野沢菜/信州菜とその栄養成分や効果効能
|カブの仲間?! カルシウム補給源にもオススメ♪

食べ物辞典:野沢菜

野沢菜は日本三大漬物の一つ野沢菜漬けや、長野県名物“おやき”の具として使われる緑黄色野菜。カブの一品種として紹介されることもあるように、野沢菜はブラッシカ・ラパを祖先とする品種群の一つ。白菜や水菜の仲間でもあります。漬物用というイメージがありますが近年は野菜として食べるのに適したサイズのものも販売されています。カルシウムやカリウムなどのミネラル、ビタミン類もしっかり含まれているので、冬の栄養補給にも役立ってくれるでしょう。そんな野沢菜の歴史や栄養効果について詳しくご紹介します。

野沢菜(信州菜)のイメージ画像:食べ物辞典トップ用

和名:野沢菜(ノザワナ)
英語:Nozawana/Turnip Greens

野沢菜/信州菜のプロフイール

野沢菜とは

野沢菜は代表的な漬け菜の一つとも言われるように漬物用としての利用が主で、70cm~1m程度の背丈になるまで十分に育ってから収穫されることが多いそうです。しかし近年は漬物だけではなく生野沢菜を使って作る炒め物やパスタなどのレシピも公開されて、葉野菜として使いやすい30~40cm程の小さめな野沢菜も流通が増えています。ちなみに野沢菜という名前の由来は、長野県の野沢温泉村で作られてきたため。しかし、それ以外の周辺地域でも広く栽培されていることから信州菜とも呼ばれています。

野沢菜は植物としてはアブラナ科アブラナ属に分類されています。カブの品種の一つと紹介されることもありますが学名はBrassica rapa var. hakabura。ブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)を祖先とする変種群の一つという扱いですね。このため野沢菜はカブの品種というよりも、カブに由来する別の変種という見方のほうが現在は主流。同じくブラッシカ・ラパを祖先とする蕪(カブ)水菜白菜小松菜チンゲン菜などとも、野沢菜と非常に近い種類と言えます。野沢菜や小松菜などの非結球葉菜群は総称して“ツケナ類”とも呼ばれています。

また野沢菜もアブラナ科野菜で、春先にとう立ちした花茎は「菜の花」として食べられることができます。スーパーなどで売られている場合は切り落とされていることが多いですが、根本にある“根(カブ)”も食べることが出来るのだとか。野沢菜の旬は晩秋~冬で、信州菜とも呼ばれるように産地としては長野県が有名です。ただしスーパーなどでは2~3月くらいまで野沢菜が流通していますが、長野県では雪の関係で12月中盤くらいから収穫が難しくなるそう。

そのため年明け以降に出回る野沢菜は徳島県が多くなります。旬の時期としても長野県のものが11月初旬~12月徳島県のものが12月末~2月位とされていますよ。長野県では冬準備として野沢菜を洗って漬けるまでの流れを「お菜洗い」と呼び、晩秋の風物詩なのだとか。11月中旬くらいになると各温泉地で“お菜洗い場”と呼ばれる特設会場が設けられ、温泉で野沢菜を洗って漬物にすることも知られていますね。寒さが厳しく温泉が多い地域での知恵でもあり、野沢菜を温泉で洗うと葉にも成分が染み込んで柔らかく仕上がるとも言われています。

野沢菜の歴史

野沢菜の先祖と言えるブラッシカ・ラパとされていますから、大元の原産地としては西アジア~ヨーロッパあたりと考えられています。ここからカブはアフガニスタン原産の“アジア系(B. rapa var. glabra)”地中海沿岸原産の“ヨーロッパ系(B. rapa var. rapa)”の2系統に分かれ、各地で更に細かく品種が確立されて行きます。ちなみにこのカブの原産については一元説や二元説がありハッキリとは分かっていませんが、かなり古い時代にはそれぞれの系統があったと考えられています。

カブは弥生時代から日本に伝わっていたと考えられていますが、野沢菜が登場するのは江戸時代と比較的最近のこととなります。宝暦六年(1756年)に野沢温泉村にある健命寺の八代住職・晃天園瑞大和尚が京都に遊学した際に「天王寺蕪」の種子を持ち帰り、野沢温泉村に植えたという伝承があります。気候の違いから、この時蒔いた種子はカブが育たなかったけれど、葉と茎が大きいものになったのだとか。

近年の遺伝子研究によって天王寺蕪変異説は否定されており、野沢菜はシベリア経由で入ってきたヨーロッパ系(Brassica rapa var. rapa)の変種という見解が主流となっています。しかし健命寺で収穫された種は種子原種であることは間違いないため、毎年全国各地から問屋さんが買い付けに来るそう。油菜種などと交雑しないように厳しく管理されているようです。

ちなみに江戸時代くらいまで地元の人々は野沢菜のことを“蕪菜”と呼んでいたそう。しかし野沢温泉村な名前の通り江戸時代から湯治場として知られた存在で、後の大正時代にはスキー場がオープンしたことで観光客が多く訪れる地域でもありました。野沢温泉村に来た人々が野沢菜やその漬物の美味しさに感動し、地域名を付けて野沢菜と呼び始めたのではないかと言われています。

第二次世界大戦後になると観光客が増えたりマスコミに取り上げられる機会が増え、全国に知られる食材となっていきます。野沢菜・高菜・広島菜で“三大漬け菜”とも言われていますね。近年も野沢菜そのものが栄養価の高い緑黄色野菜であること・野沢菜漬けが植物性乳酸発酵菌による発酵食品であることが注目され「日本一の長寿県である長野県民の健康の秘訣では」とメディアに取り上げられています。

野沢菜/信州菜の栄養成分・効果について

栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

野沢菜はβ-カロテンを多く含む緑黄色野菜で、生の栄養価としてはビタミンCと葉酸の含有量が高いことが特徴と言えます。ミネラル類ではカルシウムとカリウムの含有量が多いですが、それ以外にもビタミン・ミネラルを幅広く含んでいます。生の野沢菜100gあたりのカロリーは16kcal。

野沢菜イメージ

野沢菜の効果効能、その根拠・理由とは?

疲労回復・ストレス対策

野沢菜は生100gあたり41mgとビタミンCを非常に多く含む食材で、野沢菜漬け(塩)の場合もビタミンC含有量が27mgと漬物類の中ではビタミンCが多いことが特徴とされています。緑黄色野菜に数えられるようにβ-カロテンも100gあたり1200μgと多く、ビタミンEも含んでいるため抗酸化作用が期待できるでしょう。抗酸化と言うと老化予防のイメージが強いかもしれませんが、近年は活性酸素の増加が疲労の原因となるという説も強くなっています。このため抗酸化物質の補給は疲労・疲労感の軽減に効果が期待されています。

またビタミンCは副腎皮質ホルモンや神経伝達物質の合成に関係するビタミンでもあります。ストレスによって副腎皮質ホルモンの分泌量が増えるほどビタミンCの消費も激しくことが報告されており、ビタミンCが不足している場合はストレスに対しての反応が取れにくくなると考えられています。このためビタミンCは“ストレスと戦うビタミン”とも称され、不足なく補うことでストレス耐性向上が期待されています。小松菜には神経伝達を正常に保つ・神経の緊張や興奮を静める働きがあるとされるカルシウムも多く含まれていますから、イライラしやすい・精神的に疲れていると感じている時のサポートにも役立ってくれるでしょう。

便秘・腸内フローラ改善

小松菜には100gあたり2.0gの食物繊維が含まれています。キャベツセロリの3倍などと紹介されることもありますが、日本食品成分表の数値で見た場合はそれらを上回るものの倍するほど多くありません。食物繊維の内訳としては不溶性食物繊維が1.5g・水溶性食物繊維が0.5gとなっていますから、不溶性食物繊維による蠕動運動促進作用が期待できます。小松菜に豊富に含まれているビタミンCにも便を柔らかくする働きもあるため、便秘予防や改善をサポートしてくれるでしょう。

加えてビタミンCは腸内で善玉菌のエサになることで善玉菌の増加を助け、腸内環境を整える働きもあると考えられています。同じく腸内善玉菌のサポートが特異とされる水溶性食物繊維の量はさほど多くありませんが、ビタミンCと複合して働くことで腸内フローラのバランスを整える働きも期待できます。野沢菜漬けの場合であれば植物性乳酸菌も含まれていますから、より腸内環境を整えるのに適していると考えられます。

免疫力向上・風邪予防

小松菜はビタミンCとβ-カロテンを多く含む食材であることから、免疫力を高める・風邪やインフルエンザ予防としても役立つと考えられています。ビタミンCは白血球の働きを活発化したり、抗ウイルス作用を持つインターフェロンの分泌促進作用が認められています。加えて自らが病原菌を攻撃する働きがあることも報告されており、免疫力の保持・強化にも役立つビタミンの一つとされています。

またビタミンCはコラーゲン生成を促す働きから細胞の繋がりを密にしてウィルスの侵入を防ぐ働きがあるのではないかと考えられていますし、β-カロテンは必要に応じて体内でビタミンAに変換されることで呼吸器粘膜を修復・強化しウィルの侵入を防ぐ働きがあると言われていますよ。間接的な働きとしてこの2つの栄養素やビタミンEの抗酸化作用による免疫力低下予防効果も期待出来ますから、風邪予防にも役立ってくれるでしょう。冬至かぼちゃと同じく、かつて信州で野沢菜漬けは冬場のビタミン補給源として健康を支えていたのかもしれませんね。

高血圧・動脈硬化予防

野沢菜は抗酸化ビタミンであるビタミンCとβ-カロテンを多く含み、ビタミンEもこの2つほど多くはないものの含まれています。抗酸化物質の補給は血中脂質と活性酸素が結びついて過酸化脂質となるのを防ぎ、血管を健康な状態に保つことに繋がると考えられます。ビタミンCはコラーゲン生成促進作用によって血管を丈夫に保つ働きもありますから、相乗して動脈硬化や血栓予防に役立ってくれるでしょう。ただしコレステロールの吸収抑制・排出促進効果があるとする説もありますが、水溶性食物繊維の量はさほど多くないので過信しないほうが良いでしょう。

抗酸化物質の補給は血流を正常に保つことで血圧の上昇を抑制することにも繋がると考えられます。野沢菜にはナトリウム濃度を調節する働きを持つカリウムも含まれていますので、相乗して高血圧予防としても効果が期待できます。ちなみにナトリウムが多くなると血圧が上がると言われるのは、血中ナトリウム濃度を下げるために血液中に水分が多く取り入れられ血液量が増えて血管壁が膨張するため。結果として血管や血液を送り出す心臓に負担がかかって血圧が上昇し、また余剰水分によってむくみが起こります。

骨や歯を丈夫に保つ

野沢菜はカルシウムを100gあたり130mgと豊富に含む食材。同グラムで比較した場合のカルシウム含有量は牛乳を上回り、水菜や小松菜に次いで多く含む野菜と言えます。カルシウムは骨や歯に存在しており、不足すると骨密度低下による骨粗鬆症リスクが高まる・歯がもろくなることが指摘されています。カルシウムの適切な補充は骨や歯の丈夫さを保つために必要ですし、野沢菜にはカルシウムが骨に沈着するために働くタンパク質を活性化してくれるビタミンKも多く含まれています。

このため野沢菜はお子さんの成長のサポート・加齢による骨粗鬆症予防に役立つと考えられています。野沢菜漬けとして食べる場合であれば摂取量は数十グラム程度ですが、不足しがちなカルシウム補給となってくれるでしょう。カルシウムをより効率的に取り入れたい場合であれば骨や歯の発育を促すマグネシウムとマンガンが豊富なクルミ大豆などや、カルシウムの吸収・沈着を助けたり血中カルシウム濃度を一定に保つ働きを持つビタミンDを含む食材と組み合わせるとより効果が期待できます。

妊娠中の栄養補給・成長サポート

野沢菜は葉酸含有量が100gあたり110μgと、ホウレンソウよりは劣るものの野菜類の中では多く含まれています。葉酸は赤血球の合成に関わる栄養素で悪性貧血(巨赤芽性貧血)の予防効果があることから“造血のビタミン”と呼ばれていますが、タンパク質や核酸(DNAやRNA)の合成・神経細胞の代謝などにも関わる栄養素でもあります。この働きから特に妊娠・授乳中は赤ちゃんの健全な発育に不可欠な栄養素とされており、一日の推奨摂取量が多く設定されている成分でもあります。

産地の方以外は大量に食べる機会は少ないかもしれませんが、野沢菜漬の状態でも100gあたり64μgと少なくない量の葉酸が含まれていますから、ご飯のお供に取り入れると手軽な葉酸補給源になると考えられます。妊娠中に不足しやすいカルシウムの摂取にも繋がりますし、お子さんの健康維持・成長サポートにも役立ってくれるでしょう。葉酸が多いことから貧血予防にも良いとされていますが、日本人に多い貧血とされるのは鉄分が不足することで起こる鉄欠乏性貧血。野沢菜の鉄分含有量は生100gあたり0.6mgと多くありませんので、鉄分もしっかり補給したいという場合には小松菜ホウレンソウなどを食べたほうが効果的です。

美肌保持・乾燥予防

野沢菜に多く含まれているビタミンCは美肌作りをサポートしてくれるビタミンとしても注目されています。抗酸化作用によって肌細胞の酸化ダメージを抑制すること・コラーゲンの生成を促すことの両方から若々しくハリのある肌を保ってくれると考えられますし、てシミやソバカスの原因となるメラニン色素を作るチロシナーゼの働きを防ぐことで紫外線対策や美白にも効果が期待できるでしょう。

加えて野沢菜には同じく抗酸化作用を持つβ-カロテンやビタミンEも含まれていますから、抗酸化ビタミン類による相乗効果も期待できます。近年は緑茶を組み合わせて摂取することで抗酸化力が高まるという報道もあったそうですよ。またβ-カロテンは必要に応じて体内でビタミンAに変換され、皮膚や粘膜の維持や皮膚の新陳代謝向上にも働きかけてくれます。この働きから肌のカサつき・乾燥やニキビなどの肌トラブルの予防や改善に繋がると考えられますし、ドライアイ対策にも役立つと考えられています。寒期の乾燥対策としても旬の野沢菜を取り入れてみると良さそうですね。

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目的別、野沢菜のおすすめ食べ合わせ

  • 野沢菜+アーモンド紫蘇・緑茶
    ⇒アンチエイジングに
  • 野沢菜+ゴマ・ちりめんじゃこ・レバー
    ⇒集中力アップに
  • 野沢菜(漬け)+納豆・キムチ・味噌
    ⇒冷え性緩和に

野沢菜/信州菜の選び方・食べ方・注意点

地域によっては流通していない場合もありますが、基本的に70cmの大きく育った野沢菜は漬物用30~40cm程の小さめなサイズが調理用に適しています。大きいものも炒めたりして食べられないわけではありませんが、固いのであまり美味しくはないそうです。葉先までピンとハリがあり、全体的な色艶の良いものを選びましょう。

保存はほとんどの葉物野菜と同じく、乾燥を避けるようにポリ袋に入れるかラップに包んで冷蔵庫に入れます。可能であれば湿らせたキッチンペーパーや新聞紙に包んでから袋に入れるとより良いでしょう。保存に適した野菜ではありますが、そのままでは鮮度が下がりやすいので早めに使い切るか塩漬けにするようにします。

野沢菜漬けについて

全国的にみると野沢菜は野菜そのものとしてよりも、加工品である“野沢菜の漬け物”の方が馴染みのある存在かと思います。生の野沢菜からすると劣るものの、野沢菜(塩漬け)でも100gあたり27mgと漬物類ではビタミンCが多い部類となります。βカロテンが100gあたり1600μg・食物繊維量が2.5gと漬物のほうが多くなりますが、その他の栄養価としてはほぼ変わらないか若干少なくなります。その反面、植物性乳酸菌を含む発酵食品であることから腸内フローラの改善や免疫力向上などに効果が期待されています。

100gあたりのカロリーが生で16kcalなのに対し、野沢菜漬け(塩漬け)の場合も18kcalとカロリーはあまり変わりません。漬物の注意点としてはナトリウム量が非常に多くなることが挙げられます。ナトリウムは体の水分量・浸透圧を調整するなどの働きがあり私達の身体を保持するために必要な成分ではありますが、日本人は通常の食事で過剰摂取することはあれど不足することはほぼ無いと言われています。野沢菜はカリウムが多いからと漬物をたくさん食べるとナトリウム過多になり高血圧やむくみなどの原因となる可能性もありますので、適量の摂取を心がけましょう。