ラディッシュ/二十日大根とその栄養成分や効果効能
|カブとの違い・色による違いも紹介

食べ物辞典:ラディッシュ

ラディッシュは小さめの形状と、鮮やかな色合が可愛らしい食材。日本では球状のラディッシュが多く流通しているため、その外見からカブの仲間のように思われがちですが、和名を“二十日大根”と言うように大根に非常に近い植物です。栄養面としては水分量が多く低カロリーである反面、ビタミンやミネラルの含有はさほど高くありません。しかしイソチオシアネート類を含むこと・赤色系であればアントシアニン系色素を含んでいますよ。そんなラディッシュの歴史や栄養効果について詳しくご紹介します。

ラディッシュ(二十日大根)のイメージ画像

和名:二十日大根
英語:radish

ラディッシュ/二十日大根のプロフイール

ラディッシュ(二十日大根)とは

鮮烈な色彩・切った時の紅白のコントラストが美しいラディッシュ。見た目の可愛らしいさから女性に人気があり、鮮やかな色彩を生かしたサラダ・ピクルスなどがインスタ映えする食材として使われることが増えているのだとか。丸みのあるコロンとした外見や“赤かぶ”とも呼ばれることもあり、カブの仲間と思われることもあるラディッシュですが、アブラナ科のうちダイコン属に分類される一年草=大根の仲間です。和名は二十日大根(廿日大根/ハツカダイコン)で、学名はRaphanus sativus var. sativus

ダイコン系統の原種は断定されていませんが、日本においてラディッシュは一般的に大根の一品種もしくは変種として扱われています。植物としてはラディッシュのほうが現在の大根よりも古くから存在したと考えられており、ハツカダイコンから分化して大根が出来たのではないかという説もあります。また“ラディッシュ(Radish)”という英語は二十日大根だけではなく、大根全般を指す言葉でもあります。なので欧米でポピュラーな大根=二十日大根と異なる、日本でポピュラーな白くて大きな大根は“ジャパニーズラディッシュ(Japanese radish)”と呼ばれています。ダイコン属の属名Raphanusもラディッシュ(二十日大根)を意味する古ギリシア語が語源とされています。

ヨーロッパではラデッシュ(二十日大根)類を基準にして大根類を捉えていますが、日本ラディッシュが導入されたのは明治初期。それ以前から白く大きな大根を食べてきた歴史がありますから、日本では一般的に大根を基準として考えます。このため日本に伝わった際に収穫が早い大根の仲間として「二十日大根」と命名され、英語をそのまま取り入れたラディッシュという呼び方も小型品種の大根を指す言葉として使われています。

ラディッシュは赤くて丸いというイメージが強いですが、ピンク・黄・白・紫色などの色があり、大根の様に縦長形状のものもあります。日本の大根にも聖護院大根など丸みの強い形状のい“丸大根”が存在していますから、消費者目線としては色や形状ではなく「大きさ」で大根とラデイッシュの区分けがなされると思っておけば良さそうですね。大根よりもカブとラディッシュの方が混同されやすいですが、カブは英語で“Turnip”と言うのが正解。カブとラデッシュも概ね根部の大きさで見分けられますし、カブの葉は切れ込みが浅く大きな一枚葉に見えるのに対して、ラディッシュは大根と同じように切れ込みが深くギザギザした形をしているのが特徴です。

二十日大根という和名の通り、ラディッシュは育つのが早く植えてからすぐに収穫出来る野菜。収穫までの目安は約1ヶ月で実際に20日で収穫出来ることは稀だと言われていますが、栽培可能な期間が長いこと・日当たりが若干悪くとも問題ないことなどから家庭菜園用としても人気があります。プランターや牛乳パックでも栽培できますし、初心者向きの野菜の一つとされています。スーパーなどで売られているのは赤いものがほとんどですが種子は黄色・紫・赤白ツートンカラーの“キャンディーラディッシュ”などもありますから、よりカラフルで料理するもの楽しくなりますよ。

ラディッシュの歴史

大根やラディッシュの祖先はおそらく地中海~中東地域に自生していた植物と推測されていますが、ラディッシュの原産地としてはヨーロッパとする説が主流です。現在、私達日本人にとっての“大根”は原産地から中国を経由し日本に伝わったものが、日本の各地で独自に変化し品種として確立していったものと考えられています。このためる大根は大きくヨーロッパ大根・中国大根・日本大根の3種類にわけられており、ラディッシュはヨーロッパ系大根(西洋大根)の一種とされています。

現在のものとは異なりますが、ダイコン系の食材は古代ヨーロッパやエジプトなどでも食されていました。古代エジプトでピラミッド建造の労働者に支給された食材としてタマネギニンニクと共に大根もしくはラディッシュが紹介されることもありますが、当時エジプトで栽培されていたのは長く黒色のものであったという説が有力。そのほか古代ギリシアやローマでも食用・薬用として利用されていた、8世紀頃にはフランク王国カール大帝が大根を薬用植物として国民に栽培を義務付けたなどの逸話も伝えられていますが、これが現在の西洋大根やラディッシュであったのかは定かでは無いようです。

現代私達がラディッシュと呼んでいる小さな大根がいつから存在し食されたかは定かではありませんが、栽培されるようになったのは15世紀以降と言われています。16世紀にかけて西ヨーロッパで広く栽培されるようになり、17世紀頃にはアメリカにも導入されました。生育が早く・根も葉も全て食べられるラディッシュはアメリカ開拓時代において重宝されたそうです。また欧米では民間療法・伝統医療として消化不良や便秘など胃腸の調子が良くない時にも用いられていたと言われています。

ラディッシュ/二十日大根の栄養成分・効果について

栄養成分含有量の参考元:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

ラディッシュは近縁種の大根・見た目が似ているカブと同じく水分含有量が高く、100gあたり15kcalと低カロリーな食材です。その反面、根部分の栄養価はさほど高くはなく、ビタミンやミネラルなども特出して多いものはありません。消化酵素アミラーゼやアブラナ科の注目成分イソチオシアネートを含むこと・赤色系であればアントシアニン系色素を含むことが特徴と言えます。

ラディッシュ(二十日大根)イメージ

ラディッシュの効果効能、その根拠・理由とは?

胃腸・疲労の回復サポートに

ラディッシュにもアブラナ科に多く見られる辛味成分の「イソチオシアネート」という硫黄化合物が含まれています。イソチオシアネートは様々な機能性を持つ可能性があると注目されている成分ですが、その中には殺菌作用や食欲増進・消化促進など消化機能のサポートに繋がるものもあります。加えて大根の一種であるラディッシュにはテンプンの分解を助ける消化酵素アミラーゼ(別名ジアスターゼ)も含まれています。アミラーゼは胃酸の分泌をコントロールすることで胃が弱っている時や胃もたれ・胸焼けの改善にも繋がると考えられています。ラディッシュに比較的多く含まれている葉酸にも胃腸粘膜の再生を促す働きが期待できますよ。

また消化酵素であるアミラーゼはデンプンの分解を助けることで、糖吸収・代謝をサポートすることにも繋がります。大根と同様にタンパク質分解酵素のプロテアーゼ・脂質の消化を助けるリパーゼが含まれているとも言われていますから、相乗して栄養吸収を高め身体にエネルギーが行き渡る手助けが期待できます。胃腸が弱っている時のエネルギー補給に良いと言われる所以ですね。同時に摂取した栄養の吸収を助けてくれることから疲労回復に、特に糖質の吸収を助けてくれる可能性が高いため脳疲労の軽減もサポートしてくれると考えられます。

デトックス・肥満予防にも

ラディッシュは100gあたり1.2gの食物繊維、220mgのカリウムを含んでいます。どちらも同グラムで比較した場合は野菜類の中で豊富と呼ばる部類ではありませんが、100gあたり15kcalと低カロリーな食材ですからカロリーを気にせずにレシピに加えやすいというメリットがあります。便秘やむくみが気になる時にサラダなどに加えてみると良いでしょう。食物繊維は消化器官内で水分を吸って膨らむ性質があるため、満腹感の維持・食べ過ぎ予防にも繋がりますよ。

そのほかイソチオシアネートは代謝を活発にする働きが報告されてることから、ダイエットサポートにも期待されています。イソチオシアネートは熱に弱いため十分に摂取したい場合は“生”で食べる必要がありますが、ラディッシュは大根よりも辛味がマイルドで生でも食べやすいことからダイエット取り入れられています。ただし栄養の消化吸収を促してしまう面もあるため、食べて肥満予防というよりは運動と組み合わせたダイエットに適しているでしょう。また大根に比べると水溶性食物繊維が100gあたり0.2gと少なくなっていますから、腸内環境の改善やコレステロール排出促進などは期待しないほうが良いでしょう。

抗酸化・生活習慣病予防に

イソチオシアネートは抗酸化物質でもあり、高い抗酸化作用を持つ成分と考えられています。ラディッシュはビタミンCも100gあたり12mgと比較的多めではあるので、合わせて活性酸素から身体を守り若々しさを維持する働きも期待できるでしょう。赤色系のラディッシュであればポリフェノールのアントシアニンも含まれていますから、より高い抗酸化力を持つと考えられます。活性酸素が脂質を酸化させることで出来る過酸化脂質の蓄積が発症リスクを高める言われる生活習慣病の予防にも繋がるでしょう。アントシアニンには内臓脂肪減少・インスリンの働きを正常化する善玉ホルモン「アディポネクチン」の分泌を活発化させる働きを持つ可能性も報告されています。

美肌保持・肌老化予防に

ラディッシュはビタミンC、イソチオシアネートやアントシアニンなどの抗酸化物質も含むことから肌のアンチエイジングにも役立つと考えられます。過酸化脂質の生成を抑制してくれるので大人ニキビの予防にも繋がるでしょう。ビタミンCにはコラーゲンの生成を促す働きや、シミやソバカスの原因となるメラニン色素を作るチロシナーゼの働きを防ぐ働きも期待できます。

そのほかビタミン類ではタンパク質の代謝に欠かせないビタミンB6・細胞の生まれ変わり関わる葉酸が多めとなっています。ビタミンB6や葉酸の補給から肌荒れ予防に繋がる可能性もありますよ。ただしラディッシュだけで必要分を補えるほどのビタミン類が補給できるではありませんし、ビタミンA(β-カロテン)とビタミンEについてはほとんど含まれていません。美肌効果やアンチエイジング効果を期待する場合はラディッシュの葉・緑黄色野菜などと組み合わせて摂取すると良いでしょう。

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疲れ目対策にも期待?

赤色系のラディッシュに含まれている色素成分のアントシアニンはアイケア機能が期待されているポリフェノールの一つで、黒豆ブルーベリーなどにも含まれている成分です。私達は目の網膜に存在するロドプシンが分解される際に生じる電気信号が脳に伝わることで、目に写ったものを認識することが出来ます。情報を伝えるために分解されたロドプシンは再合成され、再び分解することで情報を伝えることを繰り返していますが、この再合成の流れが滞ることで目の疲れやかすみ・ぼやけるなど影響が出てきます。

かつてロドプシンの再合成能力が低下するのは加齢によるものと言われていましたが、近年はテレビやパソコン・スマホなどを見続けるなど“目の酷使”からもロドプシン再合成能力の低下が引き起こされることも原因になりうると考えられています。アントシアニンは目の網膜に存在するロドプシンの再合成を促す働きが報告されている成分のため、疲れ目やかすみ目などの軽減に繋がる可能性があるとして注目されています。

またアントシアニンは抗酸化作用を持つポリフェノールでもあるため、酸化ダメージによって発症する白内障・緑内障の予防に繋がるという説もあります。ただし目の酷使などによる疲れ目の原因はアントシアニン不足・ロドプシン再合成低下によるものだけではありませんし、ラディッシュから摂取できるアントシアニン量がどの程度の力を持つかも不明瞭ではあります。目の疲れや視力が回復するというものではなく、目の負担軽減に繋がる可能性がある食材と考えましょう。

ラディッシュの葉の栄養について

大根の葉と同じようにラディッシュの葉も野菜として利用することが出来ます。『日本食品標準成分表』には根の栄養価についてしか記載がないため成分量の指標はありませんが、ラディッシュの葉は緑黄色野菜となるのでβ-カロテンを筆頭にビタミン類が多く含まれていると考えられています。また大根の仲間ですから、カルシウムや鉄分などのミネラル含有も多いと推測されます。栄養価としては葉のほうが高いと言っても過言ではないでしょう。

ラディッシュの葉は大根の葉よりも苦味・エグみが少なく柔らかいため、若い葉であれば生のままサラダなどにすることもできますよ。加熱してお浸しやお味噌汁の具に使ったり、炒め物にしたり、浅漬けのようにして食べたりと様々に活用できるので是非捨てずに使ってみて下さい。ご自宅で栽培する場合には間引きした芽もスプラウト野菜として食べることが出来ます。

目的別、ラディッシュのおすすめ食べ合わせ

ラディッシュ/二十日大根の選び方・食べ方・注意点

ラディッシュは薄切りにして生で食べられることが多い野菜ですが、辛味が苦手な方は甘酢漬けなどにすると食べやすくなります。そのほか大根の一種なので大根と同じように料理に使えますが、イソチオシアネートやビタミンCが減少してしまうため生で食べたほうが栄養補給としては適しています。

美味しいラディッシュの選び方・保存方法

ラディッシュを選ぶ際には、根がしっかりと丸みのある形をしているものを選びます。白いもの・色つきのもの共に色が綺麗で皮に張りがあるものを選びます。形の大小や歪みはあまり味に影響しませんが、頭(葉の付け根)がひび割れているものは避けたほうが良いでしょう。葉付きのものであれば葉先まで瑞々しさがありピンとしていること・全体的に緑色が綺麗なことも選ぶポイントになります。

ラデッシュは暑さが苦手な野菜なので、冷暗所もしくは冷蔵庫の野菜室で保存します。保存時には葉の部分と根の部分を切り離しておき、根の部分は乾燥しないよう湿らせたキッチンペーパーなどに包んで袋に入れて下さい。葉はすぐに萎れてしまうので2~3日中には使い切るのが基本、根も新鮮な方が栄養価・味共に良いので早めに食べきるようにした方が良いでしょう。