柿(カキ)の特徴と栄養成分・期待できる健康メリットとは

食べ物辞典:柿

日本の秋を代表する果物として古くから親しまれてきた柿。甘味は強めですが、トロピカルフルーツ類とはちょっと違った、日本らしい風味を楽しめる果物の一つと言えるかもしれません。弥生時代以前から私達の先祖は柿を食べていたと考えられていますし、今でも「柿が赤くなれば、医者が青くなる」なんて言い伝えも残っていますよね。現在でもビタミンCとカロテノイドが補給できる果物として注目され、昔の方が医者いらずと呼んだ理由ではないかとも考えられています。そんな柿の歴史や栄養効果について詳しくご紹介します。

柿/かきのイメージ画像:食べ物辞典トップ用

和名:柿(かき)
英語:Kaki Persimmon/Oriental persimmon
学名:Diospyros kaki

柿(カキ)のプロフイール

柿とは

柿は日本の秋の味覚・秋の風物詩と言える果物で、秋の季語としても使われています。庭木としても柿が植えられているお宅もありますし、それを盗む近所の子供が盗んで叱られるシーンなどもお馴染みですね。童話『さるかに合戦』でもキーとなる果物ですし、「桃栗三年柿八年」という諺(ことわざ)や「隣の客はよく柿喰う客だ」という早口言葉があったりと、食用だけではなく文化的な面でも様々なシーンで登場する果物の一つと言える存在。果物としてだけではなく、秋になると柿の実をかたどった和菓子なども流通しますしね。日本の文化や風習にも密着した、伝統的な食材の一つと言えるのではないでしょうか。

また、柿は昔から「柿が赤くなれば、医者が青くなる」とも言われ、嗜好品としてだけではなく栄養豊富な果物としても親しまれてきた存在でもあります。近年はスーパーフードやスーパーフルーツとして話題の食材に目が行きがちですが、旬の時期には昔から親しまれてきた柿を取り入れてみても良いのではないでしょうか。懐かしいような優しい甘さは、食べるとホッコリとした気分になれますよ。甘柿はそのまま食べることが多いですが、サラダや和え物などおかずレシピにも活用することが出来ます。柔らかくなりすぎたものはシャーベットにしてシャリシャリ食感で食べるのも美味しいですね。

植物として柿(柿の木)はツツジ目カキノキ科に分類されています。原産は中国など東アジアという説が主流ですが、日本から欧米に伝わったこともあり柿の学名は“ディオスピロス・カキ(Diospyros kaki)”と日本語の呼び名がそのまま使われています。ちなみに属名のDiospyrosは“Dios(神)”+“pyros(穀物もしくは贈り物)”という言葉を組み合わせたものと言われていますから、神様から贈られた食べ物という意味合いになるのだとか。柿には1000以上もの品種があると言われています。柿は英語ではPersimmon(パーシモン)と言いますが、アメリカでは単にPersimmonと言った場合は先住民族であるアルゴンキン族が食べていたアメリカガキもしくはそれを干し柿にしたものの方がポピュラー。日本の“柿”を伝えたい場合にはKaki Persimmonか、日本語そのままの「Kaki」でも通じることが多いようです。

柿の品種は熟すと完全に甘くなる甘柿熟しても渋みがやや残る不完全甘柿熟しても果肉が固いうちは渋みが残る渋柿の3つに大きく分けられます。渋柿と言われると生では食べずに干し柿に加工する用……という印象がありますが、青果としても炭酸ガスなどで渋抜きを行ったもの(さわし柿)が出荷されています。平核無(ひらたねなし)柿や四ツ溝柿などがこちらに当たります。甘柿の品種としては富有柿・次郎柿・御所柿などが代表的で、不完全甘柿では禅寺丸柿や筆柿などが知られています。品種によって旬が異なるため、柿全体が流通する期間は7~3月と長めですが出荷・流通量が最も多いのは10~11月頃。

柿の栄養成分・効果について

栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

柿は果物類でも栄養価が高い部類と称され、中でもビタミンC含有が際立って多くなっています。そのほかβ-カロテンやβ-クリプトキサンチンなどのカロテノイド系色素やタンニンなどが含まれており、抗酸化フルーツとしても効果が期待できるでしょう。生の柿100gあたりのカロリーは60kcal、大きいものでなければ1つすべて食べても100kcal程度となります。

柿のイメージ

柿の効果効能、その根拠・理由とは?

二日酔い対策に

柿にはタンニン系ポリフェノールの一種で、渋味の元ともなっているシブオールという成分が含まれています。渋味のない甘柿には無いように思われがちですが、甘柿のシブオール(タンニン)は熟すと全て消えてしまうという訳ではありません。熟すうちにシブオールが不溶性に変化したことで口の中で溶けなくなる=渋みを感じなくなっているだけ。通称“ごま”と言われる果肉にある褐斑の正体が、この変化した不溶性タンニンです。

柿の渋み成分であるシブオール(タンニン)はアルコールの吸収を阻害する働きや、ビタミンCの働きと相乗して血中のアルコール分解・排出を促進する働きが期待されています。そのほか柿に含まれているアルコールデヒドロゲナーゼという酵素も同様にアルコール分解を助けると考えられていますし、アルコールによる利尿作用に伴って失われやすいカリウムの補充にも役立つでしょう。このため民間療法の中で柿は悪酔いの予防・二日酔い緩和に効果が期待でき、二日酔いの妙薬とも言われているそうです。

ビタミンC補給・抗酸化に

柿はビタミンCが多い果物で、甘柿100gあたりのビタミンC含有量は70mg柿一つ(※180gとして計算)を食べると126mgと、1日のビタミンC推奨摂取量をクリアできるほどです。ビタミンCは活性酸素による酸化を抑えてくれる、抗酸化ビタミンの一つ。ビタミンCはストレス・紫外線・タバコやお酒のほかに有酸素運動やPCやスマホの使用でも消費されると言われており、現代人にとっては消費が激しいビタミンの一つとも言える存在。摂取推奨量は1日100㎎とされていますが、生活習慣や環境によってはそれ以上の摂取が必要であるとも言われています。

柿はビタミンCの補給源として役立ちますし、β-カロテンやβ-クリプトキサンチンなどのカロテノイド類も含んでいます。渋み成分とされるシブオールもタンニンの一種であり抗酸化作用が期待できますから、合わせて体の酸化を防ぐ手助けをしてくれるでしょう。過剰に活性酸素が増加してしまうと体内の脂質・タンパク質・DNAなどに悪影響を及ぼし、体の持つ様々な機能を低下させたり、老化を促進するリスクファクターとなることが指摘されています。抗酸化物質を補給しでフリーラジカル/酸化ストレスを軽減することが、体を若々しく健康な状態に保つことに繋がると考えられています。

免疫力アップ・風邪予防に

ビタミンCは抗酸化作用によって免疫力の低下を予防してくれるだけではなく、自らが病原菌を攻撃する・抗ウイルス作用を持つインターフェロンの分泌促進作用を持つなど免疫機能に関わる働きを持つ可能性が報告されているビタミンでもあります。ビタミンCほど含有量が際立って多いというわけではありませんが、体内でビタミンAとして働き皮膚・粘膜の補強をしてくれるβ-カロテンも含まれています。鼻や喉などの呼吸器系粘膜が強化されることで、ウィルスの侵入を防いで風邪などの感染症予防に効果が期待できるでしょう。

加えてβ-カロテンと同じカロテノイドに分類されるβ-クリプトキサンチンという色素も柿には含まれています。β-クリプトキサンチンは血中のIgM・IgA濃度の上昇やインターフェロンの生成促進効果が報告されていますから、より直接的な免疫力向上効果も期待できます。間接的な部分で言えばビタミンCもコラーゲン生成促進によるウイルス侵入抑制・腸内フローラ改善による免疫力向上に繋がる可能性がありますから、昔の人が「柿が赤くなると医者が青くなる」「医者いらず」と言っていたのも納得ですね。

ストレス対策のサポートにも

柿に豊富に含まれているビタミンCは、ストレスに負けない健やかな体を保つためにも必要なビタミンです。人の体はストレス下にあると、その状況に対応するためコルチゾールなどの副腎皮質ホルモン(抗ストレスホルモン)を分泌してストレス状況から自分自身を守れるようにコンディションを整えます。別名「抗ストレスホルモン」とも呼ばれる副腎皮質ホルモンは生成や分泌の際にビタミンCを消費するため、ストレス下にあると消費が激しくなることも分かっています。ビタミンCが不足すると抗ストレスホルモンの分泌が低下する=ストレスに対しての反応が取れにくくなってしまうため、ビタミンCの適切な補給はストレス耐性を高めることに繋がると考えられています。

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目の健康維持にも

β-カロテンやβ-クリプトキサンチンから体内で変換されるビタミンAは、網膜で光を感知するロドプシンの生成にも利用されています。不足なく補うことで目の疲れの緩和・視界をクリアにするなどの働きが期待できますし、ビタミンA不足は網膜の光に対する反応を鈍化させてしまうことも分かっています。このためビタミンAの原料となるβ-カロテンなどのカロテノイドを含む食材の補給は、夜盲症の予防や改善にも繋がると考えられています。加えてビタミンAは目や呼吸器などの粘膜を正常に保持する働きもありますから、β-カロテンを含む柿は目の疲れ軽減やドライアイ予防にも効果が期待できる果物と言えるでしょう。

抗酸化・血流トラブル予防

柿はミネラルの中ではカリウムを比較的多く含んでいます。カリウムは塩辛い食事などで多く摂りすぎたナトリウムの排出を促す働きがあり、結果として高血圧の予防や緩和に役立つ栄養素です。甘柿100gあたりのカリウム含有量は170mg(渋抜き柿の場合は200mg)となっており野菜類などと比較した場合はさほど多く感じないかもしれませんが、同グラムで比較した場合はスイカの約1.5倍となります。食事で不足しがちな分をデザートとして食べたり、血圧が気になる方はお菓子の代わりに柿を食べえるようにすると良いでしょう。

また柿には抗酸化作用を持つビタミンCやβ-カロテン、β-クリプトキサンチンなどが含まれていますし、シブオール(タンニン)も抗酸化作用によって血液をサラサラに保つなどの働きがあると考えられています。これら抗酸化成分が摂取できることから、柿は過酸化脂質が血管に付着・蓄積して起こる動脈硬化の予防にも役立つのではないかと期待されています。ビタミンCも抗酸化作用の他、コラーゲン生成を促すことで血管を丈夫に保ってくれる働きもありますから、心筋梗塞や脳梗塞などの発症リスク低減にも役立ってくれるでしょう。

整腸・むくみ予防

柿100gあたりの食物繊維量は1.6gと、同グラムで比較するとグレープフルーツの2倍以上。渋抜き柿であれば100gあたり2.8g(うち水溶性0.5g/不溶性2.3g)と、青果類トップクラスに含まれるほどの食物繊維を摂取することが出来ます。加えて柿には便を柔らかくする・乳酸菌のエサになり腸内フローラのバランスを整えるなどの働きがあるビタミンCも豊富に含まれていますし、タンニンは収斂作用で腸を引き締めるので下痢の緩和にも効果が期待できます。お腹の調子を整えるのにも役立ってくれそうですね。

そのほか柿は果物の中では比較的多くカリウムを含んでいますので、味の濃い食事をした後などのナトリウム過多によるむくみの軽減にも役立ってくれるでしょう。お酒を飲んだ翌朝などのむくみ・身体の重さ(だるさ)軽減に効果が期待できます。ただし生の柿は体を冷やす作用がありますので、冷え性気味の方・血行が悪い方は食べ過ぎに注意が必要です。

アンチエイジング・美肌保持に

柿にはビタミンCやカロテノイドなど、抗酸化作用を持つ成分が多く含まれています。特に柿に豊富なビタミンCは抗酸化作用によって肌細胞のダメージを軽減してくれること加えて、コラーゲン生成促進作用も認められています。メラニン色素の生成に関わる酵素チロシナーゼの働きを阻害してシミを予防したり、メラニン色素還元による美白にも役立つと考えられることから、美肌作りにも欠かせないビタミンとしてサプリメントなどの形でも女性を中心に人気がある栄養素の一つですね。

β-カロテンも抗酸化作用を持つ成分ですし、体内でビタミンAに変換されることで皮膚や粘膜を健康に保つ働き・角質層に存在するNMF(天然保湿因子)の生成促進にも関わるため、肌の潤い保持に役立つビタミンと言えます。同じくカロテノイド系のβ-クリプトキサンチンも摂取実験ではヒアルロン酸量の増加・メラニン色素生成抑制などの働きが報告されており、美肌・美白効果があると考えられています。鉄分吸収阻害などで悪い印象を持たれがちなタンニンも、収斂作用で肌(毛穴)を引き締めたり、メラニン生成を抑制するなどの働きが報告されていますよ。

果物類トップクラスのビタミンCに加えてこれらの成分を含んでいる柿は美白・美肌作り・アンチエイジングなど美容面でも注目されています。β-クリプトキサンチンの含有量は温州みかん系が圧倒的ですが、実は甘柿の方がオレンジよりも含有量が多いですし、ビタミンCが多いということもありバランスの良い食材と言えそうですね。強いて言えばビタミンEの含有量が低めですので、ビタミンEを多く含むナッツ類やアボカドなどと組み合わせるとより効果的でしょう。

干し柿について

日本の元祖ドライフルーツとも言われるの干し柿。生柿を干し柿にすると甘みが増すだけではなく、栄養成分も濃縮されより栄養補給源して優れた存在になるとして注目されています。柿は食物繊維(特に水溶性食物繊維)が豊富だと紹介されることがありますが、生柿の水溶性食物繊維量は実はさほど多くありません。100gあたりの水溶性食物繊維量が生柿0.2gに対し、干し柿1.3gとかなり多くなりますから、便秘の解消や腸内環境を整えたい場合は干し柿の方が向いていると言えるでしょう。また干し柿にすることで生柿よりもβ-カロテンが2倍以上、β-クリプトキサンチンが3倍以上に増加します。

しかし干し柿にすることで水分が抜けて栄養価が凝縮される分、100gあたりのカロリーも276kcalと高くなります。同グラムで比較すると生で柿を食べた場合の4倍以上にもなりますし、糖質の含有率も生柿は全体の16%程度であるのに対し、干し柿は70%以上と非常に多くなります。そのほかビタミンCの大半が失われてしまうという側面もありますので「干し柿のほうが良い」と一概には言えません。カロテノイドを摂りたいなどの目的がある場合でも、嗜好品として美味しく頂く場合でも、食べ過ぎには注意するようにしてください。

目的別、柿のおすすめ食べ合わせ

柿の選び方・食べ方・注意点

柿は体を冷やす食べ物とされており、食べ過ぎると体の冷えや下痢などを起こす可能性があります。「柿を食べると流産をおこす」という言葉があるのも体を冷やすことに対する警告のようなもの。またタンニンを含んでいるため鉄分吸収を阻害してしまう可能性もあります。1日1~2個程度の摂取では問題ないと言われていますが、貧血気味の方や鉄剤を飲んでいる方は食べるタイミングに注意しましょう。

渋柿は乾燥させて干し柿にする…というイメージが強いですが、ご家庭で干し柿を作るのは結構大変。もう少し手軽な渋抜き(さわし)方法としては35度以上の焼酎を吹きかけて置いておく・焼酎にヘタ部分を浸した状態で置いておくなどの方法や、40℃くらいのお湯に付けて湯抜きする・米ぬかに付ける・りんごと一緒の容器に入れ数日~1週間程度密閉など様々な方法があります。ドライアイスを使った“炭酸ガス抜き方”というのも、難易度は高いですが美味しくなりやすいようです。

美味しい柿の選び方・保存方法

柿を選ぶ時は、果皮が鮮やかなオレンジ色をしており艶が良いものを選ぶようにします。ヘタ付近までしっかりと均一に色付いているもの・軸が果実の真ん中にあるものを選ぶようにすると味が均一で美味しいと言われています。みずみずしく手に持った時にずっしりと重さのあるものを選ぶようにし、柔らかすぎるものや大きなキズ・変色が見られるものは避けるようにします。また鮮度を見分けるには、果皮だけではなくヘタを見るようにするのがポイント。ヘタが緑色で四枚揃っており、果実との間に隙間なくピッタリとくっついているものを選びましょう。

柿は常温でも収穫後10日以上は保存できると言われている、日持ちがする果物。と言っても常温で置いておくと追熟が進んでしまい、ドロリとした柔らかい食感へと変化してきます。このため歯ごたえを残した状態で保存したい場合は冷蔵庫(野菜室)に入れておくのがお勧め。ヘタの部分が乾かないように湿らせたキッチンペーパーを付け、ラップで一個ずつ包んで冷蔵庫に入れると一ヶ月近く保存することができます。

柿の葉の活用方法について

柿の葉寿司や下記の葉茶として利用されている柿の葉はビタミンB1・B2・C・Kの含有量が多く、特にビタミンCに関しては果実部分の約15倍と言われています。柿の葉に含まれるビタミンCは「プロビタミンC」と呼ばれる熱に強く壊れにくいものなので柿の葉茶からでもビタミンCが補給できます。そのほかルチンやケルセチンなど通称“ビタミンP”と言われるビタミンCの働きをサポートしてくれる栄養素も含まれていますので、より手軽にビタミンCを補給したいという場合に取り入れてみてください。

また、柿の葉に含まれるポリフェノールの一種の「アストラガリン」という成分は、抗アレルギー作用があることから、最近は花粉症の予防として注目されています。花粉が飛ぶ前から柿の葉茶を飲んでいると花粉症が緩和・改善されると言われています。お茶にしてのむほか入浴剤としても古くから利用されており、柿葉湯はかゆみ・湿疹などの皮膚トラブル軽減に用いられています。こうした効能については伝統的な経験則に基いた部分が多い・データが不足しているという指摘もありますが、お婆ちゃんの知恵袋の一つとして試してみても良いのでは?

【参考元】