ユリ根の特徴と栄養成分・期待できる健康メリットとは

食べ物辞典:ユリ根

ホクホクした食感と、ほんのりした甘さと微かな苦味があるユリ根。和食のイメージが強いですが、ジャガイモのような感覚で、様々なレシピに活用できます。栄養面では、野菜類の中でもトップクラスと言えるほど水溶性食物繊維が多いことが特徴。古くは鎮静や抗不安効果を持つ生薬として歴史もあります。そんなユリ根に含まれている栄養成分、期待される健康メリットを紹介します。

百合根(ゆり根)ののイメージ画像:食べ物辞典トップ用

和名:百合根/ユリ根
英名:lily bulb
学名:Lilium lancifoliumほか

ユリ根とは

ユリ根のプロフイール

ホクホクとした食感と、割りと淡白ながらホッコリとした優しい甘さが魅力のゆり根。ネットなどを使った「お取り寄せ」もしやすくなりましたが、高級和食食材と称されることもあります。生状態だとおがくず付きで売られていて、下ごしらえや調理も難しそうなイメージも持たれがち。家庭の食卓に馴染み深いとまではいかない存在かもしれません。

地域によっては、茶碗蒸しや煮物にさり気なく入っているアレ。というくらいのイメージで、そもそもレシピが思いつかないという方もいらっしゃるでしょう。ですが、実はユリ根はアルミホイルで包み焼きにしたり、マッシュしたりと、ほぼジャガイモと同じ感覚で使うことが出来る野菜。バター醤油で炒めたり、大きめであれば天ぷら、小さめのものならかき揚げに使っても美味しいですよ。

そんなユリ根は、読んで字の如くユリの根、厳密に言えばユリ科ユリ属の植物の鱗茎(球根)のことを指します。広義での“ユリ根”はユリ属に含まれる植物全ての鱗茎ですが、食用に使われているのは数種類程度。普段見かける・お花屋さんで売られているような観賞用の“百合”の鱗茎は、毒があったり灰汁が強かったりと食べられないものがほとんどです[1]。

食用ユリ根はコオニユリ(小鬼百合)・オニユリ(鬼百合)の2種の系統が多く、北海道で作られている「白銀」と呼ばれるコオニユリを交配親とする品種の流通量が多くなっています。そのほかヤマユリ・カノコユリも食用とはされていますが、流通量は少なく滅多にお見かけしません。

ユリ根の主産地は北海道。ユリ根の国内総生産量のうち98%以上は北海道で作られています。とは言え、北海道民はたくさんユリ根を食べているわけではなく、購入・消費は本州、特に関西エリアが主。ユリ根の収穫時期は本州では8月頃から、北海道では10月以降となっています。ただし「ユリ根の旬の時期」となると、収穫よりも一ヶ月程度遅い時期になります。これは、ユリ根もカボチャなどと同様に、収穫してから1~3ヶ月程度熟成期間があった方がデンプンが糖に変化して甘味が増す性質があるためです。

また、ユリ根は球種から始めると収穫までに約6年と、栽培から収穫まで時間がかかる食材。連作に弱く毎年植え替える、デリケートなため全て手で収穫するなど、栽培にも時間と労力がかかります。こうした事も、ユリ根が高級食材として扱われる所以でしょう。鱗片が重なっていることから“子孫繁栄”や“長寿(年を重ねる)”意味を持つ縁起物[1]にも数えられていますから、お正月頃には需要も高くなり高値に。農家さん直送など人気のあるお店では売り切れ・販売終了も多いですが、旬も終わりに近づく1月中旬位から少し価格は下がります。

ユリ根の選び方・保存方法

ユリ根に目立った傷・黒ずみがないものを選びます。黒っぽいものは苦味が強いこともあるため、色が白く綺麗なものを選ぶと良いでしょう。寝かせてから出荷されることがほとんどなので瑞々しさは気にしなくても良いですが、全体的にふっくらと丸みがあってハリを感じられるものを選ぶと良いでしょう。

保存はおがくずに埋めたまま冷暗所に置いておくのが一番ですが、おがくずがない場合は乾いた新聞紙で包んだものを袋に入れ冷蔵庫で保存してください。冷蔵庫での保存は大体一ヶ月程度保つと言われていますが、おがくずなしのものはもう少し早めに使い切ったほうが無難です。鱗片をばらしてあるものは痛みが早いため、固めに茹でるか蒸すかしたものを1つずつラップで包んで冷凍しましょう。

ユリ根の栄養成分・効果について

栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

ゆり根は良質のでんぷん(炭水化物)が主成分で、ビタミン・ミネラル・食物繊維など幅広い栄養素をしっかり含む食材と言えます。食物繊維、特に水溶性食物を多く含んでいることも特徴。ミネラル類ではカリウムが多く、ビタミン類では葉酸を多く含んでいることから妊娠中の栄養源としても注目されています。

ただし、生100gあたりのカロリーは119kcalとやや高め。
炭水化物量も少なくありませんので、野菜というよりは主食・芋類感覚で取り入れると無難です。

ゆり根の天ぷらイメージ

ユリ根の効果効能、その根拠・理由とは?

栄養補給源として優秀

ユリ根はエネルギー源となる炭水化物が多く、ジャガイモよりも多くのたんばく質を含んでいます。ミネラル類も豊富な部類で、ビタミン類も幅広く含んでいます。現代のように季節を問わず様々な食材を摂取できなかった昔の人々にとっては、冬場の栄養補給源であり、滋養強壮に高い効果がある食材として大切にされてきました。

ユリ根はミネラル類の中でも生100gあたり740mgとカリウムが豊富。それ以外に、亜鉛・鉄分・マグネシウム。も比較的多く含まれています。不足しがちなミネラル補給源として役立ってくれるでしょう。ミネラルの中ではカルシウムの含有量が少ないので、牛乳と合わせてポタージュにするなどカルシウムと組み合わせて摂取するとバランスよくミネラル補給が出来ます。

またビタミンC含有量は生100gあたり9mgと多くはありませんが、ゆり根のビタミンCもジャガイモなどと同様に熱に強い性質があります。このため、ユリ根”茹で“100gでもビタミンC含有量は8mgとほとんど減少しません。使い方だけではなく栄養面としてもジャガイモと似た印象がありますね。

便秘対策・腸内フローラサポート

ユリ根は生100gあたりの食物繊維総量が5.4gと、ゴボウに迫るほど食物繊維が豊富な食材でもあります。加えて、含まれている食物繊維は100gあたり不溶性食物繊維2.1g、水溶性食物繊維が3.3g。水溶性食物繊維のほうが多く含まれているという、野菜としては珍しいタイプでもあります。100gあたりの水溶性食物繊維量としてはゴボウよりも上、乾物やスパイスなどを除けば食品類全体の中でもトップクラス。

ユリ根に含まれているグルコマンナンなどの水溶性食物繊維[2]は、水に溶けてゲル化することで便の硬さを調節したり、腸内の有益なバクテリア(善玉菌)の餌になることで腸内フローラのバランスを整える働きがあります[3]。不溶性食物繊維も便の量を増やす・腸を刺激して蠕動運動を整えるという、便秘予防効果があります。合わせて便秘予防や腸内環境を整える手助けをしてくれるでしょう。

カリウム補給・むくみ予防に

ミネラル類が豊富なユリ根。特にカリウム量は100gあたり740mgと青果(野菜・果物)類の中ではトップクラスで、同グラム比較であればスイカの6倍以上・キュウリ冬瓜の3倍以上のカリウムが含まれています。カリウムは水溶性なので調理過程で減少してしまいますが、ユリ根の場合は茹でた状態でも100gあたり640mgと葉野菜類ほど著しくカリウムが流出しないことも特徴と言えます。

カリウムはナトリウムと競合して細胞内外の浸透圧を調整しているミネラルであり、電解質の一つでもあります。塩分の摂り過ぎなどで血中のナトリウム濃度が高まった場合は、余剰ナトリウムを排出させるのもカリウムの役目。カリウムが不足している場合には血中ナトリウム濃度を正常に保つために水分が取り入れられ、血液量が増えることで高血圧やむくみを引き起こす原因となります。カリウムを補給することでナトリウム濃度を安定させると、水分の排出を促すことにも繋がるため、むくみの緩和に役立つと考えられています。

Sponsored Link

血糖値対策・ダイエットサポートにも

ユリ根は糖質量が多くカロリーも高めのため、ダイエットには不向きな食材と思われがち。しかしグルコマンナンなどの水溶性食物繊維類は、水分に溶けてゲル化することで、脂質吸収を抑えたり、糖質(炭水化物)の消化・吸収スピードをゆっくりにする働きもあります[3]。この働きから、水溶性食物繊維は、血糖値の急激な上昇を抑えてくれる成分としても注目されています。

血糖値が急激に上昇すると、血糖値を安定させるためにインスリンが分泌されます。インスリンは血糖値を安定させるために血中の糖を脂肪として蓄える働きがあるため、血糖値を急激に上げないことはダイエットにも繋がると考えられていますよ。加えて食物繊維は消化期間の中で水分と合体して膨らみ、満腹感を維持したり過剰な食欲を抑えてくれる働きもあります。

ユリ根にはむくみ改善に役立つカリウムや、ダイエット中に不足しやすいミネラル・ビタミンB群も含まれています。ダイエットのサポーターとしても役立ってくれるでしょう。ただし、通常の食事+ユリ根を大量に摂取してしまうと、逆に肥満の原因になる可能性もあります。ダイエットにも役立つからと食べすぎないように注意しましょう。

高血圧・生活習慣病予防に

水溶性食物繊維は脂質の消化吸収をブロックし、便として排出させる働きがあります。このため、水溶性食物繊維は血中コレステロール・遊離コレステロールの低下効果が期待されています[3]。総コレステロール・悪玉(LDL)コレステロール値が気になる方のサポートにも役立ちます。水溶性食物繊維には糖質の消化吸収速度を低下させ、血糖値の上昇を抑える働きもあります。血糖値が気になる方も、適度に取り入れれば健康維持のサポートに活用できるでしょう。

ユリ根には、こうした働きを持つ水溶性食物繊維が豊富。加えて、ユリ根はナトリウムの排出を促すことで血圧を正常に保持するカリウムも豊富。このため、ユリ根は動脈硬化や糖尿病などの生活習慣病予防をサポートしてくれる食材としても注目されています。血圧や血糖値・コレステロールが気になる方の、食事改善の助っ人にもなってくれそうでうね。

倦怠感やメンタルサポートにも期待

中国医学の中で、ユリ根は鎮静作用を持つ生薬として、煩躁・動悸・神経過敏・不安・不眠などのトラブルに利用されてきた食材でもあります。ユリ根にはサポニン(ステロイド・サポニン)、フェノール(主にフラボノイド)、アルカロイドが含まれていることが認められています。こうした成分がコリンエステラーゼ阻害やモノアミンオキシダーゼ阻害作用を発揮し、精神を安定させるのではないか[4]と考えられています。

食材としてユリ根を適量食べた場合の有効性や作用秩序は分かっていませんが、伝統的な利用もあり、現在でもユリ根はメンタル面でのサポートに役立つ可能性がある食材に数えられています。また、カリウムやマグネシウムの不足は疲労感や倦怠感などの原因にもなります。ゆり根には同様に、不足することで様々な不調を引き起こす鉄分や亜鉛なども少しずつ含まれています。栄養バランスを整える面からも、メンタルバランスを健康に保つ手助けが期待できるでしょう。

妊活・妊娠中の栄養補給としても

葉酸は細胞を作るために必要な核酸の合成、赤血球の形成などに利用されるビタミンB群の1つ。胎児の細胞分裂にも関わるため神経管閉鎖障害の発生リスクを減少する栄養素としても、ママの貧血予防としても必要。このため、妊娠中・授乳中は葉酸の推奨摂取量が上乗せされています。妊娠の準備として、妊活サプリなどにも葉酸は配合されています。

ユリ根は葉酸が生100gあたり77μgと、比較的多く含まれています。葉野菜やアボカドなど、ユリ根よりも多く葉酸を含む食材も多くありますが、ユリ根が芋類に近い食材であることを考えれば豊富と言っても良いでしょう。葉酸以外にも、ユリ根には女性ホルモンのバランスを整える働きのある亜鉛やビタミンB6なども含まれています。妊活中や妊娠中の、ちょっとした贅沢として取り入れると良いでしょう。

また、ユリ根は食物繊維やカリウムも豊富。妊娠中に起こりやすい便秘・むくみ予防にも一役買ってくれます。妊娠中は便秘薬(下剤)を控えたい時期。食物繊維、特に便を柔らかく保つ働きのある水溶性食物繊維が多い、ユリ根やアーティーチョークなどの野菜は重宝するのではないでしょうか。

目的別、ユリ根のおすすめ食べ合わせ

  • ゆり根+ナツメ・ハスの実
    ⇒不眠の解消に
  • ゆり根+牛乳・鶏卵・ハチミツ
    ⇒イライラ対策に

ユリ根の食べ方・注意点

ゆり根は鱗片を一枚ずつ剥がして使うのがオーソドックス。
バラした鱗片を調理する際には、意外と火の通りが早いため注意。茹で過ぎると溶けてしまい、ホクホクではなくベタッとした食感になってしまいます。沸騰したお湯で茹でる場合は、2~3分程度で火が通ります。レンジを使用する場合は場合は1分ずつひっくり返しながら様子を見るようにしましょう。茹ですぎてしまったときは、マッシュして使うのがオススメです。

ユリ根の注意点

ユリ根は食物繊維を豊富に含む食材のため、体調や摂取量によっては腸内ガス・腹部膨満感が起こる、お腹がゆるくなる場合があります。お腹が弱い方は、一度に大量に摂取せず、少しずつ食べるようにしてください。

極稀に、ユリ根に触れることでアレルギー反応による痒みが出ることがあります。

【参考元】