葉ショウガ/谷中生姜とその栄養成分や効果効能
|ジンゲロールは含まれる? 食べ方とは?

食べ物辞典:葉生姜

葉生姜は根(塊根)部分が指先ほどと非常に小さい事が特徴です。呼び名の通り葉がついた状態で売られていることが多いですが、基本的に葉は食べず、根茎と茎の中身だけを食べます。成長する前の生姜の赤ちゃんなので歯ごたえは柔らかめで、コリコリした食感と爽やかな風味が楽しめます。栄養価は高くありませんが、ジンゲロールなど生姜の特徴成分が含まれているため、生姜と同じく健康メリットも期待されていますよ。そんな葉生姜の歴史や栄養効果、生姜類の違いについて詳しくご紹介します。

葉生姜のイメージ画像:食べ物辞典トップ用

和名:ショウガ(生姜)
英語:spring ginger/young ginger

葉生姜(谷中生姜)のプロフイール

葉生姜とは

地域によってはあまり見かけなかけなかったり、馴染みのない野菜の一つである葉生姜。呼び名の通り葉がついたままの状態で売られていることが多く、パリッとした食感と辛味の少なさが特徴的な食材です。根元の白色から茎の付け根ピンク・葉の緑色へと彩りも鮮やかなので添え物のように使われることが多く、甘酢漬けにしたものは焼き魚とセットで見かける機会も多いでしょう。そのほかディップ野菜として使ったり、天ぷら・肉巻きなどにも活用されています。地域によっては居酒屋の夏メニューとして定番、というところもあるかもしれません。

根(塊根)部分の大きさを始め、外見がかなり生姜と異なるので別物のように思いがちですが、葉生姜も生姜も同じ植物。薬味・香辛料として一般的に「生姜(ショウガ)」と呼ばれているものは、ある程度まで大きくなった地下の塊根部分を利用しています。新生姜や根生姜と呼ばれるのも、この部分ですね。種類としては塊根が1kg位まで成長する大生姜・500g前後の中生姜・200~300g程度の小生姜と大きく3つに分けられています。ショウガは採種した種使って栽培する植物ではなく、塊根を種生姜として植えることで増やしていきます。

葉生姜は主に小型生姜品種の塊根を種生姜として使い、根茎が小指サイズのうちに若取りされたものよく『谷中生姜』とも呼ばれていますが、これは種生姜として使われる代表的な品種の一つ。葉生姜の代名詞のようになっていますが、厳密には『三州しょうが』や『金時しょうが』などの葉生姜もあります。地域より若干異なりますが、4~5月頃に植え付けをするので葉生姜の旬は6~8月とされています。さっぱりとした風味と相まって特に関東圏では“夏の食材”として親しまれています。ただし静岡県の『久能葉しょうが』など3~4月頃に出荷されるものもあるので、最近は春から楽しむことが出来るようになっていますよ。

ショウガ/葉生姜の歴史

生姜はインドなどの熱帯アジア地域を原産とするショウガ科の多年草で、根生姜・葉生姜を区別せず全体で見ると歴史が古い食材の一つに数えられます。原産地付近のインドでは紀元前から肉や魚の防腐剤・医薬品として利用されており“神様からの贈り物”とも言われていたそう。紀元前500年~遅くとも紀元前100年頃には乾燥させたもの(乾ショウガ)がヨーロッパや中国にも輸出されており、どの地域においても医薬品として珍重されていたと考えられています。現在でもインドのアーユルヴェーダ・中医学(漢方)・ヨーロッパのハーブ療法など、各地の伝統医学や民間療法で用いられています。

日本へはおそらく2~3世紀頃、中国を通じて生姜が伝わっていたと考えられています。奈良時代頃には既に栽培が行なわれていましたし、『古事記』などの文献にも記載が見られます。伝来当初は山椒生姜ワサビなどの香味野菜は全て「はじかみ(根の辛いもの)」という総称で呼ばれていたため、どれがどれかはハッキリしない部分も多いのですが、日本最古のスパイスに分類される存在であるとも言われています。後には「くれのはじかみ(呉の薑)」=中国(呉の国)から伝わった辛味植物や、ミョウガに対して香りが強いことから「せのか(兄香)」などと呼び分けられるようになります。現在使われているショウガという呼び方は江戸時代頃にセノカから転じたという説がありますし、はじかみという呼び名は生姜の甘酢漬けの名称として使われるようになっていますね。

非常に古くから食されてきた生姜ですが、日本でも大陸全体で見ても中世前後までは香味野菜や香辛料としてではなく“薬”としての利用が主でした。平安貴族たちも重宝し、庶民には馴染みのない存在だったのだとか。生薬として用いられていた事から、この時代の生姜は根生姜(生姜)もしくはそれを蒸して乾燥させた乾姜がポピュラーだったとと考えられます。日本では庶民でも生姜を口にできるようになったのは江戸時代頃からと言われており、葉生姜や芽生姜もそのあたりから栽培・食用が盛んになったと考えられます。

現在では葉生姜の代表格である『谷中生姜』も名前の通り東京都の西日暮~谷中周辺で江戸時代から栽培が行なわれていました。谷中周辺は水に恵まれた土地で、かつ西日や風を避けられるという環境が生姜栽培に適していたため一大産地となったのだとか。まだ若いうちに収穫する=旬がお盆あたりだったこともあり、周辺の寺院・神社・商人がお中元に使ったことで江戸中で知られる名産品になったと言われています。江戸中期の俳人である加舎白雄も『葉生姜や手に取るからに酒の事』と詠んでいますから、江戸っ子も味噌をつけて酒のアテにしていたのかもしれません。

葉生姜(谷中生姜)の栄養成分・効果について

栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

葉生姜は全体重量の95%以上が水分で、100gあたり11kcalと低カロリーではありますが栄養価は高くありません。葉付きで販売されているものの葉を食べるわけではないのでβ-カロテンもほとんど含まれていませんし、ビタミン・ミネラル類の補給源としては特別優れた食材ではないでしょう。しかし生姜と同様にジンゲロールなどの特徴成分が含まれているため、葉生姜にも健康メリットが期待されています。

葉生姜イメージ

葉生姜の効果効能、その根拠・理由とは?

食欲増進・消化促進

生姜の辛味成分であるジンゲロールは様々な働きが期待されていますが、古くから経験的に優れた殺菌作用を持つことが知られていました。お寿司などに使われるのも風味の問題だけではなく、殺菌作用によって食中毒を防ぐ意味合いもあったのだとか。加えてジンゲロールには血管を拡張させ血流を良くすることで胃腸機能を高める働きが期待できますし、生姜の香りの元(精油成分)であるジンギベレンも胃腸機能の向上・食欲増進に有効と考えられます。

そのほか辛味成分が胃酸分泌を促して消化を良くする・生姜には消化酵素が含まれているという説もあります。これらのことから葉生姜も消化を良くしたり、胃腸機能を活発化させることで食欲を高める働きが期待できる食材として取り入れられています。ジンゲロールやジンギベレンには制吐作用(吐き気・嘔吐を抑制する働き)が期待されていることから、乗り物酔いや二日酔い・胃の疲れ・つわりなどでによる吐き気を抑えるのに良いという説もあります。

血行促進・冷え性予防

生姜の健康メリットとして、血行促進や身体を温める働きも期待されています。これは辛味成分であるジンゲロールに血管拡張による血行促進作用があること・精油成分のジンギベロールやジンギベレンなどにも血行促進・発汗・保温作用などが期待されていることに起因しています。このため生姜は血行促進・冷え性軽減食材として様々に利用されており、血行不良が原因の頭痛・肩こり・腰痛・神経痛・生理痛などの痛みの軽減にも効果が期待されています。ちなみに生姜を乾燥・加熱することでジンゲロールから変化するショウガオールとジンゲロンも殺菌作用や血行促進が期待されていますし、ショウガオールは体の深部で熱を作り出す手助けをしてくれるとも言われています。

ジンゲロールの場合は血管を拡張させることで末端冷え性やエアコンなどによる表面の冷え軽減に、乾燥生姜は代謝低下や低体温など深部の冷えに良いと言われるのもこの働きの違いだとか。体の表面が温まり発汗が促されると気化熱によって結果的に体温を下げる方向に働く・深部の熱を表面に持っていってしまうとも考えられるため、葉生姜や生で食べる新生姜などは“体を冷やす”食材であるとする見解もあります。体が冷えている原因によっては逆効果になってしまう可能性もあるので、代謝そのものが低い・もともと低体温というタイプの方は食べ過ぎに注意するようにしましょう。

夏バテ予防・疲労回復

ジンゲロールの働きは体を冷やす可能性もありますが、血流を良くして体表の冷えを軽減してくれること・内に籠もった熱の発散を助けてくれるため夏バテの予防や軽減に繋がると考えられています。夏場に不足しやすいミネラルに数えられるカリウムも多く、吐き気や気分の悪さを軽減したり食欲を高める働きも期待できますから夏バテ対策として役立ってくれるでしょう。夏が旬の食材らしい働きでもありますね。昔ながらの味噌ディップという食べ方は塩分(ナトリウム)や大豆に含まれているタンパク質の補給にもなるので、夏を元気に乗り切るためには理にかなっていると言えますね。

疲労回復・風邪予防

葉生姜にはジンゲロールやジンギベレンなど消化器系に働きかける成分が多く含まれています。この働きは食欲増進・消化促進によって、しっかりと栄養が補給できることにも繋がります。加えて血行を促してくれることで体内の各機能の働きが良くなる・老廃物の排出や新陳代謝が高まると考えられます。このため葉生姜は疲労蓄積予防や疲労回復促進にも役立つ食材とされています。葉生姜のスッキリとした香りもリフレッシュ効果があると言われていますので、気持ちが疲れている時にも役立ってくれるかもしれません。

また血行が良くなり、身体の機能がしっかりと働くことは免疫力の低下を防ぐことにも繋がります。ジンゲロールやジンゲロールから変化するショウガオールなどの成分には殺菌作用も認められていますし、ジンゲロールには免疫細胞の活性化作用があるのではないかとする説もあります。栄養補給や体を温めることも免疫力向上に繋がりますから、夏風邪の予防にも葉生姜が役立ってくれるでしょう。そのほかジンゲロールは喉の痛みや咳止めにも効果が期待されています。

便秘・むくみ対策

葉生姜は生100gあたり食物繊維が1.6g、カリウムが310mg含まれています。野菜類全体で見ると特に多いという訳ではありませんが、不足分の補給としては役立ってくれるでしょう。辛味成分のジンゲロールは血行促進・胃腸の機能向上が期待されている成分でもあるため、食物繊維と相乗して便秘改善にも繋がると考えられています。ジンゲロールはお腹を温め胃腸機能を整えてくれると考えられることから、冷えによるお腹の痛み・ハリ軽減、下痢止めなど様々なお腹の不調に有効とされています。

カリウムはナトリウム排出を促すことで体内の水分バランスを整え、余分な水分排出をサポートしてくれるミネラルとしてむくみ対策に取り入れられています。むくみ対策としてもカリウム+ジンゲロールや精油成分による血行促進作用との相乗効果が期待できますから、ナトリウム過剰だけではなく幅広いタイプのむくみ緩和に繋がるでしょう。ただし食べる時に調味料を使いすぎると逆効果になってしまう可能性もあるので注意して下さい。

抗酸化・生活習慣病予防

生姜の辛味成分であるジンゲロール、ジンゲロールから変化するショウガオール・ジンゲロンも、抗酸化作用を持つことが報告されている成分です。2011年にスコットランドのアバディーン大学がマウスを使って行った実験では、コレステロール代謝や脂肪酸の酸化に対して生姜が有効性を持つ可能性が示唆されています。生活習慣病は活性酸素・脂質が酸化してできる過酸化脂質が増加することで発症リスクが高まることが指摘されています。このため生姜と同じ成分を含む葉生姜も、動脈硬化などの予防に効果が期待されています。血圧を一定に保つ手助けをしてくれるカリウムも多めですので高血圧気味の方にも適しているでしょう。

美肌保持

ジンゲロールなどの辛味成分が持つ抗酸化作用は生活習慣病のリスク低減だけではなく、体全体を若々しく保つサポートとしても役立つと考えられています。肌細胞の酸化によって起こるとされているシワやタルミなどの肌老化予防にも繋がるでしょう。またジンゲロールなどの辛味成分・ジンギベロールなどの精油成分が血液循環を促してくれることで、肌の新陳代謝向上や血行不良によるくすみ・クマ軽減にも効果が期待できます。葉生姜自体はビタミン類を豊富に含む食材ではありませんが、ビタミンB6が比較的多いのでタンパク質と合わせて摂取すると効果的です。抗酸化サポートとしては緑黄色野菜と組み合わせると良いでしょう。

肥満予防・脂肪燃焼促進について

生姜は脂肪燃焼を促す可能性がある食材として、ダイエットにも取り入れられています。これはジンゲロールは脂肪細胞分化を促進する働きが、ジンゲロンには脂肪燃焼を促進する働きがある可能性が報告されている部分が大きいと考えられますが、葉生姜は辛味が少なく辛味成分であるジンゲロール(ショウガオール/ジンゲロン)もひね生姜などよりは少ないと考えられます。血行促進による代謝向上なども期待できますが、ダイエットに関して過度な期待は避けたほうが良いでしょう。

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目的別、葉生姜のおすすめ食べ合わせ

葉生姜(谷中生姜)の選び方・食べ方・注意点

葉生姜は“葉”ショウガと呼ばれていますし、葉付きの状態で販売されていますが、葉を食べるショウガではありません。食用とするのは主に白い根茎部分なので、下ごしらえとして葉(茎)部分を持ちやすい程度の長さ、大体10~15cmくらいを残して切り落とします。その後で根の分かれている部分を手で割れば下処理は完了です。

生姜(塊根)部分の皮はそのままでも食べられますが、気になる場合は包丁の背やスプーンなどで擦るようにして剥く、もしくは柔らかいものなら乾いた布で強めにこすって剥いて使います。そのまま味噌やマヨネーズを付けて食べられますが、辛味が気になる場合にはサッと湯通ししてアク抜きをすると良いでしょう。漬物にする場合もアク抜きしてから使ったほうが食べやすくなります。

ちなみに葉生姜の葉(茎)については食べる派・食べない派がありますが、よほど固いものでなければ食べることが出来ます。こちらは外側の葉を一枚ずつ剥いていき、中にある白っぽい茎だけにして使います。下処理の感覚としては笹たけのこに近いですね。はじかみショウガに近い食感になるので、こちらもディップやお漬物用に使ってみて下さい。

美味しい葉生姜の選び方・保存方法

葉生姜は塊根部があまり大きくなってしまうと辛味が強くなる・固くなると言われています。そのため根部分は大きすぎず、指先程度の大きさのものが食べやすいでしょう。また根は白く、根と茎の境目の赤みがハッキリしているもの・茎や葉がきれいな緑色で全体的に瑞々しさのあるものを選ぶと良いと言われています。実際には食べる部位ではありませんが、葉先までピンと瑞々しさがあることも新鮮さのポイントとされています。

葉生姜は生姜とは異なり、乾燥に弱く日持ちもしない食材です。2~3日であれば葉と根の部分を切り離し、乾燥しないようにラップで包む・ポリ袋など入れるなどして冷蔵庫(野菜室)で保存できます。しかし低温状態にも弱い野菜なので、もう少し長めに保存したい場合はコップなどに水を入れて切り花のように立てて置いた方が良いでしょう。それでも日持ちは一週間程度と言われていますから、早めに食べるか酢漬けなどにするようにしましょう。

ショウガ(葉生姜)の雑学色々

新生姜・葉生姜・芽生姜の違い

新生姜は葉生姜や芽生姜とは異なり、しっかりと成長した塊茎部分のことです。香辛料として使われる茶色っぽい生姜は収穫後保存庫などで数ヶ月寝かされたものですが、新生姜は収穫直後のもの。新ジャガとジャガイモの違いに近いですが、生姜は寝かせることで辛味が増すと言われています。ひね生姜(老成生姜/古根生姜)と呼ばれるのもこの寝かせた生姜のこと。産地により保存期間によって呼び方を分ける・種生姜として使って再収穫したものを呼ぶ場合もあるそうですが、基本的にはひね生姜=香辛料として一般的に使われるショウガです。

葉生姜は収穫してすぐに食べられることから新生姜のくくりに入れられることもありますが、塊根部分の大きさが新生姜とは異なるので別物と考えた方が良いでしょう。種生姜を植えると茎葉が伸び、その下に小さい生姜が出来てきます。これを大きく成長させると新生姜になりますが、葉生姜の場合は小指の先くらいのサイズになった段階で葉ごと収穫しています。若採り・葉付きの新生姜という表現が正しいかもしれません。葉生姜の生姜(根)部分はまだ赤ちゃん状態なので柔らかく、葉は食べませんが葉に包まれた柔らかい茎も食べることが出来ます。

最後に芽生姜。別名矢生姜や筆生姜・軟化生姜とも呼ばれており、焼き魚に添えられているピンク色で棒状の“はじかみ”に使用されているものです。芽生姜は葉が4枚~5枚程度出来た頃と葉生姜よりも更に早い段階で収穫されたもので、塊茎が茎と明確な違いがないほど細いことが特徴。育て方も異なり、密に植えることで軟化栽培し、ある程度成長させたところで日に当てて茎元に色を付けるのだとか。品種としては谷中生姜・三州生姜・金時生姜など葉生姜と同じく小生姜系のものが使われていますが、金時生姜が多いようです。

参考元:今旬の谷中しょうが 強い殺菌作用と食欲増進効果あり昔はお坊さんのお中元?グラデーションが美しい谷中生姜(東京)