オレンジの特徴と栄養成分・期待できる健康メリットとは

食べ物辞典:オレンジ

柑橘類を代表する果物の一つ、スイートオレンジ。ミカンと比べて果皮が厚いこと・味や香りが濃厚なことが特徴で、品種はバレンシアオレンジ・ネーブルオレンジ・ブラッドオレンジの3種類に大きく分けられます。栄養面ではビタミンCが豊富なことが特徴で、ヘスペリジンなどのポリフェーノールも含むことから抗酸化サポートや生活習慣病予防にも役立つ可能性がありますよ。疲労回復のサポートや、香りによるリラックス効果も期待できます。そんなオレンジの種類や歴史、栄養成分と期待される健康効果について詳しくご紹介します。

オレンジのイメージ画像:食べ物辞典トップ用

和名:甘橙(アマダイダイ)
英語:orange/sweet orange
学名:Citrus sinensis

オレンジのプロフイール

オレンジ(甘橙/アマダイダイ)とは

柑橘系特有のサッパリした香りとメリハリのある甘酸っぱさが特徴的なオレンジ。オレンジは甘酸っぱさが美味しいフルーツとして広く食されており、オレンジジュースを始めとする飲料類・ゼリーなどのお菓子類など様々な食品に用いられています。ヨーロッパなどでは果皮(オレンジピール)も利用されていますし、クリスマス時期にオレンジポマンダーを作る風習が残っているなど日本以上に親しまれている存在でもあります。食品類以外にも、元気を貰えるようなビタミンカラーの見た目から小物類やファブリック類の柄など様々なところで見かける存在ではないでしょうか。香水・室内芳香剤やアロマテラピーで使われる精油など“オレンジの香り”もお馴染みですし、赤と黄色の中間色をオレンジ(橙色)と表現していますしね。

そんな外見・味・香りと私達の生活の中にも定着し、世界的にもポピュラーな果実の一つと言える果物であるオレンジ。何気なく使っているオレンジという言葉はミカン科ミカン属の柑橘類の総称としても使われますが、食品としての場合は和名を甘橙と言うスイートオレンジ(学名:Citrus sinensis)を指すのが一般的。それ以外にミカン属には和名を橙というビターオレンジ(学名:Citrus aurantium)をはじめ、日本で食べられている温州みかん・シークヮーサー・ブンタンなどが含まれています。マンダリン・タンジェリンも“オレンジ”が付けられますが、こちらは日本では温州みかんなどと共に「ミカン類」に分類されています。

世界各地で栽培されているスイートオレンジ(学名:Citrus sinensis)には様々な品種がありますが、大まかにはバレンシアオレンジ(普通オレンジ)・ネーブルオレンジ・ブラッドオレンジの3系統に分類されています。世界で最も生産量が多いのがバレンシアオレンジ群で、やや酸味が強いことからオレンジジュースなどの加工品原料としてもよく使われています。ネーブルオレンジは外見上バレンシアオレンジと似ていますが“navel”=臍(ヘソ)に似た窪みがあること・酸味が弱いことが特徴。また、ネーブルオレンジは秋から春、バレンシアオレンジは春から秋にかけてと全く逆の時期が旬となっています。日本で前記2種よりも見かける頻度が低いブラッドオレンジは、その名の通り血のような深い赤色の果肉をした品種で、他品種にはないアントシアニンを含んでいることが特徴です。

ちなみに、ビターオレンジの場合は果物としてそのまま食べることはほとんどありません。オレンジ香料(精油)、花からはネロリと呼ばれる高級香料の採油が行われています。広い意味でのビターオレンジはCitrus aurantiumだけではなく、生食に適さないベルガモットやビガラードなども含まれます。香料として香水・化粧品・食品に使われるか、調味料やハーブ感覚で用いられることが多い存在と言えるでしょう。ジュースにして飲むという地域も無くはないので、生では絶対に使用しないという訳でもありませんが…日本人の感覚で言うとカボスなどに近い扱いという感じでしょうか。

オレンジの栄養成分・効果について

栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

オレンジはビタミンCが豊富な柑橘類で、多くはないものの鉄分・カリウム・カルシウムなどミネラル類も含んでいます。その他ポリフェノールの一種であるヘスペリジン(ビタミンP)や香り成分のリモネンなども含まれており、様々な健康サポート効果が期待されています。

もちろん個々によっても含有成分量には若干の違いがあると考えられますが、それ以前にバレンシアオレンジ・ネーブルオレンジ・ブラッドオレンジの三種類でも栄養成分の傾向には違いがあります。下記では『日本食品標準成分表2015年版(七訂)』に記載されている“ネーブル”の数値を元に紹介させていただきます。ちなみに100gあたりのカロリーはバレンシアオレンジで39kcal・ネーブルオレンジで46kcal。ブラッドオレンジは日本食品標準成分表に記載がないため明瞭ではありませんが、50~70kcal程度とやや高めのようです。

オレンジ&オレンジジュースイメージ

オレンジの効果効能、その根拠・理由とは?

疲労回復・夏バテ予防に

オレンジはショ糖・果糖・ブドウ糖などの糖質が含まれています。このため体内でのエネルギー転換が早く、疲労時や夏バテ時のエネルギー補給・回復促進に役立ってくれるでしょう。加えてオレンジはビタミンB1も果物類の中ではトップクラスの含有量ですから、糖代謝の向上・筋肉や神経の疲れを和らげることで疲労感軽減のサポートしてくれる可能性もあります。そのほかクエン酸を含むことからクエン酸回路(TCA回路)を活発化して乳酸のもととなる物質(焦性ブドウ糖)の蓄積抑制・乳酸の代謝向上が期待できるという説もありますが、クエン酸の疲労回復効果については信憑性が低いため期待しないほうが無難。

また、オレンジに含まれている芳香成分(精油成分)のリモネンには唾液分泌を促すことで消化吸収を促す、食欲を高める、胃粘膜を保護するなど胃腸機能を助ける働きも期待されています。含有量こそ多くありませんがカリウム他ミネラル類も幅広く含んでいますので、食欲不振時や夏バテをしている時の栄養補給源としても適しているでしょう。ナイアシンやビタミンB1といったアルコール摂取時に不足しやすいビタミン類も含まれていますし、さっぱりとした甘さを持つ果物ですから二日酔い気味の朝食としても役立ってくれそうですね。

ストレス対策にも期待

オレンジの芳香成分(精油成分)のリモネンにはリラックスやリフレッシュ効果があると考えられています。マウスを使った実験ではリラックス作用や抗不安作用などがみられたという報告もなされていますし、アロマテラピーでオレンジの精油はリラックス&安眠用としても取り入れられているようです。また交感神経を刺激することで頭をスッキリとリフレッシュさせる働きがあるという説もあります。これらのことから“オレンジの香り”はストレスや神経疲労などの軽減などに効果が期待されています。

加えてオレンジは副腎皮質ホルモンなどの合成にも関わるビタミンCも豊富な果物。副腎皮質ホルモンの代表としてはアドレナリン・ノルアドレナリン・コルチゾールが挙げられ、ストレス下で分泌されることが多いため別名「抗ストレスホルモン」とも呼ばれています。このためビタミンCはストレスを緩和・ストレス耐性を高める手助けをしてくれると考えられていますから、香り効果と相乗してストレス対策として役立ってくれるでしょう。

風邪予防・アレルギー軽減に

オレンジやみかんなどにはポリフェノールの一種でビタミンPとも呼ばれる「ヘスペリジン」という成分が多く含まれていることも注目されています。ヘスペリジンはポリフェノールの一種として抗酸化作用を発揮してくれるほか、ビタミンCを安定させることでビタミンCの吸収・利用率を高めたり、ビタミンCの働きを助けてコラーゲンの生成を高めるなどの働きを持つことが報告されている成分。コラーゲンと言うとお肌のイメージがありますが、肌だけではなく体内の様々な細胞を密に繋ぐ役割を担っています。この働きから特に細く弱い血管である末梢血管を丈夫に保つのにヘスペリジンは有用だと考えられており、末梢血管の透過性を調節することにも繋がるためアレルギー症状を予防・軽減する働きも期待されています。

22人の健康なボランティア8週間オレンジジュースを摂取させるという実験では、炎症性サイトカイン(CRPとIL-6)の濃度に減少が見られたという報告も2014年“ISRN Nutrition”に掲載されています。まだ確証と言えるほどの研究データーはありませんが、オレンジに抗炎症作用がある可能性・炎症性物質を減少して慢性疾患のリスクを抑える可能性があるのではないかと注目されていますよ。ちなみにヘスペリジンは綺麗に取り除いて食べたいという方も多いミカンやオレンジの白い筋部分に多く含まれていることが分かっています。オレンジは薄皮(じょうのう)ごと食べにくいので、果物としてそのまま食べる場合にはミカンのほうが適しているのかもしれません。

そのほか細胞をつなぎ合わせるコラーゲンの生成を促すことは、ウイルス侵入抑制=風邪やインフルエンザ予防にも繋がりますし、メインに働くビタミンCもオレンジには100gあたり60mgと豊富に含まれています。ビタミンCにも抗酸化作用が認められていますし、抗ウイルス作用を持つインターフェロンの分泌促進作用や白血球の強化・自らが病原菌を攻撃する働きを持つなど免疫機能のサポートに関する報告もなされています。加えて免疫反応を調節する副腎皮質ホルモンの原料でもありますから、抗酸化作用と合わせて免疫力を正常に保ち、風邪やインフルエンザなどの予防・アレルギー症状軽減と両方の手助けをしてくれる可能性もあります。

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抗酸化・生活習慣病予防に

オレンジに含まれているポリフェーノールのヘスペリジン(ビタミンP)はビタミンCと協力して毛細血管を丈夫に保つ働きがあることから、血管の柔軟性を高めることで動脈硬化や血栓の予防への有効性も注目されています。加えて、オレンジに含まれているヘスペリジンもビタミンCも抗酸化物質ですから、酸化ダメージ抑制の面でも健康維持や疾患予防に役立つと考えられます。特に血中脂質が酸化した物質が蓄積し血管を狭めることで起こる動脈硬化や高血圧、酸化によって起こる老化の促進・生活習慣病などのリスク低減にも一役買ってくれるのではないかと期待されています。

加えてオレンジには糖アルコールの一種であるイノシトールが含まれているという説もあります。イノシトールは脂肪・コレステロールの流れを良くすることで脂肪蓄積を予防する働きが期待できるとして、メディアでは抗肥満成分・抗脂肪肝ビタミンなどとも呼ばれている成分。オレンジのイノシトール含有量や作用については曖昧な部分が多いのですが、オレンジはGI値(血糖値指数)が31〜51と低めの果物でもあります。イノシトールの働きだけではなく、糖質が控えめであること・抗酸化作用や毛細血管強化が期待できることと合わせて、てメタボリックシンドロームや生活習慣病予防にもオレンジは役立つと考えられています。

便秘予防・スタイルキープに

オレンジの食物繊維量は100gあたり1.0gと際立って多いわけではありませんが、柑橘類の中ではペクチン(水溶性食物繊維)と有機酸の含有量が多いため便秘予防や改善に役立つと言われています。イノシトールにも腸の筋肉の収縮活動を高めるという報告がなされていますし、リモネンも自律神経系を刺激することで蠕動運動を促すという説があります。際立って食物繊維が多い果物というわけではありませんが、オレンジは食物繊維・水分・腸の活動を促す成分がまとめて補給できることから便秘の予防や改善にも取り入れられているのかもしれません。オレンジジュースに大根の葉をすり潰したものを加えて飲む、など便秘対策の民間療法でも使用されていますよ。

また。イノシトールは脂肪(コレステロール)の流れを良くすることで脂肪蓄積予防効果、リモネンは交感神経を刺激することで血行や代謝向上効果が期待されている成分でもあります。このため適量のオレンジの摂取は肥満予防にも役立つと考えられています。ヘスペリジンやビタミンCなどの働きと合わせて、血行不良によるむくみ冷え性の軽減にも効果が期待できるでしょう。ただしオレンジは糖質量が極めて少ないという果物ではありませんので、食べ過ぎると逆効果になってしまう可能性もあります。適量の摂取を心がけてください。

美肌保持・アンチエイジングに

オレンジに豊富に含まれているビタミンCや、ビタミンCの働きを助けることでコラーゲン生成をサポートしてくれるヘスペリジンは、肌のハリを高めるなど外見を若々しく保つという点でも効果が期待できます。含有量こそ多くありませんが同じく抗酸化ビタミンであるβ-カロテン・ビタミンEも含まれていますから、合わせて摂取することで相乗効果を発揮するとされる“ビタミンACE”がまとめて摂取できます。ヘスペリジンも抗酸化物質ですから、コラーゲン生成を促すだけではなく酸化予防=アンチエイジングにも効果が期待できるでしょう。

そのほか毛細血管が丈夫になること・リモネンなどの働きで血流促進も期待できるため、肌にしっかりと酸素と栄養が行き渡ることでくすみの軽減・ターンオーバーの正常化などにも繋がると考えられます。皮膚の健康維持に必要とされるビタミンB群もオレンジは果物類の中では比較的豊富と言えますし、ストレス軽減などの働きも期待できるため肌荒れ予防にも役立ってくれるでしょう。イノシトールも神経細胞に栄養を供給する働きを担っていることから、肌や頭皮・頭髪トラブル予防効果が期待されている成分です。

ブラッドオレンジについて

ネーブルオレンジとバレンシアオレンジの含有成分・栄養価については若干の差異はあっても、別の食材というような大きな違いはありません。しかし、果肉が赤ワインを煮詰めたような色をしているブラッドオレンジはちょっと別物。特徴的な色の元ともなっているフラボノイド系ポリフェノールのアントシアニン類を含んでいることから、他2タイプのスイートオレンジとはまた異なった健康メリットが期待されています。

アントシアニンは人体に様々な有益な働きかけを持つ可能性が報告されている成分ですが、その中でも代表的なものがロドプシンの再合成を促し、視機能低下を予防する・視機能を改善するというもの。ロドプシンは目の網膜に存在するタンパク質で、これが分解された際に発する電気信号が脳へと伝わることで私達は“映像”を認識しています。ロドプシンは分解された後に再合成され、再び分解して情報を伝える…ということを繰り返していますが、目の酷使や加齢などによって再合成が滞ると目の疲れやかすみ・ぼやける・視力低下などの原因ともなります。疲れ目など目の不調の原因はロドプシン再合成低下によるものだけではありませんが、この働きからアントシアニンは視機能サポーターとして注目されています。

その他にアントシアニンにはは血中脂肪量や血糖値の上昇を抑制する働きを持つ可能性があることが報告されており、アントシアニンが豊富な果物摂取している人は2型糖尿病のリスクが低いという調査結果もあります。このためアントシアニンの肥満や生活習慣病予防に対しての有効性も研究が行われ続けています。ブラッドオレンジは年間を通して常時販売されているものではありませんが、見かけたときは取り入れてみても良さそうですね。

目的別、オレンジのおすすめ食べ合わせ

オレンジの選び方・食べ方・注意点

コラーゲン生成・毛細血管保持などに関係するヘスペリジンは、オレンジの果皮や薄皮に多く含まれていると言われています。健康・美容効果を期待する場合であればじょうのう(薄皮)が薄めのオレンジを買って丸ごと食べたり、ミキサーにかけて摂取するのがおすすめ。また、東洋医学的にオレンジの果肉は「やや体を冷やす性質」がある食材に分類されています。冷えでお腹の調子を乱しやすい方などは摂取量に注意し、冷蔵庫で軽く冷やした程度のものを食べるようにして下さい。

美味しいオレンジの選び方・保存方法

オレンジを選ぶ際は果皮の色が鮮やかでツヤがあり、持った時にずっしりと重みのあるものを選ぶようにしましょう。果皮は薄いほうが良いのですが、触った時にしっかしりたハリがあることもポイント。形に凹凸がなくバランスが良いこと、果皮にある油胞を言われるブツブツが小さめで滑らかな手触りの物が良いとされています。ヘタがついていれば、ヘタが枯れきっていないかも見てみて下さい。果皮のキメが粗い・スポンジのようにフカフカとしているものは避けたほうが無難。

オレンジは水分量が多く、瑞々しさも味わいの一つと言える果物。保存する時には水分が抜けにくいよう、新聞紙に包んでからポリ袋に入れておくのがベスト。冷暗所もしくは冷蔵庫の野菜室に入れておきましょう。

オレンジの皮の活用方法

レモンなどと同じく、オレンジの芳香成分も果皮部分に多く含まれています。食べる時に剥いて捨ててしまうことが多い皮ですが、浴槽のお湯に浮かべて入浴剤代わりに利用したり、枕元に置いて心地よい香りを楽しむなどの活用もできます。入浴剤として利用した場合にはリラックスや血行促進効果が、枕元に置くとリラックスや安眠のサポートに役立つという説もあります。単に捨ててしまうのが勿体無いと思っている方は活用してみては如何でしょう。ただし肌に触れるような使用は敏感肌の方は注意が必要ですし、農薬などの関係から国産ものを使ったほうが無難。

そのほかにオレンジの果皮の活用法としては、お掃除に使うというものも。TV番組などでも生活の知恵としてよく紹介されていますね。オレンジの皮にはアルカリ性の汚れを中和して落ちやすくしてくれるクエン酸・油を分解する作用があるリモネンが含まれているため、シンクなどの水垢対策としても、油汚れにも使えるスグレモノ。オレンジの皮でだたゴシゴシと擦るのではなく、エタノールに浸しておいたり、お湯で煮出したりして利用される方が多いようです。洗剤で肌が荒れてしまう方や、小さいお子さんが触れる部分のお掃除などには地味に重宝するのではないでしょうか。

【参考元】