ワカメ(若布/和布)とその栄養成分・効果効能
|水溶性食物繊維+フコキサンチンで美容効果も期待?!

食べ物辞典:ワカメ

お味噌汁の具として、酢の物やサラダ、ラーメンのトッピング…と主役にはならないけれど、ひっそりと私達の食生活を支えてくれるワカメ。水に放すだけの乾燥わかめは使い勝手と日持ちが良いのも魅力ですね。低カロリーな水溶性食物繊維の補給源として食事のかさ増しにも役立ちますし、カロテノイドの一種である「フコキサンチン」による肥満予防効果も期待されています。ミネラルが多い海藻なので、女性の美容と健康をサポートしてくれる食材とも言えますね。そんなワカメのの歴史や栄養効果について詳しくご紹介します。

ワカメのイメージ画像:食べ物辞典トップ用

和名:わかめ(若布/和布)
英語:Wakame/sea mustard

ワカメのプロフイール

ワカメ(若布/和布/稚海藻)とは

ワカメはお味噌汁の具や酢の物など、伝統的な日本の家庭料理を支える食材の一つ。昆布と並んでポピュラーな海藻とも言えます。出汁として使われることは少ないですが、麺類へのトッピングやや海藻サラダなど“食べる”海藻としては定番中の定番ではないでしょうか。昔ほど日々の食事の中で登場しなくなったとも言われていますが、近年再び健康ブームなどで低カロリーで栄養豊富な食材として注目されています。お子さんや高齢者の健康維持だけではなく、お肌やスタイルを気にする女性にも取り入れられています。

ワカメはチガイソ科の海藻で、日本および朝鮮半島沿岸に分布しています。本来ワカメは限られた範囲にしか生息しておらず、基本的には古くからの生息域である日本・朝鮮半島など限られた地域でしか食用としても利用されていません。しかし近年は商船などのバラストタンクに遊走子が入り込み運ばれることで、ヨーロッパやオーストラリアなどでも繁殖しており、世界の侵略的外来種ワースト100の1つにも数えられています。

ワカメといえば緑色のイメージがありますが生きている(生の)状態の時は昆布と近い暗褐色をしており、加熱によって色素成分とタンパク質の結合が外れるために緑色に変化します。ワカメは便宜上「葉」「茎」「茎と根の堺」の大きく3つの部位に分けられます。このうちお味噌汁の具や海藻サラダなどでお馴染みの薄く幅のある“ワカメ”は葉の部分(葉状体)で、茎部分はそのまま茎わかめと呼ばれています。粘り気が強い「めかぶ」はワカメの付け根部分、厳密に言うならば生殖器(植物で言う花)のこと。別の海藻と思われている方も居ますが、めかぶはワカメの一部分です。

ちなみに国民一人あたりの消費量が日本の3倍とも言われるほどのワカメ多食国である韓国では、古くから産後の肥立ちを良くする・母乳の栄養を高めるなどのために“産後にワカメを食べる”習慣が根付いています。誕生日にワカメスープを食べるのも産んでくれた母親に改めて感謝することに起因した習慣なのだそう。韓国で天然ワカメは価値の高いものとして扱われ天然ワカメのとれる磯や海域は不動産として扱われているそうですよ。

ワカメの歴史

ワカメは先史時代から日本各地で食べられていた食用の歴史が古い海藻類の一つで、昆布と同様に縄文時代の遺跡からも植物遺存体が発見されています。ワカメは乾燥させやすいため日持ちがよく、海水から塩を作る技術がなかった時代の塩分補給源としても重要な食材だったのではないかと考えられています。701年に編纂された『大宝律令』でワカメは税の一つとして国に納めることが定められていますし、また奈良時代に成立した歌集『万葉集』にもワカメの古い呼び方である“和海藻(にぎめ)”の記載を見ることが出来ます。

平安時代の『延喜式』には青森~福岡にかけての広い地域からワカメが奉納されていたこと、ワカメを含む海藻類が神饌として奉納されていたことが記されています。福岡県北九州市にある“和布刈神社”では旧暦元旦にワカメを刈り取って神前に供える「和布刈神事(めかりしんじ)」が現在でも行われていますし、古いものでは710年に神事で備えられたワカメが朝廷に献上されたという記述もあるそう。野菜などの栽培がまださほど発達していなかった奈良~平安時代にかけて、ワカメは貴族達向けの高級食材であったという見解も多いようです。

食料が豊富になる鎌倉・室町時代頃には一般の人々の間で広く食されるようになります。干すと軽く日持ちかきくことから戦時の携帯食(兵糧)として、江戸時代になると救荒食としても一役買っていたそうです。江戸時代の『庖厨備用倭名本草』や『大和本草』などの本草書には生・茹でる・煮る・吸い物に入れるなど現在とほとんど変わらないワカメの調理法も記されています。名物・特産物として力を入れる地域も出てきますし、鳴門わかめとして有名な「灰干しわかめ」の製法なども考案されました。これらのことから江戸時代に家庭料理食材としてのベースが確立したと考えられています。

日本古来の食材の一つとされるワカメですが、昭和に入るまで天然物の採取に限られていました。ワカメ養殖は戦時中に占拠した大連の関東州水産試験場において、1938年頃に大槻洋四郎氏がワカメや昆布などの養殖を成功させたことが初とされています。その後日本では1960年代に養殖法・流通のための加工法が確率され、家庭料理に頻繁に利用される国民的食材として親しまれるようになります。中国ではワカメを食べる習慣がなかったため大槻氏の養殖実験事は重要視されていませんでしたが、近年になって日本向け輸出商品として養殖されたものが流通し、中国国内での消費量も増えているようです。

ワカメの栄養成分・効果について

栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

ワカメは素干しを水に戻したものであれば100gあたり1200μg(素干し/乾燥状態の場合7700μg)とβ-カロテンが非常に豊富で、ビタミンB群やビタミンKなどのビタミンも含んでいます。また海藻類の特徴とも言えますがミネラルが豊富であり、食物繊維含有量も高いことから優れた栄養補給源と言えるでしょう。100gあたりのカロリーは素干し(乾燥状態)で117kcal・水に戻した状態であれば17kcal、GI値も15~16と低いのも魅力です。

わかめスープのイメージ

※ワカメは加工法などにより含有栄養量等に差が生じます。当ページでは乾燥(素干し)もしくはそれを水戻ししたものの数値を基準として、栄養成分や期待できる効果について紹介させて頂きます。

ワカメの効果効能、その根拠・理由とは?

便秘予防・腸内フローラ改善

乾燥状態(素干し)であれば全体量の3割以上を食物繊維が占めているほど、ワカメには食物繊維が豊富に含まれています。この中にはフコイダンやアルギン酸(アルギン酸カリウム)など水溶性食物繊維として働く多糖類が多く含まれています。水溶性と不溶性食物繊維の比率で見た場合、ワカメはセルロースなどの不溶性食物繊維類の量を、フコイダンやアルギン酸などの水溶性食物繊維量の方が上回ると言われています。

不溶性食物繊維は腸の蠕動運動を促進する働き・腸内の有害物質を絡めとって排出する働きがあります。茹でワカメの緑色の元となる葉緑素(クロロフィル)も食物繊維の数千分の1と分子構造が小さく、食物繊維の入り込めない腸絨毛の間などの老廃物・有害物質の排出を助けてくれると考えられている成分。水溶性食物繊維は腸内の善玉菌のエサとなることで腸内環境を整える働きがあります。これら食物繊維類+葉緑素の働きでワカメは便通改善や腸のデトックス・腸内フローラのバランスを整えてくれる食材として期待されています。

むくみ・高血圧予防に

ワカメにはカリウムやマグネシウムなど、むくみの改善に役立つミネラルが豊富に含まれています。カリウムはナトリウムの排出を助ける働きがあり、ナトリウムによって蓄えられている水分の排出を促す・塩分過多による高血圧の予防などに役立ちます。マグネシウムはカリウムの働きをサポートすることで血中ナトリウム濃度の調整に関わりますし、血液やリンパ液のスムーズな循環を助ける働きがあります。

素干し(乾燥)ワカメであれば10gあたりのカリウムが520mgと、ゴーヤ人参200g分に相当する量のカリウムが含まれています。マグネシウム含有量も110mgと女性の1日推奨摂取量の3分の1以上を摂取することが出来ます。またワカメに含まれているヨウ素(ヨード)は甲状腺ホルモンの原料となる物質で、不足することでむくみや体のだるさなどの原因となります。過剰摂取は厳禁ですが、適度な補充はむくみの予防・改善に役立つと考えられています。

骨粗鬆症予防・妊娠中の栄養補給に

ワカメはカルシウム、鉄、マグネシウム、カリウムなどのミネラルを豊富に含んでいます。特に水に戻した状態でも100gあたり130mgと、同グラムで比較した場合には牛乳よりもカルシウムが豊富なことからカルシウム補給源として注目されています。加えて骨にカルシウムを取り込む働きのあるタンパク質(オステカカルシン)の活性化・骨からのカルシウム流出を抑制する働きのあるビタミンKや骨の形成を助けるマグネシウムも豊富。カルシウムやビタミンKの補給源として骨や歯を丈夫にしたり、骨粗鬆症予防効果が期待されています。育ち盛りのお子様の栄養サポートとしても役立ってくれるでしょう。

韓国で産後に良い食材として利用されているように、ワカメは母乳分泌で失われがちなカルシウムの補給としても役立ちますし、食物繊維が豊富なので妊娠中や産後の便秘予防としても役立ってくれるでしょう。そのほか葉酸も若干含まれいますから妊娠中の栄養補給に役立つと考えられますが、ヨウ素過多になり過ぎないように食べ過ぎには注意してください。

糖尿病予防・ダイエットのサポート

食物繊維の半分以上がアルギン酸やフコイダンなどの水溶性食物繊維とも言われるワカメは、糖尿病予防にも役立つと考えられています。水溶性食物繊維は水分を含んでゲル化し、糖質の消化・吸収スピートをゆっくりにすることで食後血糖値の急激な上昇を抑える働きがあります。血糖値の上昇を抑えることで糖尿病の予防として役立つ他、インスリン分泌が抑えられることで血中の糖質が脂肪として蓄積されるのを防ぐことにも繋がります。低糖質・低インシュリンダイエットなどのサポートとしても活用できるでしょう。

加えてワカメを始めとした褐藻類にはカロテノイドの一種でキサントフィル類に分類される「フコキサンチン」が含まれています。フコキサンチンは余剰エネルギーを脂肪として溜め込む白色脂肪の減少作用や体脂肪燃焼促進(タンパク質UCP-1の活性化)効果があることが報告されており、メタボリックシンドローム予防やダイエット成分として注目されています。そのほか水溶性食物繊維による腸内フローラの改善や、ヨウ素・マグネシウムなどの適切な補充も代謝向上に繋がりますから、複合的にダイエットをサポートしてくれる存在と言えるでしょう。

ちなみにフコキサンチン含有量は生の褐藻100gあたりコンブで約19mg、ワカメ約11mgとされています。フコキサンチン含有量だけでみると昆布にやや劣りますが、ワカメは昆布よりも水溶性食物繊維量が多く、またヨウ素の含有量が少ないことから糖尿病予防食・ダイエット食に取り入れやすい存在であると考えられます。食物繊維やカリウムなどの働きでダイエット中に多い便秘・むくみの予防としても役立ってくれるでしょう。

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目の健康維持・疲れ予防に

ワカメは素干し(乾燥)100gあたり7700μgとβ-カロテンを多く含んでいます。水に戻した状態100gでも1200μgと、同グラムのトマトの約2倍、ピーマンの約3倍量に相当するほど。β-カロテンは体内でビタミンAに変換され皮膚や粘膜を補強する働きがあります。

ビタミンAはロドプシンの合成物質で「目のビタミン」とも呼ばれ、網膜の光に対する反応に関与しています。またビタミンAは粘膜保護に関係するビタミンでもありますし、β-カロテンは抗酸化作用によって黄斑変性症など目の老化予防にも役立つと考えられています。このためβ-カロテン(ビタミンA)の補給はは視機能保持、夜盲症やドライアイの予防にも繋がる可能性があります。

抗酸化・生活習慣病予防に

β-カロテンやフコキサンチンなどは抗酸化物質でもあります。そのためワカメは細胞の酸化によって起こる起こる細胞劣化・死滅を防ぎ、筋肉や内臓の機能低下や老化を抑制する働きがあると考えられています。抗酸化は活性酸素が悪玉コレステロールと結合することで出来る過酸化脂質を減少させる事にも繋がりますし、ワカメにはコレステロールの吸収を抑制する・コレステロールから精製される胆汁酸の排出を促進する働きを持つ水溶性食物繊維(アルギン酸・フコイダン)も含まれています。

このことから悪玉コレステロール・過酸化脂質が過剰なことで血液循環が滞り、動脈硬化やそれが悪化して起こる心筋梗塞や脳梗塞などの予防にも役立つと考えられています。加えて水溶性食物繊維には血糖値上昇抑制作用による糖尿病予防効果、カリウムなどの働きには高血圧予防効果が期待できます。このため生活習慣病と言われる多くの病気の予防に対し、ワカメは有効と考えられています。

免疫サポート・アレルギー対策にも

人の体内で免疫細胞が最も多く集まっているのが腸管免疫系であることから、腸内フローラを整えることが免疫力向上にも繋がると考えられています。ワカメには腸の善玉菌のエサとなる水溶性食物繊維が豊富に含まれていますし、抗酸化作用を持つβ-カロテン・フコキサンチンなども豊富なため活性酸素によるダメージを減らすことで免疫機能の低下や誤作動の抑制効果も期待できます。またβ-カロテンは体内でビタミンAとして粘膜を強化してウィルスの侵入を防いでくれますから、相乗して風邪・インフルエンザの予防に役立ってくれるでしょう。

加えて水溶性食物繊維の一つであるフコイダンはより直接的にNK細胞(ナチュラルキラー細胞)やマクロファージなどの免疫細胞活性化作用・免疫抗体グロブリンE(IgE)の産生を抑制する働きも期待されています。IgEは本来異物と結合して体を守る働きがありますが、免疫過剰(アレルギー)の場合は過剰に生成されたIgEが過反応を起こしヒスタミンなどの物質を放出し炎症を起こします。このためIgE生成を適正にすることで花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー反応を抑制することに繋がると考えられています。

美肌作り・肌荒れ予防に

カロテノイド類の抗酸化作用は肌細胞の老化予防としても役立ちます。酸化を防ぐだけではなくフコキサンチンにはメラニン色素生成抑制(チロシナーゼ活性阻害)作用やコラーゲン分解酵素(コラゲナーゼ)・ヒアルロン酸分解酵素(ヒアルロニダーゼ)・エラスチン分解酵素(エラスターゼ)の働きを抑制することで肌のハリや潤いを守ってくれる可能性があることも注目されています。フコイダンやアルギン酸にも肌の潤いを保持する働きがあると考えられていますから、相乗して肌のアンチエイジングや内側からの紫外線対策・シミ予防としても役立ってくれるでしょう。

またβ-カロテンから変換されるビタミンAは皮膚粘膜を正常に保つ・新陳代謝(ターンオーバー)を高める働きがあり、不足することで肌のカサつきや乾燥・ニキビなどの原因となります。フコキサンチンの摂取で皮脂分泌が抑制されたという報告もなされていますし、ワカメには大人にニキビの原因となる過酸化脂質を分解するビタミンB2、腸内フローラを活性化することで肌荒れやくすみを防ぐ食物繊維なども含まれています。これらの成分が複合することでニキビ・乾燥などの肌トラブル予防としても幅広く役立ってくれるでしょう。

>肌・髪・爪の老化予防と健康維持に

ワカメに含まれているヨウ素から生成される甲状腺ホルモンは体内のタンパク質合成や新陳代謝に関係があり、不足すると皮膚の乾燥やひび割れ・くすみ、毛髪の傷み・抜け毛、爪が割れるなどの症状が表れます。甲状腺ホルモンが正常に分泌されることで髪や爪をツヤのある健康な状態に保つ働きが期待されています。

昔から「昆布やワカメなどの海藻は白髪に良い」と言われてきましたが、メラニン色素を増やすものは含まれていないため「食べて白髪が黒くなる」働きはないとする考え方が主流です。しかし抗酸化作用のあるβ-カロテンやミネラルを豊富に含むむ食材ですし、ヨウ素(甲状腺ホルモン)の働きで新陳代謝向上効果が期待できますので、髪のハリ・ツヤ回復や白髪の“予防”に繋がる可能性はあります。

目的別、ワカメのおすすめ食べ合わせ

ワカメの選び方・食べ方・注意点

ワカメに含まれているアルギン酸は水溶性物質のため、乾燥わかめを戻すときに水に浸し過ぎたり洗い過ぎることで著しく減少してしまいます。必要以上に水に触れさせない用に注意しましょう。βカロテンを効率的に摂取したい場合は油、食物繊維の効果を高めたいときは酢と組み合わせると良いと言われています。酢の物に数滴のごま油などを垂らすようにすると良いでしょう。

生ワカメを選ぶ時には色が綺麗で、ハリとツヤがあるものを選びます。ハリがない・色が黒ずんているものは避けましょう。粘りが出てきたものはかなり悪くなっているので、食べずに破棄することをおすすめします。生わかめは日持ちがしないので早めに食べきるか、固めに茹でてから冷凍して保存しましょう。

ワカメの注意点

昆布ほどではありませんが、ワカメもヨウ素を多く含んでいます。適量であれば健康維持に優れた食材ですが、過剰に摂取することで甲状腺ホルモンの分泌異常を起こすリスクを高める可能性があります。フリカケやお味噌汁の具に使う程度であればさほど心配は要りませんが、毎日大量に摂取しないように注意しましょう。またカリウム量が多いので腎臓に疾患がある方も食べ過ぎに注意が必要です。

参考元:わかめの基本情報褐藻由来フコキサンチンの抗肥満・抗糖尿病効果とその機序