ぎんなん(銀杏/ギンナン)とその栄養成分・効果効能
|滋養強壮? 食べ過ぎは銀杏中毒の危険も…

食べ物辞典:銀杏

秋の味覚の一つでもある銀杏(ギンナン)。同じ漢字が使われているとおり“イチョウ(銀杏)”の木の種子で、モチモチとした食感と少し苦味のある風味が特徴。そのまま炒って食べるか、綺麗な色合いを生かして彩りとして添えられることが多いですが、和食にも洋食にも取り入れやすい食材です。古くは薬代わりとしても使われてきた歴史があり、滋養強壮に役立つ食材でもありますよ。しかし若干の毒性があり、大量に食べると中毒症状を起こす可能性も指摘されています。そんな銀杏の栄養効果や食べる際の注意点について詳しくご紹介します。

銀杏(ぎんなん)のイメージ画像:食べ物辞典トップ用

和名:銀杏(ギンナン)
英語:ginkgo nuts

銀杏(ぎんなん)のプロフイール

銀杏とは

ギンナンはもちもちした食感と、ほろ苦くてちょっぴり甘い味が特徴的。独特の苦味・渋みがありますので好き嫌いは分かれますが「炒り銀杏を食べるのが秋の楽しみ」という方も少なくないでしょう。漢字で銀杏と書くように“イチョウ(銀杏)”の木の種子で、食べる部分は仁(胚乳種)と呼ばれているところです。通年手に入るようになっていますが、旬は10~11月頃。秋を感じさせる季節感のある食材でもありますね。

秋には近くの公園などへ“銀杏拾い”に行く方もいらっしゃいますが、銀杏拾いをしたことがある方やイチョウの木が近くにあった方は御存知の通り、銀杏と言えば腐敗臭のような独特の異臭を放つことも知られています。この香りは食用部位(仁)ではなく種子を覆う果肉状の部分から発せられているので、実際食べる場合はあまり関係ありません。しかし臭いだけではなく、強アルカリ性でかぶれなどの皮膚炎を引き起こす原因物質でもあるため、拾う場合は注意が必要です。

ちなみにギンナンがなるイチョウの木は日本・中国・台湾など東アジアの一部にしか生育しておらず、当然ギンナンを食用とする地域も限られています。イチョウは1科1属1種の樹木ですから全国で銀杏を拾う方がいらっしゃる通りどの実でも食べられますが、食用に適した品種というものがあります。8月末頃から出荷される早生品種では喜平や金兵衛、中生では久寿や栄神、晩生品種では藤九郎などが代表的です。ギンナンの見た目としては「茶碗蒸し」もしくは「炊き込みご飯」に入っている黄色っぽい実をイメージしますが、採れたて・殻を割った直後であれは鮮やかな半透明の翡翠色をしています。

そのまま食べる・彩りとして添えられることが多いですが、基本的には枝豆などと同じような感覚で炒め物、かき揚げやつくね・がんもどきの具、パンに練り込むなど様々な料理に利用できます。アヒージョ・パエリア・グラタンなど洋食に取り入れる方も多いですし、どちらかと言えば濃い目の味付けのほうが苦手な方でも食べやすいでしょう。大量に食べると中毒症状を起こす場合もあるので注意が必要ですが、滋養強壮に良いとも言われている食材でもあります。旬の時期には是非、適度な量を取り入れてみて下さい。

銀杏の歴史

イチョウは中生代から新生代にかけて世界的に繁殖していた古い植物の一つであり、生きた化石とも呼ばれています。古くはヨーロッパなどでもイチョウ綱の植物が自生していたと考えられますが既に絶滅してしまい、私達の見慣れているイチョウが唯一現存する種となっています。イチョウの原産地はハッキリ分かっていませんが、11世紀に現在の中国安徽省宣城市付近に自生していたものを開封に移植し、そこから人工的に広められていったのではないかと考えられています。

中国では14世紀ころにはギンナンが食用として広く食べられるようになり、また15世紀事には薬効や毒性があることも知られていたと考えられています。文章としては『紹興本草』や『日用本草』に記述が見られるそう。また日本でも使われていた『本草綱目』では銀杏、白果、鴨脚子として紹介されており、咳・喘・痰・帯下(おりもの)などに良いと記されています。

日本へイチョウが伝わった時期もハッキリしていませんが、鎌倉~室町時代に禅宗とともに薬として伝わったという説が主流となっています。確実性が高いものの中で最も古い記録は室町時代後期の『新撰類聚往来』であることから、15世紀末頃ではないかとの見解も多いそう。18世紀になるとドイツ人医師エンゲルベルト・ケンペルが『廻国奇観』でイチョウを紹介していますよ。その十数年後には長崎から種子が持ち帰られ、ヨーロッパの栽培が行われます。18世紀末にはヨーロッパ各地でイチョウが育てられるようになり、アメリカ大陸にも伝えられていきます。

古く日本では食用(ギンナン)としてよりも防火樹や防風樹として植えられたり、まな板や将棋盤に使う木材として育てられていたようです。ギンナンは食べはしても現在のような季節感を味わう食材としてではなく、飢饉のための備蓄食糧という位置づけであったのだとか。ギンナンを摂るための本格的な栽培が行われるようになったのは、明治後期くらいからではないかと言われています。

銀杏(ぎんなん)の栄養成分・効果について

栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

ギンナンは炭水化物がやや多いもののの、三大栄養素・ビタミン・ミネラルを広く含む食材です。ただしギンナン中毒を起こす可能性があるので一日7粒程度、多くても10粒程度の摂取に留めることが推奨されています。100gあたりの栄養価としてはかなり高いものもありますが、10粒=約30g程度と考えるとメインの補給源としてはさほど期待しない方が確実です。

銀杏(ぎんなん)イメージ

銀杏の効果効能、その根拠・理由とは?

エネルギー補給・疲労回復に

栄養価としても全体重量の4割近くが炭水化物であり、タンパク質や脂質も比較的バランス良く含んでいます。特に糖代謝に関わるビタミンB1の含有も多めなので、エネルギー源として優れていると言えます。ビタミンB1は炭水化物を体を動かすエネルギーへと変換する際に必要な補酵素(チアミンピロリン酸)の原料となります。これは摂取した栄養(炭水化物)をエネルギーとして行き渡らせて身体が活動できるようにサポートしてくれるだけではなく、疲労や筋肉痛の原因になると考えられる乳酸の元となる物質(焦性ブドウ糖)の蓄積抑制・乳酸の代謝を高めることにも繋がります。

このためギンナンは疲労や疲労感・筋肉痛などの軽減にも役立つと考えられます。ビタミンB1だけではなく他のビタミン類やミネラル類も幅広く含んでいますから、栄養補給にも役立ってくれるでしょう。漢方・薬膳では滋養強壮に良い食材と考えられていますよ。とは言え栄養源として完璧とは言い難いですし、大量に食べるものでもありません。栄養バランスの偏りが気になる時や、食欲が無いときの補助食として役立ってくれものと考えましょう。

ストレス軽減・風邪予防に

ギンナンは「抗ストレスホルモン」とも呼ばれている副腎皮質ホルモンの合成・分泌に関係するビタミンである、ビタミンCとパントテン酸が含まれています。このためストレス耐性を高める働きが期待できるほか、ビタミンB1が糖からのエネルギー生成を促すことで脳機能を高める働きも期待できます。ストレスが多いと感じている方や、最近イライラしやすいと感じている方にも適しているでしょう。

またパントテン酸はホルモンや免疫抗体の合成にも関わっていることが認められていますし、ビタミンCも白血球の働きを活発化したり、抗ウイルス作用を持つインターフェロンの分泌促進作用があるとされています。このことからギンナンの摂取は体のバランスを整えたり、免疫力を高ることで風邪など予防にも役立つと考えられます。もちろん数粒食べる程度で必要な分を全て補えるというものではありませんが、料理に加えたりおやつ代わりに食べれば不足を緩和してくれるでしょう。

貧血・血行不良予防に

ギンナンは鉄分や亜鉛・葉酸など造血に関わる栄養素と、植物性鉄分の吸収を助けてくれるビタミンCをバランス良く含んでいます。実際に食べる量において摂取できる量はどれも多くはありませんが、不足分のフォローとしては役立ってくれるでしょう。加えて血行促進作用が期待できるビタミンEやナイアシンなどのビタミン類、正常な体液循環をサポートしてくれるマグネシウムも含まれていることから、血行不良や冷え性の方にも適していると言われています。

むくみ・高血圧予防に

100gあたりの含有量で見た場合、ギンナンは700mgとカリウムを非常に多く含んでいます。実際に大量に食べるものではありませんが上限量と言われている10粒(30gとして計算)を食べた場合でも摂取できるカリウム量は210mgとなり、キュウリトマト100gと同等量ですから十分に補給源として役立ってくれるでしょう。

カリウムはナトリウムと共に浸透圧を維持しているミネラルで、濃い味付けの食事などによって過剰に摂取したナトリウムの排出を促す働きも持っています。ナトリウム摂取量が増えると、身体は血中ナトリウム濃度を保つため血液に水分を取り込む=簡単に言うと水で薄めようとする性質があります。高血圧の方が塩分を控えるよう勧められるのも、身体が水分を多く取り込むことで血液量が増え、心臓に負担がかかることで血圧が高くなるためです。このためカリウムの摂取によりナトリウム濃度を適切に保つことは、高血圧予防に有効とされています。

またカリウムは体内の過剰なナトリウムの排泄を促すことで、血中ナトリウム濃度を調整するために保持されていた“水分”の排出を促す働きもあります。このことからカリウムはむくみ改善に役立つと考えられています。むくみが起こる原因はナトリウムの摂取過多だけではありませんが、ギンナンにはビタミンEなど血行を促してくれる成分も含まれていますので、むくみ予防にも役立つと考えられます。

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老化予防・美肌作り

炭水化物がやや多いものの三大栄養素(糖質・脂質・タンパク質)を比較的バランス良く含み、ビタミンCやビタミンE・β-カロテンなどの抗酸化物質を含むことから、ギンナンは肌のサポートとしても役立つ食材であると考えられます。抗酸化ビタミンは活性酸素を抑えることでシミやシワなどの肌老化予防に役立ってくれるでしょう。ビタミンEは血行を良くすることで肌のくすみ改善やターンオーバー促進に、β-カロテンはビタミンAに変換されることでターンオーバー促進や皮膚粘膜の保護にも役立ちます。

ビタミンCも抗酸化作用だけではなくコラーゲン生成の促進・メラニン色素を合成するチロシナーゼ酵素の活性阻害作用による美白(色素沈着予防)効果など、より直接的な肌に対しての働きも認められています。パントテン酸もビタミンCの働きを助けることでコラーゲン生成を促す働きがありますし、皮脂分泌を抑制することでニキビ予防にも役立つと考えられています。これらのことからギンナンはニキビや乾燥肌・肌老化を予防し、美肌のサポートとしても期待されています。

目的別、ギンナンのおすすめ食べ合わせ

銀杏(ぎんなん)の選び方・食べ方・注意点

ギンナンは鮮度が下がると殻が黒ずんでくるため、殻が白くてキレイなものを選ぶと良いとされています。持った時にはズッシリ感があるものを選び、カラカラと仁の部分が動いているような音がするものは避けましょう。殻付きのままであれば日持ちがよく、新聞紙に包んで冷暗所もしくは冷蔵庫に入れておけば1~2ヶ月程度持ちます。真空パックにしたり炒ったものであれば1年くらいは大丈夫なよう。

簡単な食べ方としては、殻付きのギンナンを封筒に入れてレンジするという方法をとる方が多ようです。ギンナンを入れすぎたり封が甘いと、レンジの中で封筒を破って爆発してしまう可能性もあるので注意して下さい。

銀杏の注意点

ギンナンは食べ過ぎると「銀杏中毒」と呼ばれる症状を起こすことが知られています。これは4-O-メチルピリドキシン (4-O-methylpyridoxine, MPN)というビタミンB6の働きを阻害する成分が含まれているためで、症状としてはビタミンB6欠乏による腹痛・下痢・呼吸困難・痙攣などが挙げられています。大人の場合は解毒酵素を持っているので一日10粒程度であれば中毒症状を起こすことは少ないと言われていますが、人によってはそれ以下でも銀杏中毒になる可能性もありますので体調に注意しながら食べるようにしましょう。また5歳以下の小さいお子さんであれば2粒以下に留め、注意して様子を見てあげるようにしましょう。