ひよこ豆の特徴と栄養成分・期待できる健康メリットとは

食べ物辞典:ひよこ豆

ひよこ豆はチャナ豆やガルバンゾとも呼ばれ、日本でも健康食として注目されているフムスの原料でもあります。高タンパク高繊維食で、かつビタミンB群やミネラルが豊富。粉末化したものはグルテンフリーな小麦粉の代用品としても注目されています。血糖値を上げにくいなどのメリットからダイエットにも取り入れられていますよ。そんなひよこ豆に含まれている栄養成分、期待される健康メリットや注意点を詳しくご紹介します。

ひよこ豆/ガルバンゾ/チャナ豆/のイメージ画像:食べ物辞典トップ用

和名:ヒヨコマメ(雛豆)
英名:chickpea/garbanzo bean/Egyptian pea
学名:Cicer arientium

ひよこ豆(ガルバンゾ/チャナ豆)とは

ひよこ豆のプロフイール

近年はサラダや煮込み、フムスなど日本でも食べられる機会が増えているひよこ豆。ベジタリアン料理やビーガン料理、ムスリムの方が食べるハラールに使われる食材として紹介されることもありますね。

コリコリとモソモソの中間くらいの食感、ちょっと独特な風味があるので、大豆よりも好き嫌いが分かれる豆類と言えるかもしれません。が、健康志向の高間えりもあってか、水煮缶詰やカレーなどのレトルト食品、スナック感覚で食べられるフライひよこ豆など使いやすい・食べやすい商品も増えています。

ひよこ豆はチャナマサラやダールなどカレー系のインド料理、中東料理のフムスのイメージがあるように、ひよこ豆は南アジアから中東にかけての地域を中心に食べられてきた食材。中東で約7500年前から食され、遅くとも紀元前3000年頃までには地中海地域やインド周辺地域に伝わっていたと考えられています。

古代エジプトや古代ギリシア・ローマでも、ひよこ豆は食されていました[1]。ひよこ豆にはガルバンゾ(Garbanzo Beans)、エジプト豆(Egyptian pea)、チャナ豆(Chana)など別の呼び方が沢山ありますが、これも各地での呼び方をそのまま使ったもの。ガルバンゾはスペイン語、チャナはインド語での呼び方(音)です。

ヨーロッパや北アフリカでもひよこ豆は食されています。中東のイメージがあるフムス(茹でたひよこ豆にオイルやレモンなどを加えてペースト状にしたもの)も、地中海沿岸地域などで広く食べられていますよ。また、アラブでは潰したひよこ豆に味付けし丸めて揚げたコロッケのような料理ファラフェル(Falafel)、シチリア島ではパネッレ(Panelle)というひよこ豆の粉を練って揚げたものが名物。

インドでベサン粉と呼ばれている、ひよこ豆の粉もパン・麺・スイーツまで様々に活用されています。ベサン粉はグルテンフリー食材として、世界中のグルテンアレルギーの方、グルテンフリーダイエットを行う方などからも注目されています。また、ヴィーガンの方が卵の代用品として使っている“アクアファバ(Aquafaba)”もひよこ豆の煮汁が原料。フムスも世界的に注目されている健康食と言えますから、ひよこ豆もスーパーフードに近い食材と言えるのかもしれません。

ひよこ豆の種類について

ひよこ豆の種類は大きく

  • Kabuli (カブリ/カーブリー)改行-表皮の色が肌色~乳白色で滑らかな質感。食感も柔らかめ
  • desi (デシ/デーシー)改行-カブリより小粒で、表面が褐色でザラリとした質感。食感は固め

の2系統に分けられます[1]。

日本や欧米ではクリーム色で滑らかな触感のカブリ系が多く使われていますが、インドなどでは小さく暗めの色をしたデシ系統のひよこ豆が多く食べられており、表面の色も黒みが強いもの・茶色みの強いもの・赤みの強いものと地味にカラフル。色が黒っぽいひよこ豆は“Black Chickpeas”や“Kala Chana”と呼ばれ、繊維含有量が高く健康メリットがより期待できるとの見解もあります。

ひよこ豆の栄養成分・効果について

栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

ひよこ豆は三大栄養素の中では炭水化物とタンパク質の含有率が高く、脂質100gあたり5.2gと少なめの食材。100gあたりのカロリーは乾燥ひよこ豆336cal/茹でひよこ豆149kcalと、大豆小豆の中間くらい。亜鉛・マグネシウム・カリウムなどのミネラル類が多く含まれており、ビタミンB6を筆頭としたビタミンB群の含有量も高めとなっています。

ひよこ豆(ガルバンゾ/チャナ豆)のイメージ画像

ひよこ豆の効果効能、その根拠・理由とは?

栄養補給・疲労回復に

ひよこ豆はタンパク質の補給源として優れており、タンパク質の代謝に関わるビタミンB6が100gあたり0.64mgと豊富に含まれています。アミノ酸も多く、米や小麦だけでは不足しがちな必須アミノ酸類の補給に適した食材であることも評価されています。

加えて、糖代謝に関わるビタミンB1や、三大栄養素(糖質・脂質・タンパク質)の代謝を行う酵素の働きをサポートしてくれるナイアシン、マグネシウムや亜鉛などのミネラルも豊富。このため、ビーガンやベジタリアンの人々にとってタンパク質やミネラル、ビタミンB群の不足を補うための食材としても支持されています[2]。

また、食材に制限なくご飯を食べている人にとっても、ひよこ豆は不足しがちな栄養素を補給できる存在。代謝に関わる栄養素が多く含まれていますから、エネルギー産生の促進や、疲労物質の代謝を促進する手助けをする=疲労回復にも役立つ可能性があるでしょう。タンパク質・アミノ酸の補給源としても優れているので、トレーニング中の方にも適した食材と言えそうです。

貧血予防・妊娠中の栄養補給に

ひよこ豆には造血に関わる鉄分や亜鉛、銅などのミネラルが多く含まれています。ひよこ豆の鉄分含有量は乾燥100gあたり2.6mg/茹で100gあたり1.2mgと、豆類の中では中堅。ただ、ひよこ豆はサラダのトッピングやカレー、フムスなど使い勝手が良い食材。サラダにトッピングするなどして食事に取り入れると、普段の食生活で不足しがちな鉄分の補給に役立ってくれるでしょう。鉄欠乏性貧血予防として摂取する場合は、鉄分の吸収率を高めてくれるビタミンCやクエン酸と組み合わせて食べると効果的です。

加えて、ひよこ豆は乾燥状態で100gあたり350μg/茹で状態で110μgと葉酸も豊富。茹で100gあたり110μgは、実は同グラムのほうれんそう(茹で)と同じ含有量です。葉酸は赤血球の合成に関わるほか、核酸をサポートすることで細胞の生まれ変わりを正常に行う働きもあります。このため胎児の正常な発育に不可欠な栄養素でもあり、妊娠中や授乳中は通常時の1.5倍量(1日400μg)が摂取目安。ひよこ豆は良質なタンパク質の補給源でもありますから、妊娠中の栄養補給にも役立ってくれるでしょう。

ひよこ豆は乾燥状態で100gあたり0.64mg/茹で状態で0.18mgとビタミンB6も多く含んでいます。ビタミンB6はアミノ酸や神経伝達物質の合成など、様々な体の働きに関与しているビタミンですが、実は悪阻(つわり)の緩和に役立つ可能性も報告されています。妊娠中の女性を対象にした研究でもビタミンB6(ピリドキシン)のの経口摂取で吐き気の減少が報告されていることもあり[3]、つわり予防や悪化防止に期待されています。

便秘予防・改善サポートに

ひよこ豆は乾燥100gあたり16.3gと、全体重量の15%以上を食物繊維が占めている食材。茹で状態のひよこ豆でも、100gあたり11.6gと非常に食物繊維が占める割合が高くなっています。お食事に加えることで不足しがちな食物繊維の補給源として役立ってくれるでしょう。腸の蠕動運動を促してくれる不溶性食物繊維が多く含まれているので、便秘予防や改善サポートにも期待できます。

むくみ対策にも期待

ひよこ豆には、カリウムが乾燥状態で100gあたり1200mg/茹で状態100gあたりでも350mgと多く含まれています。カリウムは、ナトリウムとバランスを取り合い、ナトリウムが多い場合はナトリウム排出を促すことで体内の水分バランスを整えてくれるミネラル。むくみ予防にも効果が期待されています。

また、ひよこ豆にはマグネシウムも茹で100gあたり51mg(乾燥100gあたり140mg)と比較的多く含まれています。マグネシウムは血行やリンパの流れを正常に整える働きがあるほか、体内でのカリウム運搬に関わるミネラル。合わせて摂取することで、循環を良くしてむくみ予防をサポートしてくれるでしょう。

成長サポート・骨粗鬆症予防に

ひよこ豆にはカルシウム、カルシウムの取り込みを助けるマグネシウム、骨へのカルシウム沈着を助けるビタミンKが含まれています。カルシウムは丈夫な骨や歯の形成・維持する働きがあり、お子さんの成長のサポートや加齢による骨粗鬆症予防にも意識的に摂取したいミネラル。そのほか細胞の生まれ変わりを促す亜鉛も含まれているため、お子さんの成長サポートや丈夫な骨の維持にも役立つと考えられます。

コレステロール対策・血糖値対策に

ひよこ豆はタンパク質の補給源として適しており、グリセミック指数(GI値)が低く食後血糖値の上昇を招く可能性が低いという点でも注目されています。人を対象とした研究でも血糖応答の低下が報告されており、高脂肪食ラットを使った実験では食後の高血糖と高インスリン血症を予防する働きが見られた・内臓脂肪症が少なく脂質プロファイルが改善したなどの研究報告もあります[4]。このため、ひよこ豆を食事に取り入れることは血糖値対策やコレステロール対策に役立つのではないかと期待されています。

食物繊維とタンパク質が豊富な事に加え、ひよこ豆はミネラルやビタミンB群の補給にも役立ちます。こうした栄養素、特にマグネシウムや亜鉛などのミネラルも、不足なく補うことで2型糖尿病のリスク低減に繋がる可能性が示唆されている存在[5]。ひよこ豆は食品ですから、薬のように劇的な効果があるわけではありませんが、健康的な食事を意識するなかで心強いサポーターとなってくれるでしょう。

ダイエットサポートに

ひよこ豆は良質なタンパク質の補給源であり、かつ血糖値を急激に上げにくい食材。代謝に関わるビタミンB群やミネラルも幅広く含んでいることから、ダイエットサポートにも使われています。ヒヨコマメ/フムスの消費者は肥満になる可能性が53%低く、血糖値が上昇する可能性が51%低いという見解もあり[4]、欧米ではひよこ豆のペーストを使った“フムスダイエット”も提唱されているほど。グルテンフリーダイエットや地中海式ダイエットなどでも取り入れられていますね。

ひよこ豆は100gあたりのカロリーも茹でた状態であれば171kcalとさほど高くなく、高タンパク・高食物繊維なので腹持ちが良いというのも嬉しいポイント。とは言え、肥満になる可能性が53%低い、という点に関しては因果関係が説明できないとの指摘もありますから[4]、ひよこ豆を食べるだけで痩せるとは考えないほうが良いでしょう。適度な運動を行いながら、筋肉を落とさず健康的に痩せたいという方には最適な食材の一つと言えます。

Sponsored Link

生活習慣病予防にも期待

ひよこ豆に多く含まれているカリウムはむくみ対策としてだけではなく、高血圧予防にも役立つミネラル。これはカリウムにナトリウムと競合して細胞内外の浸透圧を調整する働きがあるためです。ナトリウムだけが過剰になると、私達の体は水分を取り込むことでナトリウム濃度を一定に保とうとしますが、水分によって血液量が増えることにり心臓に負担がかる=血圧が上がりやすくなるというデメリットもあります。このためナトリウムの排出を促すカリウムの補給はむくみ・高血圧の予防に繋がると考えられます。

また、2006年『Annals of Nutrition and Metabolism』で発表された47人の男女を対象に行われたオーストラリアの研究では、ひよこ豆を加えた食事を摂取したグループの方が、小麦を加えた食事のグループよりも血清総コレステロールと悪玉(LDL)コレステロールが減少したことが報告されています[4]。

2008年『Journal of the American Dietetic Association』に発表された同チームによる研究では、1週間あたり最低728gのひよこ豆を12週間摂取した被験者グループに総コレステロールと血糖コントロールにわずかな改善が見られたという報告も。ひよこ豆の補給は高血圧・動脈硬化・心血管疾患・2型糖尿病などのリスク低減にも役立つかもしれません。

ストレス対策・メンタルサポートに

多少のバラつきはあるものの、ひよこ豆はミネラルを幅広く含む豆の一つでもあります。ミネラルは様々な体の機能の維持・調節に必要な栄養素で、神経伝達や精神面とも関わりがある存在。特に亜鉛とマグネシウムは心の健康維持に関わりが深いとして注目されています。どちらも欠乏すると抑うつや不安症状を起こすことが分かっており、補給することで抑うつ気分の改善に役立つのではないかと研究も行われています[6]。

同じく神経伝達物質の合成に関わるビタミンB群・葉酸もまた、抗うつ効果が見られたことが報告されている成分[6]。このため、こうした栄養素を不足なく補うことでストレス耐性を高めたり、メンタルバランスを整えることに繋がるのではないかと期待されています。ひよこ豆はビタミンB群とミネラルを広く含む食材ですから、取り入れると精神麺での健康維持サポートに繋がる可能性もあります。

美肌サポートにも

乾燥状態で100gあたり3.2mg/茹で状態100gあたりでも1.8mgと、ひよこ豆に豊富に含まれている亜鉛は細胞の生まれ変わりを助ける働きがあります。皮膚の炎症や傷跡の回復・再生促進などに役立つほか、メラニン色素の代謝の促進やコラーゲンの生成にも関わると感がられることから「美肌ミネラル」と称されることもある栄養素。

ひよこ豆には亜鉛だけではなく、タンパク質の代謝に関わり皮膚・髪・爪などを丈夫に保つ働きのあるビタミンB6、皮膚を健やかに保つ働きが期待されるビオチンも多く含まれていますから、相乗して肌を健やかに保つサポートとして役立ってくれるでしょう。食物繊維の補給による便秘改善も肌荒れ予防に繋がりますね。

目的別、ひよこ豆のおすすめ食べ合わせ

ひよこ豆の注意点、その他

日本で多く流通しているタイプのひよこ豆にはビタミンCがほとんど含まれていません。このためビタミンCを含む食品と組み合わせて食べるとより高い健康効果が期待でき、ひよこ豆に含まれているミネラル類の吸収率向上にもなります。

ひよこ豆の注意点

ひよこ豆は食物繊維(特に不溶性食物繊維)の含有率が高いため、FODMAPの低い食事を推奨されている方の食事としては適していません。体質によって腹部膨満感・腹痛・下痢・悪心などを起こす場合もありますので、体調を確認しながら少量ずつ取り入れるようにしましょう。

【参考元】