パプリカとその栄養成分や効果効能
|ピーマンとの違い・色による違いも紹介

食べ物辞典:パプリカ

鮮やかな赤や黄色で、見ているだけでも嬉しくなるパプリカ。ピクルスから炒め物などの彩りとしても役立ってくれる野菜ですし、ピーマンよりも青臭さ・苦味がなく食べやすいことも特徴です。食材としての使いやすさはもちろんのこと、ビタミンC・カロテノイドやポリフェノール系色素が多く含まれていることから健康維持・アンチエイジング美容面など様々な方面も有益な野菜でもありますよ。そんなパプリカの歴史や栄養効果、色による成分の違いなどについて詳しくご紹介します。

パプリカのイメージ画像:食べ物辞典トップ用

和名:パプリカ
英語:sweet bell pepper/paprika

パプリカのプロフイール

パプリカとは

カラフルな色合いが特徴的なパプリカ。見た目の印象通りピーマンと同じくナス科トウガラシ属に分類される野菜で、分類的にはトウガラシの一品種という扱いになっています。唐辛子類は大きく辛味のある“辛味種(辛トウガラシ)”と辛味の少ない“甘味種(甘トウガラシ)”に大別され、パプリカはピーマンなどと同じく甘味種に分類されます。同じ甘唐辛子であり外見も似ているピーマンとパプリカは、種としてはほぼ同じとされており区分は曖昧であるとも言われています。日本では一般的にピーマン=緑・パプリカ=赤や黄色という印象がありますが、ピーマンは熟するとオレンジや赤色へと色付きますからこの捉え方も正確ではありません。

というのもパプリカというのは英名ではなく原産であるハンガリー語が由来で、英語の場合はsweet pepperもしくはbell pepperなどと呼ぶことが多いようです。余談ですがハンガリーでは伝統料理でもパプリカーシュやグヤーシュなどパプリカを使うものが多く、家庭料理になくてはならない存在なのだとか。現在でこそ家庭でも使われるポピュラーな野菜の一つですが、パプリカが日本に輸入された当初は香辛料もしくは橙~赤色の着色料(パプリカ色素)として需要が主でした。主な輸入元はハンガリーだったため、日本では元々パプリカ=ハンガリー産の甘唐辛子・粉末化した香辛料を指す言葉。

しかしハンガリー以外でも各地で品種改良がなされたこと・1993年に輸入が解禁された関係から、ハンガリー以外からも大型かつ肉厚なものが輸入されるようになります。味にクセがなく食べやすいことから野菜として食卓に登場するようになり、パプリカとカラーピーマンの境界が曖昧になってしまいました。現在では果肉が薄く中型・縦長型の物がピーマンやカラーピーマン、大型で果肉が厚く丸みの強い形状のものがパプリカとするのが一般的となっています。クイーンベル・キングベル・サンセットベルなどの大型ピーマンの総称として「パプリカ」という言葉が使われています。

パプリカはピーマンよりも果肉部分に厚みがあり柔らかい・甘みがあり青臭さが少ないと、ピーマンが苦手な方でも食べやすい存在。栄養成分的にはピーマンもパプリカもあまり変わらないと言われていますし、ビタミンCやカロテノイドなどの色素系ポリフェノールは多く含まれています。日本で多く流通しているパプリカは黄色・オレンジ・赤の暖色系ですが、そのほかも白・緑・紫・茶・黒など様々な色合いのものが存在していますよ。

パプリカの歴史

パプリカやピーマンの祖先と言える唐辛子は熱帯アメリカ(中南米)が原産とされており、紀元前8000年~6500年頃には食用とされていた・一部で栽培も行われていたと考えられています。紀元前4000年くらいになると広範囲で栽培も行われていたと言われています。15世紀頃にコロンブスら探検隊によってアメリカ大陸からヨーロッパへともたらされ、観賞用・香辛料としてヨーロッパ各国をはじめ世界中へと広がっています。

唐辛子の甘味種であるパプリカが生まれたのは16世紀~17世紀、ハンガリーとされています。ハンガリーは当時オスマントルコ占領下であり、オスマントルコ軍で働いていたハンガリー出身者が唐辛子を地元に持ち帰って植えたのが始まりなのだとか。当初は辛味のある唐辛子(レッドペッパー)を栽培していましたが、土壌の関係や品種改良を重ねることで辛くない唐辛子=パプリカを作り出します。私達が普通に使っているパプリカ(paprika)という呼び名も、ハンガリー語では唐辛子を意味する言葉だったそうです。

またパプリカの歴史を語るに、1937年度ノーベル生理学医学賞を受賞したハンガリー人のセント=ジェルジ(スザント=ゲオルギー)博士の存在が外せません。セント=ジェルジ博士はビタミンCの発見や壊血病予防に有効であることを発見した方ですが、地元の特産であったパプリカの果肉に相橘類よりも多くのビタミンCが含まれていることを発見し分離した人でもあります。ビタミンCの作用が報告されると共に、それを多量に含むパプリカも健康食材として注目され世界的に需要が急増するきっかけとなったのだそうです。

日本には明治時代初期にアメリカから甘唐辛子としてピーマンが伝わり、第二次世界大戦後には広く食べられるようになります。対してパプリカが普及したのはオランダからパプリカが輸入されるようになった1990年代以降と、ごく最近のこと。これはハンガリー政府が国内のパプリカを保護するため、パプリカパウダー以外の輸出を禁止していたためだとか。現在は日本国内でも生産されていますし、輸入品の大半を占めるオランダや韓国ほか様々な国地域で栽培されていますが、ハンガリー産とは違うルートで品種が確立されたものです。

パプリカの栄養成分・効果について

栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

下記は『日本食品標準成分表』に“赤ピーマン/果実、生”として掲載されている数値を参考に作成しております。赤ピーマンはピーマンが完熟し色付いたものも指しますがカロリーSlism様によると「ここでの赤ピーマンとは、大型で肉厚な品種の赤色のものを指す」「別名クイーンベル」と書かれていますので、一般的に赤パプリカとして認識・販売されている野菜を指すと考えられます。

ただしパプリカは産地・品種等でも栄養成分量が異なることも指摘されていますので、参考程度にお考え下さい。またパプリカは色により色素成分等にも大きな違いがありますので黄色・オレンジパプリカについてもご確認下さい。

パプリカイメージ

パプリカ(赤)の効果効能、その根拠・理由とは?

老化予防(抗酸化)の味方!

パプリカはピーマンよりもビタミン類を豊富に含むということが特徴と言えます。赤パプリカ100gあたりのビタミンC含有量は170mg・β-カロテン当量は1100μgと共に一般的な緑色のピーマンの2倍以上、ビタミンEは100gあたり4.3mgと5倍以上にもなります。ビタミンCとビタミンEについては野菜・果物類でもトップクラスと言えますし、この2つと比べるとやや劣るもののβ-カロテンも少なくはありません。ビタミンA(β-カロテン)・ビタミンC・ビタミンEは働きが異なるため同時に摂取することで抗酸化に相乗効果をもたらすとも言われています。

加えてパプリカにはピーマンと同様にビタミンCを熱や酸化から守り吸収をサポートしてくれる、ビタミンPと呼ばれるポリフェノールも含まれています。ビタミンPはビタミンCの損傷を抑制する・吸収を助ける働きを持つだけではなく、ポリフェノールとしての抗酸化力も持ち合わせています。赤パプリカに含まれているカロテノイド系赤色色素カプサンチンも高い抗酸化作用を持つと考えられていますから、パプリカは抗酸化物質の補給源として優秀な野菜の一つとされています。身体の老化の原因として過剰に発生した活性酸素が体内の脂質・タンパク質・DNAなどに悪影響を及ぼすことが挙げられていますから、アンチエイジング食材として注目されているのも納得ですね。

疲労回復・ストレス対策として

β-カロテンなどのカロテノイドは必要に応じで体内でビタミンAに変換されるプロビタミンAでもあり、ビタミンAとして働くことで皮膚粘膜の保持・新陳代謝を正常に保つなどの働きを担う栄養素でもあります。パプリカにはエネルギーを作り出すカルニチンの合成に関わるビタミンC・ビタミンB6を筆頭に代謝をサポートしてくれるビタミンB群なども含まれてます。このためピーマンシシトウなどと同様に、疲労回復や夏バテ軽減のサポートとしても役立つと考えられています。

またビタミンCは副腎皮質ホルモンや神経伝達物質の合成にも関係するビタミン。特に副腎皮質ホルモンはストレス下で分泌されることが多いため別名「抗ストレスホルモン」とも呼ばれており、ストレスなどにより分泌量が増えるとビタミンCの消費も激しくなります。副腎皮質ホルモンの原料成分が足りない場合はストレスに対しての反応が取れにくくなるため、ビタミンCを補給することはストレス耐性を高めることに繋がると考えられます。ビタミンやポリフェノールによる抗酸化作用もストレスによって生じた活性酸素を抑制してくれますから、肉体疲労だけではなく精神疲労や疲労感の軽減にも効果が期待できるでしょう。

風邪予防・免疫力のサポートに

パプリカは100gあたり170mgとイチゴやキウイの2倍以上のビタミンCを含み、ビタミンCを安定化させて吸収を高める・持続時間を伸ばすなどの働きを持つビタミンP(ヘスペリジンなど)も含んでいます。この2つは抗酸化作用以外にコラーゲン生成を促す働きがあることから、細胞間を密に保つことで免疫力を高める働きも期待されています。β-カロテンもビタミンAとして働くことで呼吸器粘膜などを強化し、ウィルスの侵入を防ぐ働きを持つとされていまから相乗して免疫力保持をサポートしてくれるでしょう。

そのほかビタミンCにも白血球の活発化・抗ウイルス作用を持つインターフェロンの分泌促進作用があると言われており、自らが病原菌を攻撃する働きを持つなどの可能性も報告されています。間接的は働きとはなりますが抗酸化作用も免疫力低下を予防することに繋がりますから、こうした成分が豊富に含むパプリカは免疫力向上や風邪・インフルエンザ予防にも役立つと考えられます。

高血圧・動脈硬化予防にも?

パプリカはビタミンC、ビタミンE、β-カロテン・β-クリプトキサンチン・カプサンチンなどのカロテノイド、ビタミンPと呼ばれるフラボノイド系ポリフェノールと抗酸化作用を持つ成分を多く含む食材です。このためパプリカは脂質が酸化することで出来る過酸化脂質の生成抑制にも有効と考えられます。過酸化脂質は血管内に蓄積して血管を狭める・血管の柔軟性を損なわせる原因となることが指摘されていますから、血栓や動脈硬化予防にも繋がるでしょう、

ビタミンCやビタミンPは抗酸化以外にコラーゲンの生成促進からも血管を正常に保つサポートをしてくれますし、カプサンチンには善玉(HDL)コレステロール上昇作用が、ビタミンPの一種であるヘスペリジンには血圧降下作用が報告されています。別段多いわけではありませんがカリウムも100gあたり210mg程度含まれていますから、血圧が気になる方も適した食材と言えます。

貧血・冷え性気味の方に

パプリカはピーマンと同じく100gあたり0.4mgと鉄分が特に豊富な野菜ではありません。しかし鉄分の吸収を高めてくれるビタミンCを非常に多く含むこと・葉酸含有量が100gあたり68μgと比較的多いことから、他食材と食べ合わせることで貧血予防にも役立つと考えられます。鉄欠乏性貧血が気になる方であれば、鉄分を豊富に含むホウレンソウなどの野菜類・肉類と組み合わせて食べると効果的でしょう。

また毛細血管を広げて血液を隅々まで行き渡らせる働きが期待されているビタミンEやナイアシン・ヘスペリジンなどの成分を含み、赤色色素カプサンチンにも血行促進作用や代謝促進などの働きが期待されています。パプリカにはピーマンの血液サラサラ成分とも言われる香り成分のピラジンも含まれているため、これらの成分が複合して働くことで血行促進効果が期待できるでしょう。血行不良に起因する肩こりや腰痛などの軽減、代謝促進作用と合わせて冷え性・末端冷え性の軽減にも繋がると考えられます。

腸内環境改善・肥満予防にも期待

パプリカの食物繊維含有量は100gあたり1.6gとピーマン(緑)よりも少ないですが、水溶性食物繊維の量として見ると100gあたり0.5gとピーマンとあまり変わりません。不溶性食物繊維は便通を促してくれる成分ではありますが、腸内善玉菌のエサとなることで腸内フローラのバランスを整えてくれるのは水溶性食物繊維の方。パプリカに含まれているビタミンCも同様に腸内善玉菌増加に役立つと考えられていますし、水溶性食物繊維とビタミンCは便を柔らかくする働きもあるので便秘改善にも効果が期待できるでしょう。

加えて水溶性食物繊維はコレステロール排出促進や、水分を含んでゲル化することで一緒に食べた食材の吸収スピードをゆっくりにし食後血糖値の上昇を抑える働きを持つとされている成分でもあります。そのほかβ-クリプトキサンチンやカプサンチンなどのカロテノイドにも代謝促進・脂肪燃焼促進などの働きがあるのではないかという説がありますβ-クリプトキサンチンやカプサンチンの作用については不明瞭な点も多いですが、パプリカには抗酸化物質や血行を促す成分なども多く含まれていますのでダイエットサポートとしても役立ってくれる可能性が高いと考えられます。

美肌・アンチエイジングのサポーターとして

ストレスや加齢・紫外線などによって増える活性酸素は肌細胞を酸化させ、シワやたるみ・くすみなど肌老化を加速させてしまいます。パプリカはビタミンCとビタミンEを非常に多く含み、カロテノイドやビタミンPなどのポリフェノールと様々な抗酸化作用を持つ成分をまとめて補給出来る野菜です。このためパプリカは肌の酸化ダメージを防ぎ、内側からのアンチエイジング(老化予防)に役立つ食材としても注目されています。

またビタミンCとビタミンPは抗酸化作用以外にコラーゲンの生成促進作用がありますし、β-クリプトキサンチンもヒアルロン酸量の増加を促す働きが期待されている成分。β-カロテン(ビタミンA)には皮膚や粘膜を丈夫に保つ働き・ビタミンEには血行を促す働きもありますし、パプリカにはタンパク質代謝に関わるビタミンB6なども含まれていますから、抗酸化以外の面からも肌のハリや潤いの向上、乾燥や肌荒れ予防に繋がるでしょう。

美白を心がけている方にも

抗酸化物質が豊富なことに加え100gあたり170mgと野菜・果物類の中でもトップクラスのビタミンCを含むことから、パプリカは内側からの紫外線対策・美白をサポートしてくれる食材としても注目されています。ビタミンCは抗酸化作用に加えてシミやソバカスの原因となるメラニン色素を作るチロシナーゼの働きを防ぐ働きがありますし、カロテノイドのβ-クリプトキサンチンも実験ではメラニン色素生成抑制効果を持つ可能性が報告されています。

ビタミンCなどは主に紫外線等によって発生した活性酸素によって生じるメラニン色素の沈着、つまりシミを防ぐ働きですが、パプリカにはビタミンEやヘスペリジンなど血液循環をサポートをしてくれる成分も含まれています。このためシミ対策としての美白効果だけではなく、肌のくすみを軽減することで全体的なトーンアップにも効果が期待できます。

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目的別、パプリカのおすすめ食べ合わせ

パプリカの選び方・食べ方・注意点

パプリカに含まれているビタミンCは熱に強いとは言われていますが全く減少しないわけではありませんし、ビタミンCほか水溶性ビタミンが水に流れ出てしまう可能性もあります。加熱しすぎると風味を損なうことにも繋がりますから、加熱調理時には色や食感がきちんと残る程度に手早く行うと良いでしょう。少量の油と一緒に食べることでカロテンの吸収率アップも期待できます。

美味しいパプリカの選び方・保存方法

パプリカもピーマンも表面に艶がありハリ・弾力を感じられるもの、全体の色が均一でしっかりと濃いものを選ぶようにします。ヘタがついている場合はヘタが切り口まで緑色をしており、瑞々しさが残っていることも新鮮さを見分けるポイントとなります。

保存はポリ袋などに入れて野菜室で。新鮮なものであれば1周間程度持つとは言われていますが、水気に弱いので2~3日に一回は汗をかいてないか確認して水気を拭き取るようにすると良いでしょう。またピーマンと同様にパプリカのワタにもピラジンなどが含まれていますから、血液サラサラ効果などを期待する場合は捨てずに活用してみて下さい。

パプリカの雑学色々

黄色・オレンジパプリカについて

上記では赤パプリカに“カプサンチン”というカロテノイド色素が含まれていると紹介しましたが、黄色やオレンジ色のパプリカの場合は同じくカロテノイドではあるのの“ゼアキサンチン”が色素成分として多く含まれています。ゼアキサンチンも高い抗酸化作用をもつ成分とされていますし、パソコン・スマホ・TVなどから発せられるブルーライト(青色光)から目を守る働きも期待されています。このため目の酷使が気になる方・目の健康を保ちたい方に適しているのではないかと言われています。

ビタミン・ミネラルの含有量としてはミネラルはさほど変わりませんが、黄色パプリカはビタミンEが100gあたり2.4mgと赤パプリカの約半分β-カロテン当量が200mgと赤パプリカの1/5以下・ピーマン(緑)の半分程度となっています。ビタミンCや食物繊維量もそこまで大きな差はないものの、赤パプリカより若干低い傾向にあります。ちなみにオレンジパプリカは赤と黄色の中間くらいと言われており、赤・黄両方の健康効果を期待できるという見解もあるようです。

紫~黒色系パプリカについて

紫色~黒っぽい色のパプリカは日本ではあまり流通しておらず、成分表での記載もないためビタミン量やミネラル量についてはハッキリしていませんが、黒や紫などのパプリカには色素成分である“アントシアニン”が含まれていることが特徴とされています。アントシアニンは網膜にあるロドプシンの再合成を促す働きから視機能保持・眼精疲労予防などの効果が期待されている他、ヒスタミン減少による花粉症の軽減・内臓脂肪蓄積抑制によるメタボリックシンドローム予防などにも有効性が示唆されている成分。このため赤や黄色とはまた違った健康効果があるのではないかと考えられています。