ワサビ(本山葵)の栄養成分や効果効能
|特徴成分の働きや推奨摂取量は?

ワサビ(山葵)イメージ

ワサビ(本山葵)とは

ツーンとした独特の刺激が特徴的な日本独特の香辛山菜、ワサビ。山椒茗荷紫蘇などと共に“和のスパイス(薬味)”の代表格にも数えられ、また日本の香辛料の中では最も刺激的であるとも言われています。鼻にツンと抜ける刺激がから好き嫌いが分かれるところではあり、特にお子さんには嫌がられる傾向もあるため回転寿などでは“わさび抜き”が標準とされている店舗もありますが、1000年以上も愛されてきた日本の味覚の一つと言えるでしょう。

植物としてはアブラナ科ワサビ属に分類される多年草で、学名はEutrema japonicum。英語でも日本語そのままの“Wasabi”かJapanese horseradishと呼ばれています。ワサビを使うのは日本の他、台湾と中国の一部地域だけなのだとか。と言っても近年はパスタや肉料理などの洋風レシピにも活用されていますし、わさびマヨネーズや“わさレモン(レモン汁でワサビを溶いたもの)”などは万能調味料感覚でも用いられています。和食ブームの影響もあり本格的なフレンチレストランなどでもソースの材料として取り入れられたり、有名ショコラティエがチョコレートと組み合わせたことも話題になりましたね。

薬味として使われるポピュラーなワサビの部位は地下茎で、お刺身や寿司はもとより蕎麦・白焼き・お茶漬け・わさび漬けなど様々な料理に利用されています。若い葉を収穫した“葉わさび”もお浸しや醤油漬けなどにして食べられていますし、成分を抽出することでお菓子のフレーバーなどにも活用されています。そのほか菜の花のように蕾の状態である若い花茎を収穫した“花わさび”も醤油漬け・天ぷらなどにして食べられており、春を感じる食材の一つとしても愛されています。ちなみに「わさび菜」と呼ばれているものはアブラナ属カラシナ種なので別物。

また英名でも使われているhorseradish(ホースラディッシュ)と言うのは日本で山わさびや根ワサビとも呼ばれている「西洋山葵」という植物のこと。ローストビーフの付け合わせとして用いられている、あまりツンとしないワサビがこちらですね。西洋だけではなく日本でも北海道を中心に野生化していることからエゾワサビ・アイヌワサビなどと呼ばれることもあります。西洋ワサビはアブラナ科セイヨウワサビ属と同科別属に分類される別物ですが、どちらも“ワサビ”で紛らわしいことからEutrema japonicumの方を「本わさび」と呼んで区分することもあります。

市販されている粉ワサビは西洋ワサビの粉末で、チューブに入って売られている練りワサビは本ワサビと西洋ワサビがブレンドされているものが大半。わさび協会では統一基準として本わさびの使用量が50%未満であれば「本わさび入り」、50%以上の場合は「本わさび使用」と表記を分けるよう定めているそうですよ。

ワサビ(本山葵)に含まれる栄養や成分に期待できる働き・巷で言われる効果効能の理由とは?

ワサビは100gあたりの栄養価で見るとビタミンCやカリウムなどが多く含まれており、栄養豊富とも言える食材。ただし薬味として少量使うのが一般的で食べすぎは下痢などの原因ともなりますから、栄養補給源とは考えないほうが良いでしょう。期待される健康メリットもグルコシノレート(からし油配糖体)などの働きが主となっています。ちなみに100gあたりのカロリーは88kcalのカロリー。

ワサビはこんな方にオススメ

  • 食中毒予防に
  • 食欲が無い・消化が悪い時に
  • 胃の健康サポートとして
  • 抗酸化力を高めたい方
  • 若々しさのサポートに
  • デトックスを心がけている方
  • ダイエットのサポートに
  • 冷え性の方・むくみ対策に
  • 肌のアンチエイジングに
  • シミ・肌荒れ予防に

下記ではこうしたお悩みにワサビが良いとされる理由や、イソチオシアネート類についてなどをご紹介します。栄養成分含有量は『日本食品標準成分表』に“わさび/根茎、生 Wasabia Japonica [Syn. Eutrema wasabi]”として記載されているもの、またその他の成分につきましても本ワサビについての情報を元に作成しております。チューブ入りワサビについては後記の「チューブわさびについて」を御覧ください。

抗菌・防虫(食中毒予防)

江戸時代に寿司と組み合わせて扱われた理由としても挙げられることがある通り、ワサビには抗菌作用があると考えられています。この殺菌作用はワサビに含まれているグルコシノレート(からし油配糖体)の一種であるシニグリンという成分が、ミロシナーゼという酸素に触れることで生成されるアリルイソチオシアネートの働きであることが分かっています。アリルイソチオシアネートは大腸菌・サルモネラ菌・O-157・腸炎ビブリオ・黄色ブドウ球菌など多くの食中毒の原因となる菌の増殖を抑制する働きが報告されており、お弁当に入れる抗菌・防腐シートなどにも活用されています。

加えてアリルイソチオシアネートは魚類に寄生しているアニサキスなどの寄生虫を殺す働きもあると考えられていますし、魚の鮮度が落ちると増加して魚の生臭さの原因に数えられるトリメチルアミン量を抑える働きがあるという報告もなされています。この働きからワサビは食あたり予防にも有効な薬味として、刺し身をよく食べる日本で愛されてきたと言われています。近年は輸送・冷蔵技術なども発達していますが、特に釣りをする方などは生で魚介類を食べる時にはワサビを組み合わせるようにすると良いかもしれません。

食欲増進・消化促進

薬味やハーブ・スパイスと呼ばれる食材の多くと同じく、ワサビも食欲を高めたり消化を促すなど胃腸を機能サポートする働きがある言われています。独特のツーンと鼻にくる“アリルからし油”による刺激ある香りから唾液・消化液の分泌を促す働きが、またシニグリンによる辛味も胃への刺激剤となり食欲アップや消化促進をサポートしてくれると考えられています。そのほかワサビにはβ-アミラーゼというデンプンを含む多糖類を加水分解する酵素が含まれていることも、消化吸収を助けているのではないかと言われています。

先にご紹介したようにワサビには高い抗菌作用も期待できますから、ピロリ菌の活動を弱めることで胃潰瘍や胃癌の予防にも繋がると考えられています。静岡県立大学食品栄養科学部によるピロリ菌感染マウスにワサビ抽出物を10日間経口投与した実験では、胃細胞の酸化ストレスを有意に抑制したという報告もなされています。こうしたことからワサビは胃の健康維持・病気予防にも効果が期待されています。ただし刺激物であり食べ過ぎるとお腹を壊してしまう場合も有りますので胃腸関係の持病がある方は控え、適量の摂取を心がけましょう。

抗酸化・血栓予防

金印わさび機能性研究所の実験ではワサビのアリルからし油(アリルイソチオシアネート)に含まれているスルフィニルという成分に、抗酸化作用があることが掲載されています。スルフィニルは人間の細胞に備わっている抗酸化物質を活性化させる働きがあるのではないかとも言われており、活性酸素の発生そのものを抑制することから赤ワインなどに含まれているポリフェノールよりも高い抗酸化作用が期待できるという説もあるそう。

余談ですがこの「スルフィニル」もしくは「ワサビスルフィニル」というのは金印さんの登録商標で、正式な成分名としては「6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート(6-MSITC)」という成分です。また実際の使用量が少ないため純粋に同グラム比較はできませんが、ワサビは生100gあたり75mgと非常に多くのビタミンCを含む食材でもあります。こうしたことからワサビは抗酸化物質分泌活性化・若干ではあるものの抗酸化物質の補給にも繋がることから、アンチエイジングやエイジングケアにも役立つと考えられています。

加えてワサビには血小板の凝集活性を阻害するという報告もなされており、イソチオシアネート類には血小板の凝集に関与するたんぱく質の働きを低下させる作用があるのではないかと考えられています。このためワサビは血液サラサラ食材としても注目されている存在で、抗酸化作用と合わせて血栓や動脈硬化などの血流トラブルの予防にも効果が期待されています。酒粕と合わせて漬けた“山葵漬け”は酒粕に含まれている酵素との相乗効果も期待されており、高血圧や糖尿病など生活習慣病全体の予防に役立つのではないかとする見解もありますよ。

デトックスサポート・肥満予防

ワサビに含まれている6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート(6-MSITC)には抗酸化・血液凝固抑制の他、肝臓の解毒代謝酵素の働きを良くする作用が見られたという報告もなされています。肝臓は血液中の毒素(有害物質や老廃物)を濾過し、体内の毒素分解や排出を担っている器官。6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートは肝臓の解毒代謝酵素のグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)の活性を高めることで、体の持つデトックス機能向上効果が期待できます。名古屋大学と金印わさび機能性研究所による解毒酵素(GST)活性誘導作用の共同研究によるとワサビは大根やクレソンよりもこの働きが強いとされています。

加えて6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートによる抗酸化作用・解毒機能が高まることから、代謝向上にも繋がる可能性も期待されています。消化液の分泌を促す働きから胃腸機能が活発になり脂肪蓄積されにくくなる・殺菌作用と合わせて腸内の悪玉菌減少に一役買ってくれるという説もあるそう。ワサビには食欲増進作用もありますし、消化促進が肥満予防に繋がるかは微妙なところですが、代謝向上に繋がる可能性は高いと考えられますからダイエットのサポート役として取り入れてみても良いでしょう。

冷え性・むくみ軽減

ワサビに含まれているアリルイソチオシアネート類の6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート(6-MSITC)は血液サラサラ効果が期待されている成分であり、また抗酸化をサポートしてくれることから血液循環を良くすることにも繋がると考えられています。スルフィニル(6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート)はタマネギと同等の血流改善効果があるという説もあるほど。解毒機能向上(デトックス)からも代謝向上や血流改善をサポートしてくれるため、冷え性軽減や血行不良による肩こり・腰痛などの軽減にも効果が期待されています。

血液循環が良くなることに加え、実際にそれほどの量を食べるものではありませんが100gあたりの含有量で見るとカリウムが多く含まれていることからむくみ対策としても注目されています。ワサビを加えることで塩・醤油などの調味料の利用を少なくすることが出来る=塩分のとり過ぎによるむくみを予防するという側面もありますね。東洋医学・薬膳の考え方でもワサビは体を温める性質がある“温性”に分類されており、冷え性の方や水毒(水分代謝が悪い状態)に適した薬味とされているそうです。

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美肌保持・アンチエイジング

6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート(6-MSITC)に高い抗酸化サポート機能が報告されていることから、ワサビはお肌など外見のアンチエイジングをサポートしてくれる食材としても注目されています。活性酸素によるダメージで起こるシワなどの肌老化を予防する働きが期待できますし、ワサビ抽出物の摂取実験では肌の明るさやシミに対しての改善が見られたという報告もあります。また血流改善や消化サポートなどの働きから酸素や栄養が肌に行き渡ることで新陳代謝の向上や肌荒れ向上にも繋がるでしょう。

そのほかコラーゲン生成促進・シミやソバカスの原因となるメラニン色素を作る酵素(チロシナーゼ)の活性阻害作用を持つビタミンC含有量が高いことから美白効果がある・肌のハリをアップさせるという説もありますが、薬味としてワサビを使う場合の摂取量は数グラム~多くとも十数g程度。ビタミンCが補給できることは間違いありませんが、実際の摂取量は微量となりますのでビタミンC補給源としては期待はしないほうが良いでしょう。

アレルギー軽減などにも期待

ワサビに含まれている6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート(6-MSITC)は抗炎症作用を持つ可能性があることが金印わさび機能性研究所や中部大応用生物学チームなど幾つかの研究機関から発表されています。臨床実験でも症状減少が見られたことから、ワサビ抽出物を利用した花粉症軽減サプリメントやマスクなどの商品の実用化も研究されているそうです。

また関節痛炎抑制や認知症予防に対する有効性を示唆する報告や、カラシ油配糖体(グルコシノレート)の抗菌作用や抗酸化・解毒機能向上作用からガン予防に対しての有効性も研究されています。こうした実験はまだ有効性が示唆されている段階のものが多く、またワサビ抽出物を用いて行われていますからワサビを少量食べる程度での効果については不明な点が多いというのが現状です。しかし食中毒予防にも役立つとされている薬味ですから、健康維持のために毎日少しずつ取り入れてみても良いのではないでしょうか。

チューブわさびについて

ワサビについてでもご紹介したようにチューブ入りわさびは本ワサビのみが使用されているものもありますが、大半のものが西洋ワサビが主成分となっています。西洋ワサビには本ワサビの注目成分とされる6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート(6-MSITC)を始め、7-メチルチオヘプチルイソチオシアナートなどの成分もほとんど含まれていません。このためチューブ入りわさびは抗酸化作用やデトックスサポートなどの働きは生ワサビほど期待できないという見解が主流となっています。

ワサビ(本山葵)の選び方・食べ方・注意点

ワサビを選ぶ場合は下から上までの太さの差があまりなく円柱に近い形のもの・ズッシリと重みのあるもの・表面のコブのような凸凹が詰まった感じにみっしりと付いているものを選ぶと良いと言われています。この正面の凹凸(目)は成長するに従って葉を落として伸びていった跡なので、凸凹の目が詰まったものほどゆっくりと成長した美味しいワサビなのだとか。

鮮度が落ちるにつれて表面の緑色が退色し黄色がかった色に変化していきますから、鮮やかな緑色で瑞々しさを感じられるものを選ぶようにすると良いでしょう。目や色がわかりにくい場合は香りを嗅いでみて強く香るものを選ぶという手もあります。ツンと辛いだけではなく、最後にほのかに甘いような印象があるものが良品とされています。

保存は湿らせた新聞紙やキッチンペーパーで包んでからラップで巻くかビニール袋に入れ、乾燥しないようにして冷蔵庫(野菜室)でへ。冷蔵で保存できる期間は数日から一ヶ月程度とするものまで諸説ありますが、乾燥してきたり色・香りが落ちてきたと感じたら早めに使い切るようにしましょう。一週間異常保存したい場合にはコップなどに根が浸かる程度水を入れて立てる・一ヶ月異常使わないようであれば丸ごと冷凍したほうが無難です。

ワサビの1日の摂取量としては3~5g程度が推奨されており、まとめて食べるよりも小まめに摂取したほうが良いとする説もあります。辛味が苦手な方は緑茶を飲んでから食べる・マヨネーズと合わせると食べやすくなります。逆に極少量の砂糖を加えると辛味が引き立ちます。食べすぎは胃腸を痛めてしまう可能性、味覚障害の原因となる危険性もあるので避けましょう。刺激物ですから妊娠中は特に摂取量に注意しましょう。

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ワサビのおろし方について

使用する際は葉茎を切り取ってからコブを荒めに削り、たわしなどで表面の汚れを洗います。その後に摺り下ろしますが、金気との相性が良くないので注意が必要。陶製・サメ皮製のおろし金を使うか、金物であればおろした後すぐに別の容器に移すようにしましょう。

ワサビは細胞を多く壊すことで香り・辛味が引き出されるので目の細かいサメ皮が最も適していると言われています。すり下ろす時にはゆっくりと力を入れず、円を描くようにしておろします。目の粗いおろし金しかない・上手くおろせなかったと感じた時は、おろした後に包丁で叩くようにして刻み直すと良いそう。大根おろしのような形状よりも細かい、クリーム状に近い状態がベストとされていますよ。

ワサビはすり下ろして直ぐよりも3~5分程度置いたほうが風味は良くなり、30分以上経過すると風味が抜けていくと言われています。レモン汁を加えると辛味が抜けるのを抑えることが出来ますが、それでも限度があるので必要分ずつおろしていくのが最も美味しいとされています。また、おろしてから冷凍すると風味はかなり飛んでしましますから、ストックする場合は丸ごと冷凍するようにしましょう。

効果アップが期待出来るワサビの食べ合わせ

わさびの雑学色々

ワサビの歴史

日本ではワサビは日本原産とする見解が強いですが、中国や韓国も自国が原産としており原産地はハッキリしていません。おそらく中国から日本にかけての一帯に古くから分布していたと考えられており、日本でもワサビの原種と言えるものが渓流に古くから自生していたようです。食用開始時期こそ不明ではあるものの、飛鳥時代の遺跡(飛鳥京跡苑池遺構)から“委佐俾三升(わさびさんしょう)”と書かれた木簡が発見されていること・718年に出された『賦役令』にて“山葵”の名前が見られることから、飛鳥奈良時代には既に利用されていたと考えられています。また後の平安時代、延喜年間(900年代初頭)に編纂された日本現存最古の薬物辞典『本草和名』にも“山葵”の記載があり薬用としても利用されていたことがうかがえます。

平安時代中期に編纂された『延喜式』にも「山薑」としてワサビが記載されていおり、後堀河天皇即位の際に山葵が献上された・日蓮上人の55歳の誕生日にワサビ贈られたなどの話があることから、非常に重宝される薬味・薬草であったと考えられています。毒消し作用を持つ薬草と考えられていたので、貴人・富裕層に重宝されたのではないかという説もありますよ。平安まではどちらかと言うと薬用としての利用が多かったワサビですが、鎌倉~室町時代頃になると現在と同じく薬味としての利用についての記述が増えてきます。室町時代中期の『四条流包丁書』にはワサビ酢を作って、コイの刺身を付けて食べたという記録も残っているようです。

江戸時代に入ると駿河の有東木(現在の静岡市)でワサビの栽培が始められるようになりましたが、当初は徳川家康が大層気に入ったこと・ワサビの葉が徳川家家紋の「葵」に通じることから門外不出の御法度品としたとも言われています。江戸時代のはじめには蕎麦の薬味としても使用されはじめ、江戸時代中期に編纂された『和漢三才図会』には「蕎麦の薬味にワサビは欠かせない」といったことも書かれていますが、栽培は門外不出の扱いであり自生しているものを採取するしかなかったため現在のように庶民に広く親しまれている存在ではなかったと推測されています。

ワサビ栽培に革命が起きたと言えるのが延享元年(1744年)で、湯ヶ島の板垣勘四郎という方が有東木を訪れ湯ヶ島で盛んだったシイタケ栽培とワサビ栽培の技術交換を行ったと言われています。この結果栽培が普及していき、文化・文政年間(1804-1830年)に入ると江戸前の握り寿司にワサビを挟んだものが考案され評判となります。これは風味付けだけではなく、痛みやすい生魚の消臭・殺菌という意味もあったのだとか。寿司や蕎麦が庶民の間にも浸透していった時期とも重なるため、江戸っ子の間でも大ブームとなったそう。ただし後の天保改革で握り寿司も取締対象とされたため、寿司+ワサビが定着したのは明治に入ってからとも言われています。

ワサビの種類・栽培について

環境問題や生ワサビの人気による乱獲などから天然ものの数は急激に減少しており、現在では栽培されたものが大半となっています。ワサビ栽培は畑で育てる“畑ワサビ(陸ワサビ)”と、渓流や湧水を利用して作った「ワサビ田」で育てる“水ワサビ(谷ワサビ/沢ワサビ)”の2つに大分されています。水ワサビは綺麗な大量の水・透水性が良い土壌・水温9~16℃でなどの栽培条件があり限られた場所でしか栽培できないため、ハウス栽培や人工光源を使用した室内水耕栽培などの栽培実験も行われています。

品種は多くありますが、大きくは生育が早く植え付けてから1年程度で収穫できる“実生(みしょう)系”と、生育が遅く収穫までに1年半~2年程度かかる“真妻(まずま)系”の2タイプに分けられると言われています。また葉柄の色にから青茎種・赤茎種・白茎種の3つに分けることもあるそう。伊豆では達磨(だるま)・真妻(まづま)、長野県では高井(たかい)、岩手では岩泉1号など地域によって主力品種が異なります。水ワサビは長野県と静岡県、畑ワサビは岩手県が大産地。