リンゴ(林檎)の特徴と栄養成分・期待できる健康メリットとは

食べ物辞典:リンゴ

果物としては淡白め、ホッとするような優しい味わいのリンゴ。お腹を壊したときや風邪をひいた時の療養食感覚でも使用されますし、世界には「1日1個のりんごは医者を遠ざける」「りんごが赤くなると医者が青くなる」なんて言葉もあります。水溶性食物繊維が含まれていることからお腹の調子を整える手助けが期待されているほか、近年は“アップルポリフェノール”とも称されるケルセチンなど様々な抗酸化物質を含むことからも健康・美容サポートに役立つと考えられています。そんなリンゴの歴史や栄養効果について詳しくご紹介します。

リンゴ/林檎のイメージ画像:食べ物辞典トップ用

和名:りんご(林檎)
英語:apple
学名:Malus pumila

林檎(りんご)のプロフイール

リンゴとは

シャキシャキとした歯ごたえと、控えめで優しい酸味と甘味が特徴のリンゴ。ミカンと並んで日本でも定番中の定番と言える果物であり、世界的にもポピュラーな果樹の一つ。旧約聖書など宗教に関わるものから、白雪姫など世界中の子どもが読む童話、近年ではアップル社のロゴマークなど、様々なところで目にする果物でもあります。もちろん食材としても広く使われており、生で食べるほか焼きリンゴ・アップルパイなどのお菓子類・カレーの隠し味をはじめ、その癖の無さからサラダや肉巻きなどおかずレシピでも活躍します。

また「1日1個のりんごは医者を遠ざける」「りんごが赤くなると医者が青くなる」などの言葉もありますし、風邪をひいた時に食べられることも多いので“体に優しい”もしくは“お腹に優しい果物”というイメージもあるように感じます。赤ちゃんの離乳食やファーストフルーツとして、小さいお子さん用のお菓子や飲料製品などでも見かける機会の多い果物と言えるのではないでしょうか。大人でもかつてリンゴダイエットが一大ブームとなった時期もありますし、健康維持やダイエット・美肌など美容を意識してリンゴやリンゴ酢を取り入れているという女性も。風味の面でも体のサポーターという意味でも身近な存在であり、欧米では”miracle food(奇跡の果物)”と称されることもありますよ。

そんな私達にとって親しみのある果物のリンゴは、バラ科リンゴ属のうち学名をMalus pumilaという種。植物分類において使われる正式な和名は“西洋林檎(セイヨウリンゴ)”と呼びます。これは同属別種の和林檎(ワリンゴ/学名M. asiatica)と区別するためで、現在は国内でも果物としての流通はセイヨウリンゴ系統が主。ワリンゴはほとんど流通していません。リンゴの栽培品種は7,500以上、多ければ1万種類以上あると言われるほど様々な品種があります。暑さに弱いため熱帯での栽培は少ないですが、世界中で栽培されているからこそ、と言えるかも知れませんね。フランス菓子の“タルト・タタン”をはじめ、イギリスで食べられているりんご飴のような“トフィーアップル”などリンゴを使った伝統菓子もあります。日本では“りんご飴”がお祭りの定番ですが、欧米でもトフィーアップルやアップルキャンデーはハロウィーンやガイフォークスナイトなどのお祭りの定番アイテムなのだとか。

暑さが得意ではないというリンゴの性質から、日本でリンゴの栽培が盛んなのは青森県や長野県など冷涼な地域。日本で品種登録・維持されているものだけでも80種類以上と、様々なリンゴが生産されています。スーパーなどでも品種別で売られていますよね。品種の分け方は様々ですが、果皮の色が赤いか、それ以外(黄色~緑色)をしているかの違いが最も分かりやすい差異。日本では赤皮系の品種がメインになっており、特に“ふじ”や“つがる”系統が多く流通しています。とは言え最近は果皮が緑色をしている“王林”などの青りんご系統や、果皮が黄色い“シナノゴールド”などを見かけることも昔よりは多くなっているように感じます。比較的新しい品種では収穫ぎりぎりまで袋を被せることで表皮をクリーム色にした“ムーンふじ”などもありますね。ちなみに、リンゴの旬は概ね秋から冬にかけて……と言われていますが品種によって8月頃から5月頃までとかなり差があります。

林檎(りんご)の栄養成分・効果について

栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

リンゴはリンゴポリフェノールと呼ばれる様々なポリフェノールを豊富に含み、ビタミンやミネラルも少量ずつですが幅広く含んでいます。加えてペクチンなどの食物繊維・リンゴ酸などの有機酸類を含む果物として紹介されることもあり栄養豊富で健康や美容に良いという印象を持たれている方も多いかもしれません。しかし実際は“豊富”とまでは言えないものも多くありますので、過信は禁物です。林檎とりんごジュースのイメージ

リンゴの効果効能、その根拠・理由とは?

栄養補給・疲労回復に

風味としてはそこまで甘みが強くないリンゴですが、全体重量の15%近くが炭水化物と果物類の中でも炭水化物量が高い存在です。そのため果糖・ブドウ糖・ショ糖などの糖質含有量が高く、食べてからすぐにエネルギーに変換されやすい=エネルギー補給や疲労回復に即効性があると考えられています。際立って多いという訳ではありませんが、代謝に関わるビタミンB群やビタミンC・ミネラルの補給にも繋がることも嬉しいところ。素早くエネルギー転換される糖質・体を動かすために必要な必須微量栄養素が手軽に摂取できることから、栄養補給源として優秀であると評価されているわけですね。

また、リンゴには有機酸の一つであるリンゴ酸が含まれていることから疲労回復を促してくれるのではという説もあります。クエン酸だけではなくリンゴ酸もエネルギー代謝に関わるクエン酸回路(TCAサイクル)の中で生成される物質であり、外側から補うことでクエン酸回路を活発にするのではないかと考えられています。ただしクエン酸やリンゴ酸の疲労回復効果についても信頼できる十分なデータがないこと・摂取しても疲労回復効果はないという報告も多くあることから疲労回復効果は無いという見解も少なくありません。ケルセチンやルチンなどのポリフェノールによって活性酸素の発生が抑制されるという、抗酸化の面からの方が疲労回復に役立つ可能性が高いと言えるかもしれません。

便秘改善・お腹のサポートに

リンゴと言えば、お腹を壊した時に食べたという経験のある方も多いのではないでしょうか。逆に便秘気味の時に取り入れると良い食材として紹介されることもあり、お腹に優しいという印象を持たれがちな果物と言えます。こうした印象はリンゴにペクチンが含まれている事が大きいと考えられます。ペクチンは水溶性食物繊維に分類される多糖類で、水に溶けるとゲル状になるという性質があります。リンゴなどの果物を煮てジャムを作るとゼリー状に固まりますが、これもペクチンによる働き。この性質から水っぽい便を固めるのを助けたり、保水剤のように働いて便が固くなりすぎるのを防ぐ=便秘の時・下痢の時どちらでもお腹の調子を整える働きが期待できるわけです。

また、ペクチンはプロバイオティクスのように機能する、つまり腸内の善玉菌(乳酸菌)のエサとなって増殖を助けて腸内環境を整える働きも認められています。水に溶け粘度のあるゲル状になること腸の老廃物やコレステロール・悪玉菌などを巻き込んで体外に排出させる働きも期待できるでしょう。このためリンゴはお腹の調子を整えてくれる果物として親しまれています。民間療法・お祖母ちゃんの知恵袋などでも、リンゴを皮ごと擦りおろしたものを便秘改善に、煮リンゴとその煮汁を下痢止めに飲むなどの方法がありますね。

ちなみに、リンゴ100gあたりの食物繊維総量は皮付きで1.9g、皮なしであれば1.4g。このうちペクチンを含む水溶性食物繊維料は0.4g~0.5gと全体量の半分以下で、果物類の中では水溶性食物繊維量が特別多いという訳ではありません。食物繊維補給のためにリンゴを闇雲に食べるのではなく、バランスが良い食生活を心がけ、間食やデザートを兼ねた食物繊維補給にリンゴを取り入れることをお勧めします。

抗酸化・アンチエイジングに

リンゴの成分として注目を集めているのが“リンゴポリフェノール”と呼ばれる1998年に発見された様々なポリフェノール類。代表的なものとしてはプロシアニジン類やプロトカテク酸カテキン類・クロロゲン酸・ケルセチンなどが挙げられ、その他にもリンゴには100種類以上のポリフェノールが含まれていると言われています。ビタミンCやビタミンえの含有量は果物類の中でも少ない部類ですが、こうした多様なポリフェノールを豊富に含むことからリンゴは抗酸化作用に優れた食材、アンチエイジングフルーツをしても注目されています。

活性酸素は酸素を使う代謝の中でも普通に発生する物質で、私達の体を守るための機能も持ち合わせています。しかし過剰に活性酸素が増加してしまうと、活性酸素は体内の脂質・タンパク質・DNAなどに悪影響を及ぼし、体の持つ様々な機能を低下させたり、老化を促進するリスクファクターとなることが指摘されています。このため体内の活性酸素を除去・抑制する働きを持つ抗酸化物質を補給し、フリーラジカル/酸化ストレスを軽減することが体を若々しく健康な状態に保つために必要であると考えられています。

心血管疾患・生活習慣病予防に

抗酸化作用は細胞への酸化ダメージを防ぐことで若々しさを保持するだけではなく、生活習慣病、特に血流系トラブルの予防にも役立つと考えられています。悪玉(LDL)コレステロールが活性酸素によって酸化し、酸化したLDLコレステロールが血管内に蓄積することで発症リスクが高まるアテローム性動脈硬化もありますね。リンゴには活性酸素を除去・抑制してくれるポリフェノールが豊富。かつ、リンゴポリフェノールと総称される中には血圧抑制効果が報告されているエピカテキン、血管の炎症軽減や血中総コレステロールとLDLコレステロールの低減効果が示唆されているケルセチンなど含まれています。

2008年『Molecular Nutrition & Food Research』に発表された高コレステロール血症ハムスターを使ったフランスの研究では、りんごジュース摂取群のハムスターは総コレステロール値と動脈内プラーク蓄積に減少が見られたことが報告されています。加えて水溶性食物繊維の一種であるペクチンにもコレステロールの吸着・排出促進作用や糖質吸収抑制作用が報告されているため、リンゴは糖尿病など生活習慣病と言われる様々な病気の予防に役立つのではないかと考えられています。

ただし、リンゴはカリウムが豊富とも言われていますが、実のところ100gあたりのカリウム含有量は120mgと多くありません。丸ごと一つ(300g程度)食べたとしても360mgと、バナナ100g分程のカリウムが摂取できる程度です。リンゴは糖質の多い果物でもありますし、カリウムだけではなくペクチンの含有量もそこまで多い訳ではありません。健康のサポートをしてくれる可能性があるとは言え、一つの食材だけを大量に食べれば栄養バランスも崩れてしまいます。適度の摂取を心がけ、バランスよく取り入れるようにしましょう。

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むくみ・肥満予防に

リンゴは上記の通りカリウム含有量はさほど多くありません。しかし、リンゴにはカリウムだけではなくポリフェノールも含まれていますから、抗酸化作用から血液循環改善や内臓機能の活発化などに繋がると考えられます。カリウムはナトリウム濃度を調節することで利尿を促すのが主ですが、リンゴポリフェノールによる作用から血行不良や代謝低下などによって起こるむくみ軽減にも効果が期待できるでしょう。東洋医学的な見解でもリンゴは“体を温める性質(温性)”の果物に分類されていますから、冷え性の方も安心して摂取出来る果物と言えそうですね。

また、リンゴといえばダイエットのお供に使われることもある食材。リンゴが肥満予防に役立つと考えられているのは、ペクチンなどの食物繊維が便通や腸内環境を整えてくれること、100gあたりの皮付き61kcal・皮むき57kcalと主食類よりも低カロリーで満腹感の維持に繋がるというのが第一。加えて近年はリンゴポリフェノールに血糖値上昇が抑える働きがある可能性も報告されています。これはリンゴ中のポリフェノールに脂肪の分解・蓄積を行っている酵素(リポタンパク・リパーゼ)の働きを抑制する働きがあり、糖質の吸収を抑制するためと考えられています。ペクチンにも食物の消化スピードを遅らせる働きが認められていますから、合わせて血糖値対策や肥満予防に効果が期待されています。

アンチエイジング・美肌保持

リンゴ、リンゴポリフェノールによる“抗酸化”は体内の酸化を予防して健康を保つだけではなく、内側からお肌の酸化予防に働きかけることで肌をキレイに保つ働きも期待されています。活性酸素によって肌細胞が酸化ダメージを受けると、シワやたるみ・くすみなどの肌老化が促進されると考えられています。このため抗酸化物質の補給は肌の若々しさを保持する手助けに繋がる可能性もあるでしょう。リンゴポリフェノールのうち、プロシアニジン類にはメラニン色素の過剰な生成を抑制する働きもや皮膚の光老化予防効果を持つ可能性も報告されています。内側からの紫外線ケアにも役立ってくれそうですね。

ちなみに野菜・果物類にお馴染みのβ-カロテン・ビタミンC・ビタミンEといった抗酸化ビタミン類もリンゴには含まれてますが、皮付き100gあたりでビタミンCは5mg・β-カロテンは27μg・ビタミンEは0.4mgと少量。皮むきの場合はさらにビタミン類が少なくなりますし、リンゴポリフェノールも果皮に多く含まれていることが認められています。美肌効果や老化予防効果を期待する場合は皮ごと食べるようにすると良いでしょう。ビタミン補給を意識しての摂取であれば、別の果物のほうが向いているように感じます。

そのほか期待されている働きも…

リンゴポリフェノール(アップルフェノン)にはヒスタミン遊離抑制作用など、アレルギー軽減に繋がる働きがを持つ可能性も報告されています。ペクチンもアレルギー軽減効果が期待されている成分のため、これらを含むリンゴもアトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギー緩和に役立つのではないかと注目されています。ただし報告数が少なく、まだ研究段階ではあるため効果の程は分かりません。

また、アップルフェノンは歯垢形成抑制に対する有効性が示唆されており、りんごを食べると虫歯予防や口臭予防に役立つと考えられています。リンゴを齧ることで歯の隙間にたまったゴミがとれる・歯茎が丈夫になるという見解もありますよ。そのほか、リンゴの抗酸化作用の高さから脳神経の保護や認知症予防に役立つ可能性なども研究されています。抗酸化&腸内環境を整える手助けをしてくれる果物でもあるので何らかのサポートは期待できますが、アレルギーを起こす方もいらっしゃる食材であることは念頭に置いておくべきでしょう。

目的別、リンゴのおすすめ食べ合わせ

林檎(りんご)の選び方・食べ方・注意点

りんごの表面は“油上がり”と呼ばれる油っぽいテカリがありますが、これは人が散布したワックスなどの薬剤ではなくリンゴ自身のリノール酸やオレイン酸などの脂肪酸が表面に滲み出てきたもの。水分の蒸発を抑えて乾燥しないようにという防護策であり、熟したものほど表面がコーティングされているので美味しさの目安とも言われています。表面をさっと洗えば問題なく食べられますし、皮ごと食べたほうがリンゴポリフェノールを余すところなく摂取できますよ。

りんごを切ったまま置いておくと茶色く変色するのは、リンゴポリフェノールの成分「エピカテキン」が空気と結合してしまったために起こる現象です。変色するとポリフェノールも減少してしまいますから、切ってすぐに食べない場合には塩水に浸すか・レモン果汁をかけるなど対策をしましょう。褐変してしまったものもレモン果汁に浸すと結合が解けて色を元に戻せると言われていますが、元通り綺麗にはなりにくいです。

美味しいリンゴの選び方・保存方法

リンゴはお尻の方までムラがなくしっかり色づいているもの、手に持った時にずっしりと重さのあるものを選びます。あまり大きすぎないものの方が味の当たり外れは少ないようです。そのほか頭に枝がついているものであれば、枝が水分を含んでいるかどうかも鮮度を見分けるポイントになります。

リンゴの保存は低温高湿度の場所が好ましいそうですが家庭にはそうありませんので、水分が蒸発しないようポリ袋に入れて冷暗所へ置く・冷蔵庫に入れるなどしましょう。リンゴはエチレンガスを発生しているため未完熟のバナナなどを追熟させたりジャガイモの発芽を抑えるなど便利にも使えますが、食べごろの果物などは痛みを早めてしまうことにもなりますので注意が必要です。

【参考元】