金目鯛(キンメダイ)とその栄養成分・効果効能
|アスタキサンチンの抗酸化・美容効果も注目

食べ物辞典:金目鯛

金目鯛はしっかりと脂が乗っていることから煮魚用としても人気のお魚。ホロホロと柔らかい身・小骨が少なく食べやすいことから小さなお子さんやお年寄りでも食べやすい魚と言えますね。脂乗りがよく濃厚なため、真鯛よりも金目鯛のほうが好きという方も珍しくありません。タンパク質はやや低めですが、低カロリーであること・赤色の体表にはアスタキサンチンが含まれていることから、アンチエイジングや目の健康維持のサポートにも効果が期待されています。そんな金目鯛の歴史や栄養効果について詳しくご紹介します。

金目鯛のイメージ画像

和名:金目鯛(キンメダイ)
英語:alfonsino/red bream

金目鯛(キンメダイ)のプロフイール

金目鯛とは

しっかりと脂が乗っていて、好き嫌いの少ない魚も言われる金目鯛。基本的には一年を通して大きく味が変わらない魚と言われていますが、脂が乗る冬(12月~2月頃)が金目鯛の旬とされています。煮付けや汁物というイメージが強い魚ですが、特に冬場の金目鯛であれば刺し身にするなど生食でも美味しく頂けますよ。ちなみにスーパーなどで販売されている金目鯛は全身が鮮やかな赤色をしていますが、生きている時はさほど赤くなく、死後に変色するそう。

そんな金目鯛は世界各地に生息している深海魚。名前の由来ともなっている大きな金色の目と、赤い体色が特徴とされています。分類上はキンメダイ科に属すための仲間(タイ科の魚)ではありませんが、その赤い体色が鯛を連想させることから名前に“タイ”が付けられました。真鯛や黒鯛などが武人のような印象を与える姿をしているのに対して、金目鯛は大きな金魚と言った方がしっくり来る形状でもありますね。

キンメダイ科の魚の中で食用とされるのはキンメダイ(Beryx splendens)のほかに、ナンヨウキンメ(平金目)・フウセンキンメの2種類があります。フウセンキンメ金目鯛よりも脂乗りがよく「トロキンメ」とも呼ばれているそうですが、ほとんど流通していません。ナンヨウキンメは外見としては金目鯛と非常によく似ていますが、やや丸みが強く平らたい形をしています。一般的には脂が少なめで味がやや劣るとも言われており、金目鯛よりも安価で販売されています。

また金目鯛ではなく“銀目鯛”と呼ばれる魚も存在しますが、こちらはキンメダイ目ギンメダイ科という縁の遠い魚。水っぽくあまり美味しくはないので一般にはほとんど流通しないそうです。カマボコなどの加工品原料として時折使われる程度で、認識としては雑魚なのだそう。ギンメダイ科の魚の中ではアラメギンメという魚が美味しいと言われていますが、ギンメダイ以上に流通することはなく珍魚の類なのだそうです。

金目鯛の歴史

深海魚である金目鯛は人間によって発見されるのが遅く、1830年代に初めて存在が認識されたと言われています。日本では明治に金目鯛が漁獲されていたという記録があるそうですが、江戸時代以前の文献には記録が残っていません。明治中期くらいまでは“鯛”と総称され種類が厳密に区分されていなかったことも関係しているのだとか。ただし江戸時代には深海に生息するギス(ダボギス)が獲られカマボコなどにも加工されていましたから、記録はないが金目鯛も漁獲されていた・食べられていたのではないかという意見もあります。

明治後期~大正にかけては金目鯛についての記録が見られるようになりますが、一般的に食べられるようになったのは第二次世界大戦後からと言われています。当初はその外見から「金魚のお化け」とも言われ、かなり安値で売られていたようです。しかし時代とともに日本人の嗜好が脂の乗った魚へと向いたことなどもあり、真鯛の代わりにお祝いの席などでも取り入れられるようになっていきます。

かつては真鯛の代用魚という扱いでしたが、近年は扱う漁師が減っていることから漁獲高も減少し、価格が高騰しています。養殖物の真鯛よりも金目鯛のほうが高価になっていますから、今や金目鯛も立派な高級魚の一つと言えるでしょう。伊豆の地金目や稲取キンメ・高知の室戸キンメなどブランド化も行われています。ちなみに需要に供給が追いつかないためチリやロシアから冷凍ものの輸入も行われています。こちらは国産の金目鯛よりは安価であるものの、魚類の中では比較的高価な部類に入ります。

金目鯛(キンメダイ)の栄養成分・効果について

栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

金目鯛は白身魚の一つで、真鯛よりも脂が乗っていると紹介されますが100gあたりの脂質量は9.0gと養殖ものの真鯛よりも少なくなっています。魚類としてはタンパク質量も含めで、水分量が多いこともあり100gあたりのカロリーも160kcalとやや低めです。低カロリーなことに加えて、エビなどと同じく体表の鮮やかな赤色には色素成分のアスタキサンチンが含まれていることから、抗酸化作用や美容効果も期待されていますよ。

金目鯛のイメージ02

金目鯛の効果効能、その根拠・理由とは?

疲労回復・二日酔い対策に

タンパク質量が少ない部類とされる金目鯛ですが、全体重量の約18%はタンパク質真鯛よりは劣るものの筋肉増強・回復促進に有効とされている必須アミノ酸のBCAA(バリン・ロイシン・イソロイシン)や、クエン酸回路を活発化し疲労物質の分解をサポートしてくれるアスパラギン酸などがしっかりと含まれています。これら成分の補給から疲労回復・体力アップに役立つと考えられますし、アスパラギン酸はアンモニアの無害化・排出をサポートすることで神経伝達物質の働きを阻害する・代謝低下による疲労物質蓄積・免疫力低下などにも効果が期待されている成分。こちらからも疲労軽減のサポートに繋がる可能性があります。

またアスパラギン酸はアンモニア排出を助けることで、アンモニアの無毒化を行う肝臓への負担も軽減してくれると考えられています。多いというわけではありませんが金目鯛にもアルコール脱水素酵素やアセトアルデヒド脱水素酵素の働きを助けてくれるナイアシンや、不足が二日酔いの原因となるナトリウム・カリウムなどのミネラル類などが含まれていますから、二日酔い予防や回復サポートにも役立ってくれるでしょう。

抗酸化・生活習慣病予防に

キンメダイの体表(皮)の鮮やかな赤色の元となっている色素成分は、カロテノイドの一種「アスタキサンチン」という成分です。アスタキサンチンは活性酸素を抑制・除去する働きを持つ抗酸化物質の一つですが、カロテノイド類の中で最も高いと言われるほど強力な抗酸化作用を持つと考えられており、さらに細胞膜の内外と働く場所が決まっている抗酸化物質が多い中で細胞膜内外を選ばずに作用する成分とも言われています。

この優れた抗酸化作用から、アスタキサンチンは活性酸素の過剰増加に起因する老化・生活習慣病予防に対しての効果が期待されています。加えて金目鯛には血液サラサラ効果がある脂質として注目されるEPA(エイコサペンタエン酸/IPA:イコサペンタエン酸とも言う)を始めとするオメガ3脂肪酸、抗酸化物質であるビタミンEなども含まれています。アスタキサンチンやオメガ3脂肪酸のEPAは(LDL)悪玉コレステロールの減少・善玉(HDL)コレステロール増加作用が報告されていますし、アスタキサンチンはアディポネクチン分泌を促すことで血圧降下・血糖値降下作用を持つ可能性があることも報告なされています。このため適量の摂取であれば金目鯛は高血圧・動脈硬化・糖尿病などの生活習慣病予防に役立つと考えられています。

丈夫な骨・歯の維持に

金目鯛はミネラルの中でマグネシウムとリンを多く含んでいます。マグネシウムもリンも骨や歯の形成に必要な栄養素で、カルシウムとバランスよく摂取することで骨や歯を丈夫に保つと考えられています。加えてカルシウムやリンの吸収を良くして骨や歯への沈着を助けるビタミンDも多く含まれていますから、お子さんの成長サポートにも骨粗鬆症が気になる高齢の方にも適しているでしょう。真鯛よりも小骨が少ないのも嬉しいですね。

ただし金目鯛のカルシウム含有量は100gあたり31mg真鯛の2.5倍以上ではありますが、マグネシウム・リンとのバランスで考えると少なめです。カルシウムの豊富な食材と組み合わせて食べるようにすると、より効果的でしょう。

目の疲れ・眼精疲労予防に

金目鯛の体表(皮)に多く含まれているカロテノイド系色素成分のアスタキサンチンは網膜色素上皮層にある血液網膜関門を通過できる数少ない抗酸化物質であり、血流改善効果もあると考えられています。現代病とも言われる眼精疲労は目を酷使することで目の周囲にある毛様体筋という筋肉が疲労し、その機能が衰えることでピント調節機能の低下・目のかすみ・視力低下・肩こり・頭痛などを引き起こすとされています。

このためアスタキサンチンはダイレクトに目に発生した活性酸素を除去・血流改善効果により毛様体筋に蓄積した疲労物質の排出を促すことが出来る成分として、眼精疲労による諸症状の予防・改善効果が期待されています。また目の活性酸素発生を抑制して、血行促進によって新鮮な栄養・酸素を行き渡らせる働きは、ピント調節機能の低下によって起こる老眼の予防や軽減にも効果が期待されています。加えて金目鯛には視機能サポートや目の疲労軽減に役立つビタミンB群などのビタミン類も含まれていますから、目の疲れを深刻化させない手助けをしてくれるでしょう。

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ストレス対策・集中力アップにも

金目鯛はビタミン類の中では神経機能を正常に保つビタミンB12神経伝達物質の合成に必要なビタミンB6を多く含んでいます。毛細血管を広げることで脳神経の正常な機能を助ける働きがあると考えられているナイアシンも100gあたり2.7mg含んでいますから、ビタミンB群の補給源として役立ってくれるでしょう。加えて金目鯛、特に皮(体表)部分に多く含まれているアスタキサンチンも副交感神経を活発化させて自律神経のバランスを整える働きが期待されています。こうした成分を補うことでストレス耐性を高めたり、精神面を健やかに保つサポートにも役立つと考えられます。

またアミノ酸の一つであるアルギニンの血行促進作用も肉体疲労だけではなく脳・精神疲労軽減に有効と考えられていますし、成長ホルモンの分泌を整えてやる気や集中力を高めると考えられています。100gあたり870mgと金目鯛に多く含まれているオメガ3のDHA(ドコサヘキサエン酸)も記憶力・学習能力向上効果が期待されていますから、集中力を高めて勉強や仕事をこなしたい時に取り入れてみても良いかもしれません。

美肌・アンチエイジングに

金目鯛は抗酸化ビタミンの一つであるビタミンEのほか、体表(皮)にはビタミンCの6000倍・ビタミンEの1000倍とも言われるほど高い抗酸化作用が期待されるアスタキサンチンも含んでいます。アスタキサンチンは紫外線などにって生じた活性酸素からコラーゲンやヒアルロン酸を産生している“ヒト皮膚線維芽細胞”を守る働きが強いことが報告されています。メラニン色素を抑制する効果もあるとも言われていますので、内側からの紫外線対策・美白成分としても注目されています。

またアスタキサンチンにはコラーゲンやエラスチンの生成を促す効果があることも報告されています。金目鯛には成長ホルモンを促すことで皮膚ダメージの修復を高める働きが期待できるアルギニン、肌の潤いを保つ働きが期待されるアスパラギン酸、MF(天然保湿因子)の原料となるグルタミン酸などのアミノ酸も含まれています。これらの成分が相乗して肌のハリや潤いを高め、アンチエイジングにも役立ってくれるでしょう。

目的別、金目鯛のおすすめ食べ合わせ

  • 金目鯛+カツオイカタコ・鶏肉
    ⇒強壮・強精に
  • 金目鯛+唐辛子米・コリアンダー
    ⇒疲労回復・スタミナアップ

金目鯛(キンメダイ)の選び方・食べ方・注意点

金目鯛を選ぶ際は他の魚類と同様に艶と透明感のある目をしたもの・体色が鮮やかな色をしているもの・お腹のあたりのハリが良いものを選ぶと良いでしょう。鱗が剥げていたり、表面に傷がついているものは避けるようにします。切り身で選ぶ場合は身に透明感があり切り口の綺麗なもの、冷凍物であれば身が白っぽものが良いと言われています。

金目鯛に含まれているアスタキサンチンはほぼ全てが体表にありますので、抗酸化作用などを期待する場合は皮ごと食べるようにします。ただしアスタキサンチンは加熱により徐々に減少してしまい、諸説ありますが残存率は焼いた場合で約60~50%・揚げた場合は40%程と言われています。煮る・蒸すが残存率の高い方法とされていますから、料理法を工夫してみると良いかもしれません。またアスタキサンチンは脂溶性なので油分を組み合わせると摂取率が高まりますし、ビタミンCと合わせて食べるとより効果的とも言われています。

金目鯛の注意点

金目鯛の体内には微量の水銀が含まれていることから、厚生労働省はマグロなどとともに妊婦が摂取に注意すべき魚として挙げています。1週間あたり80g程度が摂取目安とされていますから、妊娠中の方はもちろんのこと妊娠していない方であっても食べ過ぎには注意するようにしましょう。