チンゲンサイ(青梗菜/体菜)とその栄養成分・効果効能
|実はミネラル豊富な緑黄色野菜?!

食べ物辞典:チンゲン菜

チンゲン菜は中華料理によく使われる、やや縦長の団扇型の葉が特徴的な野菜。葉柄の色が緑色のもの・白色ものと2種類あり、一般的には緑を青梗菜(チンゲンサイ)・白軸をパクチョイと呼び分けています。北海道から沖縄まで全国各地で栽培が行なわれ通年入手しやすいこと、β-カロテンを多く含むことが特徴です。他の葉物野菜と同様に低カロリーで抗酸化ビタミン摂取に繋がり、カルシウムや鉄分など不足しやすいミネラルの補給にも役立ってくれますよ。そんなチンゲン菜の歴史や栄養効果について詳しくご紹介します。

青梗菜/チンゲンサイのイメージ画像:食べ物辞典トップ用

和名:青梗菜
英語:pac choi/bok choy

チンゲンサイ(青梗菜/体菜)のプロフイール

チンゲン菜とは

チンゲン菜は大きなスプーンが重なったような形とも表現される、白菜などと同じく大きな葉が特徴の食材。中華料理の炒め物や煮物・担々麺に入っている野菜というイメージが強い方も少なくありませんが、和食ではお浸しや和物、近年ではバターソテーやパスタなどの洋食レシピにも取り入れられています。独特の香りと苦味から好き嫌いは別れる野菜ですが、鮮やかな緑色・加熱してもシャキシャキした葉柄の食感があり料理のアクセントとしても役立ってくれる食材です。

チンゲン菜は植物分類ではアブラナ科アブラナ属に属しています。ブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)を祖先とする変種群の一つとされており、学名はBrassica rapa var. chinensis。同じくブラッシカ・ラパを祖先とする食材としては水菜白菜小松菜野沢菜などがあり、野沢菜や小松菜などの非結球葉菜群は総称して“ツケナ類”とも呼ばれています。またチンゲン菜もアブラナ科野菜ですから春先にとう立ちした花茎は「チンゲン菜花」と呼ばれ、菜の花の一種としても食べられています。

青梗菜(チンゲンサイ)という呼び名が一般的に使われていますが、和名は「体菜(たいさい)」と言います。体菜は大きく葉柄の色が緑色のもの・白色ものと2種類ありますが、現在は葉柄の緑のものを青梗菜(チンゲンサイ)、白軸のものをパクチョイと呼び分けています。チンゲンサイ(タイサイ)の種類は茎の色による2種類のほか、チンゲン菜の半分程度の大きさのミニチンゲンサイを加えた3種類に大別されています。ミニチンゲンサイは柔らかめで丸ごと料理できることに加え、収穫までの期間が短いので家庭菜園用として人気が高いと言われています。

最も日本で馴染み深いのが茎が緑色をしたチンゲン菜で、品種はあまり紹介される事がありませんが青帝や青美などが定番品種と言われており、そのほかにも生食に適している青冴・低温下でも生育が良い冬賞味などがあるそうです。また生命力・適応力が高い野菜であったことも幸いし、現在では北海道から沖縄まで全国各地で栽培も行われています。主産地は茨城県と静岡県で、通年流通していますが旬は春・秋の2回あると言われています。

チンゲン菜の歴史

チンゲン菜はアブラナ科でブラッシカ・ラパを祖先に持つ食材なので、大元の原産地としては西アジア~ヨーロッパあたりと考えられています。チンゲン菜の原産地としては中国南部とされ、西から伝わったブラッシカ・ラパが中国で品種改良されて出来た野菜の一つという見解が有力。原産地が地中海沿岸地域から中国まで様々なのは、どの時点を起源とするかによるようです。ちなみに中華料理で用いられるターサイ(塌菜)やサイシン(菜心)などもブラッシカ・ラパを祖先とする野菜ですし、中国野菜と称されている野菜類にはアブラナ科が多いのだそう。

日本にチンゲン菜が伝わったのは第二次世界大戦や文化大革命が終了した後、日中国交回復を果たした1972年以降と言われています。導入された1970年代には英語pak choiにちなんで葉柄の色が緑色のものを「青茎パクチョイ(青軸パクチョイ)」白色をしているものを「白茎パクチョイ(白軸パクチョイ)」と呼び分けていたそうです。しかし後の1983年に現在の農林水産省が明確な区別をつけようと葉柄の緑のものを青梗菜(チンゲンサイ)と命名し、白軸のものをパクチョイと呼び分けるようにしたそうです。

チンゲン菜に限らず中国野菜の大半に言えることですが、昭和も後半に伝わった野菜ですから日本での使用歴や馴染みは浅い部類であると言えるでしょう。その中でチンゲン菜は中国野菜トップと言えるほど日本の家庭料理の中にも定着したものの、同種ではありますが白軸のパクチョイはあまり浸透しなかったと言われています。

余談ですがパクチョイは漢字で“白菜”という字を当てるそうです。しかしハクサイと紛らわしいので中国では小白菜、日本では「しろ菜」と書いて区別することが多いと言われています。しかし関西地方で栽培されている「大阪しろ菜(天満菜、学名Brassica campestris var.amplexicaulis)」もシロナ(白菜)と呼ばれているため、チンゲンサイと同じくタイサイの一種であることが分かりやすい白梗菜もしくは広東白菜と表記されることもあります。雪白体菜や白茎体菜というのは品種名。

チンゲンサイ(青梗菜/体菜)の栄養成分・効果について

栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

チンゲン菜は全体重量の95%程度が水分であり、100gあたり9kcalと非常に低カロリーな野菜です。三大栄養素(タンパク質・脂質・炭水化物)の含有量は少ないですが、β-カロテンを豊富に含む緑黄色野菜の一つであり、ビタミン類やミネラル類を幅広く含んでいます。

チンゲン菜イメージ

チンゲン菜の効果効能、その根拠・理由とは?

風邪予防・免疫力サポート

チンゲン菜はビタミン類の中でβ-カロテンとビタミンCを多く含んでいます。生100gあたりのβ-カロテン含有量は2000μgとミニトマトの2倍以上になり、ビタミンC含有量は24mgと野菜類の中では中堅からやや多い部類に属します。体内で必要に応じてβ-カロテンから変換されるビタミンAには皮膚や粘膜を保持・強化する働きがあり、鼻や喉などの呼吸器粘膜が補強されることでウィルスの侵入を防ぐことに繋がると考えられます。

またビタミンCも自らが病原菌を攻撃する働き・抗ウイルス作用を持つインターフェロンの分泌促進作用などが報告されており、免疫力との関わりがあると考えられているビタミンの一つ。免疫反応を調節する働きを持つ副腎皮質ホルモンの原料でもありますから、ビタミンCも免疫力を高める(正常に保つ)ことで風邪やインフルエンザなどの予防を手助けしてくれる栄養素と考えられています。体をガードしてくれるビタミン補給源として役立ってくれそうですね。

骨や歯を丈夫に保つ

歯や骨を丈夫に保つために必要なミネラルとしてカルシウムが挙げられます。カルシウム不足は骨密度低下による骨粗鬆症・歯が脆くなるリスクを高めることが認められていますし、お子さんの成長をサポートするためにも必要な栄養素ですね。チンゲン菜には100gあたり100mgとカルシウムが豊富に含まれています。同グラムの含有量であれば水菜小松菜には劣りますが、牛乳とほぼ同等の含有量になりますからチンゲン菜も十分にカルシウム補給源として役立ってくれるでしょう。

カルシウムだけではなくチンゲン菜には骨や歯の発育を促すマグネシウムとマンガン、骨にカルシウムが沈着するのを助ける働きを持つビタミンKも含まれています。必要分全てをチンゲン菜で摂取できるわけではありませんが、日本人に不足しがちであると言われるカルシウムを筆頭に骨や歯の健康維持に関わる成分をバランスよく補給することが出来るでしょう。骨粗鬆症が気になる方であれば、カルシウムの吸収・沈着を助けたり血中カルシウム濃度を一定に保つ働きを持つビタミンDを含む食材と合わせて摂取するより効果的です。

ストレス対策としても

ビタミンCは抗酸化やコラーゲン生成促進以外にも様々な働きを持つ栄養素です。その働きの中にはアドレナリン・ノルアドレナリン・コルチゾールなどの副腎皮質ホルモンの合成を助けるというものもあります。副腎皮質ホルモンは「抗ストレスホルモン」とも呼ばれ、ストレス下でその状況に対応するため分泌されることが多い存在。このためビタミンCを不足なく補うことでストレス耐性を高めることに繋がると考えられています。

生100gあたりで見るとチンゲン菜のビタミンC含有量は特に多いという程ではありませんが、チンゲン菜は生でも食べられるほどアクが少ない野菜のため料理時の流出が少ないというメリットがあります。またビタミンCと同じく副腎皮質ホルモンの合成に関わるパントテン酸、神経伝達を正常に保つ・神経系の興奮を鎮める働きが期待されているカルシウムなどもチンゲン菜には含まれています。どれかの成分が群を抜いて多いわけではありませんが、ストレス対策に役立つ栄養成分を補給するのに役立つ野菜と言えます。

抗酸化・生活習慣病予防に

チンゲン菜はβ-カロテンを筆頭に、ビタミンCやビタミンEなどの抗酸化作用を持つ成分を含んでいます。抗酸化作用酵素(SODなど)の材料となるミネラル類も含まれていますから、活性酸素の増加を抑制し酸化ダメージを防ぐ働きが期待できます。またコレステロールが酸化して出来る過酸化脂質が血管に蓄積し、血管を狭める・脆くすることで発症リスクが高まる動脈硬化の予防にも繋がると考えられます。

加えてチンゲン菜にはナトリウム排出を促すことで高血圧予防に役立つカリウムも含まれています。人の体は食生活などの影響でナトリウムが過剰になると、水分を取り込むことで血中ナトリウム濃度を一定に保とうとします。結果、血液量自体が増えることで心臓に負担がかかり高血圧を引き起こしやすくなる・血管に負担がかかり動脈硬化のリスクを高めると考えられます。カリウムはナトリウム排出を促し身体の水分バランスを調えてくれる働きがありますから、抗酸化作用と相乗して動脈硬化・高血圧予防に役立ってくれるでしょう。

貧血予防・妊娠中の栄養補給に

日本人の貧血で大半を占めているのが鉄分の不足によって起こる鉄欠乏性貧血で、日本人女性の5人に1人は貧血・3人に1人が貧血予備軍(潜在性鉄欠乏)であるという説もあるほど。チンゲン菜は100gあたり1.1mgとカロリーを考えると多く鉄分を含んでいますし、吸収・活用率が低いと言われる植物性鉄分(非ヘム鉄)の吸収率を高めるビタミンCを同時に摂取することも出来る食材です。いつもの炒め物に加えるなどすることで、不足しやすい鉄分の補給に役立ってくれるでしょう。

赤血球の合成に関わる葉酸含有量は100gあたり66μgと少なくはないものの、目立つほど多いというわけではありません。ただし葉酸は赤血球合成だけではなく神経細胞の代謝・成長の補助を助ける作用があり、妊娠・授乳中は赤ちゃんの正常な発育に不可欠な栄養素として一日の推奨摂取量が多く設定されています。チンゲン菜には葉酸以外にも妊娠中に不足しやすいカルシウムやマグネシウム・妊娠中に起こりやすい便秘を予防してくれる食物繊維なども含まれていますから、妊娠中の栄養補給に取り入れる方も多いようです。

便秘予防・ダイエットサポート

チンゲン菜の食物繊維含有量は生100gで1.2g茹で100gであれば1.5gとなっており、同グラムで比較した場合は食物繊維含有量が特に高い野菜ではありません。しかし100gあたり9kcalというカロリーの低さも合わせて考えると、特にダイエット中の方にとっては食物繊維補給源として非常に役立つ存在となってくれるでしょう。またビタミンCにも便を柔らかくする・乳酸菌のエサになり腸内フローラのバランスを整えるなどの働きが期待されていますから、相乗して便秘予防にも役立つと考えられます。

ちなみにチンゲン菜(生)100gあたりの炭水化物量は2.0gですが、実際にエネルギー源となる“利用可能炭水化物量”は0.4gとかなり低くなっています。脂質量も0.1gとほぼ含まれていませんので、糖質を控えたい方・脂質を控えたい方どちらのダイエット法を実践している方でもダイエットサポートに役立ってくれるでしょう。ビタミンやミネラルを補給という点ではホウレンソウや小松菜よりもやや劣りますが、その分カロリーも低いので元々の食事量が多い方には特に適しています。

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ドライアイ・眼精疲労予防に

β-カロテンから変換されるビタミンAは網膜で光を感知するロドプシンの生成にも利用されています。このため不足なく補うことで目の疲れの緩和・視界をクリアにするなどの働きが期待できると考えられています。またビタミンAは目や呼吸器などの粘膜を正常に保持する働きもありますし、β-カロテンは抗酸化作用によって目のダメージを軽減する働きも期待されています。

これらのことからβ-カロテンを多く含んでいるチンゲン菜も、目の疲労軽減やドライアイの予防に役立つのではないかと考えられています。加えて目の水晶体を正常に保持するビタミンCや、多いとは言えないものの筋肉の疲れを和らげるビタミンB1・目の充血予防に役立つとされるビタミンB2などのビタミンB群もチンゲン菜には含まれています。これらの成分が複合して働くことで目の健康サポートにも役立ってくれるでしょう。

アンチエイジング・美肌作りにも

チンゲン菜はβ-カロテン・ビタミンC・ビタミンEと抗酸化をサポートしてくれるビタミン類を含んでいます。この3つは同時に摂取することで互いの持続性を高める働きも認められていますから、シワやタルミなど肌老化の予防にも効果が期待できるでしょう。特に豊富に含まれているβ-カロテンは抗酸化作用に加え、ビタミンAとして皮膚粘膜を守る働きがあることから乾燥肌や肌荒れ予防にも繋がります。

またビタミンCは抗酸化作用やコラーゲン生成促進によるシワ・たるみ予防のほか、メラニン色素の生成に関わるチロシナーゼの働きを阻害することでシミ予防・メラニン色素還元による美白効果も期待されています。含有量は多くありませんがビタミンCの働きを助けることで肌荒れやニキビ予防をサポートしてくれるパントテン酸や、皮膚炎症軽減効果が期待されるビオチン・皮膚粘膜の健康維持に関わるビタミンB6なども含まれています。

目的別、チンゲン菜のおすすめ食べ合わせ

チンゲンサイ(青梗菜/体菜)の選び方・食べ方・注意点

β-カロテンは脂溶性ビタミンで油と組み合わせることで吸収率が高まります。チンゲン菜そのものも非常に油と相性が良い食材で、アクが少ないので炒め物に使う場合は下茹でも必要ありません。ビタミンCの損失を防ぐため、強火でさっと炒めて食べると良いと言われています。茹でる場合は軸(根本)の部分を先に入れ、熱の通りが早い葉は後から浸すようにすると良いでしょう。

チンゲン菜の選び方・保存方法

チンゲン菜は葉が幅広で厚みがあり、色ムラや変色を起こしておらず全体が濃い緑色をしているもの選ぶようにしましょう。茎(軸)はあまり伸び切っておらず、全体的にハリがあり小ぶり・ややずんぐりと見える物が良いと言われています。根本に丸みがあるもののほうが甘みが強いという説もあります。

保存する場合は湿らせた新聞紙で包んでからポリ袋・ラップなどに入れて、冷蔵庫(野菜室)に立てて置きます。チンゲン菜は葉野菜の中では日持ちが良いと言われていますが、冷蔵庫で3~5日程度が限界。それ以上に期間があく場合は固めに茹でてから冷水に入れ、水気をよく切って冷凍します。

チンゲン菜の注意点

チンゲン菜は生でも食べられる野菜と言われていますし、近年ではグリーンスムージーの原料として取り入れている方もいらっしゃるようです。しかしチンゲン菜をはじめケールブロッコリーなどのアブラナ科野菜にはヨウ素の取込みを阻害するゴイトロゲン(プロゴイトリンなど)を含み、生状態で大量に食べ続けると甲状腺機能を低下させる可能性が指摘されています。少量もしくは継続的でなければ生食しても心配は少ないと言われていますが、ゴイトロゲンは加熱すると失活・減少しますので甲状腺系の疾患がある方などは熱して食べるようにした方が確実でしょう。