棗/ナツメの特徴と栄養成分・期待できる健康メリットとは

食べ物辞典:ナツメ

薬膳料理などにも使われ“食べる漢方”と称される食材の一つ、ナツメ(棗)。中国や日本では生薬として民間医療の中でも使われてきた果物で、現代でも鎮静作用や催眠作用などについての研究が行われています。栄養面でも見ても、鉄分やカリウムなどを比較的多く含むミネラルの補給源であり、食物繊維も豊富。ダイエット中の方にも嬉しい食材ですね。巡りを整えるサポートにも期待されています。そんなナツメの栄養価や健康メリットについてご紹介します。

ナツメ/棗のイメージ画像:食べ物辞典トップ用(slowbeauty)

和名:棗(なつめ)
英名:jujube/red date/Chinese date
学名:Ziziphus jujuba

棗(なつめ)とは

名前は知っているけれど意外と口にする機会の少ない食材、ナツメ(棗)。一部地域の方を除いてはサムゲタンなど薬膳系のお料理や健康茶、薬用酒や健康茶などに使われている果物というイメージの方が強いかもしれません。ドライフルーツコーナーで販売されていることもありますが、デーツやレーズンのように甘みが強いものでもないので、韓国料理や中華料理に詳しい方でないと使いどころが難しいフルーツと言えるかもしれません。薬膳料理の食材・食べる漢方なんて紹介されることもありますね。

地域によっては乾物・ドライフルーツという印象のあるナツメですが、日本でも栽培されています。飛騨地方では生の果実をそのまま食べたり、砂糖と醤油で甘露煮にして食べる文化もあるそう。庭木を兼ねて植えているナツメの木から収穫して食べるだけではなく、旬である10月頃には生の果実が販売されていることもあるようです。フレッシュな生のなつめはりんごのようなサクサクした食感と酸味があるそうです[1]。

また、果実を食べるためではなく、庭木としてナツメを植えているご家庭もありますね。ナツメは日本にも定借している植物ですし、中国や韓国など東アジアでは広く料理や民間医療で用いられてきた植物でもあります。原産地には南ヨーロッパ説や中国説など諸説あり分かっていませんが、新石器時代から栽培されていた“世界で最も古い栽培果樹の1つ”とも称されている[2]植物です。中国では遅くとも4000年前から栽培され、日本にも奈良自体頃までには伝わっていました。

中国でナツメは単なる果物としてだけではなく、スタミナ食材・生薬としても親しまれてきました。中国には「一日食三棗、終生不顕老(ナツメを1日に3つ食べると老いない)」という言葉があり、老化を予防して若さと美しさを保つために楊貴妃が食べていたいう伝説もあります。日本でも中国から漢方・生薬の知識が伝わり、ナツメを生薬として利用してきました。現在でもナツメの果実を乾燥させた“大棗(タイソウ)”は生薬として日本薬局方にも収録されており、葛根湯など馴染みのある漢方薬にも配合されています。

ナツメとナツメヤシの違い

植物として見ると、ナツメはクロウメモドキ科ナツメ属に分類されています。果実を食用とし、名前が良く似ている植物にはデーツ(Date)と呼ばれるナツメヤシの果実がありますね。英語の場合も、ナツメヤシ(date)に対して、ナツメはジュジュベ(Jujube)もしくは“チャイニーズデーツ(Chinese-date)”と似た名前で呼ばれています。植物としてデーツはヤシ科と離れた存在ですが、果実が似ていることから仲間のような呼び名が付けられています。木になっている状態の見た目は全く違うのですが、私たちが目にする機会の多いものは果実一つずつに分けられて乾燥しているのでよく似ていますよね。

見た目こそ似ていますが、ナツメとデーツ果実の風味は全く別物。ナツメは酸味と軽やかな甘みがあるさっぱり系なのに対して、デーツはねっとりとした強い甘味があるのが特徴。このためデーツはレーズンのようにそのまま食べたり甘味料感覚で使用されますが、ナツメの乾果は砂糖漬け・蜂蜜漬けを乾燥させた「蜜棗」と呼ばれるもののように“甘さ”を足して加工されることが多くなっています。ナツメは果皮が固いこともあり、ドライフルーツとしてそのまま食べるには好き嫌いが分かれる存在でもあります。

スーパーモデルやセレブ達が取り入れているスーパーフルーツとして注目を浴びたデーツに対し、ナツメは食べる生薬・薬膳食材など少し渋い印象がある食材。しかし、2020年には『Horticulture Research』にナツメが土地の悪い場所でも育つ作物としての優秀さ、栄養価の高さを紹介したレビューが発表され“スーパーフルーツとして認識されるに値する”と紹介されています[2]。伝統医療の中で薬代わりに使われてきた食材でもありますから、健康維持に役立つ果物として再評価され人気のフルーツになる可能性もあるかもしれません。

棗(なつめ)の栄養成分・効果について

栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

ナツメは生でも食べられますが、一般に流通しているものは乾燥されたもの。このため、下記では『日本食品標準成分表』に記載されている乾燥なつめの成分量を“ナツメ”としてご紹介します。

乾燥ナツメ(ドライフルーツ)は水分量が少なく全体重量の約7割が炭水化物となっており、100gあたり12.5gと食物繊維が多いのが特徴。ビタミン類ではビタミンB群、ミネラルではカリウムやカルシウムなどを多く含みます。100gあたりのカロリーは294kcalで、一粒(3g)あたりのカロリーは約9kcalほど。

ナツメ/棗のイメージ画像

ナツメの効果効能、その根拠・理由とは?

ストレス対策・精神安定に

乾燥ナツメは漢方で“大棗”というナで生薬としても利用され、鎮静作用を持つと考えられてきました。女性特有の精神的な不安定さのケアに処方されることもあります。現代の研究でもナツメに含まれているサポニンやフラボノイドが鎮静作用を持つ可能性を示唆した比較研究の論文が『Natural Product Research』に発表されており[3]、不安の軽減に役立つのではないかと期待されています。

栄養価的に見ても、ナツメはパントテン酸が比較的豊富。水溶性のビタミンの一種でビタミンB5とも呼ばれるパントテン酸はエネルギー代謝・様々な酵素の合成に関与する成分で、副腎皮質ホルモンの合成を助けることで間接的にストレス耐性を高める可能性があります。パントテン酸は体内でも合成されるため不足しにくいですが、腸内フローラが乱れていたり、アルコールやコーヒーをよく飲む方などは不足傾向にあることも指摘されています。

ナツメはパントテン酸の手軽な補給源として役立つことに加え、ドライフルーツの中でも鉄分・カルシウム・マグネシウムなどのミネラルを多く含んでいます。こうした成分を補給できることからも、ナツメは精神的なストレスへの耐性向上・ストレス性の不眠や胃痛など様々な不調の緩和に役立つ可能性があるでしょう。

不眠予防・軽減

ナツメは伝統医療・民間療法の中で、不眠など睡眠トラブルのケアにも用いられてきました。現代でもナツメの鎮静・催眠効果について研究は行われており『Natural Product Research』に発表されたマウスを使った研究では、ナツメに含まれているサポニンやフラボノイドが催眠機能を示したことが報告されています[3]。また、ナツメの種に含まれているサポニンの一種“ジュジュボシド(Jujuboside)”などが鎮静作用を有するという論文もあります[4]。

必須栄養素の面から見ても、ナツメは果物としてはミネラルが豊富。乾燥されている状態であれば、手軽なミネラル補給源として役立ちます。ミネラルは精神安定や睡眠とも関与しており、特に、マグネシウムはセロトニンを生成するのに必要な成分。セロトニンは睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンの材料となる存在でもありますから、不足を改善することで体内時計・睡眠リズムを整えることに津軽可能性もあるでしょう。

便秘予防・ケア

ナツメは乾燥100gあたり12.5gとドライフルーツの中でも特に食物繊維が豊富な存在。実際に食べる量として3粒=9gで計算しても1g以上程度と、キャベツカイワレ大根50gと同等の食物繊維が補給できる計算になります。普段の食生活で不足しがちな食物繊維の補給に役立ってくれるでしょう。

ナツメに含まれている食物繊維は、便の量を増やすことで腸を刺激し蠕動運動を促す働きを持つ不溶性食物繊維の割合が多いので、便通改善に効果が期待できます。サポニンなどの成分にも便数を整える働きが期待されていますし、動物実験では糞便中の水分量を増やす働きが、小規模な臨床試験ではナツメ抽出物の摂取によって慢性便秘の改善に対する有効性も示されています[4]。

貧血の予防・改善に

大棗(乾燥ナツメ)は漢方の考え方では“補血”に良い生薬とされ、貧血のケアに用いられてきました。栄養価という面でも、ナツメは鉄分が比較的豊富。鉄分が豊富な果物というとプルーンが挙げられますが、実は100gで比較した場合は乾燥プルーンの鉄分が1.0mgなのに対して、乾燥ナツメは1.5mgこの含有量はレーズンに次いで果物トップクラスに入ります。ナツメには造血に関わる亜鉛や輪などのミネラルも含まれていますから、貧血予防や改善のための食事としても役立ってくれるでしょう。

加えて「造血のビタミン」とも呼ばれる水溶性ビタミンの一種で赤血球を作るために欠かせない葉酸も、ナツメの場合は100gあたり140μgと比較的多く含まれています。葉酸はプルーンには3μg、レーズンには9μgしか含まれていませんから、まとめて摂取できるというのはナツメの強みと言えるでしょう。

冷え性ケア・循環サポート

東洋医学においてナツメ(大棗)は、筋肉や神経の緊張を緩和させ、循環を整える働きを持つと考えられてきました。成分的に見ても、ナツメには血液の循環をサポートするビタミンP(フラボノイド系ポリフェノール)や、血液状態を整えるサポニン、血圧をサポートするカリウムなどが豊富。ナツメの果実に含まれるサポニンとアルカロイドは酸化ストレスからの保護作用を持つことも報告されており[5]、免疫系やリンパ系へのストレスを和らげる=代謝や循環を正常に保つ働きも示唆されています。

ナツメには鎮静作用を持つ可能性も報告されています[3]から、合わせてストレスよって交感神経優位の状態が続くことで起こる血行不良の予防にも効果が期待できますね。また、血液循環そのもののに、女性の冷えの原因としては血液そのものの不足=貧血が考えられますが、ナツメは貧血の改善に必要な鉄分や葉酸も補給できます。これらのことから、ナツメは体の巡りを整え、冷えやむくみの予防をサポートしてくれる可能性もあります。

女性サポートにも期待

大棗(乾燥ナツメ)は補虚薬・補気薬として更年期障害や月経などに伴う、女性特有のアンバランスさの緩和にも使用されてきました。とはいえ、ナツメには女性ホルモン様物質など、直接的に子宮に働きかける成分が含まれているのかは分かっていません。無いという説が有力ですが、妊娠中および授乳中の安全性についての情報は不足しているので摂取を控えたほうが良いという見解[4]もあります。

ナツメが女性サポートに取り入れられてきたのは、貧血予防や血流サポートによって体のバランスを整える・鎮静作用によって気持ちを落ち着ける働きが期待できることが大きいでしょう。サポニンなどの有効性については断定されていませんが、パントテン酸やミネラルなど補給源として不足を補うことでも抗ストレス力アップ・精神安定に繋がります。精神的な面で不調が出やすい更年期障害や月経前症候群(PMS)、冷えによって痛みが悪化する生理痛などの緩和に役立ってくれそうですね。

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血圧・生活習慣病予防に

ナツメはカリウム含有量が100gあたり810mgと、果物・ドライフルーツ類の中でもトップクラスに入るほど豊富な食材。ナツメを15g、大体5~6粒程度を摂取するだけでスイカ100gとほぼ同量のカリウムが補給できる計算になります。カリウムはナトリウム体内のナトリウム濃度を調節し、余分なナトリウムと水分の排出を促す働きがあるミネラル。このため、ナツメの摂取は血圧が気になる方のサポートにも適していると考えられます。

また、ナツメに含まれているサポニンとアルカロイドには抗酸化作用も報告されています[5]。サポニン類には中性脂肪やコレステロールなどの脂質の酸化(過酸化脂質の発生)を抑制する働きや、ブドウ糖と脂肪の合体を防ぐことで脂肪蓄積を抑制する可能性が示唆されている成分もあります。パントテン酸もエネルギー代謝、特に糖質・脂質の代謝にとって重要な成分ですから、代謝を高めることで脂肪蓄積を抑える働きも期待出来ます。

こうした成分の補給から、ナツメはコレステロール値が気になる方や生活習慣病予防のサポートにも一役買ってくれる可能性があるでしょう。食物繊維やミネラルの補給にも役立ちますので、ダイエットのお供にもおすすめです。

肌保持・肌荒れ予防

ナツメに多く含まれているパントテン酸は様々な代謝やホルモンの合成に関わっているビタミンです。肌に関してはコラーゲンを産む線維芽細胞を活性化させる・コラーゲンの生成に必要なビタミンCの働きをサポートする働きもあります。コラーゲンは肌にハリを与えるためシワやたるみを防ぐなど若々しい肌の維持には欠かせない成分ですし、お肌を外部の刺激から保護することで肌荒れを防ぐ役割も担っています。

そのほかパントテン酸には皮脂の分泌量を抑制したりストレスへの抵抗力を高める働きがありますしナツメはフラボノイド系ポリフェノールなどの抗酸化物質を含んでいることも報告されています。抗酸化作用によるアンチエイジング、ストレス緩和と合わせてニキビ予防にも効果が期待できますね。血行を良くすることでくすみのない血色の良い肌作り・肌の新陳代謝向上などに繋がる可能性もあります。

アレルギー軽減にも期待…

ナツメには炎症を起こした部分に発生する過剰な活性酸素を除去してくれるサポニンなどの抗酸化物質、パントテン酸(ビタミンB5)などが含まれています。パントテン酸は副腎皮質ホルモンの合成を助ける働きを持ち、不足するとアトピー・ぜん息・花粉症・アレルギー性鼻炎など様々な症状の原因になるという説もある栄養素。サポニンとアルカロイドによる酸化ストレスからの保護作用[5]も示唆されていますので、合わせてアレルギー症状の抑制や緩和に繋がる可能性もあるでしょう。

目的別、棗のおすすめ食べ合わせ

ナツメ(棗)の注意点

乾燥ナツメの場合はビタミンCはほとんど含まれていません。鉄分の吸収を高めるためにも、コラーゲンの生成を促進するためにも、生フルーツやフレッシュジュースなどと組み合わせて摂取するとより効果的です。またビタミンE・βカロテンを含むとも言われていいますが、含有量は微量なので注意して下さい。

ナツメは血糖値を下げる可能性があるため、糖尿病の治療を受けている方は医師に相談してから摂取するようにしましょう。また、過剰摂取するとお腹を壊す可能性もあるため、適量の摂取を心がけて下さい。

【参考元】