってから小分けにして冷凍します。

里芋パスター(里芋の湿布)について

里芋の皮を厚めに剥き摩り下ろしたものに、その一割程度の生姜おろしと塩を少々加え混ぜあわせて作った“里芋パスター(里芋の湿布)”は民間療法の王様のような存在。古くは「いも薬」と呼ばれ、腫れや炎症・痛みのケアや毒出しなど様々に利用されてきました。現在でも里芋パスターは熱さまし・打ち身・捻挫・喉の痛み・乳腺炎・リウマチなど様々な症状の緩和に役立つと、信者とも言うべき実践者が多い民間商法。里芋をすりおろす手間を省ける「里芋粉」も販売されているほど根強い人気があります。

里芋湿布の方法は、作った里芋パスター小麦粉を加えて粘り気をつけたものをカーゼなどに塗布し、ごま油を塗った患部に乗せて固定し4~5時間程度当てておくというのが一般的なよう。人によって方法には若干の違いがありますし、提唱する効果も様々ではあります。しかし里芋パスターの効能については科学的な根拠がなく、肌質によっては炎症を起こしてしまう可能性もあります。民間療法として残ってはいますが、リスクが有ること・有効性のもととなる根拠がないことは念頭に置いておいて下さい。

里芋の活用アイディア

タロイモの仲間は世界中で食されており、各地で様々な料理法が考案されています。日本では煮付け・汁物・シンプルに焼くか蒸すなどの料理法が主ですが、世界のタロイモ料理を参考にすると里芋の活用幅が増えるかもしれません。例えば、ハワイで食べられている「ポイ」と呼ばれるペースト系マッシュポテトの再現に里芋を利用したり、中華料理で点心として使われている「芋角」のように蒸した里芋を潰したものに小麦粉を混ぜて生地にしたり……などなど。日本人としてはちょっと不思議な感覚ですが、欧米では里芋粉ならぬ“Taro Root Powder”を使ってケーキやパンを作る方もいらっしゃるようです。紫色のタロイモ粉を使ってSNS映えするケーキやタピオカドリンクを作るのも人気。ウベ芋(PURPLE YAM)と混同されているところもあるようですけど…。

【参考元】