アサリ(浅蜊/蛤仔)とその栄養成分・効果効能
|鉄分やビタミンB群が豊富な点も嬉しい

食べ物辞典:あさり

お味噌汁の具をはじめ、酒蒸し・酢の物・佃煮など様々な料理方法で食されているアサリ。クセがなく旨味が強いので、好き嫌いされにくいことが特徴と言えるかもしれません。日本では先史時代以前から食されてきた食用貝で、江戸庶民にとっては朝の定番でもありました。栄養面ではアミノ酸やビタミンB群を多く含んでおり、鉄分も豊富なので女性の健康サポートに役立つと考えられています。お酒をよく飲むお父さんのサポートや、ダイエット中のお食事にも適していますよ。そんなアサリの歴史や栄養効果について詳しくご紹介します。

アサリのイメージ画像:食べ物辞典トップ用

和名:アサリ(浅利/蛤仔)
英語:asari clam

あさり(浅利/蛤仔)のプロフイール

アサリとは

アサリはしっかりとした旨味がありながら、貝臭さともいえるクセが少ない貝。古き良き日本の食卓ではアサリのお味噌汁が定番の一つですし、近年はボンゴレスパゲッティ・ワイン蒸し・アサリのクラムチャウダー・トマト煮など洋食メニューにも広く活用されていますね。食べ方は変われど何かと口にする機会の多い貝と言えるでしょう。価格はお安めなのに、旨味がしっかりあって使い勝手の良い食材と言えますね。

私達日本人にとって代表的な貝類の一つであるアサリ。言葉としてはマルスダレガイ科アサリ属に分類される二枚貝の総称としても使われており、ハマグリ(マルスダレガイ科ハマグリ属)に比較的近い種類になります。地域・家庭によってはひな祭り(上巳・桃の節供)のお吸い物はハマグリではなくアサリを使うという方もいらっしゃるかもしれません。一般的にアサリと呼んで食べているのは学名Ruditapes philippinarumという種で、日本では北海道から九州にかけての広い範囲、また朝鮮半島やインドネシア半島などにも分布しています。近年は地中海を始めとしたヨーロッパや北アメリカ・ハワイなどにも移入されて、かなり広い範囲で見ることが出来るそう。

埋め立て・水質汚染などから極端な減少が見られるハマグリに対し、アサリは人口砂浜でも生きることができるため比較的生き残っています。養殖も広く行われていますし、貝類の中で日本での漁獲量最も多いのもアサリと言われています。しかし国内のアサリ需要(約10万トン)を1980年台までは国内産のみで賄えていたものの、現在の漁獲量は約6万トンと減少傾向にあり、約4万トンを中国・韓国などからの輸入に頼っている状態です。アサリは濾過摂食過程による水質浄化機能が期待できる・砂地を柔らかくして他の生物が生息しやすい環境を作ってくれるとも言われていますから、環境保持や改善のためにも増殖が願われています。アサリという名前の語源は「あさる(漁る)」とも言われているように、古くは干潟を漁ると簡単に獲ることが出来ました。家計だけではなく地球にも優しい貝ですし、是非とも昔のように沢山獲れるようになって欲しいところです。

ちなみに、アサリの旬と言うと潮干狩りシーズンでもある“春”という印象が強いですが、実は9~10月頃も旬とされています。この旬は海水の温度が20℃前後になるとアサリが産卵期を迎えることと関係しており、海水温が上がらない東北・北海道では一回の場合もあります。また近年は海水温が高い状態にあるため真冬以外は美味しく食べられる、という説もあります。獲れる地域や気候によって変動すると言えますね。

アサリの歴史

アサリを日本人が食べ始めた時代は定かではありませんが、貝塚から数多く貝殻が出土していることからシジミなどと共に先史時代には既に食用とされていたことが分かっています。また貝塚とその集落の規模を比較すると量が多すぎることから、内陸の人々への貿易品のような形で使われていたのではないかという説もあります。江戸では近郊の深川(隅田川の河口)でアサリが沢山採れたため、シジミなどと共に安価な食材として庶民に親しまれるようになります。

江戸時代の節約レシピランキング『日々徳用倹約料理角力取組』にもアサリを使った料理が掲載されていすから、家計の味方食材だった可能性が大。アサリは手早く調理でき、シジミよりも大きくハマグリよりも小さいサイズからお味噌汁の具をはじめ様々な料理に使いやすかったことも支持されたのかもしれません。蜆と同様にアサリも朝の振売りの定番で、大人に混じって深川あたりの子どもも早朝に採ったものも売り歩いて家計を支えていました。殻付きを売る人は「からあさりあさり」・剥き身を売る人は「あさりむきん」など売り声を変えて区別していたようです。当時は「むき身」というとアサリの剥き身を指したと言われるほどポピュラーな貝だったそう。

現在は農林水産省の選定する『郷土料理百選』の一つにも選ばれている“深川飯”も、江戸時代には深川名物として知られた存在でした。深川めしは一般に熱々のご飯にネギとアサリの味噌汁もしくは味噌煮込みを掛けたものを指しますが、あさりの炊き込みご飯を含む場合もあるのだとか。前者は漁師めしとして、後者は職人さんのお弁当として持ち運べるように考案されたと言われています。

江戸時代後期には“潮干狩り”も庶民の行楽として行われるようになります。早朝に出発して正午にアサリやシジミなどの貝類・タコ・蟹・小魚などを獲り、宴会をして戻ってくるという一日がかりのスケジュールだったそうです。明治~大正入る頃には全国的に行われる季節行事へと拡大していきます。

あさり(浅利/蛤仔)の栄養成分・効果について

栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

アサリは可食部の約90%が水分で、魚類などと比較すると量的には劣りますが三大栄養素の中ではタンパク質を多く含んでいます。炭水化物や脂質はほとんど含まれておらず、100gあたりのカロリーも30kcalと貝類の中でも低くなっています。ビタミンB12・ビオチンなどのビタミンB群、マグネシウムや鉄分などのミネラル含有量も高め。また貝類や清酒などに含まれているうま味成分の有機酸「コハク酸」が他の貝類に比べ約10倍と非常に多く含まれており、アミノ酸系のうま味成分であるグリシンも多いことも特徴です。

アサリの味噌汁イメージ

アサリの効果効能、その根拠・理由とは?

肝機能強化・二日酔い対策に

アサリにはタウリンやベタインなどのアミノ酸が含まれています。タウリンはアルコールの無毒化(分解)過程で発生する“アセトアルデヒド”の分解を高める働きが、ベタインは胆汁産生を促す働きがあると考えられている成分。この2つの成分を補給できることから、アサリは肝機能の強化や二日酔いの予防・改善に役立つと言われています。飲んだ翌朝はアサリの味噌汁が良いという伝承も、理にかなっていると評価されていますね。

またベタインは肝臓への脂肪沈着防止・脂肪排出を促進する働きもあり、脂肪肝予防にも効果が期待できます。ベタインには抗酸化作用を持つグルタチオンの産生を維持する働きも期待されていますから、酸化ストレスによって発症リスクが高まる肝硬変・肝炎・肝ガンなどの予防にも役立つのではないかと考えられています。タウリンも肝臓を健康に保つ働きが期待されている成分ですから、二日酔いケアだけではなくデイリーに取り入れてお疲れの肝臓を労ってみても良いかもしれません。

疲労回復・滋養強壮に

アサリに豊富に含まれているコハク酸はうま味成分として知られていますが、糖代謝代謝過程におけるクエン酸サイクルの構成成分でもあります。このため疲労物質とされる乳酸の代謝を早めることで疲労・筋肉痛の改善を促すことに繋がる考えられていますし、即効性のエネルギー源として働くとも言われています。代謝に関わるビタミンB群やマグネシウムなどのミネラルも含まれていますから、滋養強壮に良いと言われるのも納得ですね。

加えてアサリにはエネルギー代謝を促し疲労回復作用を持つとされるアスパラギン酸脳・精神的な疲労の回復効果が期待されるグリシンやタウリンなどのアミノ酸も含まれています。これらの成分の働きから激しい運動後のような肉体疲労だけではなく、脳疲労や精神面に起因する疲労感など、様々な方向から“疲労”の緩和を手助けしてくれる可能性があると言えるでしょう。

貧血予防に

アサリの栄養成分や健康効果として“貧血予防”に役立つと聞いたことがある方もいらっしゃると思います。これはヘモグロビンの成分になる鉄分が豊富なことに加え、赤血球の生成や再生に必要不可欠なビタミンB12も豊富に含まれているためです。アサリ100gあたりの鉄分含有量は3.8mg・ビタミンB12含有量は52.4μg同グラムで比較した場合はシジミに劣りますが、出汁の感覚が強いシジミよりも身の大きなアサリのほうが補給源として適していると考えられています。

鉄分とビタミンB12を両方共補給できることから鉄欠乏性貧血だけではなく悪性貧血(巨赤芽球性貧血)の予防にも繋がると考えられますし、ビタミンB12は妊娠中から産後にかけての時期に葉酸と同様に意識したい栄養素でもあります。妊娠中の栄養補給源としても役立ってくれるでしょう。ただしアサリの葉酸含有量は100gあたり11μgと少ないので、緑黄色野菜などと組み合わせて食べるようにすると良いでしょう。

精神安定・不眠予防に

ビタミンB12は造血に関わるだけではなく、正常な神経伝達を保つ・睡眠を司るホルモン“メラトニン”の分泌をコントロールするなどの役割もあります。不足するとセロトニンやアドレナリンなどの生成・分泌が正常に行われずイライラや抑鬱などの原因になる可能性もあります。このためビタミンB12を適切に補充することで、情緒不安定さや寝付きの悪さの改善効果が期待されています。またアサリに含まれているアミノ酸のグリシンもセロトニンを増加させ、抗うつ作用をもたらすことが報告されていますし、寝付きを良くする・睡眠の質を高める働きも認められています。

加えてアサリは神経伝達物質の合成・抗ストレスホルモンを作り出す副腎皮質の機能サポートに役立つマグネシウムも100gあたり100mgと多く含んでいます。タウリンにもGABAやグリシン受容体を活性化する働きがあるという説がありますよ。アミノ酸類の働きについては仮説段階のものもありますが、これらの栄養素の補給に役立つアサリは気持ちを一定に保つ・不眠予防に役立つ可能性があります。

神経痛・目の疲れの緩和にも

ビタミンB12は神経細胞を正常に保つ・神経細胞の表面の脂質膜の合成や修復に関わるビタミンで、神経のビタミンとも呼ばれている存在。傷ついた末梢神経を修復することで神経痛を緩和させるなどの働きがあることも認められており、神経痛の方に処方されるメチコバールなどの薬・市販薬などにもビタミンB12が主成分として配合されてるものが少なくありません。ビタミンB12が直接的な鎮痛作用をもたらすかどうかは諸説ありますが、神経痛の予防や改善のために摂取しておきたい栄養素ではありますね。

また神経細胞の保護・修復に関わる存在であることから、ビタミンB12は視神経の働きを高める・目の充血予防などにも役立つと考えられています。際立って多くはありませんが、アサリには目の筋肉の緊張を和らげることで眼精疲労の予防や改善に役立つとされるビタミンB1、疲れ目・角膜炎・結膜炎などの予防に役立つとされるビタミンB2なども含まれていますから、相乗して目の疲れを緩和してくれるでしょう。

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生活習慣病予防のサポート

アサリに含まれているアミノ酸の一種タウリンには肝臓で胆汁の生成を促す働きがあります。胆汁の生成時には体内のコレステロールを消費することが認められていますから、タウリンを摂取することは肝臓機能を高めるだけではなく血中コレステロール値の減少にも繋がると考えられています。またコハク酸やミネラルの一種であるクロムにも血中コレステロールの排出をサポートする働きが期待されていますし、アサリにはナトリウム排出を促すカリウム、慢性的な不足がインスリンの効きを悪くしてⅡ型糖尿病発症リスクを高めることが指摘されているマグネシウムなどのミネラルも含まれています。

ビタミンB12と葉酸の摂取はメチオニンを代謝していく上で産生される中間代謝物「ホモシステイン」の血中濃度を低下させる事も報告されています。ホモシステイン濃度の低下で動脈硬化や血栓などの心血管疾患発症リスクが低減するかについては諸説ありますが、糖尿病性神経障害の予防については役立つとの見解が強いようです。アサリ単体での際立った働きや抗酸化作用はさほど期待できませんが、これらの栄養成分が補給として食事の中に取り入れることで生活習慣病予防にも役立つと考えられています。

ダイエットのお供に

アサリ100gあたりのカロリーは30kcal・剥き身であれば一つ1~3kcalと動物性食品の中では非常に低カロリーな食材です。糖質・脂質をほとんど含まないことに加え、代謝に関わるビタミンB群やマグネシウム、アスパラギン酸などのアミノ酸が含まれています。またシジミハマグリには含まれていないヨウ素が100gあたり55μgと程よく含まれていることから、甲状腺ホルモンの分泌を正常にし代謝低下を防いでくれる可能性もあります。タウリンも胆汁酸の分泌を促すことでコレステロールを下げ、血液の状態を良くすることで新陳代謝を高める働きが期待されていますよ。

これらのことからアサリはカロリーや糖質・脂質を気にすせずに摂取でき、代謝を高めてダイエットをサポートしてくれる食材としても期待されています。カリウム含有量は100gあたり140mgとさほど多くありませんが、カリウムの働きを助けるマグネシウム含有量が多いので献立に加えることでむくみの改善にも役立つと考えられています。不足しやすいミネラルやビタミンB12などの補給にもなりますので、ダイエット中に起こりやすい貧血などのトラブル予防にも役立ってくれるでしょう。

美肌・美髪サポート

アサリにはビタミンCなど直接美肌作りに関わる栄養成分はあまり含まれていません。しかし豊富に含まれているビタミンB12は貧血を改善することで肌に栄養をしっかりと届けられるようサポートする働き・睡眠リズムを整えることで成長ホルモンの分泌を正常化する働きなどが期待されています。ヨウ素も甲状腺ホルモンの分泌を正常に保ち肌の元となるタンパク質合成を促してくれますから、栄養が行き届くこと・成長ホルモンの分泌が高まることと合わせて、肌トラブルの改善・ハリや艶の向上などに繋がります。

そのほか含有量自体は多くありませんが、肌・髪・爪を健康な状態に保つ亜鉛、抗酸化作用のあるビタミンE、抗酸化酵素の生成や活性に関わる亜鉛・セレンなどのミネラル類も幅広く含まれています。ビタミンB2とタウリンは血液をキレイにしてくれる働きが期待されていますので、鉄分やビタミンB12など造血に関わる栄養素と合わせて肌のくすみの改善に役立ってくれるでしょう。美肌作りの主役というポジションではありませんが、レシピに加えると野菜や果物類に不足しがちな栄養素を補い、肌や髪の維持に必要な栄養バランスを整えてくれる存在と言えるでしょう。

認知症予防にも期待…

ビタミンB12脳神経との関わりが深いビタミンでもあります。ビタミンB12が不足すると記憶や情報の伝達が正常に行われなくなること、欠乏症状として記憶障害・集中力低下・妄想・錯乱・無気力感などが挙げられることから、老人性認知症や精神障害の原因の一つがビタミンB12不足ではないかとする説もあります。ビタミンB12は動物性食品に含まれているほか腸内細菌によっても合成されためベジタリアンや胃の切除手術をした方以外あまり不足することはないと言われていますが、高齢者の場合は胃の吸収能力・腸内善玉菌が低下しているため不足傾向にあることが指摘されています。

2010年にイギリス・オックスフォード大学で行われた実験では、認知障害を持つ高齢者のうちビタミンB12を2年間飲み続けたグループの方が脳の収縮速度が遅かったことが報告されています。有用性については諸説ありますが、ビタミンB12を豊富に含むシジミやアサリなどを日常的に食べることで認知症予防に役立つのではないかと考えられています。

目的別、アサリのおすすめ食べ合わせ

あさり(浅利/蛤仔)の選び方・食べ方・注意点

アサリの保存は行きているものであれば海水もしくは同等の塩分濃度(3%程度)の塩水に、半分程度浸かった状態でラップを掛け冷蔵庫に入れるようにしましょう。数日程度は行きていますが、使う分ずつ購入して早めに使い切るか、砂を出させて冷凍保存するようにしましょう。冷凍した場合は凍ったまま加熱調理します。死んでいるように見える貝(殻が開きっぱなし・加熱しても口が開かないもの)が混じっている場合は、腐っているように見えなくても取り除いておいたほうが無難です。

アサリの砂出し

アサリを殻ごと利用する場合には「砂抜き(砂出し)」をする必要があります。一般的な砂抜きの方法はアサリを海水と同程度の塩分濃度(3.0%~3.5%程度)の塩水に頭が少し出る程度に浸し、新聞紙などをかけて光を遮って夏場2~3時間・冬場であれば一晩程度置いておきます。砂を吐かせた後は真水で貝同士をこすり合わせるようにして汚れをきれいに落として利用します。塩分が気になる場合には真水に一時間ほど漬けて塩抜きをしてから利用します。

砂抜きをする際に塩水にブドウ糖もしくはハチミツを少し加えると旨味成分のコハク酸が増加すると言われています。また急ぐ場合は50℃のお湯で軽くこりす洗いした後、15分程度つけておくことでも塩抜きが出来ます。こちらも通常の塩抜きより旨味成分が増えると言われていますが、お湯の温度が43℃以下になると雑菌が繁殖しやすくなるので注意してください。

参考元:江戸っ子に愛された浅蜊≪あさり≫料理 旨みたっぷり、血管を強くする働きもビタミンB12 | 栄養素を知ろう!