サヤインゲン(莢隠元)とその栄養成分・効果効能
|ちょい足し食材にも嬉しい、緑黄色野菜

莢隠元(サヤインゲン)イメージ

莢隠元(サヤインゲン)とは

煮物・和え物・炒め物・肉巻きと幅広く用いられている食材であり、鮮やかな緑色から彩りとしても重宝するサヤインゲン(莢隠元)。呼び名の通り成熟前のいんげん豆をさやごと収穫したもの。植物の分類としては同じくマメ科の一年草であるインゲン(学名Phaseolus vulgaris)として扱われますが、完熟後に隠元豆や金時豆を採るための“種実用種”ではなく、若さやごと食べる“軟莢種”という種類が使われています。豆用の種類(種実用種)を未熟な状態で採取しても固くて美味しくないのだとか。食材としてはサヤエンドウや枝豆などと同じく豆類ではなく“野菜”に分類され、ビタミンやカロテンなどを多く含むことが特徴とされています。

いんげん豆についてはこちら

インゲンのうち軟莢種に分類されるサヤインゲンですが、その品種数は数百種とかなり多いと言われています。植物としてはつるあり・つるなしの2つに大別されると言われていますが、消費者側としては形状による“丸さやいんげん系”と“平さやいんげん系”という区分のほうが分かりやすいですね。一般的に流通しているのは「どじょういんげん」とも呼ばれる丸さや系のもので、尺五寸やケンタッキーワンダー・サーベルいんげんなど代表的です。平さや系の品種としてはモロッコインゲンが有名で、こちらは絹さやに近いシャキシャキとした食感が特徴。そのほか国内ではほとんど流通していませんが海外には紫いんげん・黄色いんげんなど緑色以外のカラーのサヤインゲンもあるそうですよ。

サヤインゲンの旬は本来夏ですが、栽培方法によって時期をずらし現在では一年中収穫することが可能になり、一年中食べられるようになりました。1年に3度収穫出来ることから三度豆や四季豆とも呼ばれていますし、隠元ささげ、五月ささげ、ばか豆など地域で様々な呼び方をされています。呼び名や形状からササゲ(大角豆/学名Vigna unguiculata)と混同されやすい存在でもありますが、別属に分類されている全く別の植物。三度豆などとも呼ばれるサヤインゲンは流通時期が比較的長いですが、ササゲは6月~8月頃と季節職が強いのも特徴とされています。

またサヤインゲンは同じく未成熟状態で採取しサヤごと食べるというもので流通期間が長いことで、サヤエンドウとも混同されやすい存在。ポピュラーな品種からサヤエンドウ=平べったいもの・サヤインゲン=細長く丸みがあるものと認識されることが多いですが、前記の通りサヤインゲンにも“平さや系”と呼ばれる品種が存在しているため微妙な点も出てきます。全体的にサヤインゲンのほうが大型・長さがあり、平さや型の場合でもサヤエンドウよりも幅が広めで厚みがあります。そのほかサヤエンドウはスジがあるものがほとんどであるのに対し、サヤインゲンは約9割がスジなし(ストリングレス)というのも特徴と言えますね。

莢隠元(サヤインゲン)に含まれる栄養や成分に期待できる働き・巷で言われる効果効能の理由とは?

サヤインゲンには約90%が水分、100gあたり23kcalと低カロリーな野菜です。野菜と豆の中間の栄養価と言われる枝豆などよりも野菜寄り、というよりも風味・栄養価ともに野菜としての特徴が強い食材と言えます。ずば抜けて含有量が高い栄養成分はありませんが、ビタミン類やミネラル類などが幅広く含まれているため栄養バランスが気になる時のちょい足し食材として役立ってくれそうです。

さやいんげんはこんな方にオススメ

  • 栄養バランスが気になる
  • 疲労回復のサポートに
  • 骨粗鬆症の予防に
  • 貧血予防・軽減に
  • 夏バテ予防・軽減に
  • 便秘・むくみ対策として
  • ダイエットのサポートに
  • 抗酸化を心がけている方
  • 血圧が気になる方
  • 若々しさを維持したい
  • 風邪をひきやすい方に
  • 肌荒れ・肌老化予防に

下記ではこうしたお悩みがある方にさやいんげんが良いとされる理由や、選び方・食べ合わせなどをご紹介します。

疲労回復・栄養補給

サヤインゲンは栄養価としては豆・もしくは枝豆などの未成熟豆類よりも野菜に近い存在で、低カロリーである分タンパク質などの含有量は少なくなっています。それでもカロリーから見るとタンパク質は比較的多くブドウ糖の代謝を活発化する・タンパク質の吸収を助ける働きがあるリジン、クエン酸回路を潤滑に動かすとされるアスパラギン酸など疲労回復に関わるアミノ酸も含まれています。際立って多いものこそありませんが三大栄養素の代謝に関わるビタミンB1,B2,B6などのビタミンB群も含まれているため、代謝機能をサポートすることで疲労回復に役立ってくれるでしょう。

またサヤインゲンはビタミン・ミネラルを広く含む食材であり、カルシウムやマグネシウムなど日本人が不足しやすいとされるミネラルの補給にも適した存在。カルシウムが100gあたり48mgと比較的多く、カルシウムが骨に沈着するのを助けるビタミンK・骨の形成に関与するマンガンなどもバランスよく含まれているため骨粗鬆症予防にも繋がりますよ。疲労回復に関わる栄養成分のほかカリウムも含まれていますから、パリパリした食感とあっさりした味を活かして夏バテ予防や回復食として食べるにも適しています。

貧血・むくみ予防に

サヤインゲンは100gあたり0.7gと、野菜類として見ると鉄分を比較的多く含む部類に入ります。鉄分吸収・利用を助けるビタミンCや銅、鉄の利用を促進する酵素の原料となるモリブデンも含まれていますから、不足しがちな鉄分の補給に繋がります。際立って多いわけではありませんが造血に関わる葉酸や亜鉛なども含まれているため、造血に関わる栄養成分を広くカバーしてくれる食材と言えます。貧血予防用だけではなく、妊娠中の栄養補給としても役立つと考えられます。

野菜類の中で特に多いというほどではありませんが、サヤインゲンにはカリウムも含まれています。カリウムはナトリウムの排出を促すことで水分バランスを適正に保つ働きが期待されているミネラルのためむくみの予防・軽減が期待できますし、体液循環を正常に保つマグネシウム・血液循環をサポートしてくれる抗酸化ビタミンなど含まれているため体液循環・血行不良から起こるむくみ軽減にも繋がる可能性があります。

便秘予防・肥満予防

サヤインゲンは食物繊維を100gあたり2.4mg含んでいます。含まれている食物繊維の大半は不溶性食物繊維で、便の量を増やす・腸を刺激して蠕動運動を促す働きが期待できることから、便秘予防や改善サポートとしても役立ってくれるでしょう。不溶性食物繊維には便を固めてしまうというデメリットもありますが、、サヤインゲンは水分含有量の高い野菜で便を柔らかくする働きが期待できるビタミンCも含まれています。多量に摂取した場合は逆に便秘が悪化したりお腹の調子が乱れてしまう可能性もありますが、適量であれば便秘改善にも繋がる食材です。

また不溶性食物繊維は消化器官の中で水分を吸って膨らむ性質があるため、満腹感を早めに感じさせたり維持する働きも期待できます。サヤインゲンにはむくみ改善につながるカリウムなどのミネラルも含まれていますし、カロリーも100gあたり23kcalと低いのでダイエットのお供としても役立ってくれるでしょう。ダイット中に不足しやすい栄養成分を広く含む食材でもありますし、モリブデンによるデトックス効果・リジンやアスパラギン酸などのアミノ酸補給から代謝向上なども期待できますよ。

酸化・血流トラブル予防

サヤインゲンは便宜上“緑黄色野菜”とも呼ばれていますが、100gあたりのβ-カロテン量は520μgとされており厳密には「可食部100g当たりのカロテン含有量が600μg以上」という厚生労働省の基準には届いていない食材。このことからも分かるようにβ-カロテンが特別豊富と言える食材ではありませんが、同グラムで比較した場合はピーマンアスパラガスなどを上回るくらいのβ-カロテンが含まれていますから、β-カロテン補給や抗酸化作用として役立つと考えられます。

加えてサヤインゲンはβ-カロテン以外にもビタミンC・ビタミンEと抗酸化作用を持つビタミンを含んでいます。どれも豊富という程ではありませんが、ビタミンA(β-カロテン)・ビタミンE・ビタミンCは同時に取ると互いの働き・作用時間を高めてくれる働きが認められています。このためサヤインゲンも活性酸素によって引き起こされる酸化による体内外の機能低下・老化現象の予防に役立つと考えられます。抗酸化は過酸化脂質の生成を防ぐことで血栓や動脈硬化の予防にも繋がります。サヤインゲンにはナトリウム排出を促すことで血圧降下作用が期待できるカリウムも100gあたり260mg含まれていますから、抗酸化作用と合わせて高血圧予防にも役立ってくれるでしょう。

免疫力保持・風邪予防

β-カロテンは抗酸化物質として働く以外に、必要に応じて体内でビタミンAに変換されるビタミンA前駆体(プロビタミンA)でもあります。ビタミンAは皮膚や粘膜の保持に関わるビタミンのため、β-カロテンの摂取は呼吸器粘膜を修復・強化しウィルスの侵入を防ぐ事に繋がると考えられています。またビタミンCも抗ウイルス作用を持つインターフェロンの分泌促進作用や白血球の強化・自らが病原菌を攻撃する働きを持つなど免疫力と関係が深いと考えられているビタミン。

サヤインゲンのビタミンC含有量は100gあたり8mgと少なめですが、サヤに守られていることから調理時の損失が少ないと言われています。このためβ-カロテンもビタミンCもサヤインゲンだけで必要分を全て補えるというものではありませんが、補給源としては十分に役立ってくれると考えられます。代謝に関わる栄養素の補給は身体を整えることにも繋がりますから、サヤインゲンは風邪予防にも効果が期待されています。

美肌・アンチエイジング

特に豊富なものこそないものの、β-カロテン(ビタミンA)・ビタミンE・ビタミンCと抗酸化に関わるビタミン類を全て含む食材。加えて抗酸化酵素の構成成分であるモリブデンなどのミネラルも含まれているため、内側から抗酸化をサポートすることで活性酸素によるダメージから引き起こされるシワやたるみ・くすみなどの肌老化予防にも役立つと考えられています。アミノ酸のリジンには肌を整える働きや新陳代謝の向上効果も期待できますから、抗酸化成分と相乗して若々しい肌の保持に役立ってくれるでしょう。

そのほかβ-カロテンはビタミンAに変換されることで肌荒れや乾燥対策としても効果が期待できますし、抗酸化物質が血管・血液をきれいに保ってくれる・便秘予防などから肌のくすみ軽減にも繋がるでしょう。ただしビタミンCやビタミンEの含有量はサヤエンドウの方が多いので、抗酸化ビタミンの補給をメインに考える場合はサヤインゲンよりもサヤエンドウを選んだほうが良いでしょう。

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莢隠元(サヤインゲン)の選び方・食べ方・注意点

サヤインゲンを選ぶ際には、サヤ越しに見て豆の形がくっきりと出ていないもの・表面が鮮やかな濃い緑色をしていてハリとツヤのあるのものを選びます。豆の形が凹凸になって分かるものは育ち過ぎで固い可能性が高いと言われおり、逆に細長く真っ直ぐな形をしているものは柔らかさがあるのだとか。さやの両端がピンとしている・ヘタ部分の切り口が青々しいものほど新鮮です。

サヤインゲンは様々な料理に使える食材ですが、β-カロテンの吸収率を高めるためには少量の油と組み合わせて食べるのがオススメ。ドレッシングなどに油を使っても良いですし、肉巻きをはじめ煮物・炒め物などにしても肉類との相性が良い食材でもあります。茹でる場合は事前に塩もみしておくと色が綺麗に仕上がり、青っぽさも抜けると言われています。独特の青臭さが気が手という方はバターで炒めても食べやすくなりますよ。

効果アップが期待出来るさやいんげんの食べ合わせ

  • さやいんげん+ヨーグルト・ひじきほうれん草
    ⇒便秘の予防・解消に
  • さやいんげん+こんにゃく・たけのこ・ゼンマイ
    ⇒肥満予防に

莢隠元(サヤインゲン)の雑学色々

さやいんげんの歴史

インゲン豆は中央アメリカからペルーあたりにかけてのエリアが原産と考えられており、南北アメリカ大陸では古くから作物として栽培が行われていたことが分かっています。ネイティブアメリカンの間でコンパニオンプランツとして共生栽培が行われていた“3姉妹”と呼ばれていた作物としてトウモロコシカボチャ・豆が挙げられていますが、この豆というのもインゲン系の豆であったのではないかと考えられています。

15~16世紀にはスペイン人によってインゲンはヨーロッパへと伝えられ、育てやすい植物として広く栽培が行われるようになります。16世紀末にはヨーロッパから中国へ、17世紀頃には中国から日本にもインゲン豆が伝えられたと考えられています。インゲン豆の伝播としては1654年に明国(中国)の僧侶で、日本三禅宗のひとつ黄檗宗の開祖として有名な隠元禅師(インゲン)が長崎に来た際に持ち込んだという伝承がよく知られていますね。「いんげんまめ」という呼び名も呼び名も隠元禅師がもたらした豆であることにちなんで命名されています。

この段階で隠元豆は現代で言う“種実用種”としての扱い、つまり完熟した豆を食べるのみであったと考えられています。いつ頃から食べ始めたのかは定かではありませんが、江戸時代には若サヤ(サヤエンドウ)の状態でもインゲンは食べられていたと考えられています。文献でも江戸時代中期に編纂された『和漢三才図会』に若い豆を食べるという記述が見られますし、江戸の節約おかず番付『日々徳用倹約料理角力取組』の中でも“いんげんごまびたし”というサヤインゲンの胡麻和えレシピが紹介されています。

こうしたことから軟莢種は江戸時代末期に渡来していた・江戸時代に伝わったものが分化したという説もありますが、現在全国で栽培されているサヤインゲン(軟莢種)のほとんどは明治になって政府が欧米から取り寄せたもの品種がルーツなのだそう。導入された品種を元に品種改良が行われ、現在は様々なタイプのサヤインゲンが作られています。ちなみに平さやいんげんやサーベルいんげんは1980年代に導入されたそうです。