カシューナッツとその栄養成分・効果効能
|鉄分やビタミンB群の補給に! カロリー低めのナッツ

食べ物辞典:カシューナッツ

カシューナッツはくるりと弧を描いたようなフォルム、コリコリした食感が特徴のナッツ。そのまま食べる以外にも炒め物に加えたり、ペースト(カシューバター)として料理の風味づけにも役立ちます。カシューナッツはナッツとしては油っぽさが少なく食べやすい部類で、栄養価としても低脂質かつタンパク質が多いことが特徴。ナッツ類の中では低カロリーなので脂質やカロリーが気になる方でも取り入れやすく、ビタミンB1や鉄分補給にも役立ってくれます。そんなカシューナッツの歴史や栄養効果について詳しくご紹介します。

カシューナッツのイメージ画像:食べ物辞典トップ用

和名:カシューナッツ
英語:Cashew nuts

カシューナッツのプロフイール

カシューナッツとは

おつまみ・ミックスナッツにもよく使われるカシューナッツ。そのまま食べるだけではなく、中華料理の炒め物や煮物など食事レシピにも使いやすい食材です。さっと火を通すならコリコリのまま、じっくり加熱するとしっとり柔らかな食感が楽しめるのも魅力です。生カシューナッツをペーストにしてクリームソースなどに加えても美味しいですよ。カシューナッツペーストを使った「カシューバター」は、バターの代用品としてヴィーガンや動物性食品を控えたい方々に取り入れられています。風味豊かなので料理の隠し味としても役立ってくれますよ。

そんなカシューナッツは、呼び名通りウルシ科の常緑樹“カシュー”にできる種子(ナッツ)。樹木としてのカシューはカシューナットノキ、もしくは種子(堅果)の特徴的な形状から「勾玉の木」とも呼ばれています。日本では種子の形が勾玉見えるとして呼び名が付けられていますが、カシューナットノキ属を意味する学名に使われている“Anacardium”はラテン語で「上向きの心臓」を意味する言葉が語源とされています。種子の形もハートと言えなくもないですが、由来は果実(果托)部分が心臓を上向きにしたような形に見えたためだそうです。

ちなみに、この果実部分は“カシューアップル”とも呼ばれています。と言ってもりんごに似ているわけではなく、見た目は小さいパプリカといったところ。またカシューナッツは果肉の中に種子があるのではなく、果肉部分の先端に種子が付くという独特の形状をしています。パッと見ると大きな“ヘタ”のように見える灰緑色をしている部分が種子で、この殻を割って出て来る仁部分がカシューナッツです。

カシューアップルは品種により赤系と黄色系があり、果物として生食することも出来ます。しかし完熟したものはデリケートで傷つきやすいこと・日持ちがしないことから産地消費のみ。ジャムやジュース・チャツネなどに加工されたものは日本でも時折、輸入商品店などで見かけることができますが馴染みは薄いですね。冷凍ペーストやストレートジュースなど“カシューアップルそのもの”の場合は、ドリアンに近いと称されるような独特な芳香があり、酸味や渋味が強いため好き嫌いは分かれるそうです。

対して種子(仁)であるカシューナッツは、アーモンドヘーゼルナッツと合わせて“世界三大ナッツ”と称されることもあるように、世界的に食されているナッツの一つ。近年は「生カシューナッツ」として販売されているものもありますが、一般的に流通されているものは非加熱という意味での「生」ではなく、ロースト(焙煎)の工程が行われていないことを指しています。これは生のカシューナッツには青酸配糖体(アミグダリン)など毒性や刺激性のある成分が含まれている関係から、食べるためには高温加熱による除去処理が必要なためです。

カシューナッツの歴史

カシューナッツの原産地は中南米、ブラジル周辺エリアと考えられています。そのためヨーロッパにカシューナッツが知られたのはコロンブスのアメリカ大陸到着以後となるため、歴史の浅いナッツの1つとも言われています。ただしマヤの医療ではカシューナッツの葉や樹皮を下痢の治療に用いた・アマゾン周辺の人々はカシューアップルジュースを強壮剤や解熱剤代わりに使っていたなどと伝えられていますから、毒のある種子を食用としていたかはさておき何らかの利用はなされていたのでしょう。

16世紀まではポルトガル人によって食用や防風樹として、カシューナットノキの移植が行われ始めました。インドを皮切り、東南アジアやアフリカ・オーストラリアなどへもカシューナッツは広まっていきます。ちなみにカシューという呼び名はポルトガル人が先住民達が使っていたカシューの呼称「acajú(ゥカジュー)」を聞いて、ポルトガル語風に「Caju(カジュー)」として取り入れたのが語源だそう。それが英語に置き換えられる際に「Cashew(カシュー)」に変化したのだそうです。

1560年代には当時ボルトガルがアジア拠点とさしていたインドのゴアに大規模な種子の食用加工工場を造設し輸出がスタートしたことで、植樹された地域以外でもカシューナッツの存在も広く認知されるようになっていきます。比較的早い段階でカシューナッツの栽培・加工が行われていたインド製のカシューナッツは、現在でも高い評価を得ているのだとか。ちなみにインドではカレーにもカシューナッツを使いますし、カシューアップルを原料とした“フェニー”というお酒なども製造されていますよ。

カシューナッツの栄養成分・効果について

栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

カシューナッツは種実類の中では脂質が少なく、タンパク質の割合が多い食材です。マグネシウムや鉄・亜鉛などのミネラルが豊富に含まれており、ビタミンB群の含有も比較的多くなっています。ナッツ類の中では低カロリー・低脂質とされていますが。全体重量の半分近くが脂質となっていますから食べ過ぎには注意が必要です。

『日本食品標準成分表(七訂)』に記載されているカロリーは“カシューナッツ/フライ、味付け”で100gあたり576kcal。一日の摂取上限量は20粒程度、一粒を1.5gとして30g程度。一粒を1.5gとして計算すると約9kcal、20粒を摂取した場合は170~180kcalとなります。生カシューナッツなどであればもう少しカロリーが低いと考えられますが、食べ過ぎには注意が必要ですね。

カシューナッツイメージ

カシューナッツの効果効能、その根拠・理由とは?

疲労回復・栄養補給に

カシューナッツはビタミンB1をクルミピーナッツの約2倍、100gあたり0.54mgと多く含んでいます。ビタミンB1は炭水化物を体を動かすエネルギーへと変換する際に必要な補酵素(チアミンピロリン酸)の原料となりますから、摂取した栄養(炭水化物)をエネルギーとして行き渡らせて身体が活動できるようにサポートしてくれるでしょう。また糖代謝が活発化することで、疲労や筋肉痛の原因になると考えられる乳酸の元となる物質(焦性ブドウ糖)の蓄積抑制・乳酸の代謝を高めることにも繋がる可能性があります。

加えてカシューナッツはたんぱく質や脂質の代謝に関わるビタミンB2やB6も含んでいます。このため疲労回復に有効とされていますし、三大栄養素を効果的にエネルギーへと転換することで夏バテ予防にも役立つと考えられています。カシューナッツそのものも高カロリーで栄養豊富な食材ですから、エネルギー源としても、不足しがちな栄養素の補給元としても役立ってくれるでしょう。

骨や歯の健康維持に

カシューナッツには骨の形成促進や骨吸収抑制に役立つビタミンK、骨や歯の形成に必要なマグネシウム、丈夫な骨の形成をサポートする銅などのミネラルが含まれています。このためお子さんの成長サポートや、骨粗鬆症予防に役立つと言われています。ただし骨や歯の材料となるカルシウムそのものは、100gあたり38mgとカシューナッツにはさほど含まれていません。このためカシューナッツを単体で食べるよりは、牛乳や小魚などカルシウムが豊富な食材と組み合わせて食べたほうが効果的であると考えられます。

ストレス対策に

カシューナッツには際立って多くはないものの、副腎皮質ホルモンや神経伝達物質の合成に関わるパントテン酸、セトロニンの原料として使われるマグネシウム・ビタミンB6・トリプトファンなども含まれています。亜鉛も神経伝達に関与する栄養成分ですし、脳機能や精神安定に有効であるという説もあります。カシューナッツを食べるだけで何らかの効果を即実感できるとは言い難いですが、これらの成分を不足なく摂取することでストレス耐性アップや睡眠の質の向上などに繋がると考えられています。

抗酸化・生活習慣病予防に

カシューナッツは脂質が多いですが、オレイン酸を豊富に含むことから生活習慣病予防にも役立つと考えられています。一価不飽和脂肪酸(オメガ9/n-9系)のオレイン酸は善玉(HDL)コレステロールを減少させることなく、悪玉(LDL)コレステロールを減らす働きがあることが報告されています。またオレイン酸は不飽和脂肪酸の中で酸化されにくく過酸化脂質を作りにくい性質もありますから、悪玉コレステロール低減作用と合わせて高血圧や動脈硬化の予防に有効であると考えられています。

カシューナッツは人間の体内に存在する活性酸素除去酵素であるSOD(スーパー・オキサイド・ディスムターゼ)の材料として利用される亜鉛や銅、グルタチオンペルオキシダーゼの原料となるセレン(セレニウム)などのミネラルも豊富に含んでいます。フラボノイドなどより直接的に抗酸化作用を発揮する成分も含まれていますから、過酸化脂質の生成抑制・体の持つ抗酸化力の向上・抗酸化機能のサポートと多方面から健康維持をサポートしてくれると考えられます。活性酸素過剰は老化を進める原因とも考えられていますから、アンチエイジングにも効果が期待できます。

貧血予防・冷え性軽減

カシューナッツは100gあたり4.8mgとナッツ類の中でも鉄分を多く含んでいます。一日の摂取目安とされる20粒(30g)であっても1.44mgの鉄分を摂取できる計算になりますから、十分に鉄分補給源として役立ってくれるでしょう。鉄分は赤血球中のヘモグロビンを合成するために必要な成分であり、体内の酸素運搬に重要な役割を持つミネラル。日本人の貧血、特に女性の貧血は鉄分不足による鉄欠乏性貧血が大半と言われていますから、おやつ代わりに取り入れるなどすると鉄分不足を改善して貧血予防・軽減に役立ってくれるでしょう。

またカシューナッツには赤血球膜の生成に必要とされる物質である亜鉛も100gあたり5.4mgと豊富に含まれています。亜鉛が不足すると赤血球が壊れやすくなる=活動できる赤血球数が減少して貧血状態(亜鉛欠乏性貧血)を引き起こす可能性がありますから、こちらも不足なく摂取しておきたい栄養素と言えますね。カシューナッツにはヘモグロビンを作るために必要とされる銅も多く含まれていますので、貧血予防に役立つミネラル補給源として役立ってくれるでしょう。葉酸やビタミンB12などのビタミンB群、鉄分の吸収を助けるビタミンCを豊富に含む食材と食べ合わせると効果的です。

貧血が軽減されることに加えて、抗酸化作用やオレイン酸が悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を減少させる働きがあると考えられることから、カシューナッツは血液循環の改善にも効果が期待されています。このため血行不良に起因する冷え性の予防や改善にも良いと考えられています。補酵素として働き代謝機能をサポートしてくれるマグネシウム他ミネラル類の補給にもなりますので、食事の偏りが気になる方にも適しているでしょう。

便秘予防・肥満予防にも

カシューナッツは100gあたり6.7g、一日の摂取上限目安とされる20粒(30g)あたり2.0gの食物繊維を含んでいます。食物繊維の中でも不溶性食物繊維が多く含まれていますから便通促進に役立つと考えられますし、不飽和脂肪酸のオレイン酸も腸に刺激を与えることで蠕動運動を活発化させる働きが期待されています。そのほかオレイン酸は便の表面をコーティングして潤滑油の役割を果たす・界面活性(乳化)作用によって便を柔らかく排泄しやすい状態にするという説もありますから、食物繊維と合わせて便通促進に効果が期待できるでしょう。

また便通が良くなり老廃物の排出がスムーズに行われること・ビタミンB1の補給によって代謝向上が期待できることから、カシューナッツは取り入れ方によってはダイエットサポートとしても役立つと考えられています。カロリーは100gあたり576kcalと高めで脂質含有量も多いですが、炭水化物(糖質)の含有量は少ないので糖質制限・低インシュリンダイエットを行う方に取り入れられることが多いようです。と言っても食べすぎると肥満の原因にもなりますから、口寂しい時におやつ代わりに食べるくらいが妥当でしょう。良く噛んで食べると満腹感に繋がります。

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肌荒れ・肌老化予防

フラボノイドなどのポリフェノール、抗酸化作用を持つSODなどの酵素の材料として利用される亜鉛やセレンなどのミネラルを含むカシューナッツは、肌のアンチエイジングにも効果が期待されています。オレイン酸も「美肌を作る特効薬」と称される肌の皮脂を構成している脂肪酸の一つであり、不足すると皮膚や角質のゴワつき・小じわなどの原因となると考えられていますから、適切に補充することで若々しい肌を保持することに繋がるでしょう。

抗酸化作用は過酸化脂質の生成を抑制することで“大人ニキビ”の予防に役立つと考えられますし、カシューナッツには脂肪代謝に関わるビタミンB2も含まれています。亜鉛は細胞分裂を活性化させ皮膚の再生を促進する=皮膚の新陳代謝(ターンオーバー)を促進に繋がるとされていますから、肌荒れの回復促進にも効果が期待できるでしょう。そのほかに多くはありませんがタンパク質の代謝・皮膚粘膜の保持に関わるビタミンB6もカシューナッツには含まれていますよ。脂質が多いので食べ過ぎはニキビや肌荒れを起こす原因ともなりますが、適量であれば肌の健康維持にも役立つと考えられます。

女性の健康サポートに

亜鉛は様々なホルモン生成を補助している存在であり、女性の健康維持にも欠かせない存在です。適切な亜鉛の摂取は卵胞刺激ホルモン(エストロゲン)・黄体形成ホルモン(プロゲステロン)の分泌がきちんと行われるようサポートし、生理不順や無月経などの月経トラブルの予防・改善効果に繋がるとも言われています。その他に亜鉛の抗酸化作用は卵子の老化予防にも繋がるという説もあり、月経周期の安定化と合わせて妊活用としても重要な栄養素と考えられています。

カシューナッツには亜鉛に加え、女性ホルモン(エストロゲン)の代謝に関わるビタミンB6も含まれています。どちらも一日の摂取量とされる30g程度であればさほど多くはありませんが、通常の食生活で不足しがちな分をカバーしてくれるでしょう。マグネシウムの補給と合わせ、PMS(月経前症候群)などの軽減にも効果が期待できます。植物性エストロゲンなど直接的にホルモンに作用する成分は含まれていませんから、穏やかに体のバランスを整えたい方の食生活改善サポートとして役立ってくれるでしょう。

薄毛予防・男性機能保持にも期待

カシューナッツに含まれている亜鉛は新陳代謝やタンパク質の合成に関わる成分で、亜鉛不足のサインとしても髪の毛が細くなる・抜け毛や白髪が増えることが挙げられています。このため亜鉛を不足なく補うことは、髪の健康維持=薄毛予防・髪の生え変わり促進にも役立つと言われています。カシューナッツには髪の毛の元となるタンパク質(アミノ酸)も含まれていますし、髪の生成を助けるビタミンB2やB6・毛髪の健康維持に必要なビオチンなどのビタミン類も含まれていますから、毛髪の維持にも効果が期待できます。

また亜鉛は性機能の保持や向上にも関わる存在で「セックスミネラル」とも呼ばれています。上記でご紹介した女性ホルモンのサポートだけではなく、男性ホルモンのテストステロン・精子の生成など男性の体にも関係している成分。実験では亜鉛不足は精力減退や精子量減少・勃起不全・前立腺障害など、男性機能トラブルの原因となる可能性があることも報告されています。亜鉛とともに精子を作る際に必要とされるセレンもカシューナッツには含まれていますから、男性機能の維持や向上にも役立つと考えられます。

目的別、カシューナッツのおすすめ食べ合わせ

  • カシューナッツ+ヨーグルト・レーズン・プルーン
    ⇒便秘予防・改善に
  • カシューナッツ+チーズ・小魚(イワシなど)・ゴマ
    ⇒骨粗鬆症予防に

カシューナッツの選び方・食べ方・注意点

市販されているカシューナッツは油で揚げられていたり、塩を振られているものが多くなっています。カシューナッツそのものは適量の摂取であれば様々な健康メリットがあると考えられている食材ですが、調理に使われた油が酸化していたり、塩分の摂取が多くなることで高血圧を引き起こすなどの悪影響を受ける可能性もあります。そのため購入時にはローストのみの無添加タイプや生カシューナッツを選ぶようにすると良いでしょう。特に元々高血圧気味の方は注意が必要です。

カシューナッツの摂取量との注意点

カシューナッツの摂取量については諸説ありますが、片手で掴める量もしくは20粒程度を上限と見做しているものが多くなっています。ただしこれは摂取上限ですから、継続して食べる場合は少なめの10粒程度にすると良いでしょう。10粒であれば摂取カロリーも100kcal以下となりますし、脂質摂取過多の心配も少なくなります。肌荒れを起こす・ニキビが出来てしまう方は摂取量を減らすか、中断するようにして下さい。また稀にカシューナッツでアレルギーを起こす方が居ることも報告されていますので、違和感やかゆみ・腫れを感じた場合は摂取を控えましょう。