百合根(ゆりね)とその栄養成分・効果効能
|食物繊維補給や妊婦さんにも嬉しい滋養強壮食材?!

食べ物辞典:ユリ根

ホクホクした食感と、ほんのりした甘さと微かな苦味が美味しい百合根。高級な和食やお正月料理に使われるイメージが強いですが、ジャガイモのような感覚でスープやフライなど洋食系アレンジも出来ますよ。栄養面では葉酸が多く含まれていること、野菜類の中でもトップクラスと言えるほど水溶性食物繊維が多いことが特徴。また古くは生薬として利用されてきた歴史もあり、現代でもストレス社会のサポートに役立つのではないかと考えられていますよ。そんなユリ根について、歴史や栄養効果を詳しくご紹介します。

百合根(ゆり根)ののイメージ画像:食べ物辞典トップ用

和名:百合根(ゆりね)
英語:lily bulb

百合根(ゆりね)のプロフイール

ユリ根とは

ホクホクとした食感と、割りと淡白ながらホッコリとした優しい甘さが魅力のゆり根。近年は北海道の農家さんが妊婦さん向けのキャンペーンを行ったり、ネットでお取り寄せなどもしやすくなりましたが、家庭の食卓に馴染み深いとまではいかない存在かもしれません。高級和食やおせち料理・薬膳料理などでよく見かける食材であることから料理するのが難しそうというイメージがある方・レシピが思いつかないなどもあるかもしれませんが、アルミホイルで包み焼きにしたり、裏ごししてマッシュしたりとほぼジャガイモと同じ感覚で使うことが出来ます。

百合根(ユリネ)は読んで字のごとく、ユリ科ユリ属の植物の鱗茎(球根)です。広義ではユリ属全体の球根を指しますが、普段見かけるような観賞用品種の鱗茎は灰汁が多くて苦く、食べられたものではありません。ユリ類の中でも鱗茎が美味しく食べられるのはほんの数種類程度。食用として販売されているものはコオニユリ(小鬼百合)・オニユリ(鬼百合)の2種の系統が多く、北海道で作られている「白銀」と呼ばれるコオニユリを交配親とする品種の流通量が多くなっています。そのほかヤマユリ・カノコユリも食用に適しているようですが、ほとんど見かけません。

ゆり根の主産地は北海道。しかし北海道での消費量はさほど高くなく、本州、特に関西エリアでの消費が主。京都でも百合根の生産も行われていますし、京料理にもよく利用されていますね。収穫時期は本州では8月頃から、北海道では10月頃からとなっています。ただし旬に関してはカボチャなどと同様にに収穫してから1~3ヶ月程度熟成期間があった方がデンプンが糖に変化して甘味が増すため、10月~2月くらいが最も流通量が多く美味しく食べられる時期と言えるでしょう。

食用ゆりは栽培から収穫まで非常に時間が掛かり、球種から始めると植え付けまで2~3年・植え付けてから2~3年と言われ、収穫までには早くとも4年(平均6年)はかかると言われています。連作が出来ず毎年畑を変えること・一度植えた畑は7年程度空ける必要があること・非常にデリケートで全て手で収穫するなど、栽培に時間と労力がかかりますから高級食材とされるのも納得。ただしお正月用という需要が高まるイベントが終了し、旬も終わりに近づく1月中旬位からは価格が下がります。農家さん直送など人気のあるお店では売り切れ・販売終了も多いですが、普段使い用や冷凍保存用に狙ってみても良いかもしれません。

ユリ根の歴史

百合根を形成するユリは北半球アジアを中心に世界中に分布していますが、その鱗茎を食べるという文化があるのは日本と中国だけ中国では薬物書『神農本草書』の中品にも“百合(ビャクゴウ)”として収録されていることから、約2000年前には既に薬効ある食材として認識されていたと考えられます。ちなみに現在でも現在でも中国伝統医学(漢方)ではユリ根を乾燥させた百合を滋養強壮・鎮咳・去痰・利尿などに利用しています。古くからイライラなどの症状に百合をよく処方したことから、ヒステリーを「百合病」と呼ぶこともあるそう。

日本はいつ頃からユリ根が薬用・食用として利用されていたのか定かではありませんが、藤原京時代(西暦700年頃)には祭事に用いられていたという説もあります。奈良時代前後には中国から様々な生薬が伝わっていましたし、万葉集』や『本草和名』にも名前が記載されていることなどから、平安時代には栄養(滋養)に優れた薬用食材として知られていたのではないかという説が有力。後の江戸時代になると栽培がなされるようになり、苦味が少なく食べやすい「オニユリ」も記録に登場するようになります。

ちなみに江戸期の書物には「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」という表現も登場するようになります。この言葉は現在美しい女性を表す言葉として見られますが、元々は女性の不調とそれに用いる生薬を例えた言葉なのだとか。武田漢方さんによれば、気が立ってイライラしている人には弛緩鎮痙剤の芍薬、すぐ座ってしまうような疲れやすい女性には駆瘀血剤の牡丹皮、ユリの花のように頼りない精神状態の女性には精神安定効果のある百合を飲ませよ、という意味なのだそうです。

日本では江戸時代頃まで、ユリの栽培は観賞用としてよりも、食用や薬用として利用する百合根の確保が主な目的であったと考えられています。しかし、医師シーボルトや植物学者ツンベルクらが欧米に紹介したことで「日本の百合は素晴らしい花だ」と称賛され、明治になると観賞用としての需要が高まったそう。大正時代には北海道での栽培も行われるようになり、冷涼な気候が百合根の栽培に適していたこともあって現在ユリ根の国内生産の9割以上は北海道となっています。生産者と近しくない道民は、あまりユリ根を食べませんが。

百合根(ゆりね)の栄養成分・効果について

栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

ゆり根は良質のでんぷん(炭水化物)が主成分で、ビタミン・ミネラル・食物繊維など幅広い栄養素をしっかり含む食材と言えます。ミネラルではカリウムが多く、ビタミン類では葉酸を多く含んでいることから妊娠中の栄養源としても注目されていますよ。ただし100gあたり125kcalとカロリーはやや高めなので、野菜というよりは穀物・芋類感覚で取り入れると良いでしょう。

ゆり根の天ぷらイメージ

ユリ根の効果効能、その根拠・理由とは?

栄養補給源として優秀

ユリ根はエネルギー源となる炭水化物が多く、ジャガイモよりも多くのたんばく質を含んでいます。ビタミン類やミネラル類も豊富な部類のため、現代のように季節を問わず様々な食材を取れなかった昔の人々にとっては冬場の栄養補給源であり、滋養強壮に高い効果がある食材として大切にされてきました。

ビタミン類は葉酸以外際立って多いものはありませんが、ミネラル類は豊富。カリウムが際立って多いですが、それ以外に亜鉛・鉄分・マグネシウムの補給にも役立ちます。現代では冬場でも様々な食材が流通していますが、不足しがちなミネラル補給源として超過されているんですね。ミネラルの中ではカルシウムの含有量が少ないので、牛乳と合わせてポタージュにするなどカルシウムと組み合わせて摂取するとバランスよくミネラル補給が出来ます。

またビタミンC含有量は生100gあたり9mgと多くはありませんが、ゆり根のビタミンCもじゃがいもなどと同様に熱に強い性質を持っており茹で100gでもビタミンC含有量は8mgとほとんど減少しません。このため調理後の吸収を考えると補給源としてしっかりと機能してくれるでしょう。使い方だけではなく栄養面としてもジャガイモと似た印象がありますね。

むくみ・倦怠感の軽減にも期待

ミネラル類が豊富なユリ根。特にカリウム量は100gあたり740mgと青果(野菜・果物)類の中ではトップクラスで、同グラム比較であればスイカの6倍以上・キュウリ冬瓜の3倍以上のカリウムが含まれています。カリウムは水溶性なので調理過程で減少してしまいますが、ユリ根の場合は茹でた状態でも100gあたり640mgと葉野菜類ほど著しくカリウムが流出しないことも特徴と言えます。

カリウムはナトリウムと競合して細胞内外の浸透圧を調整しているミネラルであり、電解質の一つでもあります。塩分の摂り過ぎなどで血中のナトリウム濃度が高まった場合は、余剰ナトリウムを排出させるのもカリウムの役目。カリウムが不足している場合には血中ナトリウム濃度を正常に保つために水分が取り入れられ、血液量が増えることで高血圧やむくみを引き起こす原因となります。カリウムを補給することでナトリウム濃度を安定させると、水分の排出を促すことにも繋がるため、むくみの緩和に役立つと考えられています。

また、カリウムやマグネシウムの不足は疲労感や倦怠感などの原因にもなります。ゆり根には同様に不足することで様々な不調を引き起こす鉄分や亜鉛なども少しずつ含まれていますし、エネルギー源となる炭水化物・糖質の代謝をサポートするビタミンB1を筆頭としたビタミンB群も含まれています。栄養バランスがしっかりと整うことで倦怠感の予防や軽減に繋がつ可能性もあるでしょう。古くは気や体液を補う・情緒不安定さを和らげると言われていた理由としても、栄養の欠乏症状が改善されるという意味もあると考えられます。

便秘対策・腸内フローラサポート

ユリ根は100gあたりの食物繊維総量が5.4gと、ゴボウに迫るほど食物繊維が豊富な食材。かつ100gの食物繊維の内訳が不溶性食物繊維2.1gに対しで、水溶性食物繊維が3.3gと多いことも特徴です。ちなみに100gあたりの水溶性食物繊維量としてはゴボウよりも上、乾物やスパイスなどを除けば食品の中でもトップクラス。ユリ根に含まれているグルコマンナンなどの水溶性食物繊維は、便の硬さを調節したり、腸内の善玉菌の餌になることで腸内フローラのバランスを整える働きがあります。ビタミンCにも同様の働きが期待されていますから、合わせて便秘予防や腸内環境を整える手助けをしてくれるでしょう。

加えてジャガイモなどと同じく、ユリ根に含まれているテンプンの一部も加熱料理後に冷ますことで「難消化性でんぷん(レジスタントスターチ)」に変化します。レジスタントスターチは不溶性食物繊維に分類されますが、腸内環境を整える働きも期待されていますよ。ただしレジスントスターチは温め直すとデンプンに戻ってしまいますので、レジスタントスターチに効果も期待する場合には和え物・軽く蒸して冷やしたものをトッピング感覚で使う・はちみつ漬けにするなど“冷えたまま”食べた方が効果的。

高血圧・生活習慣病予防に

ユリ根に含まれている食物繊維の一種であるグルコマンナンはコレステロールや胆汁酸を吸着し、便として排出させる働きを持つことが報告されています。この働きから悪玉(LDL)コレステロールの減少が期待されていますし、水溶性食物繊維類は水に溶けてゲル化することで糖の吸収スピードをゆっくりにし血糖値の上昇を抑える働きもあります。また、レジスタントスターチも血糖値の上昇を抑制する働きが報告されています。

こうした働きを持つ水溶性食物繊維類を含むことから、ユリ根は動脈硬化や糖尿病などの生活習慣病予防をサポートしてくれる食材としても注目されています。ユリ根はナトリウムの排出を促すことで血圧を正常に保持するカリウムも豊富に含んでいますし、グルコマンナンもナトリウムを吸着して排出させる働きが期待されていますから、血圧が気になる方のお供としても適しているでしょう。

ダイエットサポートにも

ユリ根は糖質量が多くカロリーも高めのため、ダイエットには不向きな食材と思われがち。しかしグルコマンナンやレジスタントスターチは消化スピードを抑えることで、血糖値の急激な上昇を抑える働きが期待されています。血糖値が急激に上昇すると、血糖値を安定させるためにインスリンが分泌されます。インスリンは血糖値を安定させるために血中の糖を脂肪として蓄える働きがあるため、血糖値を急激に上げないことはダイエットにも繋がると考えられていますよ。

加えて食物繊維は消化期間の中で水分と合体して膨らみ、満腹感を維持したり過剰な食欲を抑えてくれる働きもあります。ユリ根にはむくみ改善に役立つカリウムや、ダイエット中に不足しやすいミネラル・ビタミンB群も含まれていますのでダイエットのサポーターとしても役立ってくれるでしょう。ただしユリ根は100gあたり125kcalと低カロリーとは言えない食材。通常の食事に加えて大量に摂取してしまうと、逆に肥満の原因となってしまう可能性もあります。ダイエットにも役立つからと食べすぎないように注意しましょう。

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精神安定・不眠軽減にも期待…?

百合根は古くから鎮静作用を持つ生薬として、煩躁・動悸・神経過敏・不安・不眠などのトラブルに利用されてきた食材でもあります。作用秩序や有効性については分かっていませんが、現在でもユリ根に微妙のアルカロイド類が含まれていることが分かっており、アルカロイド類が神経の昂ぶりを鎮めているのではないかと考えられています。

伝統的な利用もあり、現代でもユリ根は鎮静作用によって気持ちを落ち着けて精神を安定させたり、ストレスに起因する胃痛などの肉体症状・自律神経失調症などの軽減に取り入れられることもあります。生理前(PMS)や更年期障害などホルモンバランスの乱れから起こるイライラや情緒不安定に役立つという説も。効能についての根拠や実証はありませんが、ユリ根は高級食材。精神的な疲労感を感じた時には、自分へのご褒美として取り入れてみても良いかもしれませんね。

妊活・妊娠中の栄養補給としても

ゆり根には胎児の細胞分裂などに関わり、妊娠中の女性に摂取が推奨されている葉酸が100gあたり77μgと多く含まれています。また妊娠前から葉酸を摂ることで先天異常のリスクを低下させる・着床率(妊娠する確立)が高くなるという報告もなされており、妊活中であれば男女共にしっかりと摂取したほうが良いとも言われています。ゆり根には葉酸以外にも女性ホルモンのバランスを整える働きのある亜鉛やビタミンB6なども含まれていますから、妊活サポートにも嬉しいですね。

また妊娠中に起こりやすい便秘改善に役立つ食物繊維・むくみ改善に役立つカリウムの補給源としても役立ちます。特に妊娠中は便秘薬(下剤)を使いたくない状態ですから、食物繊維、特に便を柔らかく保ってくれる働きのある水溶性食物繊維が多いゆり根やアーティーチョークなどの野菜は重宝するのではないでしょうか。

目的別、ユリ根のおすすめ食べ合わせ

  • ゆり根+ナツメ・ハスの実
    ⇒不眠の解消に
  • ゆり根+牛乳・鶏卵・ハチミツ
    ⇒イライラ対策に

百合根(ゆりね)の選び方・食べ方・注意点

ゆり根は鱗片を一枚ずつ剥がして使うのが基本ですが、ホイル焼きなど“蒸す”料理法であれば丸ごと使うことも出来ますよ。茹でて利用する場合は意外と火の通りが早いため注意。茹で過ぎると溶けてしまい、ホクホクではなくベタッとした食感になってしまいます。沸騰したお湯で茹でる場合は、2~3分程度で火が通りますよ。レンジを使用する場合は場合は1分ずつひっくり返しながら様子を見るようにしましょう。

ユリ根の選び方・保存方法

ユリ根に目立った傷・黒ずみがないものを選びます。黒っぽいものは苦味が強いこともあるため注意。寝かせてから出荷されることがほとんどなので瑞々しさは気にしなくても良いですが、全体的にふっくらと丸みがあってハリを感じられるものを選ぶと良いでしょう。

保存はおがくずに埋めたまま冷暗所での保管が一番ですが、おがくずがない場合は乾いた新聞紙で包んだものを袋に入れ冷蔵庫で保存してください。冷蔵庫での保存は大体一ヶ月程度保つと言われていますが、おがくずなしのものはもう少し早めに使い切ったほうが無難です。鱗片をばらしてあるものは痛みが早いため、固めに茹でるか蒸すかしたものを1つずつラップで包んで冷凍しましょう。

参考元:食物繊維のチカラLily Bulb sources, health benefits, nutrients, uses and constituents