鱈(タラ/真鱈)とその栄養成分・効果効能
|クセがなくヘルシーなタンパク質補給源♪

食べ物辞典:タラ(真鱈)

淡白な風味の鱈(タラ)、冬に美味しい“鱈ちり”鍋など日本でもお馴染みの魚の一つ。かまぼこなどの練り物の原料にも使われていますし、おつまみとして人気のチータラ(チーズ鱈)を含めると、魚をあまり食べない方でも身近に感じるのではないでしょうか。淡白な風味の通り、タラは脂質・糖質をほとんど含まず低カロリーな食材。体作りをしている方やダイエット中の方のタンパク質補給源としても最適ですね。そんな使いやすく食べやすい、タラの歴史や栄養効果について詳しくご紹介します。

鱈のイメージ画像

和名:鱈(たら)/真鱈
英語:cod/Pacific cod

タラ(鱈)のプロフイール

鱈とは

日本では鍋料理をはじめとする“汁”ものに使われるイメージが強いタラですが、実は様々な料理に使われている魚。それもそのはず、タラは世界的にポピュラーな食用魚の一つとされており、種類こそ違えど北大西洋に近い北半球の国々の食卓で広く使われています。イギリス名物フィッシュ・アンド・チップスの“フィッシュ(魚のフライ)”としてもタラがよく使われていますし、ソテーやムニエルなどにも利用されています。

また北欧・南ヨーロッパとその植民地支配にあった国では干した塩鱈もポピュラーな食材。ちなみにこの干し塩鱈(バカラオ/バッカラ)は、キリスト教における受難週(聖週間)用の伝統食としても大切な存在とされています。日本でも棒ダラや塩蔵たら(塩ぶわ)などの加工品が作られていますし、古い時代は生のタラではなく干鱈の方がよく食べられていたとも言われていますね。そのほか産地では釣りたての新鮮なタラをお刺身で食べることもあります。

またタラは身部分だけでなく、タラコや白子(キク/たち)も珍重されていますね。タラの胃袋を漬け込んだ韓国料理“チャンジャ”も知られていますし、九州では“鱈胃(たらおさ)”と呼ばれるエラと内臓の干物が郷土料理に利用されています。そのほかにタラの肝臓からは肝油が取れますが、この肝油は良質な脂質であると考えられ健康食品として注目されおり、海外では「コッド・リバーオイル(Cod Liver Oil)」としてサプリメントにもなっています。

そんな世界的に親しまれている「タラ」ですが、タラというのはタラ科タラ亜科に属す魚の総称。北半球の冷たい海に多く分布しており、国によってタラと言われても食されている魚の種類が違います。このうち日本で食用魚として利用されているのは、鱈(マダラ)スケトウダラ(スケソウダラ)コマイの3種がほとんど。国内は単に「タラ」といった場合はマダラを指すのが一般的で、マダラは鍋・汁物類やフライなど“魚”としてそのまま食べられることが多くなっています。

対してスケトウダラはチクワやカマボコなどの練り物類や干物に、コマイは干物として利用されることが多くなっています。北海道では珍味で「かんかい(寒海)」と呼ばれるものもありますが、こちらもコマイのことを指しています。また北海道や北陸などにはスケトウダラの方がポピュラーな地域もあり、焼き魚や鍋などに使う事もありますよ。安値で販売されている鱈の干物“すきみたら”にもスケトウダラが使われている場合があります。子供の時にスケトウダラで育った人間としては、スケトウダラで鍋をしても普通に美味しいと思いますよ。ちなみに鱈の卵「タラコ」は全国的にスケトウダラの卵巣が主。

ちなみに“銀鱈(ギンダラ)”と呼ばれる魚もいますが、こちらはカサゴ目ギンダラ科に属しているので分類上はタラと全く別の魚になります。かつて銀だらは脂っぽい事から評価が低く、マダラやムツなどの代用品という感覚だったようですが、近年は人気・価格ともに高くなっています。鱈ちりのようなあっさりとした鍋物・汁物系であればサッパリと頂けるマダラも良いですが、煮付けや焼き魚などでパサつき感が気になる様であれば銀鱈にする、など好みや料理法で選んでみても良いでしょう。

ギンダラについてはこちら

鱈の歴史

タラ類は世界的に見ると中石器時代以前から食用とされてきたと考えられています。日本でも北海道の縄文遺跡からマダラの骨が出土していますので、北海道のアイヌの人々や北側の地域では食べられていたと考えられます。ただしタラの水揚げ中心地から離れていたためか、奈良・平安時代はほとんど文献に登場しないようです。

タラが注目されるようになったのは室町時代、戦国時代への皮切りとも言われる応仁の乱頃ではないかと言われています。京に持ち込まれた干鱈が武士達の兵糧(保存食)として利用されるようになり、また飢饉による食糧不足が多かったこともあり、保存の効く食品として武士以外の人々にも広がっていきました。現在でも京料理の海老芋と棒鱈を炊き合わせた“芋棒”が知られていますね。

ちなみに魚+雪でタラと読む漢字も日本人が作った和製漢字で、雪のように身(肉)が白い・雪が降る季節に獲れる魚の二つの説が有力なようです。鱈という漢字が作られる以前は口が大きく何でも貪欲に食べることから「大口魚」や「呑魚」と表記されていました。室町の女房詞で「ゆき」と言っていたそうですから、棒鱈が広まったくらいの時期には漢字も成立していたのかもしれません。余談ですが、量が多いことなどを表す時に使う“鱈腹(たらふく)”や“矢鱈(やたら)”という表現も、お腹がパンパンになるまで食べる鱈にちなんで当て字が選ばれたのだとか。

鱈にまつわる逸話として、ヴァイキングの一部がタラを求めて航海し9~10世紀頃にはアイスランド・グリーンランドからアメリカ大陸へ到達したという話もあります。グリーンランドやアイスランドでは現在に至るまで、寒風に晒して作ったタラ(タイセイヨウダラ)の干物が大切にされているそう。アイスランド近海は「世界三大タラ漁場」と言われ1000年間近くタラを獲るために各国から漁船が訪れるエリアでもあり、水産資源が経済基盤でもありました。

しかし第二次世界大戦後はヨーロッパ各地の大型トロール船が入り込み、水産資源が減少し始めます。これを受け1958年にアイスランドが自国の領海を宣言し、アイスランドとイギリス間で行われた「Cod Wars(タラ戦争)」と呼ばれる漁業権紛争が勃発します。このタラ戦争は1976年に欧州経済共同体(EEC)がヨーロッパ全域に200海里排他的経済水域を設定し、アイスランド200海里内でのイギリス漁船の操業・漁獲量が定めされることで決着しました。この決定はイギリス漁業に打撃を与えただけではなく、各国の排他的経済水域が設定されたことで遠洋漁業を行う日本などに対する漁業規制にも繋がります。

タラ(鱈)の栄養成分・効果について

栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

タラは100gあたりのカロリーが77kcalと、鮮魚の中で最も低カロリーな部類に入ります。三大栄養素ではタンパク質の割合が高く、脂質・糖質はほとんど含まれていないため非常にヘルシーな食材とも言えるでしょう。ビタミン・ミネラル類も魚全体としては多いとは言えないものの、白身魚としては豊富に含まれています。

鱈のイメージ02

タラ(真鱈)の効果効能、その根拠・理由とは?

栄養補給・体力アップに

タラは脂肪がほとんど無い魚のため、消化する際に胃腸への負担が少ないと考えられています。魚肉も繊維タンパクが占めているため加熱しても硬くなりにくいこともあり、病後の回復食としてやお年寄りのお食事・離乳食などにも取り入れられていますよ。淡白な味で好き嫌いがない・アレンジしやすいので、家族みんなが食べやすい食材とも言えるでしょう。

魚類全体で見ると同グラム中のタンパク質量が多いというわけではありませんが、タラはほとんどが水分とタンパク質で出来ている魚。このため筋力やスタミナアップに役立つと考えられている「BCAA」(バリン、ロイシン、イソロイシン)や、アスパラギン酸などのアミノ酸を重点的に補給したい場合にも適していると言えるでしょう。スポーツをしている方の筋肉・スタミナアップにも効果が期待できますし、育ち盛りのお子様の栄養源にも役立ちますよ。

疲労回復・むくみ緩和に

タラに含まれているアミノ酸のBCAAは肉体疲労の回復や疲労耐性アップに、アスパラギン酸はクエン酸回路を活発化し疲労物質の分解促進に役立つと考えられています。同じくアミノ酸のアルギニンもアンモニアを解毒する尿素回路(オルニチンサイクル)に関わる成分で、アンモニアの分解を高めることで疲労回復サポート効果が期待されています。グルタミン酸にも肝臓以外の部分でアンモニアと結合して無毒化する性質があり、ぼんやり感や集中力低下など脳に起因する疲労感の軽減にも繋がるという説もあります。

そのほかアミノ酸一種であるアスパラギン酸は、尿の合成を促進することでアンモニア排出を促す働きがあり、それに伴う利尿効果も期待されています。アスパラギン酸には体液バランスを保つカリウムやマグネシウムを細胞に取り込みやすくする働きもあります。タラにはカリウムやマグネシウムも含まれていますから、相乗してむくみ改善にも効果が期待できます。ミネラル(電解質)のバランスを正常に保つことも疲労感の予防・軽減に繋がる可能性がありますね。

ダイエットのサポートに

低脂質・低糖質でタンパク質を豊富に含むタラは、ダイエット中のお食事に適した魚でもあります。運動と合わせてBCAAなどのアミノ酸を含むタンパク質をしっかりと摂取することで筋肉量増加を助け、基礎代謝や脂肪燃焼力を高める働きが期待できるでしょう。アミノ酸の一つであるグルタミン酸は「うま味」を感じさせる成分でもありますから“食べた”という満足感にも繋がると考えられます。カロリー制限・糖質制限など食事をメインにしたダイエットにも活用できますね。

またアミノ酸の一種であるアルギニンは成長ホルモンの分泌を促す働きもあります。成長ホルモンは脂肪代謝・筋肉増強を促進させるなどの働きの他、食欲を抑える効果も報告されています。同じくアミノ酸のグルタミン酸もラットによる実験では脂肪蓄積効果が報告されています。

Sponsored Link

免疫力保持・風邪予防に

タラに含まれているタンパク質やアミノ酸は丈夫な体を作る原料となる成分。コラーゲンの原料としても利用されるため、細胞を密にしっかりと保つことでウィルスなど異物の侵入を防ぐ・免疫力を高める働きも期待されています。またアルギニンなど免疫細胞活発化作用が報告されているアミノ酸も含まれています。

タラ(真鱈)はあまりビタミン類の多い魚ではありませんが、ビタミン類を広く含んでいます。銀鱈よりは劣るもののビタミンDも若干含まれていますから、そちらからも免疫力のサポートが期待されています。ビタミンDはカルシウムやリンの吸収を助けるだけではなく、免疫系の正常な機能をサポートする働きが期待できるとして注目されているビタミン。免疫力を調整することで花粉症や喘息などのアレルギー症状軽減効果が期待されていますし、ビタミンD摂取量が多いほどインフルエンザ発症率が低いという報告もなされていますよ。

こうした栄養成分を含むことから、タラは免疫力の保持や風邪予防にも役立つと言われています。ただしアミノ酸も、ビタミン類についても、どちらも際立って豊富という訳ではありません。タラを食べてというよりは、緑黄色野菜などとバランスよく食べることで風邪やインフルエンザ予防にも繋がるというタイプ。冬場の鱈鍋は栄養補給の面でも優秀な料理法と言えますね。

抗酸化・肌の健康維持

タラのミネラルにはヨウ素とセレンが多く含まれています。セレンは抗酸化に必要な酵素(グルタチオン・ペルオキシダーゼ)の構成物質であるため、身体が持つ抗酸化力の保持・向上に役立つと考えられています。セレンは成人女性であれば350μg・成人男性であれば420~460μgが摂取上限量とされていますが、タラ100gあたりの含有量は31μgと過剰摂取の心配も少ない量が含まれているので補給源として無難なチョイスと言えますね。

ヨウ素は甲状腺ホルモンの原料として利用される成分で、体内のタンパク質合成や新陳代謝などをサポートしてくれます。皮膚・髪・爪の保持や再生にも必要と考えられていますが、ヨウ素も過剰摂取は甲状腺系疾患のリスクを高めることが指摘されている成分。タラであれば100gあたり350μgですから昆布ワカメなどほど摂取量を気にせずに口にすることが出来るでしょう。加えてタラにはコラーゲンの元になるタンパク質(アミノ酸)、肌の潤いを保つ働きが期待されるアスパラギン酸なども含まれています。

タラ単体で何らかの優れた働きが期待できるという訳ではありませんが、献立に追加することで身体や肌を健康に保つ栄養摂取をサポートしてくれる食材と言えます。抗酸化作用を持つビタミンやポリフェノールもほとんど含まれていませんので、緑黄色野菜類などと組み合わせて食べると活性酸素による酸化(老化)や動脈硬化・生活習慣病予防に役立ってくれるでしょう。

スケトウダラについて

スケトウダラも100gあたりのカロリーも77kcalとほぼ真鱈と変わらず、三大栄養素の比率やアミノ酸含有量もほとんど変わりはありません。生100gあたりの成分含有量としてはビタミン・ミネラルに関してもほぼ同量となっていますが、スケトウダラはヨウ素含有量が160μgとマダラの約半分であり、ビタミンDが1.0mg・ビタミンB12が2.9mgとマダラの倍以上となっています。ビタミンDを補給したい方、甲状腺の関係などでヨウ素摂取量を控えたい方には適していると言えるかもしれません。

目的別、鱈のおすすめ食べ合わせ

タラ(鱈)の選び方・食べ方・注意点

タラは淡白でクセがない魚とも言われますが、独特の魚臭さを感じたことのある方もいらっしゃるかと思います。これはトリメチルアミンオキサイドという旨味成分が細菌等によって“腐敗した魚の臭い”とも言われるトリメチルアミンに分解されるためです。

新鮮な状態で塩をして水分と一緒に臭みを抜いておく方法が一般的ですが、臭いが気になる方は調理する前に酢に潜らせることでも臭いを抑えることが出来ます。買ってから冷蔵庫で夕飯まで保存しておくなどの場合でも、予め塩を振っておくと臭いの発生を抑え、美味しく頂けます。

美味しい鱈の選び方・保存方法

まるごと一本の場合は目が黒く透明感があり、皮に光沢とハリがあり色が鮮やかなものを選びましょう。切り身で選ぶ場合は身に透明感があり、ややピンクがかった色のものが新鮮です。白身魚とは言え、真っ白になって透明感がなくなっているものは鮮度が落ちています。アンモニア臭がするものも避けてください。

タラの注意点

稀に寄生虫(アニキス)が付いている場合があります。生食する場合は注意しましょう。